アイドルマスターシャイニーカラーズ ゼノアクティナ   作:双葉敦

13 / 13
前回のあらすじ

連合側の最後の作戦は、第一波の真乃・灯織と咲夜・結華でクレッターグルストを攻撃し、そこに敵の注意が向いている間に衛星軌道上でクレッターグルストを操作する敵母艦・ノクチルを第二波の果穂・樹里とアルストロメリアで撃破するという内容に決まる。
世界の危機を救うため、友の無念を晴らすため、其々の思いを胸に作戦が開始する。
一方透は自身と円香、雛菜でクレッターグルストを守り、ノクチルの小糸をストレイライトに任せる布陣で迎撃する。
透機の底知れぬ能力を警戒するイルミネーションスターズとアンティーカ。
またクライマックスガールズの果穂と樹里は、因縁のあるあさひ・冬優子と決着をつけるためノクチルへ向かい、死闘の末ストレイライトを倒すのだった。


最終話 空を染める光

ノクチルの甲板に横たわる樹里機に、果穂機が駆け寄った。

「樹里ちゃん!大丈夫ですか!」

「って…あんまり大声出すなよ、こっちは怪我してんだから…」

「えっ?それじゃ早く戻って手当てしないと…」

「ああ、そうだな…果穂、お前は戻れそうか?」

「はい!あ、さっき背中のやつはやられちゃったんだ…」

「ったく、しょうがねぇな…そこにアタシの右足あるだろ、そのブースター外して使え。」

「分かりました!」

素直な果穂は樹里の指示通り樹里機の右足にあるブースターを外し、自機に取り付ける。

「できました!」

「おし、そんじゃお前は先にアルストロメリアに戻れ。」

「えっ…」

果穂の表情が曇る。

その脳裏にかつての夏葉の最後が浮かんだからだ。

「樹里ちゃん…夏葉さんみたいに帰って来ないなんて事…」

「…帰るから…心配すんなよ…ちょっと休んでくだけだ。」

それでも果穂の不安は消えない。

「あたしが樹里ちゃん抱えれば…」

「そんで2人仲良く対空砲の餌食になるか?…機動力落とすよりは別々に戻った方が帰れる可能性は高え…」

それでも動こうとしない果穂に、樹里は声をかける。

「なあ果穂、お前の好きなヒーローって…どんな奴だ?」

「えっ…あたしの…好きな…ヒーロー…それは、他人を思いやれる優しさと、どんなに強い悪でも立ち向かえる勇気をもった、そんな人です!」

「…じゃあさ、今のアタシは…果穂のヒーローになれてるか…?」

「えっと…はい!樹里ちゃんは、平和を守るために頑張った、最高のヒーローです!」

「…そんじゃさ、そのヒーローが…必ず戻るって言ってんだ…信じて…くれねぇか…」

「あぅ…」

果穂はしばらく逡巡した後、決心をした。

「…約束です樹里ちゃん!絶対、ぜーったい!帰ってきて下さい!」

「当たり前だろ…」

「じゃあ、先に戻ります!」

そう言って果穂はノクチルを離れ、アルストロメリアに向かうのだった。

時々不安そうにノクチルの方を振り返りながら。

 

「………悪ぃ果穂、騙しちまって…ゲホッ!」

口に当てた手は、血糊で赤く染まっていた。

冬優子に負わされた腹部の傷は、内臓に達していたのだった。

自分の命はもう長くない。

樹里は覚悟を決め、アルストロメリアに通信を送った。

「…千雪さん、聞こえるか?」

「樹里ちゃん?何があったの?反応から果穂ちゃんはこちらに戻ってきてるみたいだけど…」

「ああ…こっちはチョコと凛世の仇を取った…それに船の主砲は使えなくしたし、内部にもダメージは与えられたはずだ…」

「そう…お疲れ様。本当に…本当に良くやってくれたわね…」

「ただアタシはドジ踏んじまってさ…ゲホッ!」

「樹里ちゃん!?」

「ハハ…情けねぇ…アタシはどうやらここまでだ。それで…」

「樹里ちゃん!もう喋らないで!すぐにアルストロメリアを助けに向かわせ…」

千雪の言葉を遮るように、樹里は続けた。

「最後に…花火、上げっから…その隙に主砲で決めてくれ。」

「………」

千雪は樹里の言葉に、救助はもう間に合わないという事を悟った。

「それと………」

「何?」

「最後の我儘です。果穂を…頼みます。」

その言葉に、口元を押さえ涙ぐむ甜花と甘奈。

「………了解。」

樹里の悲壮な決意に対して、千雪はそう答える事しかできなかった。

 

樹里は機体を這いずるように動かし、引きちぎられた左腕のライフルを右手に持った。

果穂が内部でさんざん暴れてくれたおかげで、この船は現在の高度を維持するので精一杯のようだった。

なら狙うのは敵艦の動力部、エンジンを一つでも破壊できれば完全に動きを止められるはずだ。

事前に咲耶たちから渡されたノクチルのデータを開く。

現在地から最も近いエンジンは、カタパルトの奥、そのすぐ下にあった。

メインカメラは破壊されていたため、樹里はハッチを開けた。

遠のく意識を必死に繋ぎ止め、機体を這わせながらその場所まで進む。

わずか数十メートルの距離が、気の遠くなるほど長く感じた。

体力は既に限界を超えていた。

血の気は引いており、もはや死者のような顔色になっていた。

「うあ…もう…」

気を失いそうになった時、通信機から甘奈の声が聞こえた。

「果穂機、着艦完了しました。」

ああ、アイツ無事に帰れたんだな。

その安堵は、樹里に最後の気力を絞り出させた。

「アタシは…!アイツの…!ヒーローなんだからさ…!」

とうとうライフルがエンジンに届く位置に到達した。

「諦めねえ…!」

姿勢を整え、エンジンに狙いを定める。

「…なぁ夏葉、アタシ頑張ったよな…そっちでちゃんと褒めてくれよ。」

そして放たれたライフルはノクチルのエンジンを貫き、樹里機を包み込むようにして爆発した。

 

