アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里   作:Thousand.Rex

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迷子、再び

レイヴンを独房から出した後、リスカムとレイヴンは住居フロアにやってきていた

 

「随分部屋が多いじゃないか」

 

「それだけの人望があるんですよ、ここは」

 

ドクターは彼のパスポートを発行するための書類を取りに執務室に戻っていった

 

「綺麗なお姉さんはいるのかな?」

 

「少なくとも、あなたの誘いに乗る人はいませんよ」

 

「なんだ、最近の女の子はみんな堅物だな」

 

「あなたが軽いんです」

 

二人がここにきている理由は一つ、リンクスと彼を合わせるためだ

昨日はバニラと一緒にいてもらったが終始落ち着かない様子だったという

 

「あいつはいい子にしてるかね」

 

「誰かさんよりはお利口ですよ」

 

「失礼だな、俺だって利口な方だ」

 

「利口な人は誰彼構わずセクハラしません」

 

この男を釈放する際、ドクターから一つルールを言い渡された

 

『君の言うことを信用していない訳じゃない、だがまた何かしでかさないとは限らない

 彼が艦内を移動する際は君が付いていてくれ』

 

早い話が首輪を着けろということだ

まあ、目を離したすきに何をするかもわからない男を自由にするのだ

妥当な判断だろう

何より自分が言い出したのだ、責任はとらねばならない

 

「それで、例の金ヴルちゃんはどんな子だい?」

 

「なぜそんなことを?」

 

「いやなに、見たことない顔だったんでね」

 

そういい、上着のポッケから煙草を取り出し、口に咥える、火はつけない

 

「ここは医療施設です、間違えても火をつけないように」

 

「ん? ああ、わかったよ、それぐらいは弁えてるさ」

 

「なら結構」

 

そういい、口を動かすこともなく器用に煙草を上下に振っている

本来なら捨てろなりなんなり言うべきなんだろうが何も言わずにおく

この男がこうしている時は機嫌が良い時だけだ

企みが上手くいっているだけだろうがわざわざ注意するのもなにか違う

それに本人が気づいていないうちに咥えている時もある

適当に釘をさしておけば問題ないだろう

 

「しかしまあ、見た目に違わず広いなここは」

 

「そうですね」

 

「色んな人種がいて、色んな奴がいる」

 

「そうですね」

 

「この中で生きていくのは楽しそうだ」

 

「なんです? ロドスに住み着くつもりですか?」

 

「まさか、一つ所にとどまるのは大嫌いだ」

 

「……そうですか」

 

レイヴンの言葉を聞いて、少し、気分が沈む

ちらりと横を見る

 

「? なんだよ」

 

「いえ、別に」

 

その顔は、昔と変わらない

 

「お、あれは昨日のイタズラの犠牲者じゃないか?」

 

「自分で言いますか」

 

並んで歩いていると通路の先に、何故かパジャマ姿のバニラがいた

きょろきょろと辺りを見回している、誰か探しているんだろうか

こちらに気づく

 

「あっ! 先輩、いい所に……て、ゲェッ!」

 

「ゲェとはなんだゲェとは」

 

「自分の胸に聞きなさい」

 

バニラが顔をしかめる、無理もないだろう

あんな劇物を顔にぶちまけられたのだ、軽いトラウマになっているだろう

 

「えと、どうしたんです? 二人仲良く一緒に歩いて」

 

「どうやら昨日のペイント弾で目がおかしくなったようですね

 ケルシー先生のとこに連れていきますか」

 

「いや、もう一発ぶちこめば一周まわって治るかもしれん」

 

「いい案ですね」

 

「いや待ってくださいっ! あれはもう食らいたくありません! ていうか仲いいじゃないですか!」

 

「「誰が」」

 

失礼なことを言われてしまった

こんなやつと仲良くなどしたくはない

 

「それで、こんなところで何をしているんですか、そんな姿で」

 

「確かに、年頃の嬢ちゃんが着るには色気がないな」

 

「そろそろ黙ってください」

 

「へーい」

 

「…………仲良しじゃないですか」

 

