アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
乾いた拍手の音が路地に響く
「おめでとう、君たちは彼にまみえる権利を手に入れた」
そう言い放ったのは、ペンギン急便に所属する神出鬼没のトランスポーター、モスティマだった
「あの手紙は、君が書いたものか?」
ドクターが訪ねる
「いや、私が書いたものではないね」
モスティマが否定する
彼女の所属している組織、ペンギン急便とロドスはつながりがある
主に情報提供や物資輸送を頼むことが多いのだが
「ならば、どうしてここにいる?」
彼女はチームで動くペンギン急便の他の面子と違い、一人でいることの方が多い
「言伝を頼まれた」
どこか掴みどころのない彼女を、必要な時に探し出すのは難しい
一か所に留まらず、自由気ままにあちこち旅してまわっているらしい
「どなたにですか?」
「お友達」
アーミヤの問いに笑顔で答える
彼女の交友関係は少々、いやかなり特殊だ
特定の誰かに入れ込まず、一定のラインを保って人と接する
モスティマは自分の意思でしか動かない
そんな彼女を動かす誰か、あるいは何か
「ペンギン急便が関係してるのか?」
「いや、コーテイ達は関係ないよ。動いているのはわたしだけ」
自分だけが関係している、モスティマの答えにドクターがさらに疑問を投げかける
「どこかに雇われたのか?」
「いいや、誰かに頼まれたんだ」
誰か、個人に頼まれたということだろうか
「誰かとは?」
「どこかの誰かさ」
どうやら答える気はないらしい、おそらくは手紙の送り主だろう
質問を変える
「何故ここにいる?」
少し前の問いをもう一度投げかける
「言ったろ? 言伝を頼まれたって」
同じ答えが返ってくる
彼女は今の自分たちに必要な情報を持っているようだ
「その伝言の内容は?」
アーミヤが聞く
「別に難しい話じゃない、たったの五文さ」
モスティマが握った手を持ち上げ、指を一本開く
「一つ、相手は離反したレユニオン」
二本目を開く
「二つ、偵察隊を生かして捕らえろ」
三本目、
「三つ、本隊は爆弾を持っている」
「!?」
三つ目の内容を聞かされ、二人に緊張がはしる
「…………相手はテロを起こすつもりなんですか?」
「そうだね」
アーミヤの言葉に肯定する
「それも中々厄介だ、なんたって自爆テロだからね」
「…………なんだと?」
モスティマの言葉にドクターが驚愕する
レユニオンはかなり過激な攻撃思想を持つ組織だ、実際、チェルノボーグでの戦いで彼らの異常さを目の当たりにした
「離反したとはどういうことだ」
だが彼らは感染者のために立ち上がった集団だ
相手に打撃を与えるためにそんな、誰を巻き込むかもしれない無差別攻撃を仕掛けるとはさすがに思えない
「そのままの意味さ、レユニオンのやり方に納得できずにあそこを出てった、そんな
人たちさ」
彼ら以上に苛烈な思想の持主なんだろうね、モスティマがそう続ける
「……偵察隊は、第一波なのか?」
「いや、偵察隊はほんとにただ、偵察するだけらしいよ」
それを聞いて少し安心する、ならばまだ間に合うかもしれない
「アーミヤ、他の皆に連絡を」
「わかりました」
動いている部隊に伝えようと指示をする
「まったまった、あと二つ残ってるよ」
「ああ、わかっている」
モスティマが引き止め、ドクターが続きを話す様に促す
彼女が四本目の指を開く
「四つ、襲撃隊が動くまで五日ある」
猶予はあまりない、すぐに行動を起こすべきだろう
五本目の指が開かれる
「五つ、お前を見ている」
「…………?」
そして最後の伝言が言い渡される
が、その内容はよくわからない
「どういうことだ?」
「近くで君たちの動きを見ているってことさ」
どうやら差出人は存外近くにいるらしい
現時点では心当たりがない
「これで終わり、後はもう何もないよ」
「そうか、ありがとう」
「いやいや、礼を言うなら彼に言うといい」
わたしはただ頼まれただけ、モスティマが手をおろす
「しかしまさか、君たちが来るとはね」
「知らされてなかったのか?」
「うん、何も、ここに来た人にこう伝えてくれって言われただけ」
モスティマが笑って話す、彼女を顎で使うような人物なのかと少し驚く
「そうかそうか、君たちか……」
ふと、優しい笑顔を浮かべる彼女
「それなら、彼について少しヒントをあげよう」
楽しそうな顔で、そういってくる
「ヒント、ですか、正体は話してくれないのですか?」
我ながらがめついとは思いながら聞いてみる
「駄目だね、本人からきつく言われてる」
「なら、ヒントもダメなんじゃ」
「何も言うな、とは言われてないからね」
そう言いながら、もう一度手を上げる
「ヒントは、五つ」
今度は手を開いた状態で言ってくる
アーミヤとドクターは静かに耳を傾ける
モスティマの指が一本、静かに閉じられる
「一つ、回りくどい」
そう言われ、ここに来た原因である手紙を思い出す
確かに遠回しなやり方をしている
二本目を閉じる
「二つ、悪人よりの善人」
「? どういう意味だ」
「そのままの意味だよ」
悪い人じゃない、そういいながら三本目を閉じる
「三つ、イタズラ好き」
「…………イタズラ、ですか」
「もうすでに、何かされたんじゃないかい?」
「ええまあ、少し…………」
「やっぱりね」
そう言われ、先日の悪臭を思い出す、あれはほんとに酷かった
四本目を閉じる
「四つ、嘘をつくのが大嫌い」
「嫌い、というと?」
「これも、そのままの意味さ。手紙の話についても嘘にするつもりはないだろう、近
いうちに会いに来るだろうね」
差出人はロドスにコンタクトを取るつもりらしい、方法はわからないが
モスティマが五本目をゆっくり閉じる
「五つ目、ある意味、これが一番重要かな」
「そうか」
モスティマが念を押してから、最後のヒントを口に出す
「五つ、彼は、とっても」
途中で言葉を区切り、こちらに微笑みかけてくる
「…………とっても?」
「とっても」
「とっても、なんなんです?」
二人がモスティマの言葉に集中する
さんざんためてから、彼女が口を開く
「とーっても、お下品なんだ」
「…………えっと」
「つまり?」
どういう意味か、聞き返す
彼女はにたりと笑い、話し出す
「そうだね、例えば、綺麗な女性がいるとする」
黙って話を聞く二人
「彼は女性に近づき、声をかける」
何も言わず、聞き続ける
「女性の手をとり、跪き、こう語りかけるんだ」
最後まで静聴する
「『俺のために、バースデースーツを着てくれないか』ってね」
その言葉に、ドクターは吹き出し、アーミヤは頭に?を浮かべることになる
その後、本命が動き出したらしく、二人は皆と合流するために走り出す
「行ってらっしゃい、二人とも」
アーミヤとドクターの背中を見送るモスティマ、
「はてさて、どう流れていくのかな」
彼女は上を見上げ、誰かに聞かせるように、空に向かって呟いた
「どうか君に、幸あらんことを」
はい、モスティマですね
彼女を謎の男の友人枠に持ってきた理由は特にありません
強いて言うなら、別のキャラのピックアップの時に文字通りに二連続できたことでしょうか、自慢ではありません、そのとき私がほしかったのはチェンなんです、一人しか来てくれませんでした、ほかにもいろいろ来たんですがね
おわり!!