アイドルマスターシャイニーカラーズ ゼノアクティナ   作:双葉敦

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前回のあらすじ

千雪から渡されためぐるの遺書を灯織に見せる真乃。
お互いが不完全な存在で、だから間違う事もあるしそれを補い合えると気付き、真乃と和解する灯織。
そして連合側エージェント・はづきの手配で、決戦用追加装備が各機に与えられる。
そこに半壊状態の機体で咲耶と結華が投降してくる。
彼女たちから知らされたのは、連盟と透による代理戦争とは別の密約であった。
大気圏内に降下した巨大構造物・クレッターグルストは内部に強大なフェザージュエルを蔵し、その力で周囲の人類から意志の力を吸い集めるというものだった。
地球人の意志エネルギーを欲する連盟と、クレッターグルストに耐えられる意志の強さを持つ人類だけが地球を救えると考える透。
双方の利害の一致から導き出された結論は、大多数の力なき者たちの廃人化だった。


第十二話 決戦

咲耶達の機体に残っていたデータを基に、千雪は最後の作戦を立てるため、ブリッジでミーティングを行った。

攻撃目標となるクレッターグルストをコントロールしているノクチルは衛星軌道上まで上昇していた。

「恐らく母艦同士の砲撃戦を避ける為だろうね。」

アルストロメリアにそこまで上昇する能力がない事を聞き、咲耶が推測した。

「逆にあの構造物…クレッターグルストにはこちらの主力攻撃を予測して戦力を集めてると思う。」

「なら正面からぶつかってあの構造物を破壊するのは難しそうね…」

千雪は考え込む。

「ああ。可能性が高いのはノクチルを撃破する事でクレッターグルストを止める方だろう。ただ衛星軌道まで上昇するのは通常のIDOLLでは難しいだろうね。」

「打つ手なしかよ…」

「いや、方法はある。」

「?」

「通常の人型IDOLLでは無理でも、ここにはあるだろう?そこまで上がれる推進力と形状を備えた機体が。」

「あっ…!」

全員が樹里を見る。

「…私はあまり運命といったものを信じるタイプではないが、この巡り合わせには何か偶然を越えたものを感じるよ。君とその機体がここまで生き残った事にね。」

「樹里ちゃん!」

果穂が樹里に呼びかける。

「………あったんだ…アタシが…生き残った…意味が…」

震える声で樹里が呟く。

それまでどんなに辛くても涙を見せなかった樹里が、この時頬に涙を伝わせた。

 

そうして立てられた最終決戦のプランを、ブリッジで甘奈が全員に通達した。

「まず第一波のイルミネーションスターズとアンティーカの4人で、敵巨大構造物…クレッターグルストに強襲をかけます。」

「了解。」

「承ったよ。」

「そこに敵の注意を引きつけている間に、第ニ波のクライマックスガールズの2人が衛星軌道上まで上昇し、敵母艦ノクチルを攻撃します。」

「ああ。」

「分かりました!」

「可能なら敵母艦の撃破が理想ですが、恐らく敵側もそれに備えて何体かIDOLLを残していると想定されます。なので撃破が困難な場合は可能な限りエンジン周辺を破壊して、敵艦の高度を落として下さい。そうすればアルストロメリアの主砲が届くので、それで決着を着けます。」