「敵母艦、左舷底部より爆発を確認!」

甘奈の報告に、樹里の命が散ったことを知るブリッジの面々。

千雪から樹里の遺志を伝えられていた果穂は、絶叫した。

 

「樹里ちゃーーーん!!!」

 

~ ~ ~

 

「アルストロメリアの全エネルギーを主砲に!発射準備!」

「エネルギー充填完了、主砲発射できます!」

樹里の命は無駄にしない。

千雪は自分に縋り付き泣き続ける果穂を抱きしめた。

この世界を守るためにも、これで終わらせる。

「甜花ちゃん、いけるわね?」

「うん…甜花、やってみせる…!」

アルストロメリア主砲の照準をノクチルに合わせる甜花。

敵は動けない。

そしてこの距離なら絶対に外さない。

千雪は意を決して発令した。

「主砲、発射!」

「発射…!」

甜花はトリガーを引き、アルストロメリアの全エネルギーを込めた主砲が放たれる。

それは一直線にノクチルに向かった。

しかし直撃すると思った瞬間、下から強大なエネルギー波が上りノクチルを包んだ。

「!?」

そのエネルギー波はアルストロメリアの主砲を弾き、ノクチルは直撃を免れた。

「何で!何が!?」

「あうぅ…」

当初呆然とした甘奈もすぐに解析を行い、その結果を報告した。

「エネルギー波は敵艦下方、クレッターグルストより放たれたものと推測されます…」

「そんな…!」

しかしそれが現実だった。

透はノクチルの危機を察知したのだ。

そして集めたエネルギーによりノクチルの周囲に防護幕を張り、見事に主砲直撃を回避させたのだった。

「ここまで来て…こんな事って…」

千雪は手札が尽きた事を知った。

 

「全く、任された仕事はちゃんと果たして欲しいものだね。」

透は誰に聞かせるわけでもなくぼやいた。

しかし危機は回避された。

クレッターグルストのエネルギーは使い切ってしまったが、また集めれば良い。

その材料はいくらでもある。

敵艦もあのエネルギー放出量ならおそらく次はない。

もう敵に自分たちを止める余力は残されていないと確信した。

 

「千雪さん…」

「千雪しゃん…」

甘奈と甜花が不安そうに千雪を見つめる。

最後の賭けに負けたのだ。

もう自分たちにチップは残されていない。

絶望に近い感覚に襲われながら、千雪は前を向く。

その先にあるジュエル反応板が、虚しく5つの光を輝かせていた。

光…命…真乃ちゃん、灯織ちゃん、果穂ちゃん、そして…

「いえ、まだよ。」

千雪は最後に残されていたチップを思い出した。

 

「これから艦長として最後の命令を行います。」

「?」

「総員、避難艇に移動。アルストロメリアを離脱して下さい。」

「千雪さん!?」

「アルストロメリア…捨てちゃうの…?」

「ううん、違うわ。」

千雪はできるだけ優しく答えた。

「この子には、最後にもう少しだけ頑張ってもらうの。…私と一緒に。」

「え…」

「それって…」

「私はね、ずっと自分を責めていた…前線で戦って、亡くなっていく皆を見る度に、こんな戦いに巻き込んでしまった事を…何もできない自分の弱さを…」

「…」

「けど、分かったの…私がここまで生き残ったのは、きっとここで私の命を使って、彼等を止めるためなんだって。」

「!」

「…責任、とらなくちゃ。だって私は…皆のお姉さんなんだから。」

震える身体を抑えるように、千雪は自分の身体を抱き締めた。

「やだ、千雪さん死んじゃやだ!残るなら甘奈も残る!」

千雪の意図を理解した甘奈が泣きながら縋りつく。

「ごめんね甘奈ちゃん…これは私の、私にしかできない仕事。」

その甘奈の頭を優しく撫でながら、千雪は呟いた。

「それと、私からの最後のお願い。」

涙で滲む甘奈の目を見ながら、千雪は言った。

「生きて。…生き抜いて。」

「千雪さん…」

甜花と果穂を手招きし、全員を抱き締める千雪。

「千雪しゃん…甜花、役に立てずごめんね…」

「ううん、甜花ちゃんがいっぱい頑張ってくれていた事、知ってるわ…」

「千雪さん…あたし、あたし…もう誰も死んでほしくないです…!」

「果穂ちゃんは本当に優しい子ね…その優しさがあれば、果穂ちゃんはいつだってヒーローだからね…」

全員への別れを終えると、千雪は年長の甜花に皆を託した。

「皆をお願いね、甜花ちゃん。」

「…分かった、甜花たち…生きる。生き残って…みせるね。」

「やだ!千雪さん!」

それでも耐えられず叫ぶ甘奈を抱いて、甜花は果穂と避難艇へ移動した。

 

