これは夢だ。何となくだけどそんな感じがした。
「美鈴!!」
「ゴホッ…お、嬢様。ご無事、ですか?」
「フラン!止めるんだぜ!」
「アハハハ!!コワレタコワレタァァ!」
体に小さくない穴を開けて血を吐く美鈴、そして暴走した私の相手をしている魔理沙。そして美鈴の血を浴びて真っ赤になっているお姉様と霊夢。
「何をやっているの!!パチェは!?早くパチェを!!」
「お嬢、様。もう私はダメ、みたいなので。」
「何を馬鹿な事を!!主として許さないわ!!命令よ!生きなさい!!」
どう見てももう長くない美鈴。パチュリーも魔理沙に倒されて気絶しているんだから…無理だよ。
「霊夢!!」
(あ、お兄さん。)
「零!!なんで来たのよ!!」
「紫から連絡が、ってその人は!?」
(なんだろう。私が知ってるお兄さんよりも、なんというか純粋な気がする。)
「っ、零!!治癒をかけてちょうだい!」
「分かってる!」
血を気にせず治癒を始める零。
「くそっ!僕の技量じゃ…。」
「お願い!!お願いだから美鈴を…。」
治癒魔術を行使したとしても、遅すぎた。既に美鈴は…。
「うそ、でしょ?」
霊夢は目を伏せ、零は血で汚れた手を見て震えている。
「イヤァァァ!!」
(もしかしたら、本当にこうなってたかもしれないんだ。そう思うと震えが止まらない。)
夢だと分かっていても、その可能性があったのだ。
「フラン!!!貴女はやっぱり!!」
「アハハハ!!オネエサマ!!」
レミリアはスピア・ザ・グングニルを、フランはレーヴァテインを構えて。
「殺すべきだった!!」
「コワシテアゲル!!」
「ん、んぅ?」
「フラン!!」
「わっ、お姉様?」
目が覚めると紅魔館の一室、ベットに寝かされていた。
「私、また。」
「本当に…良かった!」
「あれ?私あの人に殺されて…。」
心臓を貫かれたのだ。たとえ吸血鬼でも死んだと思ったのに、何故かこうして生きている。
「勝手に僕を人殺しにしないでよ。」
困ったように笑いながら部屋の片隅で、椅子に腰掛けている零がいた。
「だって、心臓を。」
「物騒なこと言わないでよ。心臓は避けて攻撃したし。」
「ならなんで…。」
「気を失ったのか、気になるの?」
当然だ。吸血鬼は生半可な攻撃では倒れない。あの時は狂気に呑まれていた。なら余計に意味がわからない。
「んー、説明するのが難しいな。レミリアには説明したんだけどさ。」
「お姉様に?」
お姉様をじっと見つめる。が言葉に困るのか少し考えているようだ。
「やっぱり、私は地下にずっと居た方がいいのかな?」
「フラン…。」
「大丈夫。」
「え?」
予想外の言葉に思わず俯いていた顔を上げる。
「もう君は地下に閉じ篭もる必要は無いよ。」
「な、なんで?だって私また、」
「狂気に呑まれることはもう無いよ。」
「どうしてそう言いきれるの!紅魔館の皆が色々してくれた。それでもダメだったんだよ!?」
パチェの魔術も試した。外の世界で生け贄と称して人間を殺して狂気に呑まれないよう努めた。それでもダメだった。
「僕の能力を使ったんだ。」
「の、能力?でも私の能力の前じゃそんなの…。」
「だからこそ君と戦う必要があったんだ。」
「え?」
「あの狂気は君の、フランドール・スカーレットのもう1つの人格だ。僕の能力でその人格を閉じ込めた。でも、ありとあらゆるものを破壊する程度の能力を使われたら簡単に抜け出せる。だからこそ、その人格に勝つ必要がある。」
「ど、どういうこと?」
「要は格付けだよ。僕の方が君より遥かに強い、っていう格付け。勝てないかもしれないという考えがある以上僕の能力を破ることは無理なんだ。」
でも、と付け足す。
「あの人格は理性は無くとも知性はある。何かしらの方法で抜け出す可能性もあるかもしれない。だからそれまでに君自身で乗り越えなくちゃいけないよ。」
「乗り越える…。私自身で。」
「でも君は1人じゃない。もう少し周りを見てみるといいさ。」
周りを見渡せば、紅魔館の皆と霊夢と魔理沙がいた。
「きっと救けてくれるさ。」
皆一同肯定の意を持って頷く。
「でも、私は、沢山の人を殺しちゃった…。」
その事実だけは決して変わらない。数えきれない程の命を奪い、弄んだ。許される行為ではないのは明白だ。
「それはきっと、殺された方が悪い。」
「え?」
予想外の発言に全員が固まる。
「弱いから自分の命も守れない。弱いから大事な人を守れない、弱いから痛い目を見る。安心して平和ボケして、弱いままでいたそいつらが悪い。」
まるで恨みごとのように言う。反論の余地はある。明らかに倫理観に欠く発言。けれど誰も言い返せなかった。
「君がいた世界はそれが異常として捉えられたのかもしれない。でもここは幻想郷。ありとあらゆるものを受け入れる場所だ。だから君みたいな子でも受け入れてくれるはずさ。」
要するに過去なんて気にするなと、例え人殺しをしていようがなんだろうが、幻想郷に来たのならば関係ないと。それを受け入れるのが幻想郷だと言っているのだ。
「故に、強くあれ。僕の大切な人から貰った言葉だ。それを君に送るよ。」
「強く、あれ。」
「強ければなんでもできる。乗り越えられるし、守れる。いい事づくめだよ。」
この場にいる誰もが再認識した。零という人間の異常性を。だが、零のなかで筋が通っているからこそ、なんと頼もしいとも思えた。
「わかった!私強くなる!」
理解しているのかは分からないが張り切り始めるフラン。
「お兄さん!お名前を教えて?」
「零。よろしくね?」
「私はフランドール・スカーレット!フランって呼んでね!零お兄様!」
「お、お兄様?」
無邪気に抱きついてくるフラン。抱き締められる肋からベキバキと嫌な音が鳴るが気にしないでおこう。
主人公の狂った一面を出したかったがそうはいかなかった…。、