アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里   作:Thousand.Rex

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終結

龍門市街、流れる人ごみの中、ニット帽は静かに歩いている

その少し後ろを、フェン、メランサ、カーディが慎重に追っている、無線から音が流れる

 

『こちらフランカ、レブロバは確保したわ、フェンの方に向かってる』

 

『了解、こちらも引き渡し次第合流します」

 

「わかりました、尾行を続けます」

 

リスカムとフランカの通信に返答する

あちらは順当に捕まえたらしい

 

『ではビーグルさん、もう一度最初からお願いします』

 

『あの、だから、その~』

 

なのだが、なぜかビーグルがリスカムから問答を受けている

 

「ビーグル、落ち着いて、何が起きたのかひとつずつ言ってみて」

 

なんでも、サヴラの追跡中にアクシデントが起き、バレてしまったとか

 

『えーとですね、だから、サヴラの人を追ってたら、その~、いきなり~…………』

 

『あの変態紳士が~、あらわれたんでしょ~?』

 

『うん、それで、その人がサヴラの人を捕まえてくれたの』

 

『………………』

 

「………………」

 

わからない、いや言っていることはわかるのだ

だがクルースの口から出てくる単語のせいで話が入ってこない

 

「変態……」

 

「紳士……」

 

後ろで二人が困惑している

 

「クルース、仮にも手伝ってくれたんだから、そんな言い方失礼でしょ」

 

『でも~変態なのは~ほんとでしょ~?』

 

「いや、まあ………………うん」

 

少し前の出来事を思い出し、顔を赤くする

まさかいきなりあんなことを言われるとは思ってもみなかった

 

「――――あ~!! …………う~………………」

 

「…………大丈夫ですか? フェンさん」

 

「何があったの?」

 

男のセリフを思い出し悶えてしまう

こんなことならクルースから意味を聞かなければよかった

 

『……とりあえず、その変態紳士とやらが協力してくれたのはわかりました』

 

「リスカムさん……」

 

まずい、変態紳士で呼び名が定着しようとしている

フォローした方がいいのだろうか、だがそういうことを言われたのは事実だ

どうすればいいのか、頭を悩ませる

 

『それで、その人は何処に行ったんですか、見当たりませんが」

 

『出てきた時と同じようにスゥって人ごみの中に消えちゃいました』

 

ビーグルが男の行方について知っていることを話す

 

『どこかで~べつのひとに~セクハラしてるんじゃな~い~?』

 

「ええ…………」

 

クルースの言葉にカーディが引いている

 

「でも、あの子の事を探していたんですよね?」

 

『うん、またお願いできないかって言ってた』

 

「そうですか…………」

 

あの子とは無線で言っていた迷子の事だろう、メランサたちが待っているようにと言ったらしいが

どうやら、どこかに行ってしまったらしい

 

「まあ、子供だからねー。じっとしてるなんてことは出来ないよー」

 

「だけど、やっぱり心配で……」

 

「大丈夫、きっと会える、なんならあとでまた一緒に探してあげればいいよ」

 

「メイリィ、うん、そうだね」

 

『私たちも手伝うよ、ねっ、フェンちゃん」

 

「うん、その時は一緒に探しましょう」

 

「はい、ありがとうございます」

 

『皆さん、まだ作戦は終わっていませんよ。今は目先のことを考えてください』

 

各々がこの後のことを話し合う、それをリスカムが一喝した

 

『フェンさん、標的の様子は』

 

「はい、こちらには気づいていない様子です。どこかに向かって歩いています」

 

ニット帽に注意を戻す

 

『今どのあたりにいますか』

 

「えっと、ここは……」

 

言われ、周囲を見回す

 

「正門付近です、戻ってきましたね」

 

『了解しました、バニラ、ジェシカ、応答を』

 

リスカムが待機しているであろう二人に声をかける

 

『………………』

 

『………………』

 

『バニラ、ジェシカ、どうしましたか?』

 

だが二人から返事が返ってこない、もう一度呼びかける

すると

 

『――ふぁい!! ほひらびゃにりゃ!! ほうひまひたか!!』

 

