とりあえず原作スタートはまだまだ先になりそうですなぁ。ほんと、私の作品は開幕原作スタートが起こらない……そこは私だと思って諦めてください(
それでは本文にどうぞっ!
「ぐおぉぉぉぉぉ……くるなっ、くるなっ……っ!」
苦しく何かから逃げるように茶髪の髪でロングショートのボブタイプの髪型の少年―――杉崎宗一が寝て魘されていた。顔色は悪く荒い呼吸を繰り返していると彼の部屋に訪問するが彼の声が外まで聞こえていたのか返事を聞くこともなく杉崎の部屋へと入ってくる。
「おい、兄貴大丈夫かっ!?」
何事かと思い入室してきたアキオは目を白黒させたまま宗一の状態を確認すればホッと安堵した後は呆れた表情を浮かべた。相変わらず人騒がせなっと苦笑いを浮かべながら苦しみ悶えている杉崎の身体を揺らす。
「起きろよ、兄貴。起こせって言ったのは兄貴だろー?」
「んごっ……なんだ、アキオか。……酷い夢を見ていた……」
何回か身体を揺らされて起きた宗一は頭を押さえて酷いものでも見たのか顔を顰めながら起きる。アキオは確かに女性としては高身長だがそれでも美少女であるには違いなく、美少女である彼女に朝起こされるというのは男どもに聞けば妬まれるのは間違いないだろう。
「かなり魘されてたけど大丈夫かー?あの兄貴が魘されるってことは大したことじゃねえの?」
「……オレとて恐れるものはあるっ!夢の中までにリリスの奴が課題を持って追いかけまわしてくるのだっ!私の安眠すら妨害するつもりかアイツはっ!!」
「あー、昨日はまた一段とリリス先生にしごかれてたらしいからな。けどそうなったのは兄貴の自業自得にもなるんだから少しは反省するこった」
ぐうっと呻きながら自覚もあるからこそ宗一は口では文句を言うことはないものの捻くれた性格なこともあり不貞腐れている。不貞腐れている分はまだマシだなと彼と一番付き合いの長いアキオはそう判断をする。
(開き直っていたらリリス先生の代わりにちょっち修正してあげないとなって思ってたけど……本当悪運強いよな兄貴は)
アキオがそんなことを考えているとは当の本人は思っておらず気の抜けた欠伸をして目を擦りながら彼女に今何時かと宗一は聞く。
「はぁ、とりあえず今は何時ぐらいだ?」
「おう、兄貴の自堕落なことも考えて余裕のある時間に起こしたから遅刻はしないから心配すんなって。朝食を食堂で食べるぐらいの余裕はあるから。大体7時だな」
「それならばゆったりしながら準備するとしよう。ほれ、着替えるから一度外に行け行け。それともこのオレの身体を見たいのか」
「はいはい、大人しく退出するって。着替えたら呼んでくれよー」
しっしっと手を払う宗一の姿を見て苦笑いを浮かべてアキオは一度彼の部屋から退出する。それを確認した宗一は気怠そうに背を伸ばしてダラダラと立ち上がりシャツを脱ぎ上半身が裸になる。彼の身体は細身ではあるが鍛えているのか引き締まった身体で目立つほどではないものの小さな傷跡がチラホラと見かける。自身の魔術を研究する魔導士は山ほどいるが己の肉体を鍛えるという魔導士は珍しいだろう。一応は女性を外で待たせているという自覚は流石に持ち合わせているようで制服へとささっと着替え最低限の身嗜みや歯を磨きそれを終えた宗一は外へ出る。
「おう、待たせたか?」
「全然待ってないさ。んー、もうちょっと制服きちんと着た方がいいんじゃないかー?せめてネクタイをちゃんとして上のボタンぐらいは閉めた方がいいって」
「オレとしてはお前とアイツにだけは言われたくないっ
!まずは自分の格好を直してからそう言え!鏡を見ろ!鏡をっ!」