「作戦は以上よ。何か質問はある?」

「………」

全員が覚悟を決めた。

「…それじゃ、恐らくこれが最後の戦いになるわ。皆、集まって。」

千雪はイルミネーションスターズとクライマックスガールズ、それにブリッジクルーの甘奈と甜花を呼んだ。

「…良かったら貴方たちも。」

そしてアンティーカの2人にも声をかけると、円陣を組んだ。

千雪が中央に向けて手を伸ばすと、全員がそれに倣って手を重ねていった。

「ここまで本当に色んな事があったわ…何度も心が折れそうになったけど、それでもここまで来れたのは…皆のおかげよ。本当に…ありがとう。」

「よせよ千雪さん、まだ終わってないんだぜ?」

「そうね…この戦いで、この世界の行く末が決まるわ。皆それぞれ思う所があるだろうけど、大切なものを守るため…もう一度力を貸して。」

全員が頷く。

「それじゃ掛け声は…真乃ちゃんお願い。」

「ほわっ、私ですか?き、急に言われても…」

「ふふ、でも私達のエースでセンターは真乃ちゃんだと思ってるわ。だからお願い…私に、皆に勇気を与えて。」

「わ、分かりました…えっと………皆さん、頑張り…ましょう…?」

「何それ。締まらないよ。」

灯織が苦笑する。

「〜〜〜っ!もうっ、じゃあ灯織ちゃんがやってよ!」

「それじゃあたしがやってみたいでーす!」

果穂が手を挙げる。

「…随分仲が良いけど、いつもこうなのかい?」

「まあアタシらはこんな感じだな。戦うためだけに生きてるんじゃない、って…死んだ仲間の受け売りだけどな。」

咲耶の問いかけに樹里が答える。

「私達も、こんな風にしたかったね…」

結華が先立った仲間を思い、寂しげに微笑んだ。

「あうう、甜花…腕が疲れてきちゃった…」

「ハヤクシロ!ハヤクシロ!」

「もう、真乃ちゃん早く締めちゃって!」

甜花の泣き言につられて甘奈が催促する。

「ほわっ、そ、そうだね…コホン、それじゃ皆、絶対に…勝って、生き残ろう!」

全員が真乃を見た。

「…皆の笑顔という、色とりどりの輝きを守るため…シャイニーカラーズ、ゴー!」

咄嗟に思い浮かんだそれはめぐるの手紙にあったフレーズだった。

「シャイニーカラーズ、ゴー!」

 

〜 〜 〜

 

「灯織機、行きます!」

「真乃機、行きますっ!」

イルミネーションスターズの2人が発進すると、咲耶達がカタパルトに進んだ。

「…恋鐘、君が見ていたらここから発進する私達を怒るんだろうね…すまない。」

「大丈夫だって、こがたんあれで融通が利く方だから。」

結華の軽口に咲耶が微笑む。

「それじゃ行こう、透達に一矢報いに…咲耶機、出る!」

「結華機、行っきまーす!」

そしてアンティーカもアルストロメリアから発進していった。

 

「…恐らくクレッターグルストは、円香達が防衛している。」

「咲耶さん達を撃った人…ですね。」

「ああ、彼女達の相手は私達に任せて貰いたい。君達は構造物への攻撃をお願いできないだろうか。」

「討たれた仲間の…仇討ちですか?」

「…否定はしないよ。ただ私達は一度交戦している。敵の手の内はある程度把握しているつもりだ。」

「確かにその方が良さそうね。」

灯織が同意する。

「見えてきたよ。連中の出迎えは…」

結華が索敵を行う。

「いた!やっぱり円香と雛菜…ん?なんだあれ?」

「…見た事のない機体だ…まさか!?」

円香と雛菜の機体の横に、もう一体大型のIDOLLがいた。

「来たね。じゃあ始めようか。」

それに乗っていたのは透だった。

 

「…予定変更だ。あの6本腕と砲撃型を私達が倒すまでの間、君達は残り1体の相手をして欲しい。」

「4対3なら別々に戦わなくても…」

「恐らくあの機体、透…あちらの司令官だ。」

「!」

「わざわざ出て来るという事は相当自信があるんだろう…機体の性能と、自身の技術に。なら敵の戦力を分散させて先に手の内を知ってる2体を倒す。それまであの機体の注意を引きつけて貰いたい。恐らく全員でかからないと透を倒すのは無理だろう。」

「…そんなに危険なんですか。」

「あちらにいたから分かるけどさ、透は100%勝てる試合しかしないタイプだよ。そして出て来た。」

「…つまり絶対に勝てる、と確信している…」

灯織は結華の言葉に続けた。

「…分かりました。それじゃ私達で何とか持たせます。咲耶さん達もどうか気をつけて!」

「頼む。」

そして4体は2方向に分かれるのだった。

 

「どうやら別々に相手をして欲しいようだね。」

「どうするの透?」

「あの桜色の機体には興味がある。私はあちらの相手をするから、円香達は裏切者の処分を頼むよ。」

「…了解。」

「やは〜、今度こそきっちりトドメを刺すね〜」

そして透は真乃機を追いかけた。

 

「真乃、上手くあの機体がこっちに来てる!」

灯織が迫ってくる透機を確認する。

「分かった!でも相手の性能はまだ分からないし、接近戦は避けよう!」

「なら…早速これを使う!」

灯織は追加装備の遠隔小型剣を発射した。

「ほう、データにない装備だね。」

透はそれを確認すると、小型剣の数や速度、稼働範囲を瞬時に予測する。

「まずは肩慣らしといこうか。」

そう言うと透は保持していた大型ライフルは使わず、遠隔エネルギーライフルを射出した。

その数は灯織の遠隔小型剣の倍だった。

「!?」

それらを用いて次々と小型剣を撃ち落としていく透。

「まさか…あんな数の遠隔兵器を同時に使うの!?」

「灯織ちゃん、あれは私達の想像以上に危険な相手かも…!」

真乃と灯織は透の底知れぬ実力に言いようのない不気味さを感じた。

 

