アイドルマスターシャイニーカラーズ ゼノアクティナ 作:双葉敦
めぐるの思いを千雪から伝えられた真乃は、もう一度羽ばたく決意を固める。
霧子との接触を経て、真乃の適合率は飛躍的に上昇していた。
戦場のどの機体も追い付けない真乃機の働きにより、圧倒的不利だった連合側は窮地を脱する。
しかし執拗なストレイライトの追撃を受け、智代子が自ら足止めを申し出て犠牲となる。
親友を惨殺された凛世の怒りは収まる事がなく、すぐに対ストレイライトの作戦立案がなされたのだった。
冬優子は待ち構える真乃機を見つけて狂喜した。
「いたわねぇ!この前のお礼、たっぷりさせて貰うわよぉ!」
「あ、冬優子ちゃん早速スイッチ入ったみたいっす。」
「しゃーない、うち達はフォローに徹しよか。」
あさひと愛依が呆れ顔で合わせる。
「来る!」
「この時を…待ちわびました…!」
真乃と凛世が武器を構えた。
「簡単に死ねるなんて思わないでよねぇ!」
冬優子は手斧を取り、真乃機に攻撃を行う。
それを片手剣で受け流す真乃の右側から、あさひのライフルが襲いかかる。
「させません…!」
凛世は間に回り込み薙刀を回転させ、その射撃を弾いた。
「頂きぃ!」
すると愛依があさひの反対側から大型ライフルで真乃を狙い撃つ。
「…!」
愛依の敵意に気付いた真乃は咄嗟に冬優子から離れ回避すると、愛依にライフルで反撃した。
「私相手に余所見とか良い度胸じゃない!」
冬優子が武器を棘鞭に持ち替え、真乃機を絡めとろうとする。
「鞭!?」
真乃はライフルを持つ左手を絡め取られたため、右手の剣で棘鞭を斬りつけた。
しかし斬撃は鞭のしなりにいなされ、否応なく冬優子の距離となる。
「真乃さん…!」
凛世が冬優子機の背後から斬りかかった。
「…ふん!」
冬優子は空いてる手で鋸刃剣を抜くと、凛世の攻撃を受け止めた。
「今度はそっちが余所見!」
真乃は咄嗟にライフルを右手に持ち替えて冬優子機を撃つ。
「…っ!」
たまらず冬優子は鞭を真乃機の腕から離し、距離を取った。
「…確かにあさひが苦戦しただけあって、ザコとは違うみたいね。」
「冬優子ちゃんが蹴り飛ばされただけでもあるっす。」
「うるさいわよ!!!」
「まあまあ、んでどーすんの冬優子ちゃん?小手調べはもういいっしょ。」
「そうね、それじゃ本気で殺ろうかしら…」
「あれ!?」
ストレイライトの3人が話している隙に、真乃達はその場を離脱し始めたのだった。
「は?また逃げるの!?」
「なんなんすかねアイツら。」
「さすがに今度は逃しちゃダメっしょ!」
3機は猛追撃を始めるのだった。
「真乃さん…良い演技でした…」
「いや演技とか全然そんな余裕ないよ!けど出し惜しみなのか敵が遠隔兵器を使わなかったのは助かったね…!」
真乃と凛世は後方からの攻撃に注意しながら目的の島を目指す。
そこでは先に到着していた樹里と果穂が既に作戦の準備を終えていた。
〜 〜 〜
その島は樹海に覆われていた。
冬優子達がこちらを見失わない程度の距離で逃走していた真乃と凛世は、樹海へと飛び込んで行くのだった。
「レーダーがあるのにそんな所へ逃げ込んだってねえ!」
冬優子は目視で追えなくなったため、レーダーで真乃たちを探す。
「いたっす!…あれ、バラけてるっすね。」
「こっちを分散させるつもりかも。」
「はっ!敵のペースに付き合うつもりはないわよ!まずはあの桜色を嬲り殺すわ!」
「了解っす。」
「ラジャ。」
そして真乃機の反応がある方へと樹海に突入するストレイライトの3人。
すると林の影から真乃が射撃を行ってきた。
「この林の中だとご自慢のスピードも活かせないわねぇ。」
木を盾にして真乃の射撃を防ぎながら冬優子は言った。
「それじゃそろそろこっちのターンよぉ。」
そして冬優子の合図でストレイライトの3機は遠隔兵器を射出した。
「!?」