避難艇が離脱した事を確認すると、千雪はアルストロメリアに語りかけた。

「今までありがとう…それと…こんな最後にさせちゃって…ごめんなさい。」

誰もいなくなったブリッジは、こんなにも静かなのか。

千雪はそう思いながら、これまでの賑やかだった時のブリッジを思い起こしながら甜花の使っていたヘッドギアを着けた。

「人の思いに応えるのがジュエルなら…お願い、私の最後の思いに応えて…!」

そしてもはや誰一人クルーのいないブリッジで、千雪は発令を行った。

「アルストロメリア、機関最大!目標、敵母艦ノクチル!」

それに応えるように、アルストロメリアは残っていたエネルギーを振り絞り発進を開始した。

 

~ ~ ~

 

「敵艦が動いてる?あれで終わりなんじゃ…」

ノクチルの小糸はモニターに映るアルストロメリアを確認して驚いた。

こちらの損害は大きい。応戦しようにもストレイライトの2人の反応はない。

最初に樹里たちの奇襲により主砲を破損した事が、ここに来て響いている。

「と、透ちゃん!敵艦が近づいて来る!ど、どうしよう!」

「まさか、体当たりするつもりか。」

「小糸、迎撃はできないの?」

円香の問いかけに小糸は答える。

「うう、し、主砲はやられちゃったし、ス、ストレイライトの2人も…た、対空砲だけじゃあの大きさは止められないよぉ。」

「雛奈、こいつらの相手は私がするから、貴女の砲撃であれを止めてきて!」

「え~、この人たちしつこいから~、ちょっと無理かも~」

「時間がないのよ!」

苛立ちを抑えられず咲耶機に斬りかかるも、相手はクレッターグルストの構造を逆手に取って立ち回る。

こちらは下手にクレッターグルストを損傷させる訳にはいかない。

防衛戦とはここまでやりにくいものなのか。

円香は今更ながらここまでの侵入を許した自分の不甲斐なさに舌打ちした。

 

「わ、こ、来ないでぇ!」

ノクチルの小糸からはもはや目視ができるほどアルストロメリアは接近していた。

必死に対空砲を放つも、小口径のそれらではアルストロメリアを止められない。

回避しようにもエンジンの半分は壊されており、浮遊するので精一杯だった。

「小糸、敵艦の位置は?」

透から通信が入る。

「め、目の前!えっと、こ、こちらから見て…3時の方向!距離1000!」

「分かった。」

そう言うと透は真乃と灯織の機体から距離を取り、その大型ライフルを天に向けて発射した。

「きゃああ!」

雲を突き抜け、アルストロメリアの底部に透のライフルが直撃した。

艦が傾くアルストロメリア。

しかしその進みは止まらない。

「まだか。それならもう一度!」

「させない!」

上空に意識を奪われた隙に、灯織機の接近を許す透。

「今は君たちの相手をしてる時間じゃないんだ。」

それを遠隔ライフルで迎撃する透。

「それはそちらの都合よ!」

灯織は新装備の展開式装甲を開き、ライフルの直撃を防ぐ。

「全く、どうしてそちら側の人たちは命を無駄遣いしたがるのかな。」

「他人の命を何とも思っていないような人が…言う事か!」

透機に斬りかかる灯織。その後方から援護射撃を行う真乃。

「無駄遣いじゃないさ、このシステムに吸い取られた命は、私たちがちゃんと活用させてもらうよ。」

遠隔ライフルを駆使して灯織機に応戦する透。

「そんな理屈!」

咄嗟に回避しながら追撃を行う灯織。

攻防は一進一退だった。

その様子を見て、真乃は透たちを追い越しさらに上空へと羽ばたく。

「灯織ちゃん、しばらくお願いっ!私が千雪さんを助けてくるっ!」

「了解!任せて!」

「美しい友情だね。けど友を過信するのはどうかな。」

遠隔ライフルをさらに放出し、灯織を囲むように連射する透。

「うあっ!」

展開式装甲の隙間から左足部を撃ち抜かれた灯織は態勢を崩す。その隙を透は見逃さなかった。

「これで終わりさ。」

再度天に向かって放たれる大型ライフル。

「終わらせないっ!」

それを真乃のエネルギーシールドが防ぐ。

「防ぐのか、これを!?」

真乃の思いの強さはそのまま、エネルギーシールドの出力を想定以上に上げていた。

「ぴゃああ!!!」

「!?」

次の瞬間、轟音とともにアルストロメリア艦首はノクチルの艦橋に衝突した。

 

「千雪さん!千雪さん!聞こえますか!」

必死に通信機に話しかける真乃。

しばらくの間をおいて、画面に血まみれの千雪が映った。

「あ、千雪さ…ああ!」

「…真乃ちゃん、ありがとう…ここまで私と…一緒に戦って…くれて…」

「そんな事っ…!」

「真乃ちゃん…最初に会った時の話………覚えてる?」

「千雪さん、今助けに…!」

「この世界は好きかどうかって…今なら答えられる?」

「千雪さん!」

「私はね…あの時本当は答えなんて持ってなかった…だってこの世界は今でも気持ちのすれ違いから…憎んだり…争ったり…」

機体を全速力でアルストロメリアに向かわせる真乃。

「…でもね、今なら言える。好きだって。大好きだって。」

真乃のモニターにようやく大破したアルストロメリアが映る。

「だって…この世界は…こんなにも皆の笑顔で…輝いてたんだから…」

「千雪さ…」

「この世界を…守ってね。」

そして爆音が鳴り響き、アルストロメリアはノクチルと共にその姿を崩壊させていった。

 

~ ~ ~

 

