アイドルマスターシャイニーカラーズ ゼノアクティナ 作:双葉敦
夏葉という精神的支柱を失った連合側メンバーは、些細な事でいがみ合う険悪な雰囲気となる。
そんな中ムードメーカーの智代子の提案で海岸でのキャンプを行う連合側の10人。
束の間の休息により心に余裕を取り戻すメンバーたち。
そして凛世の戦闘記録の振り返りにより、敵機との戦いに活路を見出すのだった。
「現状で十分互角以上に戦えてると思うけど?」
透は戦力増強の具申に来た咲耶に答えた。
「この前の戦闘はこちらのペースで戦えたからね。ただ次はそうもいかないだろう。相手にこちらの手の内を明かしてしまったのだから、対策は立てて来るはずさ。」
それに対し咲耶は冷静な分析を述べた。
「そうは言ってもね、まだ新型機の開発を終えるにはデータが足りない。せめてあと1回ぐらいは実戦のデータが必要なんだよね。」
「その新型とやらの開発のために、私達には捨て駒になれって聞こえるんですけど?」
透の弁明に結華が反論する。
「効率よく勝利するための戦略さ。これが戦争である以上、こちらも全く無傷という訳にはいかないのは分かるだろう?」
「…ならせめて装備の増強は頼めないかい?何か敵の予測を上回るカードが1枚は欲しい。」
咲耶は譲歩する形で透に提案した。
「ドア・イン・ザ・フェイスのつもりかい?…けどまあ君達を蔑ろにしている訳ではない事は証明しておかないとね。円香が五月蝿いし。」
透は横目で円香を見たが、聞こえていないのか円香は何も言わず、入力作業を続けていた。
「試作品だがこれを霧子機に搭載しておこう。彼女の適合率なら上手く扱えるはずだよ。」
「これは…」
モニターに映し出された装備の概要を見て、咲耶と結華は息を呑んだ。
「どがんやったと?」
アンティーカのミーティングルームに戻ってきた咲耶達に恋鐘は尋ねた。
「ま、予想通り追加メンバーはなし。」
結華が答える。
「その代わりに新装備を手配してもらったよ。ただ…」
「ただ?」
咲耶が言い難そうにしていたので、恋鐘は促すように聞いた。
「それを搭載するのは霧子機になった。適合率が最も高い彼女でないと、扱いは難しいらしい。」
「なんば言いよると!透は霧子に前線で戦え言うんか!」
「こ、恋鐘ちゃん…」
激昂する恋鐘を霧子は宥めた。
「そもそも補給がメインの霧子機を前に出すのは矛盾しとるばい!霧子がおるからうちらは安心して戦えるとよ!」
「ああ、それは私もそうだと思ったよ。だから透に意図を尋ねた。すると新装備の機能を教えられてね。」
「その新装備の機能というのがね…」
結華は二人に説明をする。
「…そういう事やったとね。けど、やっぱり霧子を危険な目に合わすんは…」
「恋鐘ちゃん…私、やるよ…」
「霧子!?」
霧子の瞳に迷いはなかった。
「私…自分の役目に守られて…皆を後ろから見ている事しか出来ないのが…辛かった。だから…この装備で…今度は一緒に戦いたい…恋鐘ちゃんたちと一緒に…!」
「霧子…かーっ、霧子はいじらしかーっ!」
霧子に抱きつく恋鐘。
「やれやれ、恋鐘は本当に霧子に甘いね。」
呆れたように咲耶が言う。
「当たり前たい!霧子は三国一の優しか子ばい!大丈夫、霧子はウチが絶対に守るとよ!」
頬ずりする恋鐘に霧子は答えた。
「うん…私も…恋鐘ちゃんを…皆を…守るね。」
〜 〜 〜
「7時の方向より接近する機影確認!数は…4です!」
アルストロメリアのブリッジにアラートが鳴り響く。
「おいでなすったか!」
「やはり前と同じ数…けど皆、油断しないで。プラン通りに行けば撃退できる筈だから、それぞれの役割に集中してね。」
「了解です!」
イルミネーションスターズより順次カタパルトから発進を開始する。
「めぐる機…行くよっ!」
灯織に続いてめぐるが出撃する。
「夏葉…見ていてくれよ!樹里機、行くぜ!」
