再び夢を追いかけて   作:伏龍

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確かな手応え

2月最後の土曜日。

 

 

 

本来デートをする予定だったバレンタインデートは受験直前という事もありやめて代わりにホワイトデーでデートをする事で瑠璃と話がついた。

 

イベント関連はそんなもので練習はというとここまで何1つ疑う事なく練習をしてきた。俺達新1年生組も出れる限り練習をしてきた。

 

 

 

バレンタインが終わった辺りから不安が広がりはじめたため宇都先輩との約束通りサポーターを外しての練習をテストが終わった事もあり今日実施する事にした。

 

 

 

食堂でお昼を食べて新1年生組が合流した所で俺は話を始める。

 

 

「えっと今日ですがいつもなら2時間練習2セットやる所を1セットにします。最初の2時間でそれをした後サポーターを外して球場前に集まって下さい。」

 

 

宇都先輩が開口一番に口を開く。

 

 

「ついにか?」

 

 

「はい。」

 

 

宇都先輩が提案者なだけあってすぐに気づいたようだ。

 

 

ここでいつも通り館野先輩が口を挟む。

 

 

「どういう事や?宇都、何か知ってるのか?」

 

 

 

「最近、先輩達の間で今の練習が本当に実になるのかっていう不安が広がってる事を聞きました。」

 

 

「ああ、2ヶ月ずっと同じ練習やったからな。」

 

 

「そこで今日は最後の2時間でこの2ヶ月の練習の成果を実感してもらおうと思います。」

 

 

先輩達の間でざわつき始める。

 

「野手陣は走塁練習、打撃練習、ノックを球場で行います。投手陣は投球練習場で普通に投げ込みを行います。」

 

 

 

ざわつきがやみ全員目線が俺に集まる。

 

 

「前半はいつも通りで後半はそれをやったら今日は終わりです。」

 

 

「まずはいつもの練習行きましょう。」

 

 

そう言うと全員が立ち上がりいつも通りそれぞれの場所へと向かった。

 

 

 

「すまんな。」

 

 

そう言って寄ってくる宇都先輩。

 

 

 

「いえ、大丈夫ですよ。」

 

 

 

「これで不安が消えるといいが。」

 

 

 

「消えますよ。全員がむしゃらにそして貪欲に練習してますから。」

 

 

 

「そうだな。確かにうちは変わったよ。特に誠はな。」

 

 

「この間お風呂で久しぶりに一緒になりましたが体型が随分変わりましたよね。」

 

 

 

先日お風呂で一緒になった時に無駄な脂肪が落ち筋力がかなりアップしていたから驚いた。予定より早く仕上がってきているからだ。

 

 

 

「ああ、無駄な間食を一切しなくなったらしい。」

 

 

 

「人って変わるものですね。」

 

 

今の練習を始めてつくづくそう思った。

 

 

 

「そのせいか山井が目の色変えて練習してるよ。」

 

 

 

「既にレギュラー争い勃発ですか。」

 

 

 

「ああ、投手以外は全ポジションな。」

 

 

 

残るはエース争いだけだと言いたげだ。

 

 

 

「まあ投手は役割がありますからね。」

 

 

「そろそろ行くか。」

 

 

そう言って俺達も練習という名の筋力トレに向かった。

 

 

 

 

通常練習がやれるのがわかったからか全員がいつにもまして練習に気合いが入ってるように見えた。

 

 

 

そして前半が終わり球場前に全員が集まっていた。

 

 

「それでは投手陣は投球練習場に。それ以外は球場の中に。ジャックは野手陣を頼む。雅史は投手陣と一緒に来てくれ。」

 

 

 

「わかった。」

 

 

 

そう言うとそれぞれが歩き出す。

 

 

 

投手陣は投球練習場に着いた。

 

 

「まずは全てのサポーターを外して軽くキャッチボールからしましょうか。いきなりの全力はやめてください。」

 

 

 

「ああ、久しぶりに投げるからな。」

 

 

そう言ってそれぞれがサポーターを外していく中雅史は見ているだけだ。

 

 

「雅史、どうした?」

 

 

「いや、俺は外す必要ないと思ってな。俺は球を受ける為にこっちに呼ばれたんだろう?」

 

 

 

「ああ、話が早くて助かる。」

 

 

 

同じくサポーターを外さずに見ていた岩倉が寄ってくる。

 

 

「俺はどうしたらいい?」

 

 

 

「岩倉は今井先輩の雅史は佐竹先輩の球をそれぞれ受けてくれ。俺は2人ぼ動作をチェックして気付いた事を話す。」

 

 

 

「わかった。」

 

 

 

そう言うと4人が軽くキャッチボールを始める。

 

 

 

キャッチボールを終えるとすぐに佐竹先輩が口を開く。

 

 

 

「今日はやけに球が行くな。」

 

すぐに今井先輩が同調する。

 

 

 

「はい、俺もそうです。」

 

 

「ふふっ、球がいくんじゃなくてそれが今の普通なんですよ。本格的に投げたらわかります。」

 

 

 

「それなら始めるか。」

 

 

そう言って佐竹先輩がマウンドに行く。それを見て今井先輩も続く。

 

