アイドルマスターシャイニーカラーズ ゼノアクティナ 作:双葉敦
めぐるの死は真乃の所為と断じた灯織は、イルミネーションスターズの解散を申し出る。
千雪は一時的措置として、真乃をクライマックスガールズに編成する。
しかしめぐるの死を受け入れられない真乃は、戦う事を放棄した状態だった。
一方霧子を亡くした恋鐘は、連合側を殲滅するまで戦い続ける決意を固める。
また霧子の新装備に違和感を感じた咲耶は、結華に密かに透たちの動向を探らせる。
そして仲間を失った悲しみに沈む其々の部隊に、容赦なく出撃命令が下る。
めぐるの仇を討つと逸る灯織は単機突撃を行うが、連盟側新型機チーム「ストレイライト」に為す術なく蹂躙される。
千雪から仲間の危機を知らされるも戦えない真乃。
その閉ざした心を開いたのは、めぐるの遺書だった。
「真乃機、発進シークエンスに移行して下さい。」
甘奈の誘導に従い、真乃は機体をカタパルトに移動する。
「めぐるちゃん…私、分かったよ。…私が今何をしなければならないか…」
目を閉じて発進指示を待つ真乃。
「カタパルト準備完了。真乃機、発進お願いします。」
甘奈の指示が入る。
「今、私は何がしたいかを!」
真乃は目を見開く。
「真乃機、行きます!」
そして真乃は戦場に向けて飛び立つのだった。
「真乃機、発進しました…えっ、何これ?」
「どうしたの?」
困惑する甘奈に千雪が尋ねる。
「真乃機の適合率のモニタリング…壊れたのかな?100%を越えて…まだ上がってる…」
「!」
「150…180…200%!?」
「真乃ちゃん…」
驚異的な加速で戦場に向かう真乃機を千雪は不安げに見送るのだった。
『現在灯織ちゃんと樹里ちゃんが敵の新型と交戦しているけど、かなり危険な状況と思われるわ。真乃ちゃんには2人の救出をお願いしたいの…凛世ちゃん達の交戦空域の先に彼女たちがいるわ。敵の能力は未知数だから、とにかく気をつけて。』
真乃は千雪のレクチャーを思い出しながら突き進んだ。
「めぐるちゃん…めぐるちゃん…!」
真乃の脳裏にめぐるの在りし日の姿が浮かぶ。
「私を導いて…めぐるちゃん!」
真乃の思いの強さに呼応するように、3号機は更に速度を上げていった。
「何かこっちに向かってくる…ものすごい速い!」
膠着状態の戦場で、結華が気付いた。
「何だ?」
咲耶がそちらを確認しようとしたが、それは凄まじい勢いで通過して行った。
「…桜色ぉ!」
恋鐘はそれが真乃機と分かると、その後を追いかけた。
「恋鐘!」
咲耶は引き止めようとしたが、霧子が死ぬ契機となった真乃への憎しみが恋鐘を支配していたため、その声は届かなかった。
〜 〜 〜
「それじゃまずは1本目よぉ。」
そう言って冬優子は灯織機のコクピット付近に突剣を突き立てた。
「きゃああっ!」
それは灯織の座席右上部を掠めた。
「アンタは何本で死ぬかしらぁ。」
遊んでいる。
灯織は敵の歪んだ欲望に恐怖し、奥歯が鳴った。
股間が熱を帯びる。
無意識に失禁していたのだ。
「2本目よぉ。もっと叫びなさい!」
「いやあああ!」
突き立てられた突剣はまたも灯織の横を掠めた。
「いいわ、良いわぁ!その反応、堪らないわぁ!」
冬優子の攻撃は灯織の身体に直撃こそしなかったものの、コクピットが破壊される度に破片が飛び散り、灯織を心身共に痛めつけた。
そして冬優子はコクピット中心部に狙いを定める。
「名残惜しいけど、良い所で終わらせるのが美しい余韻を残すのよね。じゃあ最後に素敵な悲鳴を聞かせてね。」
ーーー死ぬ。
灯織はそう思った。
ごめんめぐる、仇を1つも取れなかった。
真乃…酷い事を言ってしまって…謝れないまま…
「それじゃラストよぉ!」
「灯織ちゃん!!!」
その瞬間、彼方から超高速で接近してきた真乃の射撃が冬優子の突剣を弾き飛ばした。
「!?」
驚いた冬優子が振り向く。
真乃は機体を前方に半転させると、冬優子機の頭部に突進の勢いをつけた蹴りを浴びせた。
「んなぁあああ!?」
同時に灯織機を掴んでいた冬優子機の腕を斬り落とす。
冬優子機は遥か後方に蹴り飛ばされ、真乃は灯織機を受け止めた。
一瞬の出来事だった。