しかし愛依の遠隔ライフルは林の中で自在に動かすには大きすぎた。
林が障害物となり、度々遠隔ライフルを木にぶつける愛依。
「あっこれアカンやつだわ…ていうかもしかして…」
「林が不利なのは敵じゃなくて…こっち?」
ようやく冬優子達は敵の意図に気付いた。
その間も真乃がライフルで攻撃を仕掛けて来る。
「ちぃっ!なら愛依は上空で待機しなさい!まだ小回りの効く私のナイフとあさひのポッドでアイツを殺るわよ!」
「けどここだと遠隔操作に意識の大半奪われるっす。この状況だとヤバくないっすか?」
「〜〜〜っ!」
あさひの意見は尤もだった。
敵は自分達をおびき寄せたこの島を入念に調査していたのだろう。
真乃は地の利を活かして常に移動しながら死角からの攻撃を行う。
そのような相手に立ち止まって遠隔操作に集中するのは自殺行為と言えた。
「なら通常武装で殺るだけよ!地力でもこちらが上だって教えてやるわ!」
「ごめん、そんじゃうちは上空で待機してるわ。上手く上に炙り出してくれたら狙い撃つから。」
「大丈夫っす、私と冬優子ちゃんで片付けるっすよ!」
そうして冬優子とあさひが真乃に向かい、愛依は上空へと移動するのだった。
「予想通り!接近型と中距離型がこっちに来て、長距離型が上空へ行った!」
真乃がクライマックスガールズに通信を行う。
「それじゃアタシは予定通りポイントBで待ってるぜ!」
「では…凛世と果穂さんは…ポイントAに…」
「みなさん、絶対にやっつけましょう!」
真乃達の作戦は第3段階に移行した。
〜 〜 〜
真乃が逃げ込んだ先はトンネルだった。
「いい加減鬼ごっこは飽きたわ。ここで仕留めるわよあさひ!」
「了解っす。」
冬優子達は真乃を追ってトンネルへと突入する。
「ここなら邪魔な木はないわぁ。じゃあ行きなさい私の可愛いナイフたち!」
冬優子は遠隔ナイフを放つ。
遠隔ナイフを敵機の背後に回り込ませ、主推進部を破壊し機動力を無くす。
それが冬優子の必勝パターンだった。
しかし冬優子は真乃を仕留める事に焦りすぎたため、その場の状況を見落としていた。
「来る方向さえ分かれば!」
トンネルという狭所では遠隔ナイフを敵の死角に潜り込ませる事はできない。
そのため正面から向かうしかないナイフを真乃はライフルで撃ち落としていく。
「なっ!」
それは当然の結果だった。
「こいつら本当にセコい真似ばかり…!一旦ここを出るわよあさ…」
その瞬間背後から轟音が聞こえた。
「あっ!」
そしてあさひが気付く。
自分達が入ってきた側の山肌が爆破され、土砂で塞がれたのだ。
「マズいっす、出られないっす!」
「何ですって!?」
予め山肌に仕込んでいた爆弾を樹里がリモートで起爆させたのだった。
そして冬優子達が後ろに気を取られている間に真乃は出口まで行き、そこで樹里と合流した。
「やるぞ真乃!」
「うん!」
敵を侮りすぎた冬優子達を待っていたのは、回避もままならない袋小路だった。
一方上空で索敵をしていた愛依は、接近してくる反応に気付いた。
「…ってこのサイズ、まさか!?」
目視できる距離まで迫ってきたのは、アルストロメリアだった。
「敵新型IDOLLまで距離500、対空砲撃有効範囲に突入!」
「了解。甜花ちゃん、撃って!」
「や、やるよデビ太郎…!」
「ヤッテヤルゾ!ヤッテヤルゾ!」
アルストロメリアの対空砲が愛依機を襲う。
「さすがにうちだけで敵艦落とすのは厳しいわ〜!」
愛依は対空砲を避けながら反撃を行う。
そして敵艦相手に余裕がない愛依に向って、カタパルトで控えていた果穂と凛世が飛び出した。
「ちょい待ち!それは流石に無理!」
アルストロメリアへの反撃で手一杯の所に凛世達の強襲を受け、愛依はその空域を離脱しようと試みる。
「逃しは…しません…!」
凛世は回収した智代子のロケットランチャーを放った。
「いたっ!」