『はい!! ジェシカです!! なんでしょうか!!』

 

『……なにをしているんです』

 

そんな声が聞こえてきた、リスカムが呆れている

どうやら何か食べていたらしい、ジェシカはぎりぎり飲み込んだようだがバニラは隠せていない

 

「あらあら、二人とも何をしているのかしら」

 

真後ろから声がする、振り向くとフランカがいつの間にか合流していた

 

『(ゴクン)いえ!! なにもしていません!! なにか食べてなんていませんよ!!』

 

「あら、なにを食べているか、なんて聞いていないわよ?」

 

『あっ』

 

『すいません、つい…………』

 

自分で墓穴を掘っている、あとでフランカからひどい目にあうだろう

心の中で黙祷しつつ、フランカの方を向く

 

「三人とも、お待たせ」

 

「いえ、来ていただきありがとうございます」

 

『フランカ、無線の内容は』

 

「しっかり聞いてたわよ、あっちの二人と違ってね♪」

 

『『うぐっ!!』』

 

『ならばいいです、標的は正門に向かっています。バニラ達が男の足を止めている間

に周りを囲んでください』

 

『えっ、私たちですか?』

 

『あなたたちの方が近づくのに自然な位置にいます。ふざけないで、真面目にお願い

しますよ』

 

『はい!! わかりました!! 頑張ります!!』

 

バニラが大きく返事をし、行動を始める

相手は一人、無意味な抵抗はしないだろう

ニット帽の後を追う、このまま平穏に終わるといいのだが

 

 

 

 

 

ニット帽が正門に到着する

 

「こちらフェン、正門につきました」

 

『了解です、こちらからも視認できています』

 

バニラが返答する、見てみるとちょうどニット帽の前方に二人がいた

まだ合流できていないリスカムから無線が来る

 

『ではバニラ、適当に話しかけてください』

 

『えっ!! 私ですか!!』

 

『ええ、お願いしますよ』

 

リスカムに名指しされ、慌てるバニラ、その横ではジェシカがほっとした顔をしている

 

『なぜ私がやるんですか!!』

 

『なんとなくです、ほら、早くしなさい』

 

『せ、せめて話題の提供とか…………』

 

『それぐらい自分で考えなさい』

 

『え~………………』

 

渋々とした様子でバニラがニット帽に近づいていく

それに合わせて、ゆっくりまわりを包囲していく

 

「あの~、そこのおにいさん」

 

「ん、なんだ?」

 

バニラが相手の前に立つ、ニット帽がバニラに視線を向ける

 

「えーと、えーと」

 

「どうした、話があるんじゃないのか」

 

とっさにいい話題が思いつかなかったのか、ニット帽の前で言い淀む

ニット帽はバニラが何か言うまで待ってくれている、根はいい人なのかもしれない

 

「あ~と、その~、そうだ!!」

 

「なんだ」

 

何か思いついたらしい、バニラが言葉を絞り出す

 

「今日は!! いい天気ですね!!」

 

そんなことを言い出した

 

「……あのバカ」

 

「え~……」

 

「いや、仕方ないというか、突然でしたし…………」

 

「まあまあ、フランカさん落ち着いて」

 

バニラの発言に四者四様の反応をする

対するニット帽は

 

「……そうだな、いい天気だ」

 

思いのほか食いついた、続けて言う

 

「本当に、いい天気だ…………」

 

上を見上げながら、しみじみとニット帽が言う、その目はどこか悲しそうだ

 

「あっと……」

 

「で、それだけか?」

 

ニット帽がバニラに向き直る

 

「あ、いや、その、まだ」

 

「まだ何かあるのか?」

 

「いえ、その…………ごめんなさい!!」

 

「急になんだ?」

 

相手の反応にどこか罪悪感を感じたのだろうか、バニラが頭を深く下げる

そして頭をあげニット帽に目を向ける、その目には強い意志を感じた

 

「いきなり何を――――ああ、そういうことか」

 

「本当にすいません、どうか、抵抗しないでください」

 

バニラが警棒を取り出す、それを見たニット帽が何かを察する

 

「まんまとハメられた、ということか」

 

