「宴会?」
「そう!こう言ういざこざの後には皆で宴会が1番だぜ!」
紅魔異変が解決し、フランの能力も心配無くなったので宴会を開こうと魔理沙が意気込む。
「会場は何処なのかしら?」
どうやらレミリアも乗り気なようだ。
「勿論、博麗神社なんだぜ!」
「嫌よ。」
即答の即答。そこをなんとか、とお願いする魔理沙だが霊夢の顔はそっぽを向いている。
「僕も、宴会はしてみたいかな。」
「っ!ほら!霊夢!零もこう言ってる事だから頼むぜ!」
こういう経験は一度も無かった。する気も起きなかったから仕方ない。だからこそ見たい。皆が和気藹々している姿を見たいのだ。
「はぁ、仕方ないわね。費用はそっちで持ちなさいよ。」
「咲夜、準備を進めてちょうだい。」
紅魔館のメイドである十六夜咲夜に指示を出す。
「畏まりました。」
そして姿が消える。彼女の能力、時を止めて移動することが出来るだったか。
「僕と似た能力を持ってるんだね。」
「えぇ、零の方が上位互換ではあるけど中々に優秀よ。」
しかし解決しなくてはいけない問題もある。
「じゃあ私は先に戻ってるわよ。」
「準備手伝うんだぜ。」
そう言って魔理沙と霊夢は博麗神社へと戻って行った。
「フランも1回汗を流してきなさいな。」
「はぁーい!零お兄様!また後でね!」
「うん。また後で。」
必然的にレミリアと2人っきりになる。
「それで?何か私に言いたい事でもあるようだけれど?」
狙って2人っきりになったのか。流石、主という地位はダテじゃないらしい。
「咲夜さんのことなんだけど。」
「あら、咲夜の事はさん付けで呼ぶのね?」
「苦労人、って感じするから。敬意を払ってるだけ。深い意味はないよ。」
ふふふ、そう。と微笑みながら話を続ける。
「それで、咲夜をどうしたいのかしら?」
「そういう意味じゃないんだけどな。」
「あら、一応主としても姉としても、貴方に感謝しているのよ?だからそういう事でも咲夜は納得すると思うのだけれど。」
茶化しているのか本気なのかは置いておく。
「なら感謝ついでにお願いを聞いてもらうことは?」
「…。聞くだけなら。」
「咲夜さんに能力の使用を控えさせてほしいんだ。」
「控える?止めさせるのでは無く?」
止めるのが1番だが、従者としてどうしても使わなくてはいけない場面がある筈。それを考慮したからこそ、控えるという考えに落ち着いた。
「分かったわ。確かにその問題は私も危惧していたし、良い機会だと思うの。」
「うん。良かった。」
「ただし、今以上に咲夜の負担が増える事になると思うのだけれど、そこはどうするつもりなのかしら?」
うっ、と言葉を詰まらせる。
「ふふふ。考えていなかったのね。」
「あんまりいじめないでよ。で、何がお望みなの?」
「貴方がここで働く、それで手を打ちましょう。」
「僕が?」
予想外だった。
「えぇ、衣食住は保証するわ。貴方にもやる事があるようだし、そちらを優先して構わない。それ以外の時は咲夜の手伝いをする。それでどう?」
なんとも高待遇。断る理由も無い。
「はぁ、分かった。最初からそのつもりだったみたいだし、乗ってあげるよ。」
フランの事もあるから、元より従者として迎え入れるつもりだったのだろう。我儘な性格って、あの時咲夜さんが言ってたし、渋った所で無理矢理にでも引き込んだだろう。
「じゃあ明日からよろしくね?」
「なんなりとお申し付けください、お嬢様?」
顔立ちは端麗な方で細身でそこそこ背がある男だ。服装を正せばそれなりのものになりそうだが、
「気持ち悪いから普通に呼び捨てでお願い。」
「ちょっと酷くない?」
「おー!きたきた!遅いんだぜ!」
「先に始めてて良かったのに。」
「流石に主がいないのに始めるのはどうかと思うけれど?」
どうやら僕らが来るのを待っててくれたみたいだ。
「じゃあ皆、飲み物は持ってるな?カンパーイ!!」
「「カンパーイ!!」」
咲夜と霊夢が作ってくれた料理を食べてみる。
「美味しい。」
「ありがとうございます。」
「これは咲夜さんが?」
「はい。簡単なものですが。」
「すごく美味しいです。」
「それほどでも。それで、貴方が紅魔館で働くというのは本当ですか?」
あぁ、その話をもうしているのか。報連相ができるとは思えなかったけど…。
「はい。明日からお世話になります。」
「存じ上げているかと思いますが、紅魔館のメイド長、十六夜咲夜と申します。」
「ご丁寧にどうも。零と言います。一応部下と上司ですから敬語はいりませんよ?」
「そう?ならそうさせてもらおうかしら。私の手伝いをしてくれるそうね?」
いつも肩肘張ってるイメージが強いけど、こっちの方が似合う気がする。
「はい。能力の話も聞きました?」
「えぇ、いざという時は使うけれどね?」
そのいざという時が来ない事を願うが、そう軽々しく使われても困るので釘を指しておく。
「念の為言っておきますけど、」
「使う時は無茶な使い方はしないようにするから平気よ?」
これはレミリアに許可は取ってないけど、まあ少しくらい自分の我儘を通してもいいだろう。
「いや、使ったら…。」
いざ使った時どうするかを考えるが、いい案が思い付かない。
「使ったら?」
ぱっ、と浮かんだのがこれだった。
「殴ります。グーで。」
「はい?」
「殴ります。グーで。」
「咲夜さん。気をつけた方がいいですよ…。」
美鈴が横から冷や汗を流しながら口を出す。
「死ぬほど痛いんで…。」
実体験をもって言う言葉には説得力がある。
「あ、安心してください!業務に支障が無い程度には治しますので!」
いやそこじゃない!と内心突っ込む。
「あら、面白い話をしてるわね。」
「私も混ぜてー!」
レミリアとフランが混ざりに来た。
「零お兄様のパンチは凄く痛いよ、咲夜。」
「妹様まで…。」
心配してくれてはいるが誰も止めてくれない。最後の希望を持って、我が主に視線を向ける。
「零。」
「何?」
「殺さない程度にね?」
「勿論。ギリギリ失神しない絶妙なラインを攻めるつもり。」
「なら安心ね。」
何が安心なのか分からないが、とにかく能力は本当に使わなくてはならない時にしか使わないことを心に誓った。