背後を被弾する愛依機。
元々半壊していたロケットランチャーはその一発で使えなくなったが、役目は十分果たした。
「………ああそう。なら相手してあげる。」
愛依の表情からそれまでの戯けた様子が消えた。
真乃と樹里はトンネル内の2体に向けてライフルでの斉射を行った。
「くっ、この…こいつらぁ!」
「こうなったら強行突破するしかないっすよ冬優子ちゃん!」
あさひはポッドをいつでも出せるよう備えながら冬優子に指示を仰いだ。
「分かってるわよ!」
重装甲の冬優子機が盾代わりになり、真乃達に向かって突撃を行う。
「それも織り込み済みなんだよ!」
樹里はトンネル内に向けて煙幕弾を放つ。
「煙幕!?どこまでも小賢しいわね!」
構わず突進する冬優子。
そして出口に張られたワイヤーに気付かず、冬優子は盛大に転倒した。
そこには予め樹里達が掘った落とし穴があり、冬優子機は転げ落ちる。
「何なのよぉおお!」
「食らいやがれ!」
樹里は出口上部に括り付けた大岩を吊るしていたロープを切った。
大岩が落とし穴に落下する。
「きゃああああ!」
「冬優子ちゃん!」
哀れ冬優子機は大岩の下敷きになった。
「一匹ずつ仕留める…行けっ!」
愛依は遠隔ライフルを放ち、凛世に集中攻撃を行った。
「…っ!…この程度…智代子さんの…痛みに…比べれば…!」
被弾しながらも愛依機へ肉薄する凛世。
「てやあああ!!!」
愛依の意識が凛世に向いている隙を突き、果穂は背後に回り込んで斬りつけた。
「その程度?」
しかし本気になった愛依は2人のコンビネーションを見抜き、果穂の斬撃を半身で躱すと果穂機に膝を叩きつける。
「ぐはっ!」
「まずは一匹。」
体勢を崩した果穂にライフルを突きつける。
「果穂さん!」
凛世は薙刀を愛依に向かって投げつけた。
「と見せかけて…」
それを予測していた愛依は下がって薙刀を躱すと、丸腰となった凛世を狙い撃った。
「!」
愛依の狙撃は正確に、凛世機のコクピットを撃ち抜いた。
「一丁上がり。」
その時、果穂は周囲に漂う意志エネルギーの副作用で凛世の命が散ったのを感じた。
「あ、あああ…」
呆然とする果穂。
愛依は確実に仕留めたと確信し、果穂の方に向き直った。
それが愛依の命取りとなった。
「!?」
凛世機は止まらなかった。
コクピットを撃ち抜かれたにも関わらず、手には小太刀を握り愛依機に突撃した。
不意を突かれた愛依は回避が間に合わず、小太刀がコクピットに突き刺さる。
「バカ…な…生きてる…訳…」
実際に愛依の狙撃で凛世は事切れていた。
しかし凛世機には、智代子を惨殺した新型を必ず倒すという思念が残っていた。
その思いはジュエルに留まり、パイロットの凛世が亡くなった後も機体を動かした。
それは執念とも言えた。
「ああ…あああ…うわあああ!!!」
果穂は大きく振りかぶり、袈裟掛けに愛依機を両断した。
「凛世さあああん!!!」
しかし凛世の躯が果穂の呼びかけに応える事はなく、その機体は両断された愛依機と共に落ちていくのだった。
〜 〜 〜
「がああああっ!」
冬優子は頭上の大岩をフルパワーで砕き飛ばした。
「コイツ…何てパワーだ!」
「樹里ちゃん気をつけて!」
「もう良い!もうデータ収集とかどうでも良い!こいつ等は今!ここで!ブチ殺す!」
「いや、そこまでだよ。」
「!?」
完全に頭に血が上っていた冬優子に冷水を浴びせたのは、透からの通信だった。
「何でよ!」
「愛依機の反応が消えた。」
「は!?」
「恐らく敵に討たれた。これ以上の損失は避けたい。撤収だ。」
「待ちなさいよ!ここでこいつ等を皆殺せば良いだけでしょ!」
「それができなかったから今の状況なんだろう?はっきり言う。君達は相手を侮りすぎた。」
「…!」
「三度は言わない。撤収だ。」
「〜〜〜っ!…あさひ、戻るわよ!」