ニット帽の周囲にはすでに包囲網が張られていた

 

「他の二人はもう捕まえたわ、おとなしくしなさい」

 

「誰からこのことを聞いたんだ?」

 

「あなたには関係ないことよ」

 

「そうか」

 

フランカが武器を構える、ジェシカは拳銃を、他の者は警棒を、

6対1だ、戦力差は圧倒的、降参するのが利口だろう

 

「さあ、一緒に来てもらいましょうか」

 

フランカが手錠をもってニット帽に近づく

ニット帽が口を開く

 

「悪いが――」

 

ジェシカに視線を向ける

 

「へ?」

 

「断る!!」

 

ニット帽がジェシカに向かって突撃する

 

「ちょ、止まってください!!」

 

「ジェシカ!! 撃ちなさい!!」

 

「どけっ!!」

 

「きゃあっ!!」

 

とっさのことで反応できなかったのか、反撃できずにニット帽にジェシカが突き飛ば

されてしまう

体格差があったのだろう、ジェシカが大きく吹っ飛ぶ

 

「先輩!!」

 

「ジェシカさん!!大丈夫ですか!!」

 

バニラとメランサがジェシカに駆け寄る

 

「きゅ~…………」

 

打ち所が悪かったのか、目を回してしまっている

 

「待て!!」

 

「逃がさないよー!!」

 

フェンとカーディがニット帽の後を追う

 

「リスカム、ごめんなさい、奴を逃がした」

 

『どこに逃げましたか?』

 

「検閲門の方」

 

『なら、龍門警察がいるはずです。協力してもらいましょう』

 

「でもどうしてあっちに……」

 

『それはわかりません、ですが数の優位はこちらにあります、取り押さえるか動きを

封じてください』

 

「わかったわ」

 

少し遅れてフランカが動く、追走劇が始まった

 

 

 

 

 

「はあっ、はあっ」

 

ニット帽が走る

 

「こらまてー!!」

 

「止まりなさい!!」

 

フェンとカーディが追いかける

場所は検閲門内、龍門に入るために並ぶ人たちとそれを整理する龍門警察が大勢いた

 

「奴が例の標的よ、協力して」

 

「あいつだな、了解した、こちらNO0032142――――」

 

二人の後ろではフランカが警察に協力を仰いでいる、警察もすぐに対応してくれている

 

「なんだ? なんの騒ぎだ?」

 

「映画の撮影?」

 

その様子を見てのんきな反応をする群衆

 

「ったく、しつこいな…………」

 

ニット帽が追いすがる二人を見てひとりごちる

 

「無駄な抵抗はよしなさい!!」

 

フェンがニット帽にむけて叫ぶ

 

「もう逃げられないぞー!!」

 

カーディも負けじと声を出す

 

「っくそ!!」

 

追いつかれまいと速度を上げる

だが

 

「そこまでだ!!」

 

「おとなしくしろ!!」

 

ニット帽の前に警察が立ちはだかる

 

「っ!! ちぃっ!!」

 

ニット帽が逃げる方向を変えるために速度を緩める、しかし

 

「くそったれ、対応がはやいな」

 

すでに警察に囲まれていた、逃げ場がない

 

(このままではまずい、なにか、打開策を――――)

 

男が周囲を見渡す、そして、ある少女が目に入る

 

 

真っ白な髪をしたフェリーンの少女、親とはぐれたのか、一人でウロウロしている

 

「――――ッ!」

 

ニット帽はポケットを触る、そこには硬い感触が

 

「………………」

 

最低な選択肢が頭をよぎる、これはやってはいけないことだ

 

「抵抗はやめておとなしくしなさい!!」

 

警察の声が耳に響く、今、自分が捕まるわけにはいかない

 

「あーっ!! クソッ!!」

 

背に腹は代えられない、ニット帽は決心する

 

少女に向かって走る

 

「おい!! なにをするつもりだ!!」

 

ニット帽の意図に気づいた警察が呼び止める、だがもう遅い

 

「うにゅ?」

 

「悪いが、一緒に来てくれ」

 

「にゃー」

 

少女に手を伸ばし引き寄せる

 

ポケットの中のものを取り出し、天井に向ける

 

パァン!!

