アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
――――――――悪い夢をみた
荒野を少女が歩いている
遠くには燃える集落
誰がやったかは知らない
わかっているのは少女が一人でいるということ
少女を気に掛けるものはいない
頼れるものもいない
少女は歩く
――――――――どこに?
「…………むー」
とあるオペレーターの一室
ベッドの上で少女は目を覚ます
「…………ここは?」
見覚えのない部屋だ
なぜ自分がここにいるか
思い出せない
「すぴー…………すぴー」
「…………にゃー」
隣にだれかが寝ている
金髪のヴイーヴル、バニラと言っていた気がする
「すぴー……うへ~…………」
「……………………」
にやけた顔で幸せそうに寝ている
彼ではない
「すぴー……どすぐろちゃんかわいいやったー…………」
「……………………」
よくわからない寝言を言っている
彼はどこだ
「…………すとれいど」
ベッドからゆっくり降りる
彼を探さなくては
歩かなければ
件の男が例の騒ぎを起こした翌日
ロドス本艦、独房エリア
ロドスは表向きは製薬会社だ
だがその裏では鉱石病や感染者関連の事件を秘密裏に解決している組織でもある
そしてここはその時に捕縛した感染者を閉じ込めるためのエリアだ
そこにドクターとリスカムは足を運んでいた
「………………」
「………………」
二人は無言で歩く
普段なら適当な会話を交わしながら歩いているはずだが何も話さない
別に、話のタネがないわけではない
ただなんとなく、話しにくいのだ
「………………」
「……あー、その、リスカム」
「なんでしょうか」
「何をそんなに怒っているんだ?」
「別に、怒っていません」
「いや、でも……」
「怒っていません」
「………………そうか」
こんな感じに、リスカムが不機嫌なせいで会話が続かない
「フランカから、知り合いだと聞いたんだが」
「ええ、そうですね」
「何かあったのか?」
「いいえ、話すようなことは何も」
「そうか」
何かあったんだろう、だが話すつもりはないらしい
このままでは場が続かない、何か話題はないだろうか
「…………昨日はすいませんでした」
「ん? いや、大丈夫だ、問題ない」
どうしたものかと考えていると、リスカムから謝罪される
実は昨日、一瞬ロドスの電子機能が一部停電した
リスカムがアーツを最大出力で放電したのが原因らしい
特別重要な設備にダメージが入ったわけではない
ロドスの業務にも支障が出たわけでもない
どちらかというと真面目な優等生で知られている彼女がなぜそんなことをしたのか
そっちの方が気になる
「どうしてあんなことをしたんだ?」
「それは、その、少し冷静さを失くしてしまいまして……」
「例の変態紳士が原因か?」
「……ええ、まあ、はい」
なんだろう、どういう関係か知りたくなってきた
「なんだ、元カレか何かか?」
「残念ながら、そういう浮ついた話ではありません」
違うらしい、なら何だろうか
「ドクター、着きました」
「ああ、わかった」
そんな話をしている間に目的地に着く
独房のとある一室、格子の向こうに男はいた
「おはよう、よく眠れたかな」
「ああ、おかげさまでばっちりだ」
何故か逆さ吊りの状態で
「まったく、寝付きが良すぎて視界が真っ赤だ」
それは血が上っているだけではないだろうか
昨日、リスカムブローとやらを食らったのはこの男だ
気絶したところを捕らえたらしい
「なかなかいい眺めですね、滑稽です」
「冷たいな、久々の再開だってのに」
「こんなに嬉しくないのはあの時以来です」
何やら殺伐としてきた
逆さづりはリスカムの要望とのこと、何が彼女をそうさせるのか
「下してくれよ、可愛いお嬢さん、このままじゃハングドマンに改名しなきゃいけなくなる」
「大丈夫です、あなたにはもう、変態紳士という輝かしい栄光があります」
「なるほど、確かに眩しいな、目がつぶれちまいそうだ」
してきたどころではない、もうしている
「相変わらず、減らず口が多いですね」
「そりゃお前、減らずだからな、増える一方さ」
「………………」
「………………」
リスカムの角が明滅し、男が不敵に微笑む
蚊帳の外に置かれてしまっている、どうにかしなくては
「ゴホン!」
咳払いをする
リスカムがこちらに視線を向け、少し後ろに下がる
「えー、まずは、いくつか質問に答えてほしい」
「なんだい?」
「まず最初に、昨日はなぜあんなことを?」
「どんなことだ?」
「昨日、ロドス中を走り回っていただろう」
「ああ、そこそこ楽しかったぜ」
「…………感想を聞いているんじゃないんだが」
「なんだ、違うのか?」
なんだか頭が痛くなってきた
この男から必要な情報を聞き出せるだろうか
「なんの目的で忍び込んだんだ?」
「んー、探検、だな」
「探検?」
「そう、探検、こんなでかい船だ、冒険心がくすぐられるだろう?」
「本当か?」
「本当だ、騙して悪いが、てのは嫌いなんだ、碌な思い出がない」
かなり騒がしい探検になったがね、そう男は言った
『嘘をつくのが大嫌い』