「やってくれたね。」

透はこれまで経験した事のない苛立ちを感じた。

自分の理想を実現するための両輪のうちひとつが、古い人間と見下していた連中に破壊されたのだ。

「小糸…そんな…!」

「え~もしかして小糸ちゃん死んじゃったの~?かわいそ~」

動揺する円香と口調からはその感情が読み取れない雛菜。

「どうやら上は上手くやってくれたようだね。なら後はこちらの仕事をするまでさ。」

「りょうかーい!」

咲耶と結華は動きの鈍った円香機に狙いを絞り、その連携で徐々に追い詰めていった。

「こいつらっ!」

円香はエネルギーソードを持つ両腕を分離させ、遠距離から狙撃してくる咲耶に向かって放つ。

「その手はもう食わないよ。」

しかし咲耶には一度見せた技であり、冷静に対処すれば問題ない攻撃だった。

「鷹の目」で腕の動きを予測し、一つずつ狙撃する咲耶。

「さっすが!手だけにって上手い事言うねさくやん!」

冗談を混ぜながら円香にライフルを放つ結華。

「くっ!」

気が付けば格下のはずの2機に圧されている状況は、円香に冷静さを取り戻させる妨げになった。

「どうして貴方たちは戦うの?折角拾った命なんだから、こそこそ生きれば良かったものを!」

そんな円香の問いに咲耶は答える。

「君達は摩美々、霧子、恋鐘の命を汚した。それが戦う理由さ。」

「くだらない、感情に支配された古い人間の発想ね。」

円香は吐き捨てる。

「じゃあさ、その古い人間に圧されてる新人類のお二人って、今どんな気持ち?」

結華が煽る。

「くっ!防衛戦じゃなければ…こんな旧型機に!」

「雛菜この人たちきら〜い!いなくなっちゃえ〜!」

「雛菜!?」

雛菜は両手の大型エネルギー砲を合体させると、クレッターグルスト内にも関わらずその大出力で咲耶たちを砲撃した。

「やばっ!」

「そう来るか。」

咄嗟に回避するものの、その威力は掠めただけでも機体にかなりの損傷を与えた。

同時にクレッターグルストにも小規模な爆発が起こる。

「まさか構造物内なのもお構いなしとはね。」

「雛菜!どういうつもりなの!」

「え~だって~壊れたらまた治せばいいし~」

「そういう問題じゃない!」

「も~円香先輩のそういうとこきら~い、透先輩なら笑って許してくれるのに~」

そんな言い争いをする2人を見て、咲耶は結華に話しかける。

「どうやらあちらのコンビはあまり仲がよろしくないようだね。」

「つまり…そこにつけ入る隙がある…とか?」

「試してみよう。」

 

結華との相談を終えると、再度交戦を開始する咲耶。

二人はクレッターグルストの外へと飛び出した。

「あれ~逃げた~?」

「いや、何か考えがあるんでしょうけど…追うわよ!」

実際に外での戦いはこちらも歓迎したいところだ。

何か策があるかも知れないが、内部で戦うより外の方が力でねじ伏せられると考えた円香は咲耶たちを追う事にした。

しかし戦況は円香の思うようには進まなかった。

円香機に対してライフルの距離で応戦する結華と、雛菜とかなり距離を開けながら牽制する咲耶。

「この〜!」

雛菜は砲撃を行うも、咲耶の機体スピードに追いつけず遥か後方に着弾する。

「結華、カウント開始だよ。」

「オッケー!」

予めセットしていたタイマーを起動する2人。

 

『あの砲撃、チャージまでどれくらいかかるか分かるかい?』

『ちょっと待ってね〜っと…えーっと……約60秒…ありゃ?』

『?』

『良く見たらほぼ毎回60秒おきに撃ってるね〜。』

『随分こらえ性の無い子のようだね。けどそれなら好都合さ。』

 

「も〜早く溜まってよ〜」

咲耶の攻撃を避けながらエネルギー砲のチャージを待つ雛菜。

その間も円香は結華に接近戦に持ち込もうと迫るが、ギリギリの所で距離を取られての繰り返しだった。

「10、9、8、7…」

咲耶は雛菜を中心とした同心円上の軌道で大きく旋回する。

徐々に速度を落としながら。

「4、3、2、1…」

「あれ〜、速度落ちてる〜?やはっ、それなら当てられる〜!」

「ゼロ!」

旋回する咲耶機に合わせながら回転しつつ照準を合わせた雛菜は、必中を確信した砲撃を行う。

その射線上に円香機がいると思わずに。

激しい爆発音。

「雛っ…菜あ!」

「えっ…うそ〜…円香先輩鈍臭すぎ〜」

咲耶たちの作戦は見事に成功した。

おそらくろくに連携をとっていない相手なら、其々の位置を把握していないのではないか。

ならその砲撃タイミングの射線上に6本腕をおけば、砲撃のタイミングをずらせるか、上手くすれば同士討ちが狙えるかも知れない。

その結果は予想以上だった。

 

〜 〜 〜

 

爆炎を上げながら海上へ落下していく円香機。

念の為望遠で撃破した事を確認しようとした咲耶は、その腕が2本しかない事に気付く。

「結華、気をつけて!」

「えっ?」

次の瞬間、円香が撃たれる直前に分離させた腕のエネルギーダガーが、結華機を貫いた。

「!」

即座に円香機を狙撃する咲耶。

「透…ごめんなさ…」

その言葉を終える前に、円香機は咲耶のライフルにより爆散した。

「結華!」

しかし咲耶の呼びかけに返答はなく、結華機はそのまま海上へと落ちていった。

「…結華、君まで…」

本当ならすぐに結華機の回収に向かいたかった。

しかし、恋鐘の仇はまだあと一機残っていた。

「…少し待っていてくれ、すぐに迎えに行くから。」

 