苦しいのか知らないがネクタイは最低限に機能する範囲で上のボタン2つを開けて制服を着崩している宗一を注意するアキオではあるがお前が言うなっと指を刺しながら指摘する。珍しく宗一の言っていることは正しく実際アキオの普段の格好はボタンを3つだけ留めた程度のワイシャツ、そしてスリット入りのロングスカートっといった大胆な格好である。
「私の場合はちゃんと理由があるんだよ。その点兄貴はそう言った理由がないじゃないか」
「その理由なんか蹴りやすいようにだろうがっ!!それでも上の方はもう少し着込めっ!それが嫌ならボタンをちゃんと閉めろっ!お前は男かっ!!」
「大雑把なのは自覚あるけどそこまで言う必要はないじゃん。そこら辺はミラより厳しいよなぁ」
「当たり前だっ!お前は知ればドン引きするほどバトルジャンキーだが見た目は美少女なんだからもっと警戒心を持てっ!お前が思っているほど男というものは野蛮な存在だからなっ!」
言い方は悪いが捻くれている宗一の口から自身が美人と言われればアキオとしてはそう悪い気はしていない。むしろ身の心配をしてくれているのは純粋に嬉しく頬が緩くなり笑みを浮かべてしまう。
「貴様その様子だと反省する気がないようだなっ?いいだろう、お前が嫌だと泣き喚くまでその両耳に説教をしてやるっ!」
「それは勘弁だって。私ももうちょっと注意するから、なっ?今度何かしら弁当も作ってやるからさ、早く食堂行こうって」
「ちぃ、上手く逃げられた気がするが仕方あるまい。お前の料理の腕前は一流だからな、今回はそれで見逃してやろう。それ、行くぞアキオ。食堂がこのオレを呼んでいるからな」
純粋に腹が減っていることもあるようで彼は食堂を目指す。先行して歩く宗一の背中を見ながらアキオは密かに笑い少し駆け足で彼の隣へと追いつく。アキオは女性としては長身であるが宗一の隣に並べば彼の方が身長高く約180㎝はあるだろう。彼女は長身ということもあり必然的に身長が低い人を見下ろすようになってしまうが、彼が横の場合はそうではない。本当に僅かではあるが彼を見上げるような形になるのは彼女にとってはお気に入りだったりする。
「なんだ、人の顔をジロジロと。このオレの顔に見惚れていたか?」
「黙っていれば兄貴がカッコいいのは認めるけど、見惚れることは永遠にこないから安心しろって。まず兄貴って他の人に基本オチ担当って思われてるぞ。もしかして自覚ないのか?」
「はあぁぁぁぁぁぁ!?なにそれっ!?オレここずっと居て初めてのカミングアウトなんだけどっ!?」
隣の彼女に永遠にないと断言されていることより本人の周りによる認識を彼女の口から衝撃のカミングアウトをされショックを受けていた。いやだってなぁっと否定する苦笑いを浮かべているアキオを見て宗一は膝から崩れ落ちれば本気で嗚咽を漏らし泣き始めようとしていた。そんな本気で落ち込むほどかと思いながら嗚咽して泣こうとしている姿に割とドン引きしてしまうが、アキオはしょうがないなっと情けない格好を晒している彼に慰めな言葉をかける。
「ほらさ、兄貴は深く関わらないといいところがわかりにくいから。けど私は兄貴が頑張ってるのはよーく私たちがわかってるからさ、な?」
「ぐずっ……は、本当か?オレが今後はオチ要因とか言われなくなるか……?」
「…………うん、きっと言われなくなるって。だから、な?」
時に優しさは残酷ではあるものの、ガチ泣きしながらオチ要因とか言われないよね?っと言われれば大雑把である流石のアキオも嘘でも頷くことしかできなかった。うんっと情けない声を出しながら宗一は立ち上がりその様子を見て歩くことはできないだろうなっと苦笑しながらアキオは宗一の手を引きながら食堂を目指す。食堂に辿り着く頃には流石に落ち着いた様だが目を真っ赤に赤くしておりゲンナリとした様子で席へと座る。
「大丈夫か、兄貴?」