夏葉の1号機がいないため、2号機の樹里がクライマックスガールズ1番手として発進した。
それに続き全機が発進していくのを見て、千雪は指示を出す。
「アルストロメリアも戦闘空域に向けて発進!多少の被弾は覚悟して、皆を支援します!」
「り、了解…行くよ、アルストロメリア…!デビ太郎も…よろしくね…!」
「マカセロ、マカセロ。」
尻尾を接続されたデビ太郎が甜花の補助を行う。
甜花は舵を切って進行方向を戦闘空域に定めた。
「見えた…良し、それじゃ作戦通りに頼んだぜ!」
そう言うと飛行形態の樹里は敵陣へと突っ込んで行った。
「あれは…この前の可変機か。単機で突っ込んでくるのか?」
「返り討ちばい!」
恋鐘は樹里機に照準を合わせ、発射した。
しかし樹里はそれを躱すと、敢えて恋鐘機にのみ牽制の射撃をしてそのまま敵陣を通過して行った。
「あいつ…うちに喧嘩売っとるね!」
逆上して恋鐘は樹里を追う。
「恋鐘!挑発に乗っては危険だ!」
咲耶は止めようとしたが、その隙に灯織が間合いに入って来た。
「この前の…お返しです!」
灯織の斬撃が咲耶機を掠める。
「くっ!」
「そこです!」
すると反対側から果穂の大剣が咲耶を襲った。
咄嗟に反転して距離を取る咲耶。
「…敵も甘くはないね。」
「さくやん!」
加勢しようとする結華に真乃たちが立ち塞がる。
「これで3体を分断できた…後はこの機体の予測を越える事と…もう1体の見極めだね。」
「はい…真乃さん…よろしくお願い…いたします…」
結華機と対峙して、真乃はグリップを握りしめた。
「コイツ、さかしか動きで…ちょっと待たんね!」
恋鐘は樹里を追って砲撃を行うが、そのスピードに追いつけず有効打は与えられなかった。
「背中がガラ空きっ!」
そこにめぐる機が狙撃する。
「ぐあっ!?」
背後を被弾した恋鐘は振り返り、めぐるを見つけると今度はそちらに向かった。
「よくもやってくれたとね!」
すると今度は樹里機が人型に変形して背後から恋鐘にライフルを放つ。
「あいたっ!こ、こいつら〜!」
再度恋鐘が振り返ると樹里機は変形をしてその場を離脱した。
「待たんね!」
それを追う恋鐘。
既に頭に血が上っており、樹里とめぐるの術中から抜け出すのは容易ではなくなっていた。
一方咲耶は接近戦特化の2体を相手に防戦一方となっていた。
距離を取ろうにも相手は良く訓練したのか、連携して攻撃を加えてくるためライフルの間合いを稼げなかった。
また応援を呼ぼうにも恋鐘は可変機の相手にのめり込んでおり、結華は3体に囲まれるという状態であった。
「…まずいね、この状況は。」
咲耶は一瞬躊躇したが、すぐに決断をして霧子に通信をした。
「すまない霧子、予定より大分早いが君の力を貸して欲しい。」
「咲耶、まだ敵の体力そげん削れとらんばい!今霧子を出すのは…」
通信を聞いていた恋鐘が止めようとする。
「だが現状はこちらの劣勢だ。敵ながら相性を良く考えて来ている。このままではこちらの損害の方が大きくなる可能性が高い。」
「それは…そうやけど…」
「大丈夫だ恋鐘。霧子ならきっと上手くやれるさ。」
「うん…私、やってみせるから…恋鐘ちゃん、心配しないで…」
咲耶の意見に同意するように霧子が言った。
「頼んだよ。」
「うん…すぅーっ…はぁーっ…」
霧子は大きく深呼吸すると、目を閉じ機体とシンクロして全方位に意識を向けた。
そして敵機7体の意思エネルギーを感じ取ると、それらをロックオンして呟いた。
「アフカル…起動…!」
その瞬間、周囲の空気が変わった。
〜 〜 〜
「何これ…歌?」
最初に異変に気付いたのは真乃だった。
通信でもなく、機体からフィードバックされる環境音でもなく、何か頭に直接響くような音が聞こえるような気がしたのだった。
「!?」
