練習を終えた後順番に風呂を済ませ、カウンセリングがある2人を除きそれぞれ部屋でくつろいでいた。
俺も部屋でくつろぎながら部屋で今後の事を考えていた。
30分程した時だった。
コンコン・・・
「はい。」
「翔斗、俺だ。宇都だ。」
なんだろう。
「どうぞ。」
「くつろいでる所すまないな。」
宇都先輩が部屋に入ってきた。
「どうしました?」
「いや、ちょっとな。練習についてなんだが。」
「何かありました?」
「いや、ボールとバット無しの練習がいつまで続くのかと思ってな。」
「そうですねぇ。このまま順調に行って1部を除き4ヶ月といったところでしょうか。」
「そんなに長いのか?それに1部ってなんだ?」
ああ、そうか別メニュー組は話してないんだな。
「ああ、専門のお2人ですよ。あの御二方は別メニューなんです。他の方の練習については今は1段階です。2ヶ月もすれば慣れてくるのでレベルをあげます。それで4ヶ月で下地を作る予定なんです。」
「なるほどなぁ・・・。」
「触ってないと不安ですか?」
「まあな。ここまで練習の日や試合の日は触らなかった日がなかったぐらいだからな。」
まあそうだろうなぁ。普通は使って練習するのが基本だ。
「じゃあそうですねぇ。1段階と2段階の間で1日だけボールとバット使った通常練習組みましょうか?」
「良いのか?」
「ええ、その頃には皆さん不安が出てくると思いますし多少の成果も出るでしょうから。実感してもらえば不安も無くなり練習にいっそう身が入ると思うんで。」
「そうしてくれると助かる。それにしてもあの2人は化けるのか?」
あの2人とはもちろん橋田先輩と木山先輩である。
「頑張り次第ですね。ただ化ければレギュラー奪取は当然でかなりの主力になると踏んでます。」
「そんなにか?」
「ええ、あの2人を含めこの夏に数人プロ球団から声がかかるんじゃないかと予想してます。」
「おいおい、そんな事言って大丈夫か?」
「オフレコでお願いしますよ。天狗になってもらっても困るんで。」
「あはははっ、それはないだろうが黙っておくよ。」
「それと投手陣の2人は今を含めて週3回カウンセリングをしてもらってるんですがフォローお願いしていいですか?」
「ああ、それは構わないが何をしたら良いんだ?」
「簡単です。今まで球を受けてきて思ったことを話してくれれば良いんです。ここをこうしたらどうだ?みたいな。」
「ああ、確かに思ってる事はある。それだけでいいのか?」
「ええ、あの2人は特に心が問題なんです。なので少しでもパワーアップできる要素が欲しいと思うんです。」
「なるほどな。お前は夏、どこまで行けると思う?」
「う〜ん、難しい問題ですね。ただこのまま行けば甲子園は行けると思ってますよ。」
「お前にしては歯切れが悪いな。」
「ええ、正直県内は情報集めやすいですが県外はそうは行きませんから。」
「なるほどな。県外の学校は戦わないと分からないって事か。」
「そうですね。ビデオは集めるつもりですけどね。」
「あはははっ、あの海斗ってやつは大変だな。あいつはなぜそこまでするんだ?」
「あいつは野球が大好きって事もあるんですが将来高校で監督をやるのが夢なんですよ。なので今のうちから色んな野球を知っておきたいみたいです。」
「なるほどな。今度の1年はしっかりしてるな。」
「そうでも無いですよ。バカやる時はバカやりますから。」
「まあそれはみんな同じだな。」
2人で大笑いしてると爺が呼びに来た。
「坊ちゃん、盛り上がってる所を失礼します。お食事の用意が出来ました。」
「わかった、ありがとう。」
「じゃあ行きましょうか。」
そう言って立ち上がり2人で食堂に向かった。
1階に降りて食堂に向かうとやけに静かである。
「やけに静かですね。まだ来てないんですかね?」
「そんなはずはない。数人は俺と一緒にここに来たからな。」
宇都先輩がそう答えながらも不思議そうな顔をしている。
中に入ってみると全員テレビに釘付けである。
何を見てるんだ?
