アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
訳 中盤辺りまで書き直していいでしょうかお願いしますナンデモシマス
リスカム達が騒ぎを聞きつけたところから、少し時間は遡る
ロドス本艦
職員フロア
カッカッ!
誰かの足音が聞こえる
カッカッ!
その間隔は少し速い
カッカッ!
急いでいるわけではない
カッカッ!
機嫌を悪くしているわけでもない
カッカッ!
それが彼女にとっての普通なのだろう
廊下を歩く一つの人影、ヴイーヴルのように角と尾を持つ女性
だが彼女はヴイーヴルではない
龍と呼ばれる種族だ、彼女と同じ人種はあまり見かけない
彼女はつい先ほどドクターの執務室から出てきたところだ
一人、何も言わず歩き続ける、すると
prrrrrr!
彼女のポケットに入っている携帯端末が音を出す
歩きながら端末を取り出し耳に当てる、誰かからの連絡だろうか
「ああ、わかった」
短く言い、すぐに端末の電源を切る
「…………」
急に立ち止まる、廊下の窓をじっと見る
そこからはちょうど、船の甲板が見下ろせる
「……ふむ」
少しの間、何かを見続ける
端末をポケットに押し込む
そして先ほどと同じように足早に歩き始める
空の情景に、マジックアワーと呼ばれる時間帯がある
日没と日の出、その直後にのみ確認できる
日が落ちている、少しずつ
空が金色に染まっていく
男は甲板でその様子を眺めていた
「おい、貴様」
突然声をかけられる
「んー?」
男が適当に返事をする、視線は空に向いたままだ
「ここで何をしている」
高圧的な声が聞こえる
男は構わず見上げ続ける
「わからないか?」
声の主から返事はない
「見ろよ、中々綺麗じゃないか」
声の主は何も言わない
「ほんのちょっとしか続かないって話だぜ?」
男以外誰もしゃべらない
「ひどい話だよな」
赤と青の比率が変わる
「大地はこんなに汚れていくのに」
世界が少しずつ黒に染まる
「空だけは、綺麗なままなんだ」
あたりを暗闇が支配する
「不条理な話だよな」
「気は済んだか?」
高圧的な声が聞こえる
「いんや、まだまだ」
「私の時間を無駄にするつもりか?」
「その通り」
そこまで言って、声の主に顔を向ける
「やあ、龍のお嬢ちゃん」
日が落ちて、月が出てくる
「今夜は月が綺麗だな」
「……ふざけたことを言うやつだな」
「おーおー、釣れないねぇ」
男の前には一人の女性が立っていた
「ここで何をしている」
「わからないのかね?」
その女性は腰に一本の蒼い剣を携えている
「これは命令だ、おとなしく答えろ」
「オーケーオーケー、命令なら仕方ない」
そう言い、仰々しいお辞儀をする
「あなたを連れ去りに来ました」
「…………」
女性の眉がピクリと動く
「……せめて反応くれないか?」
男が顔をあげる
「お前は誰だ」
「誰だと思う?」
「質問しているのはこちらだ」
女性の語気が強くなる
「まあいい、なら別のことに答えてもらう」
「何かな、可愛いお嬢ちゃん」
「……人の神経を逆なでするのが好きなのか?」
「ああ、三度の飯より大好きだ」
男の答えに女性の顔がさらに険しくなる
「……私はいま、人探しをしていてな」
「ほお」
「ちょうどお前のような見た目の奴なんだ」
「へえ」
「一緒に来てもらおうか」
「嫌だと言ったら?」
言い終わった瞬間、女性が瞬時に抜刀し男に切りつける
「避けたか」
だが手ごたえがない、そのうえ男の姿が見当たらない
トンッ
後ろから着地するような音が聞こえ、振り向く
「いきなり危ないじゃないか」
「何をやった」
「何かさ」
男が言い、女性が剣を構える
「おいおい、無抵抗の人間に武器を振るうのか?」
「なら、おとなしくしてもらおうか」
「断る」
女性が構えをとる
「まあまてよ、龍のお嬢ちゃん」
「…………」
「ここはひとつ、ゲームをしようじゃないか」
「…………」
「なに、ルールは簡単だ」
「…………」
「あんたが鬼で、俺を追いかける」
「…………」
「俺にタッチできれば、おとなしくついていこう」
「…………」
「どうだ、平和的だろ?」
「…………ふん」
女性が言う
「私に挑むつもりか?」
「いいや」
即座に否定する
「あんたが俺に挑むのさ」
男の言葉に、女性が微笑む
「……………………」
「……………………」
二人の間に沈黙が生まれる
そして、同時に地を蹴り走り出す
奇妙な鬼ごっこが始まった
………………………………
ロドス本艦、模擬戦闘用訓練室
そこには、メランサ、カーディ、バニラ、ジェシカの姿があった
例の騒動の後に自由行動を言い渡された四人
メランサ、カーディ、バニラは自主練を、
ジェシカは最初、近くの射撃訓練場でリスカムの隣で撃っていたが
一緒にいたフランカが特別何もせずに黙りこくっているのが怖くなってこちらに逃げてきた
ちなみに介抱された後、ドーベルマン教官にはこっぴどく叱られた
まあ、心配されていたという証拠でもあるのだが
「ふんっ! とおりゃあっ!」
「ていっ! はぁっ!」
バニラとカーディは模擬戦をしている
メランサはジェシカの隣で休憩中
すると、複数の走る音と
「だああああっ! すばしっこいっ!」
「こっちだぜお嬢ちゃんっ! フハハハハハァ!」
誰かの叫び声
「今のは、チェンさんでしょうか……?」
「何かあったんですかね?」
メランサとジェシカが疑問を口に出す
足音が近づいてくる
音がどんどん大きくなる
部屋の前までやってくる
バァン!!