 

2人が本格的に投球練習を始めた。

 

 

最初は自分の投げた球の速さに驚いた様だったがそれにも慣れたみたいだった。

 

 

投げてる姿を見て2人の共通点に気づいた。2人共後ろに残る足が前に来るのが早い。

 

 

ここで1度俺は投球練習を止めた。

 

 

「えっと、2人共ですが若干後ろに残る足が前に来るのが早いですね。もう少し後ろに残す意識で投げてみてください。そして前に持ってくる直前に後ろを蹴るような感じで。」

 

 

そう言うと2人はそれぞれフォームを確認するような感じでやってみるがどうもしっくり来ないようだ。

 

 

ここで佐竹先輩が口を開く。

 

 

「どうもしっくり来ないなぁ。なぁ翔斗、お前が投げてみてくれないか?」

 

 

「良いですよ。サポーターどうしますか?」

 

 

「この際だ、全力を見たい。」

 

 

「わかりました。」

 

 

そう言うと俺は全てのサポーターを外してオリジナルのグローブをはめてマウンドに向かった。

 

 

「雅史、頼む。」

 

 

そう言うと雅史は位置につき2人でキャッチボールを始める。

 

 

その時岩倉が口を開いた。

 

 

「ん?何だ?あのグローブ。」

 

 

ここで佐竹先輩が口を開く。

 

 

 

「ああ、お前は始めてだったか。そう言えばシニア時代は右だけだったな。」

 

 

「そりゃ〜あいつは右利きですから。」

 

 

「違うよ、あいつは右利きなんかじゃない。利き腕がないんだ。言うなれば両利きだ。」

 

驚きと供に食い気味に言う岩倉。

 

 

 

 

「なっ!?それじゃああいつはハンデを背負った状態で全国優勝したとでも言うんですか?」

 

 

それに答える佐竹先輩。

 

 

「ああ、そうらしい。その為の両利きグローブらしい。俺らも投げる姿を見るのは初めて見る。」

 

 

そう言うと目線がこっちを向く。

 

 

 

俺も準備が出来た。

 

 

「じゃあそろそろ始めます。ストレート4種から。その後変化球で左右3球ずつ行きます。」

 

 

そう言うと俺は全力で投げ始めた。

 

 

 

ミットにいい音で収まる。

 

 

真剣に見る3人。

 

 

俺は全て3球ずつ左右で計48球を投げた。

 

 

最初は唖然としていたものの途中から逃すまいと食い入るように見ていたようだ。

 

 

 

佐竹先輩が口を開く

 

「なるほどな。足の残し方はわかった。しかしこれをしてどうなるんだ?」

 

 

「はい、これをする事でスピードアップに繋がります。なれるまでは大変ですが。」

 

驚いた様に聞いて来る佐竹先輩。

 

 

 

「って事はお前も前は俺達と同じだったのか?」

 

 

 

 

「ええ、シニア時代に悩んでて学さんに相談した所足を指摘されて変えました。」

 

「そうか。やる価値はあるのか。しかしお前はとんでもない球を投げるな。」

 

 

呆れたように言う佐竹先輩。

 

 

今井先輩も口を開く。

 

 

「ですね。これでまだ高校3年間あるって言うんですから最早化け物ですね。」

 

 

 

「化け物かぁ〜。」

 

 

ちょっと落ち込む俺。笑う4人。

 

 

ここで岩倉が口を開く。

 

「でもいいお手本が目の前にいる。これはかなり大きいですよ。」

 

 

 

そこに頷く佐竹先輩と今井先輩。

 

 

「さあお2人共、足を意識して投球練習を再開して下さい。」

 

 

それを聞いてそれぞれが指定の位置に行く。

 

 

俺はサポーターを再び着けて投球練習を眺める。

 

 

 

 

 

 

一方その頃野手陣は・・・

 

 

 

全員がスピード、パワー共に上がっている事に戸惑いながらものびのび練習をする面々。

 

 

全員が実感したのか笑顔で練習をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

練習終了後、

 

 

 

 

 

全員が球場前集まっていた。

 

 

「皆さんお疲れ様でした。これで実感は出来たと思います。」

 

 

全員が頷く。

 

 

「それで明日からの練習ですが少し変えます。週末や祝日はランニングはタイムを意識、肩はいつも通りですが足上げはスピードアップでやるようにして下さい。いつもの練習に加えてサポーターを着けた状態で今日と同じ通常練習も加えます。」

 

 

みんなの顔がみるみる変わっていきまだきつくなるのかと言わんばかりの顔である。

 

 

「ただし俺やジャックも含めて1年生組は今まで通りの練習です。」

 

ここで宇都先輩が口を開く

 

 

「ちょっと待て。お前とジャックはこっちじゃないのか?」

 

 

「ええ、まだ筋力不足ですから。」

 

 

「そうか。」

 

 

まだ鍛えるのか言わんばかりである。

 

 

「今日はこれで以上です。お疲れ様でした。」

 

 

そう言うと全員がそれぞれの部屋に帰っていく。

 

 

 

部屋に戻った俺は風呂を済ませてのんびりした後全員で今日の話しながら夕食をとり早々と寝た。

 


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