ん?あれは・・・
「ふふっ、静かだと思ったら今年の夏の全国シニアの決勝を見てるんですか?」
そう言って俺と宇都先輩も席に着く。
すぐに館野先輩が口を開く。
「おう翔斗、そうや。海斗のやつが帰りに渡してきたから見てるんやがお前試合でもサポーターつけたままなんやな。」
「ええ、シニアまではね。」
「シニアまで?」
「そうですよ。高校ではいずれ外しますよ。この状態だとスピードも変化球も足らないんで。」
まあ最初から外すつもりはないが。
「スピードが上がるのはわかるが球種も増えるんか?」
「ええ、ストレート、変化球共に4球種ずつになります。」
ここで佐竹先輩が口を挟む。
「ストレートが4球種ってどういうことだ?」
「はい、まずはストレートですがこの試合でも使ってる普通のフォーシームとツーシーム。そこにジャイロボールのフォーシームとツーシームが投げれるんですよ。」
再び館野先輩が聞いてくる。
「投げ分けなんか出来るんか?」
「はい、ジャイロボールはシニア時代にキャッチャーである野本と作り上げた物なので投げ分け可能です。」
「左右両方か?」
「はい。変化球はこの試合で投げてるスライダーとシュートに加えてジャイロフォークとスローカーブが増えます。」
ここで食事の用意が出来たのでそれぞれが食べ始める。
橋田先輩が口を開く。
「フォークとジャイロフォークってどう違うんだ?」
「そうですねぇ、フォークボールは基本的にシュート回転をしながらシュート方向に揺れて落ちていきますが、ジャイロフォークはジャイロ回転を与えることにより真下に落ちるんです。」
館野先輩が隣の今井先輩に聞く。
「武尊、そうなんか?」
「はい、フォークは若干シュート回転しながら落ちていきます。」
橋田先輩がいつになくよく聞いてくる。
「そうか、通常のフォークは投げれるのか?」
「投げようと思えば可能だとは思いますが練習はしていませんね。」
ここで二瓶先輩が口を挟む。
「そうか、ストレートのスピードはどれぐらい上がるんだ?」
「今の状態だとサポーター付きでMAX135km、無しで145kmいった所でしょうか。」
食べながも全員がザワつく。
「末恐ろしい中学生やな。」
「サポーター無しの状態をジャック以外に誰が知ってるんや?」
まあ当然そこが気になるよな。
「ここにいるメンバー以外だとキャッチャーの野本だけですね。」
「そうか〜、キャッチャーは知ってるか。」
方方で落胆する声が上がる。
「心配いりませんよ。野本はここに来ますから。」
「ここにって決まってるんか?」
「ええ、学さんにここに来る有力の同級生は聞いたんで。」
「そうか〜、すると他校は全く知らんのやな?」
「ええ、そういう事になりますね。」
そう言うと全員がホッとした顔になる。まあ当然といえば当然か。他校に対して隠しておける材料は多い方がいい。
ここで佐竹先輩がボソッと喋る。
「そうか〜野本のやつ来るのか。」
「そうかそう言えば佐竹先輩は俺らが1年だった時にバッテリー組んでましたね。」
「ああ、その後横浜シニアに変わったがな。」
ここで館野先輩が不思議そうに聞く。
「シニア変わったんか?」
「はい、県内ですが引越しした為に近い横浜シニアに変わったんですよ。」
言い終わった頃に食事の準備が出来てみんなで食べ始めた。
食べ終わった頃に試合が終わった。
試合が終わると両手を頭の後ろで組んで喋り出す。
「かぁ〜、決勝でパーフェクトかいな。お前今まで何回やってるん?」
「覚えてないですね。」
「そんなにかよ。」
喋ると同時に椅子に持たれてた体をガタッと起こす。
「まあ、珍しい事では無いんで。」
ここでジャックが口を開く。
「翔斗は失点する事自体が珍しいんですよ。シニア時代に打たれたホームランも1本だけです。」
これに反応したのが遠藤先輩だった。
「たった1本?」
「はい、2年の時に1本打たれました。まあ打ったやつもここに来ますけどね。」
「今度の1年は化け物揃いかよ。」
呆れたように館野先輩が言う。
先輩達が不安そうな顔になる。
「そうでもないですよ。俺も含めてまだまだ荒削りですから。」
「謙遜しすぎだろ。」
ここで宇都先輩が口を挟む。
「そうでもないぞ。」
館野先輩がびっくりした顔をして宇都先輩を見ながら一言言う。
「宇都・・・。」
「こいつは一見いつも冷静に見えるがマウンドに立つとガッツリ燃えるタイプでな。コントロールこそ間違わないが状況で球が大きく変わる。」
佐竹先輩が口を挟む。
「どう違うんだ?」
「簡単に言うとこいつの場合強敵や打たれてる状況じゃないと最大限の力を発揮しないんだよ。」
今井先輩が口を挟む。
「なんちゅう心臓してるんだ。普通悪くなるのに。」
「それだけ楽しくなっちゃうんですよ。」
「打たれてか?」
「はい、ピンチこそヒーローのチャンスなんで。」
「なるほどな。そう言う考え方もあるのか。」
今井先輩がボソッとそう呟いた。
「しかし皆さん思ったより元気ですね。」
宇都先輩が苦笑いしながら言う。
「手足パンパンだけどな。でも練習してるって感じがする。」
「あれは慣れないとキツいですからねぇ。」
「本当にキツいのは明日からだろ?」
「そうだと思いますよ。明日から毎日筋肉痛でしょうから。」
みんな苦笑いだ。
「まあ今日は早めに寝て下さい。」
それだけ言うと俺は食堂を後にし部屋に戻った。