〜 〜 〜

 

「真乃機から通信です!…第一波、敵機と遭遇!戦闘を開始しました!」

「数は?」

「数は…3、どれもデータにない…新型機との事です!」

樹里と果穂は顔を見合わせる。

つまり自分たちの相手は…。

樹里たちの予想通り、ノクチルにはストレイライトの2人が待ち構えているのだった。

 

発進準備が整い、クライマックスガールズが出撃する。

「果穂機、行きますっ!」

果穂機が発進する。

「樹里機、行くぜ!」

続いて飛行形態の樹里機がカタパルトから発進する。

果穂機に追いついた樹里は果穂を自機の上に乗せ、高度を上昇させる。

必要な相談はした。

後は決着をつけるだけだと、2人はノクチルが見えるまで口を開く事はなかった。

やがて衛星軌道に到着する2機。

予測地点にレーダーを向けると、ほぼ千雪達の予想通りの位置にノクチルの姿を確認できた。

「よし、それじゃ打合せ通り頼んだぜ、果穂。」

「まかせてください!」

「…いいか、絶対に無理するんじゃねえぞ。」

「了解ですっ!」

その頃ノクチル側でも2機の接近は感知していた。

「て、敵IDOLLらしき反応が接近しています。す、ストレイライトのお二人は迎撃をして下さい!」

小糸が指示を出す。

「分かってるわよ。といってもこの高さでの戦闘ってあんまり気乗りしないわね。」

「あれ、冬優子ちゃん高所恐怖症っすか?」

「バカにしてんの?地上とは違って重力のかかり方も違うし万が一大気圏再突入なんて事になったらいくらIDOLLでも無事じゃすまないわよ。」

「あ、そうなんすね。」

「ぶっちゃけ艦の外に出るのは得策じゃ…あ、それじゃ艦に取りついた奴だけ叩くって事にしない?」

「いいんすかねそれで。」

「いいわよ、どうせそこまで義理立てする事でもなし。とりあえずカタパルトからあさひが適当に撃っておきなさい。」

「え~私は宇宙戦してみたかったっすけど…まあ冬優子ちゃんがそう言うなら了解っす。」

「…見えてきたわよ、マヌケが2匹。」

「それじゃ行くっす。」

あさひが牽制の射撃を行う。

併せてノクチルも対空砲による迎撃を開始した。

「よし、それじゃ行け、果穂!」

「行きますっ!」

「?」

飛行機もどきの上の機体だけこちらに向かってきた?

冬優子は一瞬敵の作戦を推測しようとしたが、以前も見た機体である事からどんな作戦だろうと負けるはずがないと高を括り、とりあえずわざわざ殺されに来た1体に的を絞る事にした。

それは以前透に指摘された慢心とも言えた。

「ていやぁー!」

背中の大剣を外し振りかぶってからの果穂の袈裟懸けを、冬優子は難なく回避した。

「まずはこの子が相手ね。」

余裕さえ見て取れる相手を前に、果穂は出撃前の樹里との打合せを思い起こした。

 

『アタシ達の相手はチョコや凛世の仇と決まった、けどな…』

『?』

『今回の作戦はあくまであの敵艦を沈める事だ。だからまずはアタシたちで敵艦にダメージを与える事を優先しなくちゃならねえ。』

『それは…そうですけど…』

『分かってるよ、仇を討ちたいのはアタシも一緒だ。だから考えたんだけどよ…』

『はい。』

『まずアタシが外から敵艦の攻撃を行う。幸い咲耶たちから貰ったデータもあるし、上手くやれば主砲を潰せるかも知れねえ。その間は果穂が連中の注意を引き付けて欲しいんだよ。』

『ふむふむです。』

『んで、ある程度外からの攻撃をしたら、今度はアタシが連中の相手すっから、果穂は内部に入って手当たり次第にぶっ壊す。』

『なるほどです。』

『そんで最後に2人であいつらをぶっ飛ばす。…正直アタシは夏葉や凛世みたいに頭が良くねえから上手い方法なんて思いつかねえけど、どう思う?』

『樹里ちゃんが考えた一番良いと思う作戦なら、あたしもそれが一番だと思います!』

『…まあ果穂が反論するとも思ってなかったけどよ…いや、アタシが不安になってちゃダメだな!良し、それじゃこれで行こうぜ果穂!』

『はい、あたしたちで絶対にやっつけましょう!』

 

