「坊っちゃま、着きました。」
龍ちゃんと喋ってた俺は爺の声で立ち上がる。
「爺、ありがとう。それでは先輩方、冬休み待ってます。」
龍ちゃんが続く。
「お先です。」
「おう、お疲れさん。」
1番前に座ってた館野先輩が手をあげ発声したのをきっかけにあちらこちらからお疲れの声が聞こえてくる。
それを聞いた俺は爺に後を頼み龍ちゃんとバスを降りる。
さて、降りたはいいが家はどっちの方角だろう。ここは一本道である。
「龍ちゃん、どっち?」
「こっちだ。」
そう言って俺を先導する。と、ここで疑問に思った事を口にしてみた。
「龍ちゃん、瑠璃って俺が来るの知ってるの?」
「いや、伝えてない。それどころか楽翔に来る事すら知らない。だからまだ再会出来てないって事になってる。」
「あははっ、酷い兄貴だ。」
やっぱりか、昔から龍ちゃんはこういう事をしたがる。決まって後から瑠璃に怒られるわけだが。
「あははっ、でもこういう演出もいるやろ?」
相変わらずだ。外見こそ大人びてきてるが変わってない。
「どうなんだろう、そういうもんなのかなぁ〜。」
「着いた。ここの8階だ。」
10階建てのマンションか。8階か。眺め良さそうだな。
「ちょうどうちと学校の中間当たりか。結構近かったんだね。」
「そうだな。」
「じゃあ行こうか。」
そういって中に入りボタンを押しエレベーターに乗る。
エレベーター降りてすぐの部屋だった。龍ちゃんが鍵を開けてガチャとドアを開ける。
「ただいま〜。」
「お兄ちゃん、おかえり〜。」
おっ、瑠璃の声だ。変わってない。相変わらず可愛い声だ。
「練習どう・・・・・・うそ!?・・・・・・なんで?」
俺に気づいた瑠璃が両手を口に手を当てて涙を流し始める。
「瑠璃、久しぶり。」
色んな言葉を考えていたがこの言葉が出ていた。
「翔ちゃ〜ん。」
泣きながら走って飛びついてくる瑠璃を抱きとめる。
「おっと・・・・・・、元気してたか?会いたくなるからって引越しする時に手紙も電話もしないって言ったままだもんな。」
瑠璃が顔をあげた。
「うん。・・・グス・・・でも・・・なんで?」
素直な疑問を口にする瑠璃。
「ああ、俺、4月から楽翔高校に入るんだ。」
ここでようやく落ち着いたのか自分で立って体制を整える。
「えっ、うそ!?まさかお兄ちゃん知ってたの?」
瑠璃が龍ちゃんをキッと睨む。
「あ、ああ、1週間前に監督から聞いてた。」
「どうして教えてくれなかったのよぉ〜。バカバカバカバカ。」
瑠璃が龍ちゃんに寄り半べそかきながら両手をグーにして龍ちゃんの胸あたりを叩く。
「なあ、2人とも聞いていいか?」
俺も素直な疑問をぶつけてみた。
「家の場所知ってたよな?なんで来なかったんだ?」
ここで疑問を聞いた瑠璃が俺に正対して答える。
「ああ、それはね、私がそうしたいって言ったの。この距離ならいつか必ず会えるだろうと思って。」
ロマンチストの瑠璃らしい答えだ。さらに疑問をぶつける。
「まあ確かにこの距離ならそうなる可能性はあるけど俺が県外の学校に行くことは考えなかったのか?」
「あっ・・・・・・。」
やっぱり瑠璃だ。どこか抜けてる。
「やっぱりかよ。そう言う所は昔から変わらないな。」
「へへへっ。翔ちゃんだぁ〜。」
そう言って俺にぎゅうっと抱きついてくる。さすがにちょっと苦しい。
「瑠璃、苦しいよ。」
「だってだって嬉しいだも〜ん。」
まあいいか。なんせ4年ぶりだ。
「って事はちょっと待って、私が頑張れば4月から同じ学校に通えるって事?」
「まあそうなるな。」
「やったぁ〜。やる気出てきた。」
やる気?昔の瑠璃なら普通に受かるレベルだと思うが。
「ん?頑張ればって合格キツイのか?」
「うん。先生にはギリギリのラインだって言われてる。」
そうか、そうなるとクリスマスはキツいか。