再びクレッターグルスト内へ侵入する咲耶。

「も~出たり入ったり何なの~」

それを追いかけた雛菜は、内部に入ったところで異変に気付く。

「あれ~、どこに行ったの~?」

内部に咲耶機の気配はなかった。

目視だけでなくレーダーでも確認するが、その存在は確認できない。

「え~ウソ~消えちゃった~?」

隠れられるような時間差ではなかった。

しかし煙のように消えていた事実は、雛菜を徐々に不安にさせた。

「も~出てきなさいよ~いくじなし~!」

もちろん咲耶は消えた訳ではなかった。

はづきが本来ならめぐる機のために用意した決戦用追加機能「オウルモード」を使っていたのだ。

自機は光学迷彩により目視では捉えられず、またレーダー対策のステルス性能もあるため知らなければまず見つける事ができない。

これまでの戦いなら、咲耶はこの機能を使うつもりはなかった。

それは戦いに誇りを重んじる咲耶のポリシーに反していたからだ。

しかしこの相手は別だった。

恋鐘を背後から不意打ちで撃墜したこの敵に対しては、一切の情けは必要ないと考えた。

「恋鐘の無念、ここで晴らしてみせるよ。」

咲耶は雛菜機の頭上から狙いを定めた。

しかしその瞬間、クレッターグルストの上部で爆発が起こる。

「!?」

思わず姿勢を崩し、壁にぶつかる咲耶。

「あはっ、そこにいた~!」

「くっ!」

咲耶のライフルと雛菜の砲撃はほぼ同時だった。

「ぐあっ!」

「やはっ!」

双方の機体から爆発が起きる。

どちらも直撃だった。

「………はっ!」

咲耶が意識を取り戻す。

数秒か、数分か、気絶していたようだった。

「ぐっ…」

かなり強く頭を打ったため、まだ意識が朦朧としている。

額に手を当てると、血糊がついた。

「…敵は…」

幸いモニターはまだ生きていた。

状況を確認すると、今まさに敵機も動き出そうとしていた。

「………動け、動くんだ…」

身体が重い。

咲耶は頭部に重傷を負っていた。

だが、ここで動かなければやられる。

この敵だけは何としても倒さなければ、恋鐘たちの魂が浮かばれない。

「皆…私に…力を………!」

必死の思いでコントロールグリップを握ると、敵機への狙いをつけようとする。

「…!」

しかしあろうことか、自機の大型ライフルは先程の砲撃で壊されていたのだった。

「…ふふっ、ははは。」

何故か笑いが込み上げてきた。

だが、諦めた訳ではなかった。

咲耶は半壊した機体を動かすと、同じく半壊したライフルを掴んだ。

「…持ち主には悪いけどね。」

そして敵機に向かうと、そのライフルを鈍器として雛菜機に叩きつける。

「ぎゃっ!」

雛菜は悲鳴をあげる。

「…きら~い、きらいきらいきら~い!」

雛菜機は腕を回して暴れる。

それはこれまでのスマートとも言える咲耶の戦いとはほど遠い、泥試合のような様相だった。

揉み合うように殴り合う2機。

「あっ!」

その最中、雛菜は遠隔エネルギー砲がまだ一門使える事に気付いた。

「それなら~これで~」

意志を振り絞りエネルギー砲を射出する雛菜。

「消えちゃえ~!」

咲耶機の頭上から狙いを定める。

しかし雛菜は遠隔エネルギー砲の操作に意識を集中しすぎたため、咲耶機の挙動への注意を疎かにした。

逆に咲耶は敵の動きが鈍った事で、その狙いに気付く。

「ダンスは好きかい、お嬢様?」

「!?」

雛菜が止めの一撃を放つとほぼ同時に、咲耶機は雛菜機の両手を握り、そのまま後退した。

丁度ダンスでバックステップをするように。

エネルギー砲は態勢を崩した雛菜機の頭上に降りかかり、そのまま雛菜機は咲耶機を巻き込みながら爆発したのだった。

 

〜 〜 〜

 

「灯織ちゃん…私…また間に合わなかった…」

「真乃!?」

消え入りそうな真乃の声に対して灯織は呼びかける。

「千雪さん…敵艦に…」

真乃の言葉から、空から鳴り響く轟音の原因を察する灯織。

「…でもこの巨大構造物、停止したようには見えない…どうなって…!?」

聞いていた話と違う現状に戸惑う灯織を透のライフルが襲う。

「くっ!」

灯織は装甲を使い透の大型ライフルを防ぎながら、剣で遠隔ライフルを斬っていった。

「真乃!まだこの構造物は動いてる!おそらくあのIDOLLがコントロールしてる!」

「!?…分かった、すぐ行く!」

消去法で推測した灯織の予想は当たっていた。

「やってくれたね。」

透は苛立ちを感じながら灯織に向けて遠隔ライフルを放った。

万が一に備えてクレッターグルストの予備制御システムを自機に搭載していたが、それを使う事態は想定外だった。

「君達は頑張りすぎだ。もうこれ以上のイレギュラーは要らない。」

遠隔ライフルを巧みに操り、剣の間合いに入らせない透の技術は灯織を寄せ付けなかった。

「自制できない人間たちの貪欲さがここまで地球を追い詰めた。だからこの先は感情や欲望を完全に制御できる意志の強さを持つ者たちで、この星を守る必要がある。そう思わないかい?」