「灯織ちゃん!無事なら返事して!灯織ちゃん!」
「真乃…」
灯織は助けられた安堵感から真乃の名前を呼ぶと、そのまま意識を失った。
「灯織ちゃん!」
返事があった事で安心はしたが、灯織機の損傷は酷いものだった。
真乃は沸き上がる怒りを抑え、周囲を見回した。
「…あそこで待っていて。すぐあの人達を追い払うから…!」
真乃は近くの岩礁に灯織機を隠すと、今度は樹里のいる空域に向かった。
「冬優子ちゃんが蹴り飛ばされてるっす!」
「マジで!?」
それまで樹里機を包囲して攻撃していたあさひは、冬優子機に向かった高速の反応をモニターで追って信じられない光景を目の当たりにした。
「…アレはこいつ等ザコとは違うみたいっす!わくわくぅ!」
「あさひちゃん、こっちはどうするん?」
愛依があさひに樹里の処遇を尋ねる。
「愛依ちゃんに任せるっすよ。わたしはあの速い奴の相手をしたいっす!」
「念のため2人でボコった方が良くない?」
「む~!愛依ちゃんはわたしがアイツに負けると思うっすか?」
あさひが頬を膨らます。
「いやそれはないと思うけどさ…分かった、そんじゃこっちはさっさと片付けるから、それまでに終わらなかったら手伝うし。そんで良い?」
「競争っすね!良いっすよ!」
また飽きっぽいあさひちゃんの悪い癖が始まっちゃったな…と思いながら、愛依はできるだけ早く樹里の始末をしようと攻撃を再開した。
〜 〜 〜
「よくも…灯織ちゃんを!」
真乃は向かってくるあさひ機にライフルで応戦する。
それを悠々と躱しながらあさひもライフルを放つ。
しばらく撃ち合いが続いたが、真乃はその機体速度で回避し、あさひは自身の反応速度で当てさせなかった。
「まあまあやるっすね。それじゃこれはどうっすか!」
あさひはポッドを射出する。
「!」
真乃は未知の兵器に戸惑うも、そこから放たれる攻撃を咄嗟に回避した。
「まだまだぁ!」
更にあさひ機のライフル攻撃が加わり、3つの銃口が真乃を狙う形になった。
「…何だろうこの感覚…何か相手の…意思のようなものを…感じる…?」
しかし真乃はそれらを全て回避しながらあさひに反撃を行った。
それは増大した真乃の意思エネルギーの副作用として、余剰分が周囲に放出され、それらが敵意を真乃に伝えるレーダーのように働いていたのだった。
「なんなんすかコイツ!」
模擬戦でここまで自身の攻撃を躱された事のなかったあさひは苛立ちを感じた。
「…攻撃が雑に?なら!」
真乃はあさひ機に肉薄し、その直前で宙返りをするように背後に回り込みその背中を斬りつけた。
「…っ!」
しかしあさひも咄嗟に前進し、真乃の斬撃を回避する。
間髪入れず真乃はライフルを放ったが、振り返ったあさひはそれすら天性の反応速度で避けるのだった。
「「強い…!」」
あさひと真乃はお互いその力量を認めざるを得なかった。
「落ち着け私…今しなければならないのは…」
真乃は周囲を確認し、樹里機を見つける。
「樹里ちゃん聞こえる?」
真乃はあさひの攻撃を躱しながら樹里に通信を行った。
「遅えぞ真乃!」
「ごめん、後で皆に謝る!それより今は全員無事に帰るのが最優先だから!」
「そうは言ってもこいつ等半端なく強えぞ!どうすんだ?」
「戦ってみて気付いたけど、新型の遠隔兵器…本体からそれほど離れた所までは飛ばせないように思う。なら敵本体さえ引き離せば…」
「ひとまず逃げ切れる、か?」
「賭けだけど…私が灯織ちゃんを拾ったら、全員全速力でアルストロメリアに帰投しよう!アルストロメリアからも支援砲撃をして貰えば、可能性はあると思う!」
「分かった!」
真乃はあさひの動きに注意しながら徐々に距離を取る。
樹里は凛世に通信を行い、撤退の指示を伝える。
「行くよ!」
真乃は樹里に合図を出すと、すぐに灯織機のある岩礁に向かった。
「灯織ちゃん!」
真乃は灯織機を抱えると、急いでその場を飛び去った。
「あれ?…逃げるっすか!折角楽しくなってきたところっすよ!」
あさひは真乃を追いかける。
「やばっ、1つも落とせてないじゃん!」
樹里を仕留め切れず、飛行形態で離脱された愛依は焦った。
そこに反対方向から恋鐘機が向かってきた。
「桜色ぉ!キサンはここで…」