「愛依ちゃん…殺られちゃったっすか…スン…」
冬優子達は渋々その場からの離脱を始めた。
「逃がすか!」
「樹里ちゃん!凛世さんが…凛世さんが…うわああ〜ん!」
「果穂!?」
追撃しようとした樹里達に果穂からの通信が入る。
「どうしたの果穂ちゃん!?」
真乃が果穂に尋ねる。
「あたしを…守ろうとして…敵に…うわあああ!!!」
「果穂!落ち着け!」
樹里達が果穂との通信に気を取られている間に、冬優子達は島から離れたのだった。
果穂から凛世が戦死したと聞き出した真乃達は現場に駆けつけ、その機体を見つけるとアルストロメリアに連れ帰った。
「そんな…凛世ちゃん…」
千雪を始め甘奈や甜花も凛世の死にショックを受けた。
誰よりも慎重で、思慮深い性格だった凛世ですらこれほど呆気なく死ぬ。
機体から下ろした遺体を前にして、暫く全員が戦争の現実に打ちのめされた。
「ごめんなさい!ごめんなさい凛世さあああん!」
果穂は凛世の亡骸に縋りついて泣き叫んだ。
真乃はシーツで損傷の激しい胴体を隠すと、タオルを濡らして凛世の血塗れの顔を拭った。
「…アタシにもやらせてくれ。」
樹里も真乃に倣い、優しく血を拭いていった。
「何で凛世なんだよ…アタシじゃなく…何で…」
「樹里ちゃん…」
「夏葉にしても、めぐるやチョコ、凛世にしても…アタシよりよっぽど考え深くて良い奴から死んでいく…」
樹里は薄く開いていた凛世の瞳を閉じる。
「何で何の役にも立てねえアタシが生き残るんだよ…やり切れねえよ…こんな…」
樹里の言葉に誰も答えられず、ただ果穂の泣き声だけが格納庫に響いた。
〜 〜 〜
凛世と愛依が亡くなった戦闘から数日後、咲耶と結華はブリッジで透に詰め寄った。
「この画像、知らないとは言わせないよ。」
「…味方のハッキングとは感心しないね。」
透はタブレットに映し出された建造中の巨大な構造物を見て、驚く様子もなく答えた。
「その味方が信用できなくなってるんですけどね、現状。」
結華が続ける。
「きりりんの機体に着けてた新装備…あれがどうにも違和感しかないから色々辿らせて頂きましたけどー。まあ出るわ出るわ胡散臭い偽造書類の山。」
「ペーパーカンパニーやら間に挟んで誤魔化していたけど、行きつく先にあったのがこれだよ。率直に聞こう、これは何だい?」
「君たちには関係ない…では納得してもらえそうにないな。」
「そりゃあこっちは命賭けてますから。」
「霧子たちが望んだ争いのない平和な世界…その実現に必要なものとは到底思えない。盤の外でこうも色々されては、私達駒はこの戦いの目的そのものが信じられなくなる。」
咲耶は透の真意を見極めようとその表情を見据えた。
「さて…この件について説明するには、これが完成しない事にはね。」
「それはどういう理屈なの?」
「実際に動かすところを見てもらうのが、一番分かりやすいからさ。ただその前に…」
「?」
「この戦いに勝たなければならない。これを使うのはその後の話だからね。」
「つまり敵を倒し切らない限り説明はないと。」
「まあそういう事さ。」
格納庫に向かいながら結華は咲耶に尋ねた。
「どう思うさくやん?」
「…難しいね。透はなかなか本心を見せない。」
「確かにこの前の戦闘で相手はかなり疲弊してる。上手くいけば今回の出撃でこのゲームを終わらせる事ができるかも知れないけど…」
「本当に私達が目指したものと透たちの目的が同じなのか…疑念は残るね。」
2人は暫く黙りながら通路を進む。
「…まあこがたんには余計な話をしない方が良いだろうね。」
「ああ、恋鐘にこれ以上精神的な負担を増やしたくない。」
格納庫に到着した2人に、先に着いていた恋鐘が声をかける。
「遅いばい!早う準備せんね2人とも!」
「すまない…恋鐘、あの兵装は?」
見ると恋鐘機に新しい装備が着けられていた。
