アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里   作:Thousand.Rex

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「やあ、久しぶりだね」

 

「……何の用だ、モスティマ」

 

「別に、通りがかっただけだよ」

 

ある日、いつかと同じように彼の車を見た

武骨な見た目の軍用車、荷台に防水シートをかけられた簡易的な宿

見間違えることなどありえなさそうな、奇妙な出で立ちの彼の足

 

「ツレないね、君らしくない」

 

「そうでもない、元からこうだ」

 

彼は停められた車の近くで火を焚いている

キャンプ用品のセットであろう椅子に腰かけている

 

「君は女性には優しい人だと思っていたけど、違うのかい?」

 

「そいつがなんでもない奴ならな、お前は別だ」

 

「おや、嫌われるような事、した覚えはないけど」

 

「よく言えるな」

 

その膝には、少女がいる、いつか会った自我が透明な、だけど不明瞭ではない子

規則正しく寝息を立てている

 

「ああ、そういうことかい」

 

「そうだ、余計な事を言いやがって、当初の予定から大きく外れちまった」

 

「そうかい、それはすまなかったね」

 

優しく少女の頭を撫でている

起こさない辺り、存外甘い

 

「隣、いいかな」

 

「……椅子なら荷台にある、座りたきゃ、勝手に取って来い」

 

「なら、お言葉に甘えようかな」

 

怒っている割には跳ね除けない、ここで追い返すのが普通だろうに

言われた通り荷台を見ている、折り畳みの椅子がある、二つ、残った形で

振り返る、彼はこちらに視線を向けることなく少女を撫で続けている

 

「意外と親バカなのかい?」

 

「うるさいぞ」

 

膝に座らせてほしいとでもせがまれたのか

人との関係に一線引こうとしている彼にしては珍しい

まあ、いつも失敗しているけれども

 

「それじゃ、失礼するよ」

 

「…………フン」

 

椅子を立てて、隣に座る

ムスッとした顔でこちらを見る

 

「これはこれは、君がそんな子供らしい顔するなんて思わなかったよ」

 

「そうかい、手が空いてりゃお前を撃ってるところだ」

 

「怖い事を言うね、随分」

 

それならその子を離して銃をとればいいのに

それをしないのは、何故なんだろうか

 

「確かに、君の心を無視したのはいけなかったね」

 

「まるで人らしい口ぶりだな、はぐれ者。

 そうして全てわかった風なことを言っているのか、普段から」

 

「私は、自分の目で見たことしか言っていないつもりだけど」

 

「……なら、きっと節穴だ、もう少し人に歩み寄るんだな」

 

手厳しい事を言われてしまった、よほど怒らせたらしい

 

「で、なんて言われたんだい?」

 

「予想はついているんだろう、白々しい」

 

「ああ、君が怒ってる理由もわかってる」

 

顔を見る、その口には煙草が咥えられている

 

「火は点けないのかい?」

 

「点けようと思ったがこいつがいるんでな、下手に動けん」

 

少女は依然、眠ったまま

灰が落ちることを危惧してか、それとも無闇に夢から引き戻さないようにしているのか

両手が塞がっている訳でもないのに動かない

 

「……ふうん」

 

「なんだ、人の顔など面白くもないだろう」

 

今の彼を見れば、誰もがこういうだろう

優しい男だと

 

「ねえ、迷子君」

 

「なんだよ、飲み物でも欲しいのか」

 

「違うよ、何かせがもうって訳じゃない」

 

「ならなんだ」

 

「別に、ただちょっとしたサービスを、と思ってね」

 

「ん?……なにしてる」

 

「見ての通りさ、さて、前見た時はこっちに入れてたね」

 

隣の彼の上着のポケットに手を突っ込む

その奥で硬い感触がある、四角い形状の何か、ポケットから取り出す

 

「なんだ、急に」

 

「サービスって言っただろ?、顔をこっちに向けて」

 

「…………」

 

怪訝な顔をしながらこっちを向く

咥えているものに取り出したものを近づける

カチン、と金属の音がする

 

「ほら、これで吸えるだろう?」

 

「……そうだな」

 

そう言ってライターを返す

 

「煙草を咥えてるのに吸えないのは生殺しだろうからね」

 