なら今は樹里ちゃんがこの艦への攻撃に専念できるように。

「がるる〜っ!」

果穂は目の前の二機に対して威嚇するように唸り声を上げて剣を構えた。

 

~ ~ ~

 

「頼んだぜ、果穂。」

そう言うと樹里はノクチルからの対空砲を回避しながら敵艦の外観を目視で確認しつつ通過した。

「確かデータだと…おっ、やっぱりさっきのアレか。」

カタパルト後方にあったノクチルの主砲を思い浮かべる。

樹里は大きく旋回すると、ノクチルへの再接近を開始した。

「はづきさんの話だと…思考誘導型ミサイルだっけ?目標を思い浮かべるんだよな…」

徐々にノクチルの艦影が近づいてくる。

「目標は主砲…目標は主砲…」

樹里は対空砲に注意しつつも意識を集中させる。

「目標は…あそこだあっ!」

掛け声と同時にミサイルスイッチを押す樹里。

ミサイルは変則的な軌道を描きながら、ノクチルの主砲めがけて進んだ。

そして爆発。

見事に主砲の一つに直撃し、その破壊に成功した。

「よっしゃあ!もう1回!」

ノクチルを通過した樹里は、再度旋回してもう一つの主砲にミサイルの照準を合わせる。

「そうはさせないっすよ!」

「!?」

樹里の機体に向けてあさひの射撃が襲い掛かる。

「うおっと!」

しかし今日の樹里はいつにも増して感覚が冴えていた。

あさひの射撃を回避しながらミサイルを発射する。

しかし集中が足りなかったせいか、ミサイルは主砲に届かずあさひのライフルで迎撃された。

「このっ!」

格下と思っている相手に自分の射撃が回避された事に若干苛立ちながらも、あさひは迎撃を続ける。

「樹里ちゃんの邪魔は、させませんっ!」

そこへすかさずあさひ機へ攻撃を加えようとする果穂。

「うわっ!冬優子ちゃん、どうするっす?」

斬撃を回避するあさひ。

「…面倒だけどまずこの子を倒しましょ。すぐ片付けてあっちもやれば、文句は出ないでしょ。」

「了解っす。」

正直次に主砲攻撃されたらこの艦丸裸なんだけど、まあわたしたちが考える事じゃないっすねとあさひは切り替えた。

「敵の迎撃が止まった?果穂のやつ、ありがとな!」

作戦通りの果穂の働きに感謝しながら、樹里はもう一度主砲への攻撃に集中した。

「次は外さねえ。目標は主砲…目標に向かって…行けえっ!」

樹里の気合を乗せたように、ミサイルはノクチルの迎撃網をかいくぐり残りの主砲を撃破した。

「おしっ!あとはエンジン回りを叩いてこいつの高度を落とすぜ!」

予定通りの戦果に樹里の戦意は高揚していた。

 

一方、果穂は冬優子の斬撃をエネルギーシールドで受け止めるので精一杯だった。

「さぁて、アンタはどんな悲鳴を聞かせてくれるのかしらぁ。」

「うう~!」

機体自体のパワーは冬優子機が上だった。

徐々に押し込まれる果穂。

「そうれ、もう一回!」

そして再度斬撃を加えようと振りかぶった冬優子に対して、果穂はエネルギーシールドを前方に強制排出させた。

「んなっ!?」

予想外の動きにシールドごと後方に吹き飛ばされる冬優子。

「冬優子ちゃん!?」

果穂はすかさず残ったシールドを展開し、それを発生器ごと外すと円盤投げの要領であさひに投げつけた。

「!?」

全く想定していなかった攻撃に、回避できずまともにもらうあさひ。

ダメージはそれほどでもなかったが、それまで敵の攻撃を一切受けなかったプライドは大きく傷つけられた。

「これが!そーいと!くふーです!」

「ガキが!生意気な言葉使ってんじゃないわよぉ!」

冬優子のスイッチが入った瞬間だった。

 

~ ~ ~

 

