アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里   作:Thousand.Rex

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12/8 修正しました(悪化してたやんけ……)


一章サイドストーリー~CEOの優雅な日常~
彼女の名を知っているか?


    龍門市街 裏路地

 

 

アーミヤとドクターはほかの面子と離れ、かつてレユニオンと壮絶な鬼ごっこを繰り広げた路地に来ていた

なぜ二人がここにいるのか、もちろんアーミヤが無理やり連れ込んだわけではなく、その逆はまずありえない

事の発端は計画書を見つけた時に遡る

 

 

 

 

 

「謎の袋?」

 

夜深く、執務室で揺れる二人と一機の影

 

『はい、倉庫の荷物に混ざっていたとか』

 

アーミヤとドクターが書類仕事をしているとCastle-3が赤く染まったビニールに入った何かを持ってきた

 

「真っ赤、ですね」

 

『ええ、真っ赤です』

 

中身が見えないほどに真っ赤に染まった袋、なにやら変わった異臭がする

 

『スキャンの結果、中には複数の書類が入っているのが確認できました』

 

「何か臭わないか? こう、ツーンと来るというか、何というか」

 

「そもそもなぜこんな色になっているんですか?」

 

『さあ、見つけた時にはもう、殺人事件のようにインクが散らばっていたので』

 

「インク?」

 

『はい、インクです』

 

アーミヤの疑問に簡潔な答えが返される

 

「なんのためにそんな」

 

『はて、少なくともわかっているのは

マスタークロージャが激昂しているという事実だけです』

 

Castle-3が他人事のようにそう言い放つ

 

 

 

Castle-3、クロージャが独自にカスタマイズしたロボットで他と比べ、かなり高知能なAIが組みこまれている

彼と同型でもう一機、医療ロボットがいるのだが、なぜだか彼らは生みの親であるクロージャに対して冷たい

愛を注ぎすぎたのだろうか?AIだけに

 

『ドクター様、お気を付けください。正体不明の理由により室内気温が下がりまし

た。新手の攻撃かもしれません』

 

「気のせいじゃないか?」

 

Castle-3がそんなことを言いアーミヤからドクターを隠すように立ちふさがる

くらべてドクターはさして気にしていない様子だ

渾身のギャグをけなされ少々気分が沈んだが、それを表に出さず話を続ける

 

「中身は何の書類なんです?」

 

『開けてみなければ、わかりません』

 

「やっぱりなんか臭いぞこれ、鼻がまがりそうだ」

 

『私に嗅覚はございません、故に、問題ありません』

 

訂正、誰にでも薄情だった

 

「とにかく、開けてみましょう、このままでは何も始まりません」

 

「そうだな…………さて、ハサミは何処だったか」

 

封を開くためにハサミを取り出しドクターが袋に手を伸ばす、すると

 

「うっ!!」

 

ドクターがうめき声をあげ、一瞬で手を引っ込め、後ずさる

 

「どうしました?」

 

「いや、その、開けようと思ったんだが、近くだと、さっき以上に匂いが…………」

 

「そんなに酷いんですか?」

 

「ああ、かなり酷い」

 

ドクターがしかめっ面でいう、少し興味が出てきたアーミヤも試しに近づくと

 

「うっ!!」

 

ドクターと全く同じモーションで後ずさる

 

「これは…………」

 

アーミヤが戦慄した表情で袋を凝視する

 

「な? 酷いだろ?」

 

ドクターが同意を求める

 

「あまり近づきたくはないですね……」

 

「Castle-3、切ってくれないか?」

 

『私に手はございません、この袋を開けることは私にはできません』

 

Castle-3に助けを求めるも速攻で拒否される

 

『アーミヤ様、あなた様はこのロドス・アイランドのリーダー、いわゆるCEOと呼ばれる立ち位置です。ここでトップに立つ者の気概を見せずして皆に何を語れましょうか。さあ、今こそ立ち上がるときです、アーミヤ様』