次の瞬間、急に身体中から力が抜けるような猛烈な脱力感に襲われたのだった。
「な、何?何なの?」
それまで何ともなかったのに、最早機体を浮遊させるので精一杯な状態だった。
「皆…!」
自分だけかと思ったら、他の味方機も高度を保てず徐々に落ちていくような有様だった。
「何だこれ!?どうなってやがる!」
樹里が叫ぶ。
「力が…入らないよ…!」
めぐるの悲痛な声が聞こえた。
「皆さん…エネルギーの…ゲージは…どうなって…おりますか…?」
そこに凛世が何か気付いたのか、全員にエネルギーゲージを確認するよう促した。
「あーっ!さっきまでいっぱいだったのに、もうほとんどありませーん!」
「私も…何で…!?」
果穂が異変に気付き、智代子が同意する。
「全員が…同時に…エネルギーダウン…これは…機体の…トラブルとは…考えられません…」
「まさか…敵の仕業…!」
灯織が推察する。
「おそらく…何らかの…方法で…こちらの…エネルギーを…吸収して…いるかと…」
「そんな…!」
真乃は絶句した。
「凄いね…まさかこれ程の威力とは。」
それまでの攻勢が止まった2機を尻目に咲耶は距離を取ると、ライフルを構えた。
「悪いが落とさせて貰うよ。」
そして動けない果穂に照準を合わせて狙撃した。
「危ない!」
灯織は咄嗟に果穂を突き飛ばし、被弾した。
「灯織さんっ!」
幸い的を外れた為に致命傷にはならなかったが、灯織の機体は大きく損傷した。
「良い判断だね。だけどこちらも負けられないんだよ。」
更に狙撃を行う咲耶。
「ううーっ!」
果穂は大剣を盾代わりにして、必死で自身と灯織を庇うのだった。
「これが霧子の…おかげでウサギがカメになったばい!」
加速もままならない樹里機に恋鐘は砲撃を加えた。
「うおおっ!」
必死に回避するも被弾は避けられず、落ちていく樹里機。
「樹里!」
めぐるは恋鐘を狙撃しようとライフルを構えるが、その動作は通常と比べられない程遅かった。
「そげん遅か攻撃、当たらんとよ!」
恋鐘はめぐるの狙撃を余裕で回避すると、反撃を行った。
「きゃあっ!」
めぐるも被弾したが、何とか細かい移動を繰り返し直撃は避けるのだった。
「いやー戦争に綺麗も汚いもないとは思うけどさ…ここまで一方的になるとちょっと気が引けるねー…」
結華はまともに動けない3体を順にライフルで撃ちながら率直な感想を述べた。
「ど、どうしよう凛世ちゃん…!?」
想定外の窮地に智代子は泣きそうになりながら凛世の意見を求める。
「………やはり…記録を…見ても…狙撃手…砲撃手…遊撃手…これらに…前回と…変わった動きは…ございません…」
結華の射撃を必死に躱しながら凛世が分析する。
「つまり…あと1体が、このエネルギーダウンの原因を作ってる?」
「はい…おそらく…」
真乃の問いに凛世が答える。
「なら…私が止めてくる!隙を作るから…智代子ちゃん、手伝って!」
「えっ、うん!?」
そう言うと真乃はライフルの予備マガジンを結華に向って投げつけた。
「な?」
結華は真乃の予想外の行動に驚く。
「あれを撃って、智代子ちゃん!」
「え?えっと…えいっ!」
智代子がロケットランチャーで真乃の予備マガジンを狙う。
「うわっ!?」
それは結華機の目前で爆発した。
「今っ!」
その隙を見逃さず、真乃は気力を振り絞って結華を抜き去り、霧子へと一直線に向かった。
「1機が霧子に向かっている?」
咲耶が真乃の特攻に気付いた。
「まだあれだけ動けるのか…だが!」
真乃に照準を合わせる咲耶。
「!」
灯織はその隙を見逃さず、投げつけた剣が咲耶のライフルを貫いた。
「しまった!恋鐘、霧子のフォローを!」
「霧子!」
恋鐘がめぐるとの交戦を中断し霧子の元へ向かう。
「うわああああ!」
しかし真乃の方が霧子に近く、真乃は片手剣を抜くと霧子機にめがけて突撃した。
「「皆を…守る!」」