「そうか、クリスマスの2日間、瑠璃の為に空けてきたけど勉強にするか?」
「えっ、会えるの?なら嫌だ。絶対にデートするんだもん。」
「そう言うと思ったよ。分からないことあったら電話でもなんでもして俺に聞け。」
「えっ、龍ちゃん、2学期の通知表いくつ?」
「オール5だけど?」
「ええっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」
今日1番の驚きなのか絶叫が響いた。
「なんで楽翔高校なのよ?もっといい所行けるじゃん。」
まあ最もな答えだな。だが、
「小学生の頃に言ったろ?俺の夢は・・・。」
瑠璃が速攻で答える。
「プロ野球選手、そしてメジャー。」
そう、俺は前世でダメだった夢を再び追うんだ。そしてさらにその上へ。
「そう、だから学さんのいる楽翔高校なんだよ。」
「そっかぁ〜、翔ちゃんはまだ夢追いかけてるんだね。」
ここで龍ちゃんに聞いていた事を口にしてみた。
「ああ、瑠璃も俺為に資格バンバン取ってるんだろ?」
「おに〜い〜ちゃ〜ん。」
そう言ってまた龍ちゃんを睨む瑠璃。
「すまん。」
苦笑いながらも謝る龍ちゃん。
「ったくもう。お兄ちゃんたら。そうだよ。それでね翔ちゃんに相談があるの。」
「ん?何だ?」
「私ね、料理はある程度覚えたの。和食に中華に洋食。他にも。栄養士の勉強もしてる。でもね実際に作ってる人に習ってみたいの。」
ああ、うちのコックの事だな。うちのコックは元一流のホテルのシェフで総料理長までいったことがあり栄養士の資格を持つ凄腕だ。
「ああ、うちのコックの事か。わかった。帰ったら聞いとくよ。」
「ありがとう、翔ちゃん。」
と、ここで俺の携帯が鳴る。
「ああ、爺か。うん、わかった。すぐに行く。」
「お迎え来ちゃったの?」
瑠璃が残念そうに聞いてくる。
「ああ。まあこれからいつでも会えるんだ。そう残念そうな顔をするな。」
そう言って瑠璃の頭を撫でる。
「あっ、これ携帯の番号な。」
「ありがとう。後で私のLINEで送るね。」
嬉しそうに受け取る瑠璃。
「ああ、待ってる。またクリスマスにな。」
「うん。またね。」
それを聞いて爺が待つバスに急ぐ翔斗だった。
━━━ 一方その頃 ━━━
「そっかぁ〜、遂に再会なんだねぇ〜。4年ぶりだったよね?」
そう言いながらお茶をすする奈那。
「ああ、そうらしい。今頃御対面してるよ。」
「私は見てみたかったなぁ。」
ぶっきらぼうに答える瑚子。
「お姉ちゃん、そういうのは邪魔しちゃダメなんだよ?」
「だって面白そうじゃんか。それで確か翔斗にゾッコンなんだっけ?」
確かめるように聞いてくる。
「ああ、しかもその子の兄貴の話では色んな資格取りまくってるらしい。」
そう言い、出されてるお茶をすする。
「ああ、翔斗の為か。」
ここら辺は鋭い瑚子。
「ああ、そうらしい。」
「良いなぁ、私も受験終わったら何か通おうかなぁ〜。」
考えていた事があったのか思いを口にする奈那。
「出た、奈那の良いなぁ癖。」
茶化すように言う瑚子。
「だってそうしたら将来のジャックの為になるんだよ?」
「そうか、それは確かにありかもね。」
はっとした顔で答える瑚子。
「でしょ?ねぇジャック、入学までに何を勉強してるか聞いてもらえないかなぁ?」
甘えたように頼む奈那。
「私からも頼む。」
「ええ〜、お姉ちゃんも通うのぉ〜。」
「当たり前だろ?」
なんだかんだ仲のいい姉妹である。
「あははっ、わかった。翔斗と高橋先輩に聞いとくよ。」
仕方ないと言わんばかりに答えるジャック。
「ありがとう。」
「サンキューな。」
2人がお礼をいう。
「じゃあ、そろそろ戻るわ。勉強頑張れよ。」
「ありがとう。来週末空けてくれてるんだよね?」
忘れまいと聞いてくる奈那。