 

何の前触れもなく、アーミヤに対してとんでもない無茶ぶりをかましてきた

 

『さあ、アーミヤ様』

 

「えっいやっちょっと」

 

不思議な力でCastle-3が袋を手に取り、アーミヤの方を向く

 

『さあ、アーミヤ様』

 

「ちょっと、ちょっとだけ待ってください」

 

『さあ』

 

Castle-3が近づいてくる

 

「待ってください、心の準備というものが」

 

『さあ』

 

Castle-3がさらに近づく

 

「待って待って――臭い!! 待ってください臭いですお願いです待ってください!!」

 

『さあ』

 

独特な異臭が近づいてくる

 

「あっ!! まってまってまってください!! 臭いです辛いです臭いです辛いです!! ドクターの前で無理やりこんなことをやらせるんですか!?ああでもそう考えるとちょっと興奮してきました……あぁ!! やっぱり無理です!!」

 

「お前はなにを言っているんだ」

 

ドクターがそっとツッコミをいれる

 

『さあ』

 

「無理です無理です!! 誰かたすけてー!!」

 

よほど酷いのだろう、アーミヤにしては珍しく悲痛な叫びをあげる、しかしてその声は

 

バァン!!

 

届くべきとこに届けられてしまったようだ

 

『何者だ!!』

 

乱暴に開け放たれた執務室の扉のそばには一つの影

 

「あなたは!?」

 

「おまえは!?」

 

『貴様は!?』

 

「「『マスクド・ケルシー!!!』」」

 

金色の美しい髪に、どこかで見たような白衣

 

「来てくれたんですね!! マスクド・ケルシー!!」

 

ウサギの輪郭を雑にかたどった段ボール製のマスクをかぶる女性

そして、マスクにはこう書かれている

 

I love Amiya

 

その一文が、彼女のすべてを物語っていた

 

『マスクド・ケルシー!! いいところで邪魔しにきおってぇ!!』

 

Castle-3が悔しそうに歯噛みする、歯、無いのに

 

『だが今回は!! 秘密兵器を用意しているのだ!!』

 

兵器が兵器を用意する、前代未聞の事態である

 

『対マスクド・ケルシー抹殺兵器!! どくたークン!!』

 

「ドーモ、ますくど・けるしー、サン、どくたークン、デス」

 

ドクターのような…………というよりまんまドクターがマスクド・ケルシーの前に立ちはだかった

 

『やれい!! どくたークン!!』

 

「どくたークンびーむ、すたんばい」

 

そういいながら気怠そうな動きで三分で帰るヒーローがやりそうな構えを取り、

 

「びびびびびびびびびび」

 

やる気のない音だけが飛んでいく

 

だが、マスクド・ケルシーには何か見えているのか、大仰な動きで何かを躱す様に動きながら

 

「シマッタ、フトコロニモグリコマレテシマッタ」

 

どくたークンに接近し

 

「ふん!!」

 

「うぼぉああああぁぁぁぁ!!!」

 

渾身のボディブローをかます

地に沈む鉄仮面

 

『なんだと!! 私の叡智の結晶を一撃で!!』

 

叡智という言葉を学びなおしてほしい

 

どくたークンを下したマスクド・ケルシーは流れるようにCastle-3に近づき、

 

「おぉぉらあああぁぁぁ!!!」

 

『ぐわあああああああああああああああ!!!』

 

男らしい掛け声とともにCastle-3を蹴り飛ばした

飛ばされたCastle-3はそのまま壁にぶち当たる

 

『外装部分へのダメージが規定値を超えました。これより強制シャットダウンを始めます。再起動には時間がかかります、ご注意ください。シャットダウンを終了します』

 