2機を相手に奮戦する果穂に樹里から通信が入る。

「果穂!この船大気圏内に入ったぞ!アレをやっちまえ!」

「了解です!」

そして果穂機は後方に下がると、そのまま後退して剣の間合いから大分離れた位置で敵機に対して構えを取った。

「何のつもり?」

「ジャスティス〜」

「?」

「スラーッシュ!」

「!?」

あさひと冬優子の機体に、予想もしなかった衝撃が走る。

果穂の剣が振られた直後、何かが自機の正面にぶつかったのだ。

「何?何なの!?」

「なんなんすかねこれ?」

分からない。

確かにモニターには間合いの遥か先まで距離を取っている間抜け以外何も映っていなかった。

「ジャスティス〜」

「また!?」

「スラーッシュ!」

「きゃあっ!」

再度衝撃が襲う。

致命傷にはならなくとも、確実に機体にダメージが与えられていた。

「いやこれマズいかもっす冬優子ちゃん!」

「分かってるわよ!」

衝撃は正面から。

相手が何かを飛ばしているのは間違いない。

モニターには映らない何か…空気みたいな…空気!?

「あさひ、アイツ衝撃波を出してるわよ!」

「ジャスティス〜」

「え、じゃあどうするんすか?」

「スラーッシュ!」

「ぎゃっ!」

三度目の衝撃。

さすがにこれ以上食らう訳にはいかない。

「一旦遮蔽物のある位置まで下がって、対策を考えるわ!」

「了解っす。」

「させるかよ!」

「!?」

それまで航空形態でノクチルへの攻撃を行っていた樹里が、人型に戻り冬優子たちの背後からライフルを放つ。

あさひが冬優子の背中に回り、樹里の射撃への応戦を行う。

「ジャスティス〜」

「ああもう!いい加減にしなさいよ!」

「スラーッシュ!」

「ぐがっ!」

冬優子機とあさひ機の機体が揺れる。

確かに衝撃波は目視できない。

普通なら回避しようがない。

けど…何か単純な事を見落としている気がする。

「あ。」

「どうしたんすか冬優子ちゃん?」

「アイツ攻撃時にわざわざ叫んでるわよね。」

「そうっすね。」

「そのタイミングで伏せれば躱せるんじゃない?」

「あ、それ良いアイデアっぽいっす!」

「ジャスティス〜」

「来るわよ!」

「スラーッシュ!」

「今よ!」

果穂の叫びに合わせて伏せる冬優子とあさひ。

予想通り衝撃波は冬優子たちの頭上を走り抜けた。

「ヤバい果穂!相手に気付かれた!」

「え、え〜!」

「残念だったわね!いくら高性能な武器でも使うのがアホならこの程度よ!」

「さすがっす冬優子ちゃん!さっきまでそのアホに苦しめられてたとは思えないっす!」

「うるさいわよ!!!」

 

~ ~ ~

 

「果穂、交代だ!今度はお前が中に入ってこのクソッタレな船をぶっ壊して来い!」

「分かりました!」

「待ちなさい!あさひ、アイツを追うわよ!」

カタパルトから内部へ侵入する果穂機を追う冬優子たち。

「行かせるか!」

その背後からグレネードを放つ樹里。

「がっ!」

爆発の衝撃で顔をモニターに叩きつけられる冬優子。

「つっ!?」

そのせいで舌を噛んでしまい、口の中に血の味が広がる。

冬優子の中で痛みの広がりと合わせて、冷酷な衝動が沸き起こっていった。

「…作戦変更よ、あさひ。」

「?」

「先にこのクソアマを嬲り殺してから、あのクソガキを料理するわ。」

「…了解っす。」

 

樹里は健闘していた。

元々性能が上の敵機2体を相手に、致命傷を負わずに戦えたのはブースターによる機動性向上によるところが大きかった。

しかしそれ以上にこれまでの戦いで命を落とした仲間、特にクライマックスガールズの面々への思いが、樹里の動きに気迫を与えていたのだった。

「こいつちょこまかと!」

「オラァッ!」

「ミサイル?でも!」

樹里のミサイルを回避する冬優子。

「あさひ!」

「分かってるっす!」

冬優子を追尾するミサイルを撃墜するあさひ。

しかしミサイルに気を取られた両機に間髪入れず樹里のライフルが炸裂する。

「ぐっ!」

「チョコや凛世の痛みは、こんなもんじゃねぇぞ!」

「調子に乗るなあああ!」

樹里機めがけて手斧を投げつける冬優子。

しかしそれも躱され、手斧はカタパルトの端に虚しく突き刺さる。

もはや冬優子の苛立ちは最高潮に達していた。

そこにブリッジから通信が入る。

「何よ!」

「あ、あの、て、敵機が艦内で暴れているんですけど…は、早く何とかして下さい!」

その小糸の一言に、冬優子は頭に血が上る熱さと反比例するような冷たい返答をした。

「…椅子に座って眺めてるだけのアンタに、命令される筋合いはないわよ。」

「ぴゃ!?」

そして冬優子はブリッジとの通信を切った。

 