「まあ、礼は言おう」

 

「構わないさ、これぐらい」

 

煙を口から吐く、若干顔を傾けて少女に灰が落ちないようにしている

 

「しかし、吸いたいならその子を退かせばいいのに」

 

「そんな事をするほど非情じゃない」

 

何かを愛でるように手を動かす

ずっと、彼女を撫でている

 

「何かあったのかい?」

 

「特別何も、せいぜいこいつが戦うような事態になっただけだ」

 

「そうか、それはよかった」

 

「……よくは、ないさ」

 

目を細める、どこか遠くを見るような顔をする

哀愁とはこういうものなのか、きっとそうなんだろう

 

「迷子君、その子との旅は順調なのかい?」

 

「そこそこ、まあ思ったより進行が早くなっちまったがね」

 

「進行、なんのだい?」

 

「お前が知る理由はない」

 

「そうか、なら聞かないでおくよ」

 

「悪いな」

 

彼が彼女と一緒にいる理由は知らない

どうして出会ったかも聞いてない

 

「…………」

 

誰もいない方向に煙を吐く、しかめっ面で吸い続ける

 

「煙草、そんなにおいしいかい?」

 

「不味い、好んで吸う奴の気が知れん」

 

「おや、君もその一人だろうに」

 

「俺は好きで吸ってるわけじゃない、丁度いいから吸ってるんだ」

 

「丁度いいってどういうことだい?」

 

「……いやにアクティブだな、お前、どうした」

 

「そうかな? 普段と変わらないと思うけど」

 

「まあ、いいことなんだろうが……」

 

煙草が短くなっていく、燻る音が小さく聞こえる

 

「随分顔をしかめているね、何か考え事かい?」

 

「そうだが、これもお前には関係ない」

 

「隠し事ばかりだね。そうやって抱え込んで、自滅しないのかい?」

 

「……自滅など、するものかよ」

 

「…………んん……」

 

彼の手がむず痒かったのか、少女が唸る

少し手を離し様子を見る、しばらくして彼の胸に頭を押し付ける

ゴリゴリと、何かを強請るように擦り付ける

 

「もっと撫でてくれってさ」

 

子供らしいその仕草に多少癒されたような気分になり、からかってみる

だがそれとは対照的に

 

「……よくない、これは、俺の算段に入っていない」

 

「……ストレイド?」

 

酷く、苦しそうな顔をしている

頭に手をあて、歯噛みする、煙草の吸い口が折れ曲がる

 

「どうしたんだい、なんだか酷く悩んでいるようだけど」

 

「……どうということはない、ただ、間違えただけだ」

 

「間違えた?」

 

「……いや、気にするな、お前には関係ない」

 

また隠す、なぜだろう

 

「ストレイド、君が隠し事をする理由、どうしてだい?」

 

「何故、そんな事を聞く」

 

「気になったから、それでは駄目かい?」

 

「駄目だな、大した繋がりのない奴に話すような事ではない」

 

「……へえ、繋がりか」

 

この言葉の真意は、なんだろうか

彼が何も言わない理由は何か

 

「ストレイド、言っていいかな」

 

「なんだ、改まって」

 

「ああ、今の私は改まっているように見えるんだね、なら効果的だろう」

 

「……何を言いたい」

 

「別に、一言、言っておきたいだけさ」

 

警戒した目つきを向けてくる

らしくないことを言っている、彼はいまそう思っているんだろう

なら、届くだろう、まだよくわからない、この感情が

 

「ストレイド、私は君の友人だ」

 

「…………なに?」

 

「友人だよ、お友達、君は知り合い程度で止めているんだろうけど、私にとって君は友人だ」

 

「急に、何を言っている」

 

「言った通りだ、ストレイド、私は君が嘘をつくのが嫌いだということを知っている」

 

「…………」

 

「そして隠し事をするのは、嘘になるかもしれない、ということも」

 

「おい、何を言いたい、お前は」

 

「簡単だよ、ストレイド。私はただ、君を心配してるんだ」

 

「……………………」

 

「おや、見たことない顔だ」

 