そのまま息を引き取るCastle-3

さらに動き続けるマスクド・ケルシー、その手にはいつ握られたかもわからない一つのハサミ

マスクド・ケルシーは諸悪の根源に立ち向かう、そう、赤い袋だ

封を開けようと手を伸ばす、が、マスクド・ケルシーの動きが止まる

彼女の力をもってしてもあの耐え難い悪臭には勝てないのか、誰もがそう思い絶望した

だが、彼女は違った、彼女だけは最後までマスクド・ケルシーを信じていた

 

「負けないで!! マスクド・ケルシー!!」

 

彼女は祈る、祈ることは立派な信仰だ、それは確かに、かの者に力を授けた

 

「っ!? うおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

最後の力を振り絞り、袋を手に取るマスクド・ケルシー

 

「だああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

袋の端にハサミを合わせ、力を込める

赤い袋は思いのほか抵抗せずにスパスパ切れていく

 

「ふん!!」

 

ある程度切ると中の書類だけを執務机に吐きだして外装はゴミ袋に放り投げる

 

「やった!! やりましたよ!! マスクド・ケルシー!!」

 

少女は歓喜する、それに応える様にマスクド・ケルシーは再び動く

アーミヤに背を向け、片手を腰に当て、もう片方を天高く上げる、指先は太陽を指している事だろう

これは、マスクド・ケルシーの勝利のポーズ

今、戦いは終わったのだ、偉大なる戦士の名のもとに

 

コンコン、

 

ノックの音にアーミヤ、ドクター、マスクドケルシーが一斉に反応する、そこには

 

「落ち着いた? 三人とも」

 

ロドスのエリートオペレーター、ブレイズの姿があった

 

「仕事が忙しいのはわかるけど、ちゃんと寝なきゃだめだよ」

 

優しくさとすように言い、手元の時計を向けてくる

 

「今、何時か見えるかな?」

 

三人は何も言わない、ただそこには

 

「いつから起きてるの? 仮眠ぐらいはとったよねってあれ?」

 

物言わぬ三つの死体と一機の残骸が、眠っていた

 

後日、K氏が語るに、あの場にいたものは皆、理性がマイナスに振り切っていたという

 

 

 

 

その後、正常な判断ができるようになるまで睡眠をとり、袋に入っていたファイルと対面する

 

Castle-3は修理に出された

 

「はてさて、何が書いてあるのか」

 

「そもそも誰が置いていったんでしょうか?」

 

アーミヤとドクターは入っていたものを改めて確認する

そこには、いくつかの見取り図と一枚の封筒が入っていた

 

「…………誰からだ?」

 

ドクターが疑問を口に出す

 

「まず第一に、誰に宛てたものなんでしょうか?」

 

アーミヤは封筒を手に取りくるくるまわす、表にも裏にも宛名はない

仕方なく中身を取り出す、そこには

 

『相手はレユニオン』

 

ロドスと因縁深い組織の名と

 

『会いたければここに来い』

 

という意図のわからぬ二文、そして恐らくここで待っているのだろうか

龍門市街のとある座標と、日付が書き込まれていた

 

「『会いたければここに来い』…………一体どういうことでしょうか」

 

手紙の内容の不可解さに困惑する

一瞬、罠に誘っているのかと思ったがわざわざ名指ししているということはレユニオンとは関係ないのかもしれない

そうなるとロドスとレユニオンとは関係ない、別の組織の仕業だろうか、思考をめぐらせる

 

「………………」

 

隣を見てみるとドクターが図面とにらめっこしていた

 

「ドクター、何が書いてあったんですか?」

 

「……………………」

 

ドクターに問いかける、しかし返事は返ってこない

 

「ドクター?」

 

再び呼びかける

 

「………………」

 

よほど集中しているのだろうか、図面を見つめて微動だにしない

このままにしておくか、一度止めておくか考える

そこでテキィィィン! と、アーミヤの頭を邪念がよぎる

 

(今なら、ハスハスしてもばれないのでは!?)