「何か言いましたか」

 

「いいえ、何も」

 

いい加減に本題に移りたいのだが

 

「さてお嬢ちゃん、リンクスは元気かな?」

 

「え、あ、その、ええと」

 

「オーケー、わかった、何時からいない?」

 

「へ?」

 

「? …………何を言っているんです?」

 

話を切り出そうと思っていたらレイヴンがいきなり変なことを言い出した

まるでリンクスが行方不明になったかのような言動だ

 

「朝起きたらいなくなってた、て所か。ならまだ、近くにいるな」

 

「いや、その、説明する前からなぜわかるんです?」

 

「その姿を見りゃ一目瞭然だ」

 

「私にも説明してくれませんかね」

 

「いいぜ、話は簡単だ、いま金ヴルちゃんはイマイチそそられないパジャマ姿だ」

 

「余計な部分は省いてください」

 

「普通は起きたら朝の支度をするもんだ、だがいま寝間着でいるってことは支度をすることに頭が回らなくなることが起きたって事」

 

「はい」

 

「だが日常生活でそんなことが起きるのはまれだ。何より大抵のことは部屋の中で片付く事柄の方が多い」

 

先ほどまで逆さになっていたとは思えないほどペラペラしゃべる

 

「にもかかわらず、外に出ているってことは部屋の中にあるべきもの、例えば同居人とかだ。本来ならいるはずの人間がそこにはいない、そしておそらく扉が開いていたんだろう。鍵は内側からしか開けられない、勝手に出ていった、そう考えた」

 

逆に外から開けられるカギとかあったら怖い、

 

「で、嬢ちゃんの同居人は少し前に聞いた通りならリンクスぐらいしかいない。なら探しているのはあいつの事だろう、以上だ、アタリかな?」

 

「他にペットがいます!」

 

「そこまで考えられるか」

 

この男、あの一瞬でここまで考えていたのか

だがおかげで事態が飲み込めた

 

「つまり、リンクスがいなくなったと」

 

「あ、はいそうなんです、起きた時にはもういなくて…………」

 

「わかりました、手分けして探しましょう、バニラ、あなたはあっちを――」

 

「待て、リスカム」

 

リンクスを探そうとした矢先、レイヴンに引き止められる

 

「なんです」

 

「あいつのことをわざわざ探す必要はない」

 

「何を言っているんですあなたは」

 

仮にも保護者だろうに、そんなことを言ってきた

少しムッとなる

 

「子供が迷子になっているのに探さないわけにはいかないでしょう」

 

「立派な心掛けだ、だが間違えてることが一つある」

 

「何を言いたいのです」

 

「あいつは迷子になってない」

 

「は?」

 

「へ?」

 

またおかしなことを言ってきた

 

「リスカム、艦内放送できるところはあるか?」

 

「ええ、ありますが」

 

「なら、そこに連れて行ってくれ、手っ取り早い方法がある」

 

「? …………わかりました」

 

何か考えがあるのだろう、仕方なく言う通りにする

 

「金ヴルちゃん、ついでだ、お前も来い」

 

「えっ、あっ、はい!」

 

「その前に着替えてきなさい」

 

「はい!」

 

こうして一行は放送室に向かうことになる

 

 

 

 

ピーピーガー

 

 

『えーテステス、今日は何の日、子日だよ』

 

『仏滅です』

 

『マジか』

 

『遊んでないで早くしなさい』

 

『オーケー、えー、迷子の迷子のリンクスちゃん、ストレイド君が応接室でお待ちです至急、応接室まで来てください。昨日、鉄仮面のお兄さんに連れてってもらった場所だ。わかるな、待ってるぞ」

 

「…………すとれいど?」

 

『ついでだ、フランカ、昨日俺の腰に銃弾ぶち込んだフェリーンのお嬢ちゃん。お前たちも来い、来なかったら悪質なイタズラをする、以上』

 

「は?」

 

「へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 




ストレイドを出すと彼のセリフで埋まってしまいますね
まあ仕方のないことなのですが
ストレイドの推理ですが怪しいところがございます
気にしないでくださいね
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