口をぽかんと開けている、煙草はぎりぎり歯に引っかかってる

見る人によっては間抜けというだろう

そこまで衝撃的だったのか、人の付き合いとはなかなか難しい

 

「モスティマ、お前、何があった」

 

「ん? よくわかるね、まあ特別なことがあったわけでもないけど」

 

「そんなわけがあるか、それは特別と言って大差ない事だ

 けして捨てておくべきことではない」

 

「捨ててはいないよ、ちゃんと持っている。そうでないと、彼が心配するからね」

 

「…………彼、そうか、男が出来たか」

 

「いや、違うよ」

 

「ならなんだ、そこまで豹変する奴が、させる事象が他にあるのか」

 

「あるさ、まあまだ理解はしていないけど」

 

この自覚できない変化は人に必要なものだろう

何故ああも彼が私を心配してくるか、まだわからない

だけどそうすることに意味があることは、理解できた

 

「ストレイド、ちょっとした出会いがあったんだ」

 

「男じゃないか」

 

「違う違う、少し人の好過ぎるお友達が出来たのさ」

 

「…………友達、ねえ」

 

「そ、君みたいに勝手に人を心配する、奇妙な人」

 

いつか、彼は私が部屋に戻るのを待っていた

自分の仕事は終わっているだろうに、もう休んでもいいはずなのに

どうしてか彼は、私が戻ってくるのを待ってくれていた

やってくれなくていいと、そう言ったのに

勝手に待たれてしまった

 

「なんとまあ、大した奴だ」

 

「何がだい?」

 

「いや、なんでもない、なんでもないよ」

 

何故か優しく笑う、この二人、気が合いそうだ

 

「さて、私が君を気にしている、ということはわかったかな?」

 

「仕方ない、それは理解してやる、それで何が言いたい」

 

「君が悩んでいることを教えてほしい」

 

「まあ、そうだよな」

 

煙草を吐き捨てる、まだ半分はあったのに

 

「勿体ないよ?」

 

「いいんだ、いまは必要ない」

 

「ふーん」

 

そう言って上着から何か取り出す

それは封筒だった

 

「なんだい? それ」

 

「とあるテロ計画の計画書」

 

「テロ?」

 

「ああ、レユニオン・ムーヴメント。聞いたことはあるな」

 

「あるね、有名だし」

 

「そこからあぶれた奴らがふざけたことをしでかすつもりらしい」

 

「どんなことだい?」

 

「自爆テロ、ある都市で無差別に行うつもりらしい」

 

「過激だね。で、止めるのかい?」

 

「勿論止める、だが少し考えがある」

 

「考え? 普段の君ならそんな事言い出す前に潰しそうだけど」

 

「それをしない理由がある、困ったことにな」

 

視線を落とす、それを追いかけてみる

そこには、どこか穏やかな表情で眠る少女

 

「……彼女が、関係してるんだね」

 

「そうだ、これ以上、長引かせる必要はない」

 

頭を撫でる、父親が愛娘にするように

 

「何をするつもりだい?」

 

「別に、勝手な事をするだけだ」

 

封筒をしまう、なにやら面白そうな事をするらしい

 

「それが悩みかい?」

 

「そうだ。ま、やるかどうかは決めた、後は過程をどうするか、だ」

 

「過程か、長引くのかい?」

 

「状況による、まあ問題はない」

 

少女を抱き上げて荷台に行く、寝かせるつもりだろう

 

「ふーん」

 

「なんだ、意味ありげな視線を向けてきて」

 

「別に、なんでもないよ」

 

立ち上がり、後を付いていく

 

「ねえ、迷子君」

 

「なんだ、堕天使ちゃん」

 

彼が少女を寝袋に寝かせるのを見ながら言ってみる

 

 

 

「私にも一枚、噛ませてくれるかな?」

 

 

 




基本執筆中、曲聴いてるんですよ
特別曲をモチーフにしてるわけではないんです、今回タイトル怪しいけど
それでですね、この前聞いてる時に知り合いが端末からイヤホン引っこ抜いたんですよ

流れた曲は、エヴァグリでした

三名ほど、洗脳されました、ヤッタゼ

一話すっ飛ばしてるように見える?
はい、その通りです、理由はあるので頭おかしい奴とか思わないで続き読んでください
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