 

乾いた音が周囲に響いた

 

 

「近寄るな!! 近づけばこの子を殺す!!」

 

「なっ!!」

 

「しまった!!」

 

追い詰められたニット帽が近くにいた少女を人質にとった

 

「キサマ!! 自分が何をしているかわかっているのか!!」

 

「ああ!! わかってる!! あんたらがむやみに手を出せなくなったこともな!!」

 

「くっ!!」

 

最悪だ、ニット帽の手には銃が握られている、隠し持っていたのだろうか

 

「えっ? なんでリンクスちゃんがここにっ!?」

 

「え?」

 

カーディの声に抜けた反応を返してしまう

 

「にゃー」

 

リンクス、昼間の男が探していた子の名前だ、また迷っていたのだろうか

だが、運悪くニット帽の逃げた先にいたらしい

 

「動くなよ、この子に無事でいてほしいならな!」

 

「その子を離しなさい!!」

 

ニット帽に呼びかける、だが言う通りにはしないだろう

 

「おい!! あいつ、銃を持ってるぞ!!」

 

「えっ!! うそでしょ!!」

 

「誰かっ、助けて!!」

 

先ほどの銃声が聞こえたのだろう、群衆がニット帽の銃に気づき、パニックになる

 

「ちょっと!! 皆さん落ち着いて!!

 

「どうか落ち着いてください!!」

 

「たすけてくれー!!」

 

人の波が一気に動く、フランカと何人かの警察が巻き込まれて流されてしまう

 

「あんたら、そこをどきな」

 

「その前にその子を離しなさい」

 

ニット帽が下がるようにこちらに言ってくる

その傍らには、状況がつかめていないのか、きょとんとした顔の少女がいた

 

「むー?」

 

「悪いな嬢ちゃん、少しの辛抱だ」

 

「むー」

 

ニット帽がそう言い、少女に銃口を向けながら歩いてくる、引き金に指はかけられていない

 

「っ!!」

 

フェンがそれに気づく、説得すればまだ何とかなるかもしれない

 

「こんなことをして、どうにかなると思っているんですか?」

 

「さあ、どうにもならないかもしれない、だが、何もしないよりかはまだマシ

だ…………!!」

 

ニット帽が言う、やけくそになっているらしい

せめて少女だけでも保護できれば

必死に思考をめぐらせる、そのとき、

 

 

「おーおー、リンクス、随分と面白いことになってるじゃないか」

 

男がやってきた

 

 

「えっ?」

 

聞き覚えのある声が横から聞こえ、目を向ける

 

「あなたはっ!?」

 

「よう、クランタのお嬢さん、さっきぶりだな」

 

そこには、少女の保護者であろう人物が立っていた

 

「変態紳士!!」

 

「えぇっ!! この人が!?」

 

驚きのせいでつい、失礼な呼び方をしてしまう

男はそれを聞き、渋い顔をする

 

「おぉっ、中々どうして、手厳しいじゃないか……」

 

「あっ、いや、すいません、その…………」

 

「構わねえよ、大方、細目の嬢ちゃんが言ったんだろうさ」

 

謝らなくていい、そういいながら手をひらひらする男

 

「おい君!! ここは危険だ!! 下がっていなさい!!」

 

近くの警察が男に近寄る、すると男は

 

「おう、お巡りさん、真面目なのは結構だが」

 

そういい、警察に手を伸ばし

 

「今は、下がっててくれ」

 

警察を軽く押し、後ろに下がらせる

 

「ま、待ってください。ここは、私たちに任せて下がって…………」

 

「まあまあ、お嬢さん」

 

男がフェンの肩に手を置く

 

「ここはお兄さんに任せなさい」

 

「いやっ、ちょっと!!」

 

そう言って、フェンを押し退けてニット帽の前に出る

 

「なんだあんた、何者だ?」

 

「だーれだ?」

 

「知るか」

 

「正解は、そいつの保護者♪」

 

「…………助けに来たってことか」

 

「そゆこと」

 