しかし恋鐘が砲撃を行うより早く真乃はライフルを放ち、恋鐘機の両肩の関節部分と腰のレールガンをピンポイントで撃ち抜いた。
「があっ!」
恋鐘機は両肩のキャノン砲もバズーカも砲撃が定まらなくなり、真乃はそのまま恋鐘の頭上を駆け抜けた。
「邪魔っす!」
更にあさひ、愛依が恋鐘の横を通り過ぎる。
「………情けなか!こんな…!」
恋鐘はサブモニターを叩き、悔しさに打ち震えた。
〜 〜 〜
「戻られました…!」
凛世は真乃達が接近してくるのを検知し、果穂達に撤退の指示を出した。
「さくやん、また逃げてく!」
「三十六計何とやらだね。恐らく後ろの連中に相当手厚い歓迎を受けたと思われるよ。」
凛世達は真乃達と合流すると一目散に母艦を目指した。
「で、どうする?追撃は?」
「恋鐘がいない現状ではね…それに」
咲耶達が話しているところにあさひ達がやってきた。
「あれ?こっちも数が減ってないっすね?やる気あるんすか?」
「まーまーあさひちゃん、この人たちは精一杯やってこれなんだから言ってあげないで。」
そう言うとすぐに真乃たちを追いかけて行くのだった。
「何あの連中!腹立つなー!」
「…それに通信機から聞こえてきた彼女達の戦い方…正直言って加勢する気になれないんだ。」
「………そだね。」
咲耶達はあさひ達追撃組に加わらず、その場に残るのだった。
逃走劇の最中、智代子はある決断をした。
「皆、先にアルストロメリアに戻って。」
「?」
「このまま全員帰投しても、アルストロメリアの速度だとあの連中に追い付かれちゃう。」
「それは…」
発案した真乃が言い澱む。
「なら誰かが残ってあの新型の足止めをしないと。」
「おい待てチョコ。まさかお前一人でやるつもりじゃねえだろうな!」
樹里が先手を打って止めようとする。
「じゃあ他に誰かいる?凛世ちゃんも果穂も消耗してる上に接近戦用だから距離を取って戦えないし、真乃ちゃんも樹里ちゃんも、まして灯織ちゃんもボロボロだよ?」
実際に真乃の機体は想定外の出力で稼働したため、今になって各部から悲鳴を上げていた。
「なりません…!」
その提案に凛世がそれまでになく強い反発をした。
「あまりに…危険です…智代子さんお一人に…そのような…!」
しかし智代子は譲らなかった。
「ありがとう凛世ちゃん…けど、この先の戦いには真乃ちゃんがきっと必要になる…あの新型相手に樹里ちゃん達を救出する事ができた真乃ちゃんの力が…なら今は被害を最小限に留めて、次に繋げる必要があると思うんだ。」
「嫌ですちょこ先輩!夏葉さんみたいなことはもう嫌です!!!」
果穂が智代子に思いとどまるよう説得する。
「ごめん果穂…でも私もう決めたから。『一人はみんなのために、みんなは一人のために』ってね。…大丈夫、私逃げるのは得意だから!」
明るく話す智代子の声は震えていた。
「だからってチョコ1人にそんな事やらせられるかよ!それをするぐらいなら一か八か全員で戦った方がマシだ!」
「凛世も…そう思います…」
「あたしも戦います!」
樹里の自棄とも取れる意見に凛世と果穂が賛同する。
「ううん、皆は戻って!ここは撤退を言い出した私が残る!」
真乃は現状の責任を取ろうとする。
しかし智代子の意思は固かった。
「だから!皆分かってる?ここで全滅したらこの世界は宇宙人に支配されるんだよ?私は家族や友達にそんな未来を見せたくない!…お願い、私の最初で最後の我儘をきいて!」
「智代子さん…」
「チョコ…」
「ちょこ先輩…」
「智代子ちゃん…」
全員が智代子の名を呼んだ。
「あくまで時間を稼ぐだけだから…私何とか持ち堪えてみせるから…だから、補給したらすぐ助けに来てよね!えへへ…」
智代子は最後まで明るく振る舞った。
「………速やかに…可及的速やかに…戻ります故…どうか…どうかご無事で…いて下さいませ…智代子さん…」
「うん!私待ってるね…!」
そして智代子はその場に留まり、他のメンバーを見送るのだった。
「なんか一匹残ってるっす!」
「もしかして足止めのつもり?時間稼ぎとかさせないって…」
「あの機体はどこよおおお!!!」
「!?」
あさひ達が振り返ると猛烈な勢いで冬優子機が追いかけてきていた。