真乃と霧子の思いと機体が重なる。
瞬間、世界が停止した。
〜 〜 〜
「ここは…」
真乃は真っ白な世界にいた。
先程まで戦場にいたはずなのに、そこには何もなかった。
何故かパイロットスーツではなく、一番お気に入りの洋服を身に着けていた。
「もしかして…私、死んじゃった…?」
一瞬不安になるも、何となく自分は死んでいないような気もした。
「ここが天国だとしたら…ちょっと、殺風景すぎるもんね…」
真乃は辺りを見回した。
すると遥か先に、人影が見えた気がした。
「誰だろう…あのー、すみませーん!」
地面もないような世界だったが、前に進む事はできた。
「聞こえますかー?」
真乃は呼びかけながら人影に向かって進んだ。
するとある程度近づいた所で、その人影もこちらに向かってきたのだった。
「おーい…」
透き通るような女の子の声が聞こえてきた。
それはつい最近、どこかで聞いたような気もする声だった。
段々と人影は輪郭も見て取れるほど近くなった。
それは色白で、灰色の髪を両側に束ねた、真乃と同じくらいの年頃の少女だった。
「あ、あのっ…私真乃って言いますけど…ここはどこで、貴方は誰ですか?」
自分でもおかしな事を聞いているとは思ったが、真乃は少女に問いかけた。
「私…私は…霧子………真乃さん…初めまして。」
霧子は微笑みながら答えた。
「つまり…あのIDOLLに乗っていたのが霧子ちゃん…?」
「うん…真乃ちゃんの機体が近づいてきて…私の機体と重なって…そしたらここにいた…」
真乃と霧子ら二人で現状を確認したのだった。
「ほわっ、ここって何だろう…元の世界に戻れるのかな…」
不安そうに真乃が呟く。
「おそらく…アフカルが吸収した意思エネルギーが…逆流して私達の精神に影響をもたらした結果…作られた精神世界だと思う…多分それが収まれば…現実世界に戻れるんじゃないかな…」
「えっと………良く分からないけど戻れるんだね?…良かった。」
霧子の推測に真乃は安堵した。
「…それにしてもそちらの人達ってもっと怖い人かと思ったから、霧子ちゃんみたいな優しそうな人で良かった…いや、変な意味じゃなくて。」
「私も…こうして真乃ちゃんと会って…敵同士なんて思えないかな…何だか真乃ちゃんって…ほんわかした印象だから…」
「ほわっ?そ、それはどうも…」
二人はお互いを見て、クスクスと笑い合うのだった。
「…霧子ちゃんは、どうして戦うの?とてもそういった事に向いてるようには思えなくて…」
真乃は率直な疑問をぶつけた。
「私は…人の命を助けるお医者さんになりたい…だけど今の世の中は…どこかで争いがあって…誰かが徒に傷付き…その命を散らす…そんな悲しい出来事に溢れている。…だから戦争はなくなって欲しいと思ってる。この戦いに勝てば…争いのない世界が作られるって聞いて…それで…」
「そうなんだ…」
霧子の言葉は穏やかながら強い意志が感じられた。
「真乃ちゃんはどう思う?…この世界は、今のまま…人と人が傷付け合うままで良いと思う?」
「私は…」
真乃は言葉に詰まったが、思い切って本心を打ち明けた。
「私も、争いはなくなればいいと思うよ。けど、それを誰かにしてもらうのは違うと思う。私達自身で、考えて、話し合って…お互いを理解しなくちゃいけないと思う。」
「だけど、相手を理解するのは簡単じゃないよ。現に私達も、仲間を喪った悲しみを…相手への憎しみに変えて戦っている…」
「それは…そうだね。正直に言えば夏葉さんを亡くして、霧子ちゃん達を恨んでないと言えば嘘になるよ。けど、それじゃダメなんだって、今は思う。悲しみと憎しみの連鎖は…どこかで断ち切らないといけないんだって。」
「真乃ちゃんは優しいね…私もそうしたい。けどそのためには相手を信じなければならないよね。…真乃ちゃんがそう思っても、他の人達はどう?本当に私達を憎まないと言い切れる…?」