「……大丈夫なわけあるか。いっそのことオレを殺してくれ……っ!」
「その様子なら大丈夫だな。文句が言えるうちは兄貴は正常だってことだ。とりあえず私が買ってくるけど何か要望はあるか?」
「お前のオススメでいい……とりあえず財布は渡しておくからオレの分はそれで買ってきてくれ」
「おう、わかった。兄貴は私の席の分の確保をお願いなー」
宗一から財布を受け取ったアキオは自分と彼の分の朝食を確保するために離れる。彼女がいなくなったこともあり特に話し相手がいない彼はグダリと机に顎を乗せ気怠そうに特にすることもなく呆けていた。
「相変わらず気怠そうにしてるッスねー。気持ちは分からなくはないッスけどシャキッとした方がいいじゃないッスかー?」
「あっ、宗一さん。席ここ空いてますか?」
「大きなお世話だ、エセニンジャっ!そして席ならオレの正面なら空いている。座るなら勝手に座るんだな」
それじゃあお言葉に甘えてと金髪のツインテールで髪留めの変わりに眼鏡をしているセリナ=シャルロックとマフラーを巻いておりポニーテールの少女風間レヴィが彼の正面に座る形で席に座る。
「あれ?宗一さんは朝食は食べないんですか?」
「今アキオの奴に取りに行かせている。私は席の確保を任されたというわけだな」
「トリニティセブンの1人であり
「おい、オレは取材になればそのトリニティセブンですら有無を言わせない貴様を忘れてはいないからな」
「セリナさんは取材熱心ッスから。ネタになることになると飛びつくのはしょうがないッスよ」
ジト目で宗一から睨まれたセリナはなんのことですか?っと視線をずらし、そんな彼をレヴィが宥める。セリナは新聞部に所属しておりネタになると感じればその取材を始め、一度狙われれば根掘り葉掘り聞かれるためある意味で彼女も周りにも恐れられていたりするが当の本人はその自覚はないようだ。
「わ、私のことよりも宗一さん何かしらネタになりそうなことはありませんかっ!?」
「おい、コイツ露骨に話を逸らしやがったぞ」
「そこをツッコンであげないのが優しさなんッスよ?でも、セリナさんの取材を受けて上げたらいいんじゃないッスか?ちょうど暇してたようですし」
「おい、貴様らはオレを暇人かなにかと勘違いをしてないか?……はぁ、後々だだこねられたら面倒だ。その取材に付き合ってやろう」
「さっすが、宗一さん話が早くて助かりますっ!それじゃあ、最近インパクトが大きかったことはなんですかっ!些細なことでもいいのでドーンとお願いしますっ!」
途端に目を輝かせながら表紙にネタ帳と書かれている手帳とボールペンを片手に持ち宗一の言葉一つすら逃さないように構えている。ほんと調子いいなお前、と呆れながら宗一はセリナを見るがレヴィとしては宗一さんはそれ以上ッスけどと内心で思う。セリナの要望であるインパクトが大きかったことと聞かれて宗一は記憶を探る。
「最近インパクトが大きかったものねぇ……ああ、あったな。しかもついさっきのことだ……私としては認めたくないものなのだがなっ!!」
「それはっ!それはっ!」
何かを堪えるかのように身体を震わせる宗一の姿を見てセリナは徐々に前なりに無意識に詰めていく。そんなセリナの様子を見てレヴィは彼女の朝食が制服を汚さないようにそっと移動させた後飛び火がかからないと判断をして朝食である焼き魚を美味しそうに食べている。宗一は溜まりに溜まったものを吐き出すように大きな声で恐ろしい真実を口にした。
「聞いて驚けっ!今日オレは衝撃な真実を知らされたっ!なんとこのオレがオチ担当だとか周囲に思われてたということだっ!これを衝撃な真実と言わずになんと言うかっ!!」