「あの速い奴ならとっとと逃げて行ったっす。」
「はあああ?この私を足蹴にして、逃ぃげぇたぁあああ!?」
完全に頭に血が上っている状態だった。
「ごめーん冬優子ちゃん、あいつら逃げ足だけは速かったわー。」
「んで時間稼ぎか分からないっすけど一匹そこにいるっす。」
あさひは智代子機を指さした。
「ふーっ!ふーっ!…ふんっ、それなら良いわ。アレを見せしめ代わりに殺るだけだから。」
智代子はあさひ達三体を前にして呟いた。
「…ごめん凛世ちゃん。生き延びたらお勧めの恋愛漫画貸すって約束…守れそうにない。」
~ ~ ~
「早く!早く補給してくれ!」
樹里はメンテナンスロボットに向かって懇願した。
各機体に急ピッチで応急処置がなされていくが、それでも一定の時間は必要だった。
「私…また…私の判断で…今度は智代子ちゃんが…」
真乃は自分の発案が結果的に智代子を犠牲にする事になったため、自分を責めた。
「いえ…あの状況では…どうしようもありませんでした…真乃さんは…間違って…おりません…また…智代子さんも…」
凛世も何もできなかった自身への悔しさを滲ませながら真乃をフォローした。
「まだですか!」
果穂はすぐにでも再出撃しようとした。
それぞれが智代子の身を案じながら、動けないもどかしさを抱えてその時を待つのだった。
ようやく出撃可能なレベルまで各機が回復すると、気を失ったままの灯織を除く全機が発進した。
しかし智代子が残った海域には既に敵機はなく、そこには無残な姿となった智代子の機体の残骸だけが漂っていた。
「そんな…」
真乃は嗚咽を漏らす。
「あああ…あああああ!うわああああ!!!ちょこ先ぱあああい!!!」
果穂の泣き声が響く。
智代子の機体はコクピット周辺に無数の穴が開けられ、斬り刻まれていた。
それは中にいるパイロットの状態を想像するだけで気分が悪くなるほどに。
「…許せねえ…アイツら…許さねえ!」
まさに嬲り殺されたという表現が似合う智代子機を見て、樹里は怒りを露わにした。
「何故…智代子さんが…このような…惨い…殺され方を…されなければ…ならないのでしょうか…」
智代子機の残骸を抱えて凛世は呟く。
「誰か…教えて下さい…智代子さんが…一体…何をしたと…言うのでしょうか…」
いつも皆から一歩引いていた凛世を気遣い、明るく話しかけてくれていたのは智代子だった。
「…凛世は…今…冷静さを…欠こうと…しております…」
凛世の心に明確な殺意が芽生えた瞬間だった。
「皆…智代子ちゃんの回収…お疲れ様…」
千雪はそれ以上言えなかった。
智代子の意志とは言え、全員が智代子を見捨てる結果になった事に対して、自分自身を責めていたからだった。
ただ夏葉を失った時と違い、クライマックスガールズの3人には明確な目標ができた。
あの新型3体は必ず討ち果たす、と。
彼女等は戦いを楽しんでいた。
もっと言えば相手を殺す事を楽しんでいた。
それは智代子機の惨状を見れば明らかだった。
そのような連中をのさばらせておいては智代子に対して申し訳が立たない。
例え自身の命を引き換えにしても必ず倒す、と3人は智代子の魂に誓った。
「あの新型…相当強力な武器を持っていたのね。何か対策を立てないといけないけど、今日はひとまず休んで…」
「凛世は…休まなくとも…大丈夫でございます…」
「凛世ちゃん?」
千雪は驚いた。
「あの…外道共は…これ以上…生かしておけません…速やかに…誅殺すべきかと…考えます…」
凛世の言葉は、普段からは考えられない強い怒りが滲み出ていた。
「…いえ、ダメよ。」
しかし千雪は凛世を、そしてそれに合わそうとしたクライマックスガールズを止めた。
「今は智代子ちゃんの事で気が張りつめているから、疲れを忘れているだけよ。対策もなく、ただ怒りに任せて攻めて行っても良い結果を得られるとは思わない。以前智代子ちゃんが言っていたでしょ、『休みは大切だ』って。今日一日だけでも良い、横になって身体を休めなさい。…これは命令です。」
「………了解…いたしました…」
千雪の言は指揮官として尤もだった。