ある人物の言葉が浮かぶ
やはり、彼女の言う友人はこの男なのだろう
「これを」
懐から書類を取り出す、先日送られてきた図面だ
「見覚えはないか?」
「あると思うか?」
「真面目に答えなさい」
リスカムが男を叱る
「わかったわかった、ああ、あるよ」
存外正直に答えてきた
「ということは、君が送ってきたということでいいんだな?」
「ああ、だが送ったってのは違う」
「なんだ」
「置いてったんだ」
「……つまり、昨日のは二度目の侵入ということか」
「そうだな、中々刺激的な代物だったろ」
「ああ、おかげさまで軽くトラウマだ」
「そりゃいい知らせだ、手間をかけた甲斐がある」
例の異臭のするインク、男の仕業で間違いないらしい
人知れず侵入する、龍門ほどではないがロドスの警備レベルもそこそこ高い
どうやってやったのか
「どうやって侵入した」
「そいつは話せない」
「話してくれなければ困る」
「しつこい男は嫌われるぜ」
話す気はないらしい、どうしたものかと思案する
「ところで、うちのチビっこは元気かな?」
「ああ、君の言いつけ通りに応接室で待っていたよ」
「なら結構」
男がリンクスについて聞いてきた
「で、今はどうしてるんだ?」
「あるオペレーターと一緒にいてもらっている」
「ほう、どちら様かな」
「昨日、あなたが撃った女性ですよ」
「ああ、金ヴルのお嬢ちゃんか」
「なぜそんなことを聞く」
「なに、後で礼でも言おうと思ってな」
彼なりに心配しているらしい、すると
「彼女、どうしたんですか、なぜあなたと一緒にいるんです」
「別に、道端で拾っただけだ」
「拾った?」
「ああ、拾った」
拾った、とはどういうことか
「…………そうですか」
「お? 根掘り葉掘り聞かないのか?」
「聞いてほしいんですか?」
「まさか、探られるのは好きじゃない」
「でしょうね」
どうやら、お互いのことをそれなりに理解しているらしい
「君たち、どういう関係なんだ?」
「「……………………」」
二人そろって押し黙ってしまった、ますます気になる
「ドクター、話の続きを」
「ん、ああ、そうだな」
リスカムが続きを促してきた、また今度聞いてみよう
「この図面に書かれた情報、どうやって手に入れた、事前に行動指針を書いたのは何が狙いだ?」
「なに、暇つぶしに仕入れたのさ、で、代わりにやってくれそうだったから渡してみた」
「なぜロドスに?」
「面白そうだったから」
「………………」
どこまで本気かわからない
男の目的は何なのか、聞いて答えてくれるだろうか
「鉄仮面の兄さんよ」
「なんだ」
「偵察隊は捕まえたんだろ?」
「ああ、おかげさまでな」
この男、偵察隊の時にひと暴れしている
そのとき撃たれたフェリーンは生きている
腕の傷は一生残るらしいが後遺症はないらしい
「ならいいさ、で、これからどうするんだ」
「というと?」
「決まってるだろ、本隊さ、奴ら、五日後に偵察隊が戻ってこないと龍門に特攻するぜ」
そうだ、まだやるべきことは残っている
奴らの本隊をどうするか、あと四日たつまでに決めねばならない
「俺から助言だ、鉄仮面」
「なんだ」
「奴らの組織はいま、カルトじみた状況になってる、リーダーを筆頭に動いてるんだ」
「………………」
「だから、リーダーを殺せばいい」
「…………我々は傭兵ではない」
「なんだ、違うのか?」
「ああ、違う」
「ほう、その割には随分と軍事力を持ってる気がするがね」
「レイヴン、そこまでです」
「なんだよ、まだまだ話そうぜ」
「レイヴン」
「はいはい、わかったよ」
リスカムが話を終わらせる
「ドクター、提案があります」
「なんだ」
「この男を使いましょう」
「…………なに?」
意外な提案をしてくる、彼女は男を嫌っている
自由の身にさせるようなことを言うとは思わなかった
「どうしてだ」
「あまり多くは話せませんが、この男は無意味なことをする奴ではありません」
「というと」
「何か大事な理由があってロドスに情報を渡しているはずです、
少なくとも、悪事を考えるような輩ではないです」
「信頼しているんだな」
「……いえ、別に」
リスカムがわざわざ進言する、ということはそれなりに信じていいのだろう
ここは彼女を信じよう
「わかった、そうしよう」
「だそうです、レイヴン」
「おーおー、なんだかんだで優しいじゃないか」
「正直、助け舟など出したくはありませんでしたが」
「じゃ、優しさついでに下してくれないか」
「自分で降りなさい」
「へいへい」
「? 何を言ってる」
そういうと、男を縛っていた縄がいきなり緩む
「よっと」
男は両手をついて逆立ちの要領で身を起こす
「…………いつでも降りれたのか」
捕まってるふりをしていたらしい、油断ならない
「ああ、そうだそうだ」
男が軽く振り返る
「自己紹介がまだだったな」
その顔には不敵な笑みがあった
「俺の名前はストレイド、ただの流れの傭兵さ」
今回は字が多いですね、読んでて楽しいものを目指しているのですが難しいです
そして、なんだかんだで書くことがありません、どうしましょうか
K O K O D A Y O