ニット帽が警戒する、男が近づく

 

「近寄るな、この子が心配ならな」

 

「おう、これ以上は近寄らねえさ」

 

男が足を止める、ニット帽との距離は狭くはない、

男の十歩分はあるだろう、直接手を出すのは不可能だ

 

「すとれいどー」

 

「よう、楽しそうだな」

 

少女が男に呼びかける、男がそれに応える、その声色には緊張感が感じられない

 

「おなかへったー」

 

事態が飲み込めていないのか、そんなことを言う

 

「こらこら、周りを見ろ、周りを、いろんな人に迷惑かけてるんだぞ?」

 

「むー」

 

「あとでなんか美味いもんでも食わせてやるから、おとなしくしてろよ」

 

とても知り合いを人質に取られているとは思えない会話を繰り広げている

 

「おい、あんたら、状況が理解できてねーのか?」

 

ニット帽も同じことを思ったんだろう、男に話しかける

 

「安心しろ、ちゃんとわかってるさ、うちのバカ娘が世話になってるらしいじゃないか」

 

「なら、そこをどけ」

 

男は下がらない、だが話すだけでなにもしようとしない

少し不気味だ

突然、少女が喋る

 

「すとれいど」

 

「んー?」

 

「だめ」

 

「んー」

 

「なんだ、何を言っている」

 

二人の主語のない不明瞭な会話を聞き、ニット帽が疑問を抱く

かまわず続ける二人

 

「だめ」

 

「んー」

 

「だめ」

 

「んー…………」

 

何を相談しているのかはわからない、唯一理解できるのは

 

「だめ」

 

少女が男に何かをやめさせようとしていることだけ

 

「ふむ」

 

男がなにかを決めたように頷き

 

「断る」

 

否定の意を示す

 

「妙な動きをするんじゃねえぞ」

 

ニット帽が警告する、銃を握る手に力がこもる

 

「ニット帽の兄ちゃんよー」

 

ニット帽に声をかける

 

「一応言っておくが、今のうちに降参した方が身のためだぞ」

 

「…………今更できると思うのか?」

 

「無理だな」

 

「なら、さっさとそこを――」

 

男の呼びかけに答えるニット帽、だが答え終わる前に

 

「どけ――」

 

男が動き出す

 

「――っ!!」

 

腕をあげる、指先を銃に見立てた形でニット帽にむける

 

瞬間、

 

 

空気が凍った

 

「ひっ!?」

 

ニット帽の顔が歪む

 

「なにっ!? この感じ…………」

 

フェンの体を悪寒が走る、原因はわからない

 

「体が…………動かない…………!」

 

カーディも同じ現象が起きているのだろうか、体が小刻みに震えている、先ほど男を止めようとした警官も

 

「なんだ…………これは………………」

 

ニット帽の体も震えている、寒さからではない

 

「あんた、何をした……?」

 

これは恐怖だ、今この場にいるものは何かに、誰かにおびえている

 

「いんや、何も」

 

力を誇示されたわけではない、もっと別の、本能の奥底からくるものだ

 

「おにいさん」

 

「っ!?、なんだよ…………!」

 

少女がニット帽に声をかける

 

「じゅうをおろして」

 

「ぐっ、嫌だね……!!」

 

少女の要求を断るニット帽、かまわず少女は続ける

 

「おろして」

 

「断る……!!」

 

「おろして」

 

「断る!!」

 

「おろして、じゃないと」

 

少女がニット帽に語り掛ける

 

「ころされる」

 

「? 何を…………!」

 

少女の言葉が終わった瞬間、悪寒がさらに増加する

 

心臓をわしづかみにされている感覚に陥り、脳が警鐘を響きならす

 

足がガクガクと震える、立っているのもやっとだ

 

「五つ」

 

「へっ!?」

 

男がニット帽に話しかける

 

「五つ数える」

 

「…………なんだよ」

 

「それまでに、そいつを離せ」

 

「何を言っているんだ!! テメエは!!」

 

ニット帽は恐怖が振り切ったのか、逆上し叫びだす

 

「5]

 

「やめろ……」

 

ニット帽の顔がさらに歪む

 