宗一はあの時アキオの口から出た衝撃の一言とガチ泣きしたつらさを忘れないと本気で屈辱的だったようで怒りで身体を震わせるが彼の一言によりセリナとレヴィは内心で『えっ、今更?(ッス)』?っと見事にシンクロする。てっきり本人は自覚していてそんな行動をしていたのかと思っておりある意味の衝撃のカミングアウトにむしろ取材したセリナの方が困惑する。
「おい、なにやらインパクトが薄いがどう言うことだ。これはオレの生きていた中で一番のカミングアウトだったんだぞっ!」
「え、えっとですねぇ……あははは、凄いカミングアウトでして驚きすぎたといいますか……」
(ここで知らなかったのかと口にしないのは流石セリナさんッスよ……)
宗一の衝撃な話(本人限定)はネタにすらならないだろう話を苦笑いからの片言な言葉で乗り切ろうとしている彼女の姿を見て彼女の取材魂をレヴィは感じ静かに涙を流したくなるがぐっと堪える。この状況をどうにかできる人物が現れないかと彼女たちは希望を探していればタイミングよくその人物が戻ってきた。
「おっ、セリナにレヴィじゃないか。あはようさん」
「アキオさんっ!!おはようございますっ……!!」
「ベストタイミングッスよ!アキオさんっ!」
「お、おう?なんか2人とも朝からテンション高くないか?」
2人に挨拶をすれば縋り付くように挨拶を返されたことに驚くが宗一の分とそして財布を含めて先に彼に渡して彼女も椅子へ座る。まっ、たまにはこんな日もあるかっと持ち前の大雑把な性格であるアキオは特に気にすることもなく手を合わせいただきますと口にして今日の朝食であるサンドウィッチを口に運ぶ。
「サンドウィッチか。まあ、朝食といえばこれくらいが丁度いい」
「男の人ってこうガッツリ食べるイメージですけど宗一さんは違いますよね。いつも軽く済ませてる気がします」
「確かにそうッスね。昼食も夜食もガッツリというより軽く済ませてるッスよね」
「私は小食だからな。ガッツリとしたものは食べる時は食べるがそう頻繁に食べるつもりはない。そもそも朝食など最悪食べなくても別に問題ないからな。まぁ、食べなければ生きていけない状態ならば暴食しなくはないが」
基本的にはアッサリがいいと宗一は答えながらいただきますときちんと両手を合わせてアキオと同じメニューであるサンドウィッチを口にする。小食ではあるもののそれは男と言うべきか一口一口が大きいためサンドウィッチはみるみると減っていく。
「ふむっ、オレが思っている以上にこのサンドウィッチ美味いじゃないか。やはりお前に頼んでおいて正解だったようだな」
「だろ?食堂の料理は全部把握してるんだ、私は。学園の食堂のサンドウィッチはおすすめなんだよ。兄貴が気に入ってくれるといいなっと思って買ってきたけど、その様子だと気に入ったようだからよかった」
「本当アキオさんと宗一さんって仲が良いですよね。宗一さん自身が割と交流が広いのは知っていましたけど」
「交流というより学園の名物の一つみたいッスからね。学園内限定ッスけど認知度はトリニティセブンといい勝負じゃないッスか?」
「まるでオレのことを見世物みたいにいうなっ!!」
声を荒げてレヴィの発言を否定するが彼女の発言は的を射ているので宗一以外否定するものはいないだろう。もはやビブリア学園にとって杉崎宗一が何かをやらかせば教師である浅見リリスに説教されるのは日常の一つだ。失礼な奴だと鼻を鳴らして彼はサンドウィッチのメニューの一つだろうオレンジジュースを飲み気分を落ち着かせる。
「はぁ、とりあえず貴様たちはサッサっと飯を食べるんだな。一限目はリリスの奴だろう?遅刻でもすれば弾丸の一つや二つ発砲されるぞ」
「いやー、それは恐らく宗一さんだけだと思いますよ」
「あのリリス先生をあそこまで怒らせることができるのは宗一さんぐらいッスよ」