「バスターキャノン言うて、バズーカに代わる武器ばい!この威力なら敵艦だって沈められるって雛菜が言うとったばい!」
鼻息荒く恋鐘が言う。
「…なるほど。しかしこれでは機動力を相当犠牲にしそうだ。」
その兵装は両手で抱えるサイズのため、見るからに動きの妨げになっていた。
「多少動けなくても大丈夫ばい!咲耶や結華を信頼しとるけんね!」
「うわ、こっちに振る?勘弁してよー。」
三人は苦笑し合った。
「…ストレイライトは前回の戦闘で損傷が残っている。今回は私達だけだが、敵の疲弊は明らかだ。この虚しい戦いも、霧子たちの願った世界を実現するため、後一歩まで来たよ。」
「…分かってるばい。敵が憎いのは変わらんけど、何より霧子の願いを叶えてやるため、まずは勝つ事に拘るとよ。」
「今は3人だけど、まみみんもきりりんもきっと見てくれてる。そう思って戦おう。」
「ああ…やろう。恋鐘、結華。」
「やるばい!」
「やりますか!」
そして3人は出撃した。
〜 〜 〜
それはアンティーカの3人がノクチルを離れてすぐの事だった。
恋鐘機が唐突に爆発した。
「!?」
正確には背後から強力なエネルギー砲を撃たれ、撃破された。
咲耶と結華は絶句した。
恋鐘機は爆炎を上げながら墜落し、直後に爆散した。
「なに…これ…」
「恋…鐘…」
余りに想定外の状況に、2人は完全に思考が停止した。
「やは~、大当たり~!」
「あれだけ重い装備着けさせたら、当てて当然でしょ。」
その声に咲耶達は振り返る。
背後には全く見た事もないIDOLLが2体いた。
「今のは…君達の仕業か?」
震える声で咲耶が尋ねる。
「え~、それ以外ないって普通分からない~?」
その声は聞き覚えがあった。
「雛…菜………それに円香か…」
「ええ、これまでご苦労様。そして貴方たちの出番は終わりよ。それを伝えに来たわ…死を以ってね。」
円香の返事は冷酷なものだった。
「…どういう事?」
結華が振り絞るように尋ねる。
「…何も知らないまま死ぬのも可哀想だから教えてあげる。透は最初からこのゲームの結果なんてどうでも良かったのよ。」
円香は淡々と答えた。
「争いがない、平等で優しい世界とか、弱い人間が考えそうな夢物語かも〜」
雛菜はにこやかに話す。
「地球人が真の意味で自立するには、足手まといは要らない。」
「まあ貴方達みたいな古い人間の事なんだけどね〜」
「そんな事は聞いていない!!!」
咲耶が吠えた。
それはこれまで感情を露わにせず、常に冷静であろうとしていた咲耶らしからぬ怒声だった。
「何故恋鐘を殺した!」
今すぐにでも円香達を撃ちたかったが、咲耶は状況を把握するため必死で堪えた。
それは結華も同じだった。
「何か怒ってる~怖い~」
「…貴方たちはこの戦いが連盟側と連合側との地球への干渉権を賭けたものと思っているけど、それは間違ってないわ。」
「なら何故!」
「この戦いは、ね。それとは別に、透は連盟とある契約をしたのよ。」
そして円香は透の真の目的を話した。
呆然とする咲耶と結華。
「………そんな事が…そんな事のために…私達は今まで…」
「…許せない…こんな!」
「別に許して貰おうとは思っていないわ。使い捨ての駒に情を持つプレイヤーはいないでしょ?」
「やは~円香先輩辛辣~」
「…円香ぁあ!」
咲耶がライフルを構える。
「それじゃお別れね。」
「!」
円香機の6本の腕のうち、エネルギーダガーとエネルギーソードを持つ4本が本体を離れた。
予想外の挙動に動揺する咲耶。
それらは各々が不規則な軌道で動き、様々な方向から咲耶機を襲った。
咲耶はそれらを躱し切れず、エネルギーダガーとソードが咲耶機を貫いた。
「さくやん!」
「あはっ、隙あり~!」
咲耶機に気を取られた結華に向けて、雛菜機のエネルギー砲が放たれる。
「きゃああっ!」
それは結華機に直撃し、2体は爆炎を上げながら墜落していった。
