紅魔館異変から数ヶ月経ち、咲夜さんの手伝いにも慣れてきた零。ちなみに咲夜さんはまだ能力を使ってないので殴ってない。
「洗濯と料理の下拵えも終わったし、今日の仕事はお終いっと!」
自分の能力を最大限利用し、仕事を着々と終わらせる零。私はダメで貴方はいいのね、と嫌味を咲夜さんに言われてしまったが、僕の能力にデメリットは存在しないのでそこは有効活用してもいいと思う。
「あっ!零さーん!」
「美鈴さん。起きてるんだ。」
珍しくご飯の時間でもないのに起きている美鈴に、少し驚く。
「酷いですね…。年がら年中寝てるわけじゃないのに。」
「そうなんですか。」
「つ、冷たい。」
ここ数ヶ月で紅魔館の人達とも打ち解けてきている。
「あ、お仕事終わったなら組手を!」
「ごめん、レミリアに呼ばれてるんだよね。」
あはは、と頬をかく。
「そうですか。残念です。ココ最近ずっと冷えっぱなしなので体を動かして暖まりたかったのですが。」
連日続く雪で美鈴はかなりこたえてる様だ。
「あぁ、確かに。今度手袋とマフラーを持って来るよ。」
「それは有難いです!それじゃあお嬢様によろしく伝えてください!」
そう言って門番の仕事に戻って行った。
「もうこんな時期か…。」
平和な時間は短いものだなぁ、と心底思う。
コンコン
「入りなさい。」
「話って何さ。」
「貴方もおかしいと思ってるんじゃないのかしら?この気候。」
あぁ、もうこの時期なのか。春が来なくなるあの異変が。
「確かに長い事雪が続いてるね。」
美鈴は最近と言ったが、妖怪が言う最近は人間の最近とはまた違う。もうここ1、2ヶ月雪が続いている。
「これは異変だと考えているのだけれど…。」
何故僕がなんの対策もせずこう過ごしているかと言うと、白玉楼の場所を知らないのだ。異変解決が失敗してから事情を知り、白玉楼や冥界が消滅してしまってから気づいた。遅すぎたと。
「なるほど。霊夢は?」
故に待った。あの時は戦力も情報も何もかも足りなかった。
「寒いからコタツから出れないみたいね。」
随分と悠長に構えているな。今頃もう、
「魔理沙が先に行ってるみたいよ。貴方なら追えるんじゃないのかしら?」
「勿論。今すぐにでも。」
「咲夜は霊夢に一言伝えておきなさい。」
「かしこまりました。」
あの時は霊夢と魔理沙の2人で異変に立ち向かい、敗れた。だが今回は2人戦力が追加される。あの時のようにはならないだろうけど、油断はしない。
「咲夜さん。」
「何かしら?」
「今回の異変に限り、能力を使ったとしても目を瞑ります。」
あれほど咲夜が能力を使う事を嫌がった零が、使ってもいいと言ってレミリアと咲夜は目を見開く。
「それほどまでに危険な異変なのかしら?」
「下手したら、いや簡単に死んでしまうレベルって言ったら伝わる?」
フランと美鈴を下した人物。実力はかなりのものであると言うのにここまで警戒している。
「そう、咲夜。」
「はい。」
「死なないように。」
「当然です。」
何があっても僕が守ってみせるさ。
「零、貴方もよ。貴方が死んでしまったらフランが悲しむわ。」
「フランだけなのね。」
元より死ぬ気はない、ともう一度覚悟を決め部屋を出る。
「よっと。」
「おっ!零も来たのか!」
「早いね、魔理沙。」
「あぁ、夜桜を見ながら酒を飲みたいから、さっさと元凶をぶっ飛ばすんだぜ!」
ここが冥界。なんというか不思議な場所だ。
歩くこと数分。
「止まりなさい。」
凛とした声が響く。
「やっとお出ましだぜ。」
「ここは冥界。生者が来ていい場所ではありません。直ちにお帰りください。」
あぁ、元はこんなにも強い意志を持ってる人だったんだ。
「そう言われても、寒くて参ってるんだ。通してもらうよ。」
「そうですか。では仕方ありません。」
抜刀。
零と魔理沙の数メートル先に斬撃の跡が残る。
「おいおい、見えなかったんだぜ。」
「この線よりこちら側に入ってきたら容赦なく切り捨てます。」
そう言って刀を構える。
「魔理沙、下がってて。」
「れ、零?」
ゆっくり、ゆっくりと歩を進める。
「度胸は褒めましょう。」
線を、超える。
シュン、という音と共に刀を振り終わる。先程レベルの速さではないが、それでも反応できるかと言われれば難しい。
だから反応をしなかった。
「なっ!?」
「隙あり。」
動揺したのを見て、大きく踏み込む。
ベキッ!!
「ガッ!!」
側頭部への回し蹴り。防御が間に合わず吹き飛ぶ。
「魔理沙、先に行ってて。この人は僕の相手だ。」
異変の大元へ行かせるなら、その道のプロに任せる。いや、そんなの言い訳だ。この人と戦いたい。目が生きている君と戦いたいと、心が叫んでいるのだ。
「わ、わかった!任せたぜ!」
そう言って飛んでいく魔理沙。
「なるほど、やりますね。凄い手練の武術家がいるとは聞き及んでいましたが、貴方が?」
受け身は間に合ったみたいだ。良かった。手加減したのだからたってもらわないと困る。
「どうだろう。そんなふうに呼ばれた事はないけどな。」
「まあいいです。今は貴方を倒してもう1人を追わなくてはなりません。」
そう告げながら刀を構える。
「僕も魔理沙を追わなくちゃだから、君を倒すよ。」
そう言って何も無い空間に手を伸ばし、引き抜く。
「…、剣士だったのですか。」
「専門はどちらかと言うと剣士、かな?」
「なるほど、ますます興味が湧いてきました。白玉楼の魂魄妖夢です。貴方は?」
「今は紅魔館の執事を務めてる。名は零。」
お互い切っ先を向け合う。
「参ります!」
刀の名前、どうしよう…。