灯織を攻撃しながら透は自説を述べる。

「完全な人間なんていない!だから!私達は!」

必死に遠隔ライフルの攻撃を躱す灯織。

そこに頭上から真乃が舞い降りてきた。

「…お互いを信じて、助け合って…今日より良い明日を…皆で作るんですっ!」

片手剣で透機に攻撃する真乃だが、透はそれを躱すとライフルの柄で真乃機を打ち据える。

「きゃあっ!」

「真乃!」

態勢を崩した真乃に透の遠隔ライフルが襲ったが、駆けつけた灯織が展開式装甲で防いだ。

「他人という不確定要素に頼る時点で根拠のない空論だね。それはただの妄執だよ。」

さらに追撃を加える透。

「なら私達が貴方に勝って…それを証明してみせます!」

透の攻撃を防ぐ灯織の後ろで真乃は態勢を立て直すと、再度透への攻撃を試みた。

 

攻防は続いたが、2対1にも関わらず透機はその武装と威力、精度で真乃達を圧倒していた。

「隙がない…!」

「なら作るしかない!真乃、私が前に出て遠隔ライフルを引き付けるからそれを撃ち落としていって!」

「灯織ちゃん、それは危な…」

「仲間を信じるってさっき言ったよね…私も真乃を信じてるから、真乃も私を信じて!」

灯織の口調は優しく、力強かった。

「…分かった、絶対に2人で帰ろうね。」

「うん…行くよ!」

灯織が突進する。

「こちらの予想の範疇だけどその作戦で良いのかい?」

透は遠隔ライフルを射出し灯織を囲い込むように撃った。

「この程度で…!」

灯織は見えるものは躱し、死角は展開式装甲でカバーしながら透機へ迫った。

「このっ!」

真乃は遠隔ライフルを狙うが、不規則な動きを捉えきれず落とせない事に焦っていた。

「当たらない…!どうすれば…!」

『焦っては…なりません…』

「!?」

その時真乃の頭に懐かしい声が聞こえた。

『時には…相手の立場になって…考えるのです…そうすれば…活路が…』

「凛世ちゃん!?」

そこには居ないはずの凛世の姿が、真乃には見えた。

「相手の考え…どこを攻撃するつもりなのか…すぅー…はぁー…」

真乃は深呼吸をして透の立場をイメージした。

「………そこっ!」

真乃は予測した位置にライフルを放った。

それはまるで予定調和のように、透の遠隔ライフルの移動先と重なり命中した。

「何っ!?」

続けさまに二発、三発。

それらは見事に透の遠隔ライフルを撃破するのだった。

「馬鹿な…先程とは別人なのか?なら…!」

透はさらに遠隔ライフルを射出し、大きく旋回させると今度は遠距離から真乃を狙った。

『真乃ちゃん、周りを見て!』

「智代子ちゃん!?」

真乃は咄嗟にモニターで周囲を見回した。

灯織の周りしか注意していなかったら気付けなかった位置の遠隔ライフルがそこにはあった。

すぐにそれらを撃ち落とす真乃。

「どうなっている…あのパイロット、本当に一人なのか?」

『真乃、油断しないで。倒したと思った時が一番危険なのよ。』

「夏葉さん!?…はい!」

もう一度遠距離からのライフルを確認すると、落ちていった一つが灯織を狙っていた。

落ち着いてそれを狙い撃ち、今度は確実に破壊した。

「ありがとう真乃…これで届く!」

灯織の剣が透を捉える。

「だがここまでだ。」

奥の手であるバリア発生器により透機の周囲に強力なエネルギー膜が張られ、灯織の斬撃が弾かれた。

「な!?」

次の瞬間、透機の肩部からせり上がった拡散エネルギー砲により灯織機は破壊された。

 

「灯織ちゃん!」

真乃は落ちていく灯織機に全速力で駆けつける。

「そうやって感情に任せ目的を見失うから、君たちは進歩しないんだ。」

透の遠隔ライフルが真乃を襲う。

「邪魔しないで!!!」

それらをエネルギーシールドで防ぎながら、真乃は灯織機を捕まえると、クレッターグルストの上に着地した。

「灯織ちゃん!」

すると真乃はコクピットを開き、灯織機のコクピットハッチに飛び移った。

「正気か?」

透は驚きを通り越して呆れた。

「灯織ちゃん…!」

真乃は必死に非常解放レバーを動かし、そしてハッチをこじ開けた。

「灯織ちゃん!返事して!」

「…真乃?」

灯織は負傷していたものの、命に別状はなかった。

「良かった…!灯織ちゃん、こっちに!」

気を失っていた灯織は現状を認識すると、真乃に手を伸ばした。

「全くよくやる…だけどそれを待つほど私は甘くないよ。」

非情にも透は真乃たちに遠隔ライフルの狙いをつけた。

「!?」

その敵意を感じ取る真乃。

『大丈夫だ真乃、これまでずっと一緒に戦ってきたんだろ?信じろよ…自分の機体を。』

「樹里ちゃん!?」

『今度こそちゃんと掴めよ…大切な友達の手を…』

真乃は頷くと灯織の方に向き直り、その手を握り締めると灯織の身体を引き寄せた。

「お願いピーちゃん!私達を守って!!!」

真乃が叫ぶ。

その瞬間、真乃の3号機のカメラアイが光った。

そしてエネルギーシールド発生器が両腕から外れると、それらはまるで意志を持っているかのように動き、透の遠隔ライフルの攻撃を防ぐのだった。

「まさか!?コクピットの外から操作しているのか!?」

透は驚嘆した。

「…ふふっ、ははは!全くどこまでもこちらの予測を超えてくれる!」

透はその時初めて楽しいという感情に気付いた。

それはこれまで何もかも自身の想定内であった透にとって、未知の感覚であった。

 

~ ~ ~

 