 

アーミヤはドクターに絶対の信頼を寄せている、理由は記憶を失くしている今のドクターにはわからない

だが他のロドスの面々に比べると異常なほどに懐いている、執着といってもおかしくはない、信頼度ゲージはとうに振り切っている

ドクターは軽くあしらっているが彼女が彼に行う行動は、周囲の人間が見ていて引くほどのものだ

そして今、アーミヤは彼のにおいを嗅ぎにかかっている、本人曰く、安心するらしい、はたから見ると興奮しているように見えるが

 

余談だが、ウサギは年がら年中発情期である、ドクターの明日はどっちだろうか

 

(いける!! 今ならハスハスできる!!)

 

獲物に狙いを付ける、ドクターはじっと図面を見ている、今なやれる

獣がじりじりと近づいていく、焦ってはいけない、確実に狩れるタイミングで動くのだ

ドクターは動かない、こちらの思惑に気づいてはいない

 

(いま!!!)

 

狙いを定め、アーミヤがドクターにハスハスするため地を蹴り飛びかかる

 

「アーミヤ」

 

「!?」

 

が、突然ドクターがアーミヤに呼びかける、とっさに踏ん張り動きを止める

 

「これを見てくれ、君の意見が聞きたい」

 

ドクターはアーミヤの動きに気づかず、図面を彼女に渡す

 

「…………はい、どれでしょうか」

 

あからさまにテンションが下がっている彼女を見て一瞬首をかしげるドクター

 

「? …………どうかしたか?」

 

「イイエ、ナンデモ」

 

「そうか」

 

彼に悪気はない、彼女にも悪気はない

 

最高に高めたフィールが暴落し、代わりに理性が戻ってくるのを感じながらドクターから図面を受け取る

 

「これは、龍門の図面ですか?」

 

「ああ、そうだろう」

 

アーミヤの解答にドクターが肯定する

 

「しかし、ただの図面にしては妙ですね」

 

ただの龍門の地図ならそれでいい、だがそこにはいくつかの襲撃ルート、相手を妨害するのに適した行動指針、そして実行されるであろう日付が書きこまれている

 

「私たちがやれ、ということですかね」

 

「たぶんな」

 

龍門が狙われているなら龍門に流せばいいのにと考える

しかし龍門警察は厳しい組織だ、出所不明の怪しい書類の情報だけで動くとは思えない

差出人はそれを危惧しロドスに渡したのだろう、だがなぜロドスなのか、それがわからない

可能性としては、ロドスと龍門が結んでいる契約だろうか、だがこれは公表されていない情報のはず

 

「むぅ…………」

 

ドクターが手紙に視線を向ける、そこにはこう書かれている

 

 

『会いたければここに来い』

 

 

「…………ふむ」

 

何かを決心したように、ドクターが一人頷く

 

「……やりますか?」

 

アーミヤが問いかける

 

「そうだな」

 

一言、彼はそう言った

 

 

 

そして現在、二人は指定の場所である裏路地に足を運んでいる

位置には着いた、後は時間になるのを待つだけだ

ドクターが周囲を見回す、それらしき人物はまだ何処にもいない

アーミヤは後ろで無線を聞いている、迷子の連絡がインカムから流れている

人探しと偵察隊はあちらに任せよう、今の二人にとって重要なのは謎の手紙の差出人

 

ほどなくして、指定された時刻になる

 

「やあドクター、アーミヤ、久しぶりだね」

 

後ろから声をかけられる

 

「あなたは……」

 

声の主に目を向ける

 

「君が、手紙の送り主か?」

 

そこにいたのは、全く予期していなかった人物

 

「おめでとう、君たちは彼とまみえる権利を手に入れた」

 

ペンギン急便の謎多きトランスポーター、モスティマだった

 




マスクド・ケルシー

ロドスに所属する謎多きオペレーター
美しい金髪に、どこかで見たような白衣をまとう女性
彼女は一般的な作戦に姿を現すことはない
ロドスのリーダー、アーミヤの身に危機が迫ったときのみ現れる
その戦闘力は大地を砕き、海を割る
何故かドクターへの殺意が高いらしい
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