「ああ、ちゃんと空けてあるよ。翔斗が調整してくれた。」
「じゃあ今度翔斗にお礼言っとかなきゃな。」
そう言ってお茶を飲み干す瑚子。
3人が立ち上がり玄関に向かう。
「じゃあな。」
そう言って綾野宅を後にするジャックだった。
「ただいま、父さん帰ってたんだ?母さんは残業?」
帰ってきてリビングに行ったらくつろいでる父さんを見つけた。
「ああ、俺も今さっき帰ってきて風呂から出た所だ。母さんは今日は終わってもうすぐ帰ってくるってさ。翔斗はどこ言ってたんだ?」
「ああ、高校見学せ龍ちゃんと再会してね。それで全部終わった後龍ちゃんがうちに来ないかって言ってくれてね。瑠璃に会いに行ってきた。」
「そうか〜、遂に会えたか〜。楽翔高校のビデオ見てた時驚きと同時に嬉しそうだったもんなぁ。」
父さんがどこか嬉しそうにしている。
「そんなに?」
「ああ、お前は隠してたつもりだったんだろうけどな。しっかり顔に出てたよ。」
父さんがニヤッとした。何かを企んでる時の顔だ。こういう時は話題を変えるのが1番だ。
「それでね、後で父さんに話があるんだ。」
「ああ、高校見学に行ってうちの施設を中心に練習したいってか?」
さすがに一緒にビデオを見てただけあって見抜かれてる。
「うん、詳しくは夕食後に話すよ。」
「ああ、じゃあ荷物部屋に置いて風呂入ってこい。後で瑠璃ちゃんの事も聞かせろよ?」
また父さんがニヤッとした。ろくでもない事考えてなければいいが。
「はぁ〜、わかったよ。荷物置いてくる。」
そう言って、部屋に行き荷物を置いた俺は風呂へ行った。
風呂から出てきた俺はリビングへ行くと父さんと風呂を出て屋敷に来ていたジャックが話していた。
「おっ、出てきたか。再会はどうだった。」
興味津々なのかすぐに聞いてきた。
「まあそれは母さんが帰ってきてからだね。」
「ちぇっ、つまらん。」
「あははっ、それで話というのは?」
「ああ、父さんがさっき言った通り楽翔高校野球部の練習をうちの施設やりたいんだ。」
「まあ、それはいい。だけどおそらくそれだけじゃないんだろう?」
「ああ、何かあった時ようにって建てたあの宿舎。野球部の寮として使えないかなぁ?ここからなら学校まで自転車でも通える距離だし。」
「ああ、あれかぁ。確かに建てたはいいが、ずっと使ってないからなぁ。わかった。使っていい。」
「ほんとに?ありがとう。なら学校と学さんとの話し合いは任せていい?」
「ああ、そうかそれがあるか。わかった。学校には明日行く予定だったからその時ついでに尾森呼んで話し合いしておくよ。」
「明日学校行くの?何しに?」
「そうか、そこからだったな。俺は3年契約であそこの教師をやるんだ。もちろん、野球部の顧問込みでな。」
「ええ〜、父さんが教師?」
「あははっ、心配するな。お前らとは学年は変えてもらうように言ってある。」
「でも、なんで?」
「ああ、お前も気づいてると思うがあれだけ良い素材がいる野球部だ。尾森から相談があってな。それでお前が卒業するまでならという契約で教師をやるんだよ。」
「父さんが出てきたら山下コーチはどうするのさ。」
「ああ、あいつは俺がメジャーの時所属してたサンフランシスコにコーチ留学だ。来月からな。」
「また急だね。」
「ああ、プロは2月からキャンプだからな。それに間に合わしたいんだろう。」
「するとクリスマス明けから予定してる練習は?」
「もちろん、そこから俺も参加する。」
「おいおい、なんか凄いメンツだな。本当に高校か?これ?」
「あははっ、確かにね。社会人でも見ない豪華さだ。」
「松波コーチと鈴本コーチは?」
「ああ、あいつらは残るから好きに使っていい。」
「わかった。一応宿舎や施設はクリスマスイブから解放、練習はクリスマス明けって事にしてあるけどそれで良かった?」