「ミサイルは…あと3発、船を叩くのに景気よく使いすぎちまったか。」

おそらくこの残弾数では2機とも倒すのは難しいと考える。

なら1機だけでも必ず仕留め、残りを果穂に託すという決断をした。

「うおっと!」

あさひの遠隔ポッドによる死角からの攻撃。

こればかりはこれまでになく感覚を研ぎ澄ませた今の樹里でも読み切れない。

まして接近戦用の果穂の機体では、樹里以上の負担があるのは目に見えていた。

「ならアタシがやるのは…コイツだ!」

樹里はあさひ機に狙いを定め、ライフルでカタパルトの端に追い込む。

「こいつ…うざいっすよ!」

樹里の攻撃を天性の反応速度で回避するあさひだが、その執念のこもった連射に徐々に後退せざるを得なかった。

「余所見してんじゃないわよ!」

あさひを追い込む樹里機の腕に、冬優子の棘鞭が絡まる。

「邪魔すんじゃねぇ!」

冬優子にグレネードを放つ樹里。

「きゃあっ!」

「冬優子ちゃん!?」

グレネードの爆風で冬優子機は後方に吹き飛び、それによって棘鞭に絡められいていた樹里機の左腕は引きちぎられた。

それでも樹里はお構いなしに、あさひへの攻撃を続ける。

「あと少し、端まで追い詰めれば…ミサイルを避けられねえ位置まで!」

「そろそろ飽きたっす、終わらせるっすよ!」

「ぐあっ!?」

あさひはポッドの一つを直接樹里機にぶつけ、態勢を崩したところに樹里の右手のライフルをもう一つのポッドで撃ち抜いた。

「クソッ…畜生…!」

「形勢逆転っすね、残りはミサイルだけっすか?まあこの距離なら余裕で躱せるっすけど。」

樹里に止めの一撃を加えようと近づくあさひ。

(こんな所で…皆の仇一つ取れず…!)

悔しさに唇を噛む樹里の脳裏に、ふといつかの夏葉の言葉が思い浮かんだ。

 

『…そうね、確かに剣からビームは出せないけど…そんなものなくたって、創意と工夫、それに諦めない気持ちがあれば果穂は最高のヒーローになれるわ…』

『創意と工夫』

『それに諦めない気持ち』

 

咄嗟に辺りを見回す樹里。

確かアレはこの辺りにあったはずだ。

「そんじゃまあまあ楽しかったっすよ、飛行機もどきさん!」

あさひのライフルとポッドが樹里機に照準を合わせる。

「勝手に終わらせようとしてんじゃねぇ!」

そして樹里はカタパルトに向けてグレネードを放った。

「!?」

予想外の行動に動きが止まるあさひ。

その爆炎の中から樹里機はあさひの至近距離まで飛び出すと、渾身の力をこめた右拳であさひ機の頭部を打ち抜いた。

「うわっ!」

その勢いでカタパルトから転落するあさひ。

「夏葉直伝の右ストレートだ!痛えだろ!」

「くっ、このっ!」

推進機能で態勢を整えて船に戻ろうとするあさひに3つのミサイルが向かってきていた。

「こんなのでぇ!」

不安定な態勢ながら、あさひはそのセンスでポッドとライフルを駆使し全て撃墜する。

「これで終わ…」

そう言い終わらないうちに前方の爆炎の中から飛んできた手斧が、あさひが最後に見た光景だった。

 

~ ~ ~

 

「あさひ!バカあさひ!返事しなさい!」

冬優子が必死に呼びかけるも、あさひからの返答はなかった。

「ウソでしょ…アイツ…ふゆより才能…あったのに…」

呆然と立ちすくむ冬優子機。

「ハァ…ハァ…やったぞ…チョコ、凛世…仇のひとつ…取ったぞ。」

そう呟く樹里の背後から、冬優子が声をかける。

「…やってくれたじゃない。」

「!?」

振り返ろうとする樹里機の頭部に、鋸刃剣が食い込んだ。

「うああっ!」

そのまま刃を引いた冬優子は、樹里機のメインカメラを破壊した。

「倍返しさせてもらうわよ。」

続けて樹里機の右足に狙いを定めると、冬優子は鋸刃で無慈悲にも膝から下を切り落とした。

「ぐっ、あっ!」

もはや立つこともできなくなり、崩れ落ちる樹里機。

「どうやら武装もエネルギーも残ってないみたいね、それじゃ楽しい時間の始まりよ。」

突剣を取り出そうとしたところで、冬優子はある事を閃いた。

「そうね、せっかくだしアンタは有効活用させてもらうわよ。」

 