一方その頃衛星軌道上では、完成した巨大構造物が大気圏内へと降下を始めていた。
第十話 終
おまけ
『摩美々「と夏葉」の機体解説コーナー』
「ってここはどこばい?」
「恋鐘お疲れさまー。」
「何で摩美々がいると!?」
「どうやら自分が死んだ事に気付いてないみたいね。」
「何ば言うとるね!うちは死んでなんかおらんばい!」
「んじゃ霧子ー、チャッチャとやっちゃってー。」
「…脈なし…呼吸なし…瞳孔散大あり…死亡確認、ヨシ!」
(※実際の死亡確認は医師しかできません。良い子は真似しないでね。)
「そ、そんな…本当に死んでもうたと…って霧子?霧子ーっ!」
「ある意味夏葉よりうるさいのが来ちゃったかー。」
「それじゃ今回のゲストは恋鐘と…」
「夏葉ちゃん久しぶり!皆のチョコアイドル智代子と!」
「凛世と…」
「ちーす、愛依でーす。」
「皆お疲れ様。物語も中盤を過ぎて、ここまで大変だったわね。」
「本当にそうだよ!夏葉ちゃんがすぐいなくなって、私達いつも逃げてばっかり!」
「読者からも…呆れられているのではと…」
「まあ主人公側がここまで良く逃げる話はそんなに無いかもねー。」
「んでも出番あるだけマシっしょ。うちなんか実質3話で退場とか酷くない?」
「酷いと言えば私のやられ方もだよ!いつの間にか死んでましたって扱い!」
「智代子さんは…どちらかと言うと…殺され方に…抗議すべきでは…」
「まあやったのは冬優子ちゃんだけど、何かごめーん。」
「死に方にも色々あるとね…まあくよくよせんね!そのうち良い事あるばい!」
(((((一番酷い死に方した人が一番ポジティブだ…)))))
SL-01(あさひ機)
・機体色はチームカラーのワインレッドとパーソナルカラーの赤
・主武装は中型ライフル×1、遠隔操作可能な小型エネルギーポッド×2
・中距離戦を得意とする機体、軽装甲、機動性は高い
・接敵されても被弾しない絶対の自信から本来の中装甲から軽装甲に換装し、機動性を向上させている
SL-02(冬優子機)
・機体色はチームカラーのワインレッドとパーソナルカラーの黄緑
・主武装は突剣×1、鋸刃剣×1、手斧×1、棘鞭×1、遠隔操作可能な小型エネルギーナイフ×4
・接近戦をメインとする機体、重装甲、機動性は平均的
・基本的な戦法は遠隔操作可能なエネルギーナイフで敵機の推進部を攻撃、機動力を奪った状態で各種武装による拷問的な加虐を行う
SL-03(愛依機)
・機体色はチームカラーのワインレッドとパーソナルカラーの紫
・主武装は大型ライフル×1、遠隔操作可能な中型エネルギーライフル×2
・遠距離からの狙撃支援がメインだが、中型エネルギーライフルによる中距離戦闘もこなす、軽装甲、機動性は高い
・愛依の性格から普段は大まかな支援射撃がメインとなるが、スイッチが入ると狙撃や近接戦闘もハイレベルなものとなる。
「って事で、うちらストレイライトの機体紹介でしたー。」
「とうとう出てきたわね遠隔兵器!これぞロボットアニメの定番メニューね!」
「長崎ちゃんぽんギョーザ定食みたいなもんばい!」
「もしくは大盛りラーメンにライスを付けるようなものだね夏葉ちゃん!」
「………え?」
「…えっ?何?何この空気?ラーメンの残り汁にご飯入れると美味しいの、皆知らないの!?」
「智代子さんは…夏葉さんがいなくなってからも…食欲が落ちる事はなく…いつも健啖で…人一倍召し上がって…おられました…」
「凛世ちゃん?」
「智代子…」
「ヒッ!?」
「どうやら身体に大分余剰エネルギーを溜めこんでそうね…」
「え、えへへ………ご、ごめんなさ〜い!」
「待ちなさい智代子!今から特訓よ!!!」
「あー、という事で今回はここまでー。」
「昭和のギャグ漫画みたいな締め方ばい。」
「次回も…お楽しみに…」
「おっ楽しみに!」
「トホホ、もう特訓はこりごりだよ〜!」