真乃と灯織が無事に真乃機のコクピットに乗り移ると、灯織機は小さな爆発を繰り返し、そして落ちていった。

「ごめん…今までありがとう…私の1号機…」

灯織が呟く。

「決着をつける…!灯織ちゃん、しっかり掴まって!」

真乃は頭上の透機を睨んだ。

「行くよ!」

真乃は透機に向けて突撃した。

「来なよ!」

透は残った武器を全て使い迎え撃つ。

真乃は必死で躱すが、透の苛烈な攻撃に被弾は避けられなかった。

片手片足を吹き飛ばされて真乃機の速度が落ちる。

「くうっ…!」

『真乃ちゃん…思いの強さが…ジュエルの、機体の力になる…自分を…信じて…』

「霧子ちゃん!?」

「真乃?」

真乃には見える霧子の姿が灯織には見えず、灯織は不思議そうに真乃を見た。

「…そうだね…皆が信じてくれた私を…私は信じる!」

真乃の意志の強さに応え、主推進器から大量の余剰エネルギーが噴き出す。

それはあたかも輝く翼のようになって、真乃機の限界を越えて加速させた。

「ふふっ、何だいそれ!何だいその速さは!」

透の予測でも真乃機は捉えきれなかった。

透の遠隔ライフルを撃ち落としながら真乃は透に迫る。

「けどそう簡単には!」

透はバリアを発生させた。

「行って!」

「!?」

真乃はエネルギーシールド発生器を透機に向けて射出した。

真乃の2枚のシールドのエネルギーは透のバリアと反発し合い、そこに隙間ができた。

「なら!」

透は拡散エネルギー砲を構える。

「それにはぁ!」

真乃は遠隔小型ライフルを射出し、直接透のエネルギー砲にぶつける。

「何っ!?」

ライフルの爆発に動揺した透に一瞬の隙が出来た。

「ここで…決めますっ!」

真乃は片手剣を透機の装甲に突き立て、その隙間からライフルを撃ち込んだ。

「ぐわあああっ!」

透機が爆発した。

 

「終わった…」

真乃はクレッターグルストの上に落ちた透機を見ながら呟いた。

「ああ…終わりだね…人類の未来が…」

「!?」

透の返答に合わせるように、クレッターグルストが禍々しく輝きだした。

そして外装が解けるように外れると、中から巨大なフェザージュエルが姿を現した。

「何?まだ何か企んでるの?」

灯織が問う。

「…私の機体が破壊された事で、クレッターグルストはコントロール不能になった。もうこれを止める術はない。…地上のあらゆる意志エネルギーを吸い尽くすまでね…」

「そんな…!」

「もしかしたら…連盟はここまで織り込み済みだったのかもね…ふふっ、彼らの一人勝ちというのは…不愉快な結末だが…」

「そんな事はさせない!!!」

真乃は自機を巨大なジュエルに取りつかせた。

「何をするつもりだ?この大きさのジュエルは、IDOLL1機で破壊できるものでは…」

「できるとかできないとか…そんなの関係ない!私は約束したから…千雪さんと…この世界を守るって!」

「真乃…」

「うわああああ!!!」

地上に落ちていくジュエルを必死に押し上げようとする真乃。

機体の背中から輝く翼が広がったが、その出力をもってしてもジュエルの質量を押し戻すのは難しかった。

「無意味な努力…どこまで愚かしいんだ…君たちは…」

「無意味なんかじゃない!」

灯織がグリップを握り締める真乃の手に自分の手を重ねる。

「灯織ちゃん?」

「やるよ、真乃!」

「………うん!」

灯織の思いが加わり、更に出力を上げる真乃機。

「………君たちを…そこまで駆り立てるのは何なんだ…」

呼吸が浅くなりながらも、透は尋ねた。

「…守りたい人がいる…大切な人がいる…大好きな人がいる…それが…理由です!」

「…なんだいそれ………ふふっ…思えば私には…そんな人がいなかったのかも…」

「うあああああ!!!」

真乃たちは声をあげて羽ばたこうとする。

「………ジュエルにはどこかにコアがある…それを破壊すれば…砕け散るはずさ」

「!?」

「ふふっ…最後まで…見られないのは残念だけど…せいぜいやってみなよ…」

そう言い残すと透機はクレッターグルストの残骸とともに落ちていき、やがて爆散した。

 

「コア…けど一体どこに…」

「分からない…どうやって見つければ…」

真乃と灯織は必死でモニターを見る。

しかしコアと思えるような部位は見当たらず、焦りばかりが募っていった。

「分からない…分からないよ…!」

真乃は泣きそうになりながら探す。

「ここまで来て…諦めるなんて…そんなこと!」

灯織はあまりの手がかりのなさに、心が折れそうになった。

『諦めないで』

「!?」

千雪が2人の眼前にいた。

『目で見えるものが全てじゃない…あのジュエルは人の意志を吸い取る…それが一番強い部分を感じて…2人、ううん…貴方たち3人ならきっと…』

「3人…」

真乃の隣にはめぐるがいた。

『やろう、真乃、灯織…できるよ、私達3人なら。』

「めぐるちゃ…」

「めぐる…!」

真乃と灯織の目から涙が零れた。

「…そうだね、やれる…一人じゃできなくても…私達、イルミネーションスターズなら…」

「3人なら…やってみせる!」

真乃と灯織、そしてめぐるは目を閉じ、意識を集中させた。

しばらくして3人はその意識を吸い取ろうとする中心点を感じた。

『「「あそこだ!」」』

そこをめがけて羽ばたく真乃機。

コアに取りつくと、ライフルの銃口をそこに押しあてた。

「お願い!砕けてえええ!!!」

3人の意志の力を一撃に込め、ライフルを放つ。

それはコアを貫き、そして巨大なフェザージュエルは砕け散った。

その大量の破片は真乃機から噴き出す余剰エネルギーと反応し、空に巨大な光の翼が広がった。

 