「聞こえてるでしょクソガキ!この女を助けたかったら出てきなさい!」

艦内に響くようにマイクを最大にして、冬優子は叫んだ。

「気にすんな果穂!とっととこの船を沈め…」

樹里の言葉を遮るように、突剣がコクピットに突き刺さる。

「ぐああああ!」

「あらごめんなさい、当たっちゃったかしら?」

敢えて致命傷となる中心部を避けた攻撃は、見事に冬優子の狙い通り樹里の脇腹を抉った。

「ふゆは気の長い方じゃないの、あと3つ数える間に出て来なければ…」

さらに一突き。

「がああっ!」

樹里の悲鳴が艦内に響く。

「…この女を殺すわ。」

 

「さーん」

先程まで鳴り響いていた母艦の破壊音は止み、樹里の喘ぐ呼吸音だけがその場にあった。

「にーぃ」

世界が止まったかのように、辺りには何も動く気配はない。

「いーち」

予想に反して出て来ない敵に、冬優子は苛立ちを抑えられず舌打ちをし、止めの一撃を構える。

「ゼ」

「待って下さい!」

最後のカウントをする瞬間、果穂機がその姿を現した。

「馬鹿…野郎…何で……!」

「ようやく出てきたわねぇ。」

果穂はモニターに映る大破寸前の樹里機と、その頭部を鷲掴みに持ち上げている敵機を見て、自分でも信じられない強い言葉を叫んだ。

「樹里ちゃんを…離せ!!!」

 

「良いわよぉ。」

そう答えると冬優子は樹里機を乱雑に投げ捨て、横たわる機体を足蹴にした。

「ぐあっ!」

「樹里ちゃん!」

「この死に損ないは、アンタをブチ殺した後にタップリといたぶってから殺すわ。」

「よくも…!貴方はもう、絶対に!許しません!!!」

「その減らず口、二度ときけないようにしてあげる。」

 

対峙する二機。

お互いエネルギーは余り残っていないのを理解していた。

勝負は一瞬。

どちらの剣が先に相手に届くかで勝敗は決する。

 

「じゃあ死になさい!」

冬優子が動く。

「ジャスティス〜…」

それを迎え撃つように果穂が構える。

「バカの一つ覚えが!」

「スラーーーッシュ!!!」

果穂の叫びと共に放たれる衝撃波。それを見越して冬優子は上空に飛んだ。

「頭上が!ガラ空きなのよぉ!」

「うわああ!」

同時に果穂は背後から強い衝撃を受ける。

予め冬優子が忍ばせていた遠隔ナイフが、背後から果穂機の主推進部に突き刺さった衝撃だった。

「これでもう避けられないわね!終わりよ!」

冬優子は勝利を確信した。

「死…」

言いかけた刹那、冬優子は背後に強い衝撃を感じた。

「!?」

何が起きた?

不測の事態に混乱するも、自機の推進機能が停止している事で瞬時に理解した。

やられたのだ。

恐らく自分が相手にした事と全く同じ事を。

迂闊だった。

あのふざけた衝撃波なんて新機能を付けていたのだから、別の新装備があってもおかしくなかったのだ。

カウント中に出て来なかったのは迷っていたからではない。

この瞬間を狙って遠隔小型剣を仕込んでいたのだ。

自律機動ができない冬優子機は重力に従った落下をするしかなく、落下地点には大剣を持った果穂機が最後の一撃を放つために待ち構えていた。

「こんな…こんなガキにぃぃい!」

「夏葉さん…ちょこ先輩…凛世さん…樹里ちゃん!これが!あたしたちの!」

落ちてくる冬優子機に狙いを定める果穂。

「全力!全開!」

エネルギーを全て剣に集め、それに呼応するようにジャスティスソードⅡは輝きを増した。

「クライマックス!スラッシュですーーーっ!!!」

果穂の全身全霊をかけた一撃。

その一閃は見事に冬優子機を両断した。

 