「まぁ、それをされるのは兄貴ぐらいだよなぁ」
「なぜオレだけっ!?いや、オレ以外にも絶対にいるはずだろ!!ほら、えっと……くそぉ!誰も思いつかん!!問題児という問題児は見つかるはずなのに何故だっ!?」
事前に答え合わせでもしていたかのような、満場一致の言葉に納得のいかなかった彼は反論しようと自身以外にも問題児を上げようとするが思いつかず頭を抱える。彼のいう通り問題児と言われる生徒はいるのだが、やはり彼に比べれば手間はそれほどかからないことが多い。まず魔道を己のものへとするために必死に学んでいるため、そんなことをする暇があるのなら魔道を勉強するに決まっている。
「くそっ……なんでこの学園には優等生しかいないのだっ!!」
「その、仮に問題児が多かったとしても宗一さんがこうなるのは避けられないと思いますよ……」
「リリス先生にガッツリと目をつけられてるッスからねぇ。まぁ、そこは宗一さんがちょっと頑張ればリリス先生も監視を緩くしてくれるかも知れないッスよ?」
「まっ、だから授業にも顔を出してあげなって。そうしたら兄貴だって少し放課後が自由になれる筈だからさ」
少女3人に宥められる姿はなんとも情けない姿なのだが彼女たちにとって杉崎宗一はそんな人間なので特に気にもしていない。その当人も渋々といった感じではあるが授業は行かないと自覚はしているようで今回はマシな方だろう。
「……まっ、そろそろ顔出さないと本気で追い出されそうだから行くしかないか。ほら、行くぞお前たち。オレは1人では教室に行くなんて絶対に嫌だからな!」
「あっ、悪いけど私は行けないからな。今日も大将と仕事をしにいけないといけなくてなぁ」
「ふんっ、ミラの奴は相変わらず仕事熱心か。まぁ、せいぜい無事に帰ってくるんだな。あと、ミラの奴にも伝えておけ。たまには仕事も休めとな」
「おう、大将にもそう伝えておく。そんじゃ、頑張れよ3人とも」
「いやいや、アキオさんこそ頑張ってくださいッスね。またこうやって一緒にご飯食べましょう」
「そうですね、今度はミラさんも一緒に!その時はもちろん宗一さんも来ますよね!!」
「えっ、いや、なんでオレも?女子会するなら別にお前らだけでも――」
「来ますよね?ちゃんと来ますよね、宗一さん?」
目が全く笑っていないセリナに詰め寄られ、ひっ!?と情けない声を上げながら無我夢中に宗一は首を縦に振る。すると先程までの威圧は嘘のように消え、ニッコリといつものような元気いっぱいの彼女の笑顔がそこにあった。そんなセリナの様子を見てレヴィとアキオは密かに彼女からの取材には気をつけようと思うのであった―――
「いいですか、宗一さん。今日はこれを全部終わらせますからね」
「……確かにサボっていたオレのツケがきたのはわかる。だがな!!これは流石に多すぎないかっ!?」
「当たり前です!これでも一応少なくしてはいるんですからね!ちなみにまだまだサボっていた分の補修は残っていますのでこれで根を上げるのは許しませんからね」
放課後の教室で悲鳴に近い声を上げる宗一だが、そんな彼を叱りつける彼女――我らが担任浅見リリスだ。魔導士としては優秀であり、17歳という若い身でありながら教師という立場にいることから彼女がどれほど優秀なのかはわかるだろう。
「いいですか、確かに私も宗一さんが色々と理由があって授業へと顔を出さない時があるのはわかっているつもりです。ですが、流石にこれ以上の欠席は一教師として、担任として見過ごすわけにはいきません」
「お前の言い分が正しいのはオレとてわかっている。だが、授業で習っている魔術のことなんざとっくの前から知っているオレとしては退屈でしかない。それにオレが”真っ当な魔術”を使えないのはお前だってわかっているだろ?」