それだけに凛世はそれ以上反論する事ができず、ただ怒りと悔しさに歯を食いしばり、口端から血を流すのだった。
~ ~ ~
翌日アルストロメリアのブリッジに負傷した灯織を除くメンバーが集まり、敵の新型への対策会議が行われた。
「…やはりこちらの追加装備はもう少し時間がかかるみたい。それまでは現状の装備で何とかするしかないけど…」
千雪は申し訳なさげに皆に伝えた。
「実際に戦ったけど、あの遠隔兵器は滅茶苦茶厄介だぞ。真乃は良く被弾しなかったな。」
樹里は真乃に言った。
「ほわっ、あれは…何ていうか、相手の声が聞こえてきたから…」
「声?」
「えっと、実際に通信した訳じゃなくて…『これをこう動かして撃つ』っていう意思みたいなものを感じたというか…ごめん、自分でも何言ってるか分かんない…」
「何だそりゃ。コツとか攻略法がある訳じゃねーのか?」
「…恐らく真乃ちゃんの意思エネルギーが強すぎて、機体から溢れたエネルギーの副次的な効果でそうなったと思われるわ。確かに他の皆にもそれが出来るかは分からないわね。」
「ならアタシ達は別の方法でアレを食らわないようするしかねーな…」
全員が顔を見合わせ考え込んだ。
「躱せないなら…使わせないようにする…というのは…どうでしょうか…」
しばらくして凛世が手を挙げ、提案をした。
「何か策があるの?」
「はい………」
凛世が大まかな作戦の概要を述べる。
全員がそれに聞き入り、その方法ならと思うのだった。
「後は場所ね…そのプランに合った島を見つけ、そこに敵をおびき寄せる必要があるけど…」
「場所探しなら甘奈達がやるよ!これまで停泊した所の他にも、良い所がないか甜花ちゃんと地図で調べてみるね!」
「よろしく…お願いします…では敵をおびき寄せる役は…凛世が…」
「それは駄目!」
真乃が凛世を止める。
「接近戦用の凛世ちゃんの機体だと危険度が高くなる!それは私に任せて!」
「真乃さん…」
「前みたいにできるかは分からないけど…何とか敵の攻撃を躱しながらやってみる。それに…凛世ちゃん、きっと智代子ちゃんの仇を取ろうと無理をする。そう顔に書いてある…」
「………」
凛世は俯いた。
「そうね…その役は現状だと真乃ちゃんが一番適任だと思うわ。」
千雪も真乃に同意した。
こうして方針は固まり、それぞれが新型との対決に備えて準備を始めるのだった。
〜 〜 〜
「て、敵艦確認!距離…2800!」
小糸はレーダーの反応を透に伝えた。
「ふむ、この間隔で出て来るか…何か策がありそうだね。」
前回の戦闘から日は浅く、敵が万全でないのは明らかだった。
「一先ずストレイライトに出撃指示を。アンティーカは…恋鐘機の修理もまだだしノクチルの護衛に回って貰おうか。」
「…わざわざ相手の策に付き合わなくても良くない、透?」
円香が進言する。
「いや、こちらとの戦力差をどう埋めてくるのか興味がある。それに…」
「?」
「この前の戦闘でストレイライトと渡り合った機体のデータが欲しい。もしかすると不確定要素になり得るかも知れないからね。」
「…楽しそうね。」
「そうかい?」
透は真乃機の話をした時に口角が上がっているのを、円香に指摘されるまで自分でも気づいていなかった。
「果穂機、行きますっ!」
最後に発進した果穂を見送ると、千雪は全機に通信を行った。
「敵艦から3体のIDOLLが発進したのを確認したわ。反応から新型で間違いないと思う。ここからが正念場よ。特に真乃ちゃんは大変だけど、何とかこちらの意図に気付かせないようお願いね。」
「了解しました!」
クライマックスガールズは目的の島に向かい、真乃はストレイライトを待ち構える手筈だった。
「凛世ちゃん!?」
ところが真乃機と別れた筈の凛世が戻ってきたのだ。
「やはり…いくら真乃さんでも…単独は…危険です…また…単機での…行動は…敵に…怪しまれるかも…知れません…」
「でも…」
「凛世は…冷静です…決して…足手まといには…なりませんので…」
「…分かった。でも約束して。絶対に無茶はしないって。智代子ちゃんのためにも、凛世ちゃんは生き残るって。」
「…善処…いたします…」
そして前方にストレイライトの3体を確認し、2人は戦闘態勢に入るのだった。
第九話 終