~ ~ ~

 

無数の光の羽根が海上に、地上に降り注ぐ。

それはクレッターグルストに意志の力を吸い取られた関係機関のスタッフたちに当たると、彼らの意識が戻っていくのだった。

『お疲れ…真乃…灯織…私…いつも見守ってるよ…2人のこと…』

「めぐる!」

「めぐるちゃん…!」

めぐるは微笑みながら光の中に消えていった。

真乃と灯織はめぐるがいた場所をしばらく見て、そして抱き合った。

「やったね…灯織ちゃん。」

「うん…やったよ…真乃。」

そして2人は水平線に沈んでいく夕陽を眺めた。

それは世界を美しい茜色で染め上げていく光だった。

 

「風…感じたいから、ハッチ開けるね。」

「うん。」

コクピットのハッチを開き、しばらく夕陽の輝きと潮風を感じていた2人。

「あっ」

すると灯織が視界の端に何かを発見した。

「真乃…あれ!」

灯織が指す方を真乃はサブモニターの望遠で見てみると、そこには真乃たちに気付いた避難艇の甘奈たちが涙を浮かべながら手を振っていた。

「…帰ろう、皆のところへ。」

真乃は微笑みながら言った。




エピローグ

『拝啓 めぐるちゃんへ』

真乃はまだ朝も早い時間の電車に乗っていた。

『早いもので、あれから一年が経ちました。
 こちらは初夏の日差しが眩しい季節になりましたが、そちらはどうですか?』

窓の外の景色を眺める真乃。

『私達のあの戦いは、結局連盟側の重大な規約違反という事で、連合側の勝利という結果になりました。
 元々この星の支配ではなく地球人の意志の力を欲しがっていた連盟は、これ以上連合と干渉権について争うつもりはなく、地球から撤退していきました。』

電車からバスに乗り換える真乃。

『難しい事はよく分からなかったけど、偉い人たちが話し合ってこの世界は連合の助けを借りながら、このまま私たち人類でより良くしていこうという結論になったみたいです。
 ただIDOLLやジュエルの事は、悪い人たちに知られるといけないのでこれからも口外禁止という事でした。
 何だか私たちの戦いが誰にも知られず無かった事にされたみたいで、それはちょっと寂しいかなと思いました。
 ここまでがはづきさんから聞いた、この戦いの結末です。』

その頃はづきは、千雪の墓に手を合わせながら微笑んでいた。
立ち上がるはづき。
この結末を伝えに行く先はまだまだあった。

一方真乃の乗ったバスは山道を進んでいく。

『あっそうそう、実はね、私この前からアイドルになったんだよ!
 私たちが乗ってたあのロボットの事じゃなくて、テレビに出たり、コンサートをしてるあのアイドル!
 公園でいつもみたいに鳩さんたちとぼーっとしてたら、変なお兄さん…って言ったらだめだけど、その人に声をかけられてね。
 私の笑顔と歌声はきっとたくさんの人を幸せにできるって言われて、それでいつの間にかアイドルをする事になって…今でもあんまり実感ないけど、とにかくアイドルになったんだよ。』

真乃は現在駆け出しアイドルとして、商店街の片隅にプロデューサーと一緒に空ケースで作った即席舞台の上で、拙いながらも懸命に歌い、見に来た老人や子供たちに笑顔で手を振る日々を送っていた。

『今はまだデビューしたばっかりで全然だけど、これから私の笑顔と歌声で、皆を幸せにできるよう頑張るから…めぐるちゃん、見守っていてね。』

バスから下りた真乃を、灯織、果穂、甜花、甘奈、結華が出迎える。

「みんな、久しぶり。」
「お久しぶりですっ!」
「元気そうで良かった。」
「あの…甜花、誘ってくれて…ありがと。」
「甜花ちゃん最初は登れるかすごい心配してたんだよね~☆」
「ひぃん…正直…まだ自信ない…」
「ていうか私まで声かけてくれるとか、真乃ちゃん良いアイドルになれるよ~」
「えっ、なんでその事…」
「結華さんってそっち方面詳しいらしくて、すごいよね真乃。」
「ほわっ、そんな…恥ずかしいよ。」
「それじゃ皆さん揃ったので早く登りましょう!富士山、すっごい楽しみです!」
「うん。」

そして登りだす6人。
お互いの事やこれまでの事、これからの事を話しながら、ゆっくりとだけど確実に、頂上を目指して歩みを進めていた。
途中山小屋で仮眠を取ったあと、真夜中に再度出発する真乃たち。
ヘッドライトを点けながら、真乃は一歩ずつ登る。
それに続く灯織。
薄い空気に関わらず元気に駆け上がる果穂とそれに呆れる結華。
もう帰りたいとこぼす甜花を、甘奈が励ましていた。

そしてついに全員が頂上に到達する。
東の夜空を明るく染めて登り始める朝日を見つめながら、真乃はタブレットを取り出す。

「めぐるちゃん、みんなで守れたよ…この空の、鮮やかさを。」

タブレットに映る写真の中で、真乃・灯織・めぐる、夏葉・樹里・智代子・凛世・果穂、千雪・甜花・甘奈が、穏やかな笑顔を浮かべていた。



アイドルマスターシャイニーカラーズ ゼノアクティナ 終
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。