「っ、それは……」
自虐気味に笑う宗一の姿にリリスは何と声をかければいいのか分からず言葉に詰まる。杉崎宗一という男は魔導士ということには変わりないのだが……残念ながら彼は魔導士としては自他共に認めるほど致命的に三流だ。別に魔術を扱えないわけではない。ただ、なぜか”攻撃魔術”を使うことが出来ないのだ。彼そのプロセスが間違っているわけでもないのに”攻撃魔術”だけは何をやっても不発になってしまう。彼のその異様な体質はビブリア学園に在籍していれば誰もが知っているだろう。
「おいおい、お前が落ち込んでどうする?変に同情して落ち込んだのなら、やめろやめろ。それについてはオレはとっくの前から半端諦めているからな。そもそもお前は前もそのことで勝手に落ち込んでたろ。いい加減オレのことで一々落ち込むのやめたらどうだ?なんだ、お前オレのこと好きなの?」
「な、なんでそうなるんですかっ!?べ、別に宗一さんのことは嫌いではないですけど、恋愛となると話は別で――――」
「クックックッ……ブハハハハッ!!お前はそうやって辛気臭そうな顔よりそうやって揶揄われて顔を真っ赤にしてる方がお似合いだっつうの!!」
「んなっ!?」
ゲラゲラと腹を抱えながら笑う宗一の姿を見て、カチンときたリリスはその頭にハリセンを叩き込もうかと一瞬考えたが彼女はグッと堪える。このタイミングで変に鉄槌を下せば目の前で笑うこの男に不名誉なあだ名をつけられるのは目に見えているからだ。いつまでも笑い転がる宗一の姿を見て、リリスは怒る気力も湧かず呆れながらもつられて笑う。先程まであった重苦しい空気は何処にもなく、そこにあるのはいつもよりも少し静かな放課後の教室で2人仲良く笑う青年と少女の姿だ。
「そうですね、今日のこの補習を終わらせたら私が夜の分を食事を奢りますよ。もちろん宗一さんの好きなものを頼んでくれて構いません」
「えっ、マジでっ!?」
「で・す・が!今日の補習はちゃんと取り組んでくださいね。少しでもいつものように逃げようとしたらこの話はなしです」
「はっ、この私がこんな美味しい話を聞いた時点でサボるという選択肢を取るわけなかろう。ただ飯ほど美味いものはないからなっ!!さて、今日の補習ぐらい簡単に終わらせてやろうではないか!」
宗一が高らかに宣言をする姿を見てリリスはまったくっと呆れながらも微笑む。彼がこうやって一人称が「オレ」から「私」になっている時は調子に乗っている証拠ではあるものの、今回は夜食を奢るということにつられているため有言実行はするだろう。
(本当はこんな方法は教師がとったら駄目なんですけどね……宗一さんぐらいですよ、こんな方法を使うのは)
「おい、なにを呆けている。監視役であるお前が見ていなければ終わった時に見ていないと言われてしまえば無駄骨になるではないか」
「はいはい、わかりました。ちゃんと監視をしていますから宗一さんは安心して取り組んでください」
なぜか補習をしている宗一から注意を受けることに少しだけ納得いかなかったりするが、こういった時の場合は適当に言葉を流した方が無難なのは彼女は知っている。だが、条件付きとはいえ今目の前で必死に補習を取り組んでいる彼の姿を見てリリスは密かに嬉しく思うのだった―――
ちなみにサブタイトルの意味はトリニティセブンとの絡みがあるという意味です。つまり、今回が①だということは後はわかりますね?そして近いうちに短編から連載へと変更されるのは先に言っておきます。初めからわかってましたが短編で終わらないよ……ぴえん((
とりあえず早いうちにポンポンと流れを作ろうと思います、こちらでも書きたいことは沢山あるので!それでは次回も気長に待っていてください!誤字&脱字いつでもお待ちしてます!