「それは…分からないよ。だけど説得はするよ。きっと私達、話し合えば…気持ちを伝え合えばお互いを信じ合えるって。今こうして霧子ちゃんと打ち解けあってるように。」
「私は…真乃ちゃんみたいに皆を説得できる自信はないよ。人は…一度受けた心の傷をそう簡単には消せない。大切な人を奪われた苦しみを、なかった事にはできないと思う…」
「それでも…私達は…」
「………」
真乃と霧子はそれからずっと話し合った。
先程まで死闘を繰り広げていたことも忘れ、お互いの考えや思いをぶつけ合った。
時にその意見は一致し、時に平行線となったが、根本的な部分で二人の思いは同じだった。
大切な人を、守りたい。
そのため言い争いにはならず、穏やかに、けれど熱のある話し合いは続くのだった。
「…何だか一年分くらい喋った気がするよ。」
「ふふっ…私も…。恋鐘ちゃんもこれくらい話したら、もしかしたら真乃ちゃん達と分かり合えるのかもって思…」
「?」
霧子は急に黙った。
それはまるで目の前の真乃ではなく、遠くを見るような表情だった。
「ごめんなさい真乃ちゃん。おしゃべりはここまでみたい…私…見えてしまったの…」
「えっ?何が?」
「これも意志エネルギーの影響なのかな…私の大切な人が…傷付く未来が。私…止めなくちゃ。」
「霧子ちゃん?」
「ありがとう…真乃ちゃん…もし、また会えたら…その時はきっと…」
霧子の姿が霞んでいく。
「霧子ちゃん!待って!私達友達に…!」
次の瞬間、世界が暗転した。
〜 〜 〜
「真乃!危ない!」
コクピットにめぐるの声が響く。
目の前には霧子機があった。
精神世界に入ってからあれだけ話し込んだのに、現実世界では1秒にも満たない時間しか経過していなかったのだ。
それは意志エネルギーの逆流により真乃と霧子の意識が加速したためだったが、当の真乃には知る由もなく軽い混乱状態に陥った。
そしてめぐるが真乃に警告したのは、恋鐘機が真乃に向けて砲撃をしようとしていたためであった。
「落ちんね!桜色!」
「このっ!」
めぐるが恋鐘に向けてライフルを放つ。
「恋鐘ちゃん!」
「!」
しかしめぐるのライフルが貫いたのは恋鐘機ではなく、恋鐘を庇うため射線上に出てきた霧子機だった。
恋鐘の目の前で撃ち抜かれ、小さくコクピットから爆発を起こす霧子機。
その様子に敵味方とも呆然となった。
そして霧子機は力なくそのまま海上へと落ちていった。
「………霧子?」
恋鐘は霧子を呼びかけたが、返事はなかった。
「霧子?やめるばい、そがん冗談は笑えんとよ…霧子…霧子…」
現実を受け止め切れず恋鐘は霧子を呼び続けた。
「嘘…何で…霧子ちゃん…」
真乃はようやく現状を認識したが、霧子の死に理解が追いつかなかった。
そして霧子機は海中へと消えていった。
「霧子………あああああ!!!」
恋鐘が吼えた。
刹那、恋鐘機はめぐる機に重装甲機ではあり得ない速度で迫った。
「なっ!?」
迎撃しようとしためぐるは、残弾がない事に気付く。
「真乃、撃って!」
灯織がめぐるの危機に気付き、真乃へ指示を出す。
しかし真乃は霧子の死に動揺しており、灯織の指示が聞こえていなかった。
「キサンが!よくも!よくもおおおお!!」
恋鐘が叫ぶ。
「真乃!真乃!!!」
灯織が叫ぶ。
震えていた真乃にようやくその声が届く。
「灯織ちゃん!?めぐるちゃんは…」
しかしその時には、恋鐘はめぐるの目前まで迫っていた。
「消えんね!!!」
全武装による至近距離での一斉砲撃をめぐる機に叩き込む恋鐘。
「ぎゃっ…」
その破壊力に為す術なく、めぐるの機体は爆散した。
「めぐるーーーっ!!!」
灯織は瞳孔を開いて悲鳴を上げた。
「えっ………」
真乃は眼前で何が起こっているのか、理解できなかった。
その日、2つの光が消えた。
第七話 終