「「にゃあぁっ!!」」
「邪魔するぜぇっ!!」
勢いよく扉が開け放たれる
入ってきたのは黒髪の男
そこそこ高い背に黒いジャケット
真っ赤な目が特徴の男だ
この場にいる全員、心当たりがある
特に、カーディは
「えっ? あっ! 昼間の変態紳士!!」
「えっ!? 変態!!」
「やめろ! その名で俺を呼ぶな!」
また汚名が伝搬していく
男に続けてチェンがやってくる
「不法侵入者だ! 捕まえろ!」
「えっ、でもこの人ってリンクスちゃんの――」
「早くしろ! 斬っても撃っても刺してもいい! 捕まえるんだ!」
「「はっ、はいっ!」」
「いやそこ、はいって言うなよ!」
チェンに言われバニラとジェシカが動く
「とりあえず! すいません!」
「謝るぐらいなら突くな!」
持っていたハルバードで突きを入れる、が、当たらない
「えっと、すいません!」
「いたぁ!」
するとジェシカがすかさず撃つ、男の腰にあたる、模擬弾だからケガこそしないがそれでも痛い
「今だっ!!」
チェンが一気に突っ込み触ろうとする
「おっとっ!」
指先が上着に触れる
「触った! 触ったぞ!」
「残念! 体じゃなきゃノーカウントだ!」
「くそっ!」
チェンをいなした男が踵を返し出口に向かう
「まてっ! 逃げるな!」
「さよなら諸君っ! また会おう!」
チェンが男を追う、まるで疾風だ
「チェンさん! 待って!」
「私たちも!」
バニラとジェシカが後を追う
「逃げるな貴様ぁ!!」
「ハハハハァッ! すっとろいぜぇっ! 龍の嬢ちゃんよぉ!!」
「「待ってー!!」
「えっと…………?」
「と、とりあえず私たちも行こ? メイリィ」
遅れて動く二人、その道中でリスカムとフランカが合流することになる
「で、件の男が何故かいると」
「はい」
メランサとカーディから軽く状況説明を受ける
それでもまあ、わからないことの方が多いが
「チェンさんは触ろうとしてたんですよね?」
「ええ、どうしてかはわかりませんが…………」
四人が通った後を追いかける、通ったらしき場所を
「どうやらロドス中を走り回っているようですね」
先ほどの訓練フロアから物資搬送用のエリアまで
ありとあらゆるところで目撃談が聞こえてくる
曰く、
『すっごい早かったよ! 私も混ざりたかったなー!』
とか
『あんまりうるさくて起きちゃったよ~』
とか
『あの女があんなに遊ばれているのは痛快だったわ!!』
とか
「何故、誰も捕まえようとしないのです」
「いや、まあ、皆さんお優しいですから…………」
ロドスにいる面々は一部を除き優しい者が多い
「だとしても、不法侵入しているんですから」
「でも、ただ追いかけっこしてるだけって言ってたよ?」
「いや、それでもですよ?」
「まあ、そうね」
確かに皆、口をそろえて追いかけっこしているだけだったと言っている
チェンの怒号と男の挑発行為が目立つだけでこれといった被害は何もない
相手の目的がわからない、ただ悪戯をするためだけに来たのだろうか
そんなことを考えていると
「あっ! あれってジェシカさんじゃない?」
「あら、どうしたのかしら」
少し先の通路でジェシカが膝に手をついて休んでいた
「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ、」
何やら呼吸が乱れている、何があったのか
「ジェシカ、大丈夫ですか」
「ああ、はい、だいじょぶ、です、はぁ」
「…………どうしたのですか?」
「ええ、はあ、ちょっと、ぜぇ」
「一度、落ち着いてください」
彼女の呼吸が整うのを待つ
「はぁ、はい、すいません、もう大丈夫です」
「それで、何があったのです」
「いえ、その、バニラちゃんと一緒にチェンさんを追ってたんですが」
「はい」
「あの、チェンさんと変態紳士さんの足が思った以上に早くて」
「…………はい」
変態紳士が定着してしまっている
どうやら体力が二人に追いつかなかったらしい
「一応、バニラちゃんがまだ一緒にいるはずなんですが」
「そもそも、なんで追いかけっこなんかしてるのよ」
「なんか、触ることができたら、おとなしく捕まってやるって言ったらしく」
「変態紳士が?」
「らしいです」
完全に遊ばれている
驚くべきはあのチェンをここまで弄んでいることだろうか
「二人は何処へ」
「あっちの、第一倉庫の方に」
「わかりました、行きますよ」
「了解!」
「わかりました」
「あ、はい」
「…………ええ、わかったわ」
どこか乗り気でないフランカをよそに五人はチェンと男の後を追う
マジックアワーとは簡単に説明すると昼と夜が溶け合った時間帯の事ですね
太陽の角度が関係しているらしいのですが私には詳しいことはわかりません
なんでも写真用語との事、写真家の知り合いがいれば、一枚ぐらいとっているかもしれませんね