「4」

 

「数えるんじゃねえ!!」

 

見る見るうちに顔色が白くなっている

 

「3」

 

「きいてねえのか!!」

 

冷えた脂汗が頬を伝う

 

「2」

 

「やめろ…………!」

 

引き金に指がかけられる

まずい、止めなければ、フェンは動こうとする、しかし体がゆうことを聞いてくれない

 

「1」

 

「やめろおぉぉぉぉ!!」

 

ニット帽は絶叫し男に銃を向ける

 

次の瞬間

 

 

乾いた音が周囲に響いた

 

 

 

 

「…………あっ?」

 

だが撃ったのはニット帽ではない

 

「…………ああぁ」

 

ニット帽が銃を取りこぼす

 

「あああああああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

その腕には、無数の穴が開けられていた

 

「あああ!! 俺の腕がああああ!!」

 

傷口から思い出したかのように血が噴き出る、あまりの痛みにのたうち回る、ニット帽の周囲が赤く染まっていく

 

「すとれいど」

 

「おう、無事か?」

 

「うん」

 

少女が男に駆け寄る

 

「ちょっと!! すごい声が聞こえたけど、何があったの?」

 

人ごみからようやく抜け出すことができたらしいフランカが

 

「って、あら、あなたは、確か…………」

 

男の姿を見て、何かを言おうとする

 

「一体…………何が?」

 

フェンが驚愕の声をあげる

何が起きたのかわからなかった

 

「ふう、やれやれ」

 

唯一わかっているのは

 

「ねぇ、ちょっと、そこのあなた―――」

 

「おいキサマ! それはなんだ! なぜ銃をもっている!?」

 

男の手にいつに間にか銃が握られていたことだけだ

 

「動くな! 銃をゆっくり下に置くんだ!」

 

警官が男を止めようとする

 

「おっと、悪いなお巡りさん」

 

「っ!! 妙な動きを取るな!!」

 

男がおもむろに警官に近づく

 

「何をするつもりだ!!」

 

「コレ、借りたよ」

 

「なっ!?」

 

そう言い警官の手を無理やり取り、銃を押しつける

それはその警官のものだったらしい、実際、警官の腰についているホルスターには何も入っていない

 

「いつの間に!?」

 

警官が動揺している、いつ盗られたのかわからなかったのだろう

 

「ついでに君にこれをあげよう」

 

「えっ? あ、はい」

 

フェンにも一つ、何かを握らせる

 

「これは…………」

 

「じゃ、そうゆうことで」

 

どうゆうことだ、男になにか言おうとする

 

ピンッ

 

何かが小気味よく抜ける音がする、フェンの手の中にあるもの、それは

 

「グレネードだああああ!!」

 

フェンが叫ぶ、同時に小さな筒がはじけ、あたりに煙をまき散らす

 

「ぎゃー!!」

 

フェンが情けない悲鳴を上げる

 

「あ!! ちょっと!!」

 

フランカが誰かを呼び止めようとする声が聞こえる、だがまかれた煙で何も見えない

 

「げほっ、げほっ」

 

カーディがせき込む

 

「ごほっ、何が起きているんです!!」

 

ようやく合流できたらしい、リスカムの声が聞こえる

 

「けほ」

 

少女の咳が聞こえる

 

「アディオスアミーゴォ!! ふぅはははははぁ!!」

 

高笑いする男の声が遠くなっていく

煙が晴れ、その場に残されたものが、少しづつ見えてくる

そこにあったのは

 

「あれ?」

 

血を流し横たわるニット帽と

 

「あら?」

 

グレネードの衝撃で気絶したフェンと

 

「おや」

 

白い髪の少女

 

「むー?」

 

こうして、謎の手紙から始まった捕獲作戦は

 

「あれー?」

 

いくつかの謎と

 

「すとれいど、どこー?」

 

一人の少女を残し、終結した

 

 




これにて一章は終了です、ここまで読んでくださりありがとうございます
次の二章は全体的に短くなる予定です
その代わりそこから派生するサイドストーリーが多いのですがそれはまた別のお話
どうぞよしなに
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