~ ~ ~

 

落ちていく機体の中で、冬優子は呟く。

「嘘…ふゆがこんな所で…」

死に近づく絶望感は、在りし日の孤独な過去を否応なく思い出させた。

「嫌、また一人になんて…なりたくない…」

両手で顔を覆う冬優子。

しかし目を塞いでも、機体の爆発音と衝撃は冬優子の恐怖を掻き立てるだけだった。

「やっぱり冬優子ちゃんは寂しがりっすね。」

「あさひ!?」

あるはずの無い声を聞いた冬優子が振り向くと、横には生意気な笑顔を浮かべるあさひがいた。

「大丈夫っすよ、わたしも愛依ちゃんもずっと冬優子ちゃんの側にいるっす。」

反対側には、いつもの脳天気な笑顔で愛依が佇んでいる。

「…そんな…そんなの…ふゆは頼んでないわよ…バカあさひ…!」

幻覚であろうと最後に心を許した仲間が側にいる。

それだけで冬優子の目には涙が浮かんだ。

ただそれをあさひ達に見られるのだけはプライドが許さず、涙を隠すように冬優子は腕を顔に当てた。

そして冬優子機は夏の空に咲く火花となって消えた。

 

 

第十二話 終




おまけ

『摩美々「と夏葉」の機体解説コーナー』

「いよいよ最終回となりましたこのコーナー。」
「ゲストは先刻亡くなったばかりの…」
「あさひっす。」
「冬優子よ。」
「それじゃ早速機体解説を…」
「待ちなさいよ。その前に作者に言いたい事があるわ。」
「メタ発言は止めてくださーい。」
「いいえ言わせて貰うわよ。何なのよふゆの扱い!いくら何でも性悪すぎない!?」
「冬優子ちゃんはあんな事するっす。」
「殺されたいの?ふゆはもっと可愛らしい立ち位置が似合うわよ!オペレーターとか!」
「それは甜花甘奈姉妹というベストキャスティングがあったから無理ね…」
「それより冬優子ちゃんには謝って欲しいっす。冬優子ちゃんがあんな所に武器を投げ捨てるからわたしが殺られたっす。」
「はあ?そんなのふゆのせいじゃ…」
「あーあー!冬優子ちゃんの武器で殺されたっすー!冬優子ちゃんのー!ぶーきーでー!」
「ああもう!分かったわよ!悪かったわね!これで良い?」
「分かればいいっす。」
「えー…そろそろ解説始めて良いですかー?」

NC-01(透機)
・機体色はチームカラーのウルトラマリンとパーソナルカラーの浅葱
・主武装は大型エネルギーライフル×1、両肩に内蔵する拡散エネルギー砲×2、遠隔操作可能な中型エネルギーライフル×10、自機周囲に張り巡らすエネルギーフィールド(バリア)
・中〜遠距離戦において最高水準の火力を誇り、重装甲にも関わらず機動性は高い
・また接近戦においては、両肩部の拡散エネルギー砲を使用する

NC-02(円香機)
・機体色はチームカラーのウルトラマリンとパーソナルカラーの赤
・主武装はエネルギーランス×2、エネルギーソード×2、エネルギーダガー×2
・接近戦をメインとした機体、重装甲だが機動性は高い
・6本の腕を生やした異形の姿をしているが、ソード及びダガーを装備した腕は分離可能でそのまま遠隔操作で敵機を攻撃できる

NC-03(雛菜機)
・機体色はチームカラーのウルトラマリンとパーソナルカラーの黄
・主武装は大型エネルギー砲×2、遠隔操作可能な中型エネルギー砲×2
・遠距離砲撃がメインだが中型エネルギー砲による中距離戦も対応できる、重装甲だが機動性は高い
・大型エネルギー砲2門を合体させた状態で放つ砲撃は、母艦主砲クラスの出力を誇る

「以上、ノクチルの機体紹介でしたー。」
「ちょっと、何気に透機のネタバレしてるけど良いのこれ?」
「冬優子ちゃんに唐突に悲しき過去を生やすほどルール違反じゃないっす。」
「本気で殺されたいようね、あさひちゃん?」
「もう死んでるっす。」
「それじゃこのコーナーは今回で終了だけど、本編は次回が最終回よ!」
「ここまで読んで頂いてありがとーございましたー。」
「それではアイドルマスターシャイニーカラーズ ゼノアクティナ、最終回をお楽しみに!」
「「お楽しみに!」っす!」
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