「ああ、完璧だ。」
そこへ
「ただいま〜。」
母さんが帰ってきた。
「おかえり〜。お疲れ様。」
「あらあら、お揃いで。」
「ジャックのお姉ちゃんと両親は今日はいないから私が最後か。」
「うん。お風呂入ってきたら?」
「うん、そうさせてもらうわ。翔斗、話、後で聞かせてね。」
この父親ならこの母親である。
「はいはい、早く行っておいで。」
「はーい。」
「あははっ、爺、夕食の準備だ。暁里が出てきたら夕食だ。今日はめでたい日だ。お前もメイドも全員一緒に食べよう。」
「かしこまりました。急いで準備します。」
そう言うと爺は数人のメイドに声をかけ全てのメイドを予備に行かせた。
「さて、じゃあ俺は尾森に電話して明日の話してくるよ。」
「じゃあ俺は部屋で教材あさってくるよ。」
「教材?何故だ?中学間は後3学期の最後のテストだけだろう?」
「ああ、瑠璃が合格ラインギリギリらしくてね。瑠璃にあった教材を探してやろうかと思ってね。」
「ああ、それなら俺も手伝おうか?」
「そうしてくれると助かる。」
そう言って2人で俺の部屋に向かった。
「ごちそうさまでした。」
久しぶりに爺やメイドのみんなでの食事が終わっておしゃべりタイムが始まる。
「さあ、翔斗、聞かせてもらおうか。」
「良いけど大した事じゃないよ?」
そう言って俺はバスを降りてから高橋家を出るまでの事を話した。
「っとまあ、こんな所かな。」
「それでクリスマスの2日間はどうするつもりなんだ?」
「ああ、それはまだ考えてる。良い案が出なくてね。」
「じゃあ、爺をつけるから北海道行ってきたら?」
「母さん、俺達まだ中学生だよ?」
「爺がいれば安心だし向こうは瑠璃ちゃんが知ってるはずでしょ?それに瑠璃ちゃん、北海道に4年もいてデート1回もしてませんじゃあ寂しすぎるでしょ?」
確かに母さんの言う事に一理ある。
「まあ、確かにね。泊まる所はどうするのさ?」
「それは母さんが手配していつも使ってる所をとっておくわ。」
「わかった。じゃあ母さんの好意に甘えて北海道行ってくるよ。」
「明日手配出来たら電話かLINEで知らせるから。」
「わかった。ありがとう、母さん。」
「あははっ、決まったな。翔斗、しっかり決めてこい。」
「はぁ〜、父さんは何を期待してるのさ。」
「そりゃ〜もちろん、なぁ〜?」
俺以外に同意を求めようと周りを見渡すも誰も反応しない。
「お父さん、翔斗はまだ中学生ですよ?」
キッと父さんを睨む母さん。
「はい。」
それを受けてしょんぼりする父さん。
「翔斗 、俺はお土産待ってるからな。」
「ああ、何がいい?」
「そうだなぁ〜、冬の北海道だからなぁ〜。何か美味い物を頼む。」
食いしん坊で大食らいのジャックらしい。
「わかった。ジャック達はどうするの?」
「2人のご要望で関内とネズミーランドだ。」
「ネズミーランドが奈那で関内が瑚子か?」
まあ、あの2人らしい答えだ。
「わかるか?」
「まああの2人はわかりやすいからね。」
「あははっ。」
みんなが一斉に笑い出す。
「さて、残りの作業片付けて来るかな。」
「俺も行くか?」
「いや、大丈夫。後少しだし。ジャックは帰ってそろそろ寝たら?昨日あんまり出てないんだろう?」
そう、ジャックは意外と緊張しいなのだ。
「あっバレてた?」
「まあ家から出てきた時にあんな大あくびし目の下にクマ作ってれば誰でもわかるよ。」
「じゃあ。そうさせてもらうわ。おやすみ。」
「おやすみ。」
それを聞いてジャックは家に戻った。
「じゃあ俺も早いけどおやすみ。」
そう言って部屋に戻った。
携帯を見ると瑠璃からLINEが入ってたので番号等の情報を登録し瑠璃に持っていく教材を整理してカバンにいれた。
瑠璃にLINEで明日の昼過ぎに行く事を伝えて俺も寝る事にした。