アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
荒野を歩く二つの人人影
一言も話さず歩き続ける
足音だけが周囲に響く
「……レイヴン」
当てもなく歩く中、片方、リスカムが喋りだす
「……………………」
だが返事がない、レイヴンと呼ばれた男は見向きもせずまっすぐ歩いている
「レイヴン」
「……………………」
変わらず返事は来ない、そのことに業を煮やしたのだろう
「レイヴンッ!!」
「おぉっ!?」
リスカムの怒号が響き渡った
「なんだよ、いきなり大声あげて、びっくりしたじゃねえか」
「なんだよではありません! どういうことですかこれは!」
「なんのことだ」
ストレイドが後ろを見る、リスカムが何やら興奮している
頭の角がチカチカしている、逆鱗に触れるまであと一歩だろう
「後ろを見なさい!」
「もう見てるが」
「――――ッ! あっちを見なさい!」
そういい、リスカムが遥か後ろを指さす
「何が見えますか!」
「んー、ロドスと龍門が見えるな」
「ええ、そうですね、見えますね」
「でもなんだか小さいな」
「ええ、そうでしょうね。なぜだと思います?」
「はて?」
「遠いからです! 近いと言っていたではないですか!」
「ああ、近いぜ?」
「どこがっ?」
指さす方向にはロドスと龍門が見える
だが普段よりも小さい、理由は簡単、距離が離れているからだ
随分遠い、目の前に手の平を開いて出せば隠れてしまう
ロドスからてくてく歩いてこんなところまで来てしまった
「どれぐらい歩いているかわかりますか?」
「三十分ぐらい?」
「三時間は歩いています」
「ほう、随分歩いたな」
「他人事ですね…………」
リスカムが呆れたような目でストレイドを見ている
「近いと言っていましたよね?」
「ああ、言ったな、近いだろ?」
「どこがですか!」
「歩いていける距離なら近いだろ」
「コレのどこが歩いていける距離ですか!」
逆によくも今まで文句を言わずに歩けたなと感心する
興奮しているリスカムをストレイドがなだめにかかる
「まあまあ、落ち着けよ、もうすぐそこだから」
「……ホントですか?」
「ホントホント」
そういって近くの岩場に近づく
そこは周囲の岩に比べて違和感があった
どこか柔らかそうな岩に手を伸ばす
「迷彩シートですか」
「ああ、そのまま置いておいたら盗られちまうからな」
シートをはがす、そこには車体の大きい車があった
ストレイドの車だろう、所々に弾痕が付いている
茶色を基調としたボディ、座席は二つだけで後ろは荷台になっている
「ずいぶん大きいですね、軍用車ですか?」
「ああ、いい感じに放っとかれてたから頂いた」
「頂いたって、盗んだんですか?」
「失礼だな、拝借したといってもらおうか」
「返すつもりがあるんですか?」
「まさか、俺の手に渡った以上俺のもんだ」
「……………………」
リスカムがまた呆れた目でストレイドを見る
「誰も使わなそうで勿体ないから貰っただけだ」
「どのみち窃盗です」
リスカムが車に近づく
「これは防水シートですか?」
「ああ、荷台の上にのっけて屋根代わりにしてる」
「……ここで寝泊まりしてるんですか?」
「ああ」
「あの子も?」
「そうだな」
リスカムが荷台を覗きながら聞いてくる
そこにはリンクスの寝袋と生活用品や何やら危なそうなものが置いてある
小さな子供が寝泊まりするにはいい環境とはいえない
「不衛生ですね」
「ああ、まったくだ」
「いや、あなたの事ですよ」
「なにを、俺ほどのきれい好きは中々いないぞ」
「リンクスのことも気にかけなさい」
ストレイドとしてはこれでもできる限りと考えた方だ
そもそもストレイド一人で使うのを前提に乗っていた
子供を拾うことになるとは思っていなかったのだ
「これでは野宿と変わりませんよ」
「もう少し改善しなけりゃならんな」
「服は?同じものを着まわしさせてるんですか?」
「ああ、何とかしようとは思っているんだが、子供の服なんざ買ったことがねえ。何を着せりゃいいんだか」
「あの一着だけですか。まあ、それはロドスの方で準備してもらいましょう」
「なんだ、協力的だな」
「ええ、あなたが彼女を保護した経緯がなんにせよ、まともな理由であるのは間違いないでしょうから」
「…………そうか、助かる」
「? なんです、嫌に素直ですね、気持ち悪い」
「ひどいな、これでも感謝してるんだぞ?色々」
ストレイド自身、逆さづりにされたときはどうしようかと考えていた
むやみやたらに荒事を起こすわけにはいかない、まあ、逆さづりはリスカムの要望との事だが
「それで、車は動かさないんですか」
「おう、ちょっと待て、いま動かす」
車のドアを開け、エンジンをかける
独特な機械音が響き渡る、無事に動いたらしい
「ほら、隣に来い」
「…………あなたが運転するんですか?」
「俺の車だからな」
「逃げ出さないでくださいよ」
本来ストレイドは監視されている身だ、運転はリスカムがすべきだろう
ストレイドが運転席に座る、助手席にリスカムがやってくる
「ところで、前に乗ってたバイクはどうしたんですか?」
「ん? 二世の事か?」
「ええ、そうです」
リスカムが聞いてくる
「奴なら壊した」
「……壊した、ですか? 壊れたではなく?」
「ああ、壊した」
まるで自分の意思でやったかのように言う
「奴の最後は立派だった、前を走る車両を止めるために爆弾を着けたまま特攻かましたんだ。あの犠牲失くして依頼は達成できなかっただろう」
「その爆弾のスイッチを押したのはあなたでしょうに」
「コラテラルダメージだ」
「…………はいはい、そうですね」
またまた呆れた目を向けている、彼とて好きで爆発させたわけではない
「いまはこの、ラッドローチ四世が相棒だ」
「待ってください、三世はどうしたんです」
「海の藻屑になった」
「なぜ海」
「ちょっと海に進出しようかと思って、船に乗ってみたんだ」
「それで何故藻屑になるんです」
「いやなに、海をなめてただけだ、ものの三日で転覆した。海は恐ろしいな、天気がゴロゴロ変わる、嵐にあって死にかけた」
「そのまま一緒に沈めばよかったものを」
「残念、俺はしぶといぜ」
他愛ない会話を交わし、車を発進させる
エンジン音が鳴り響き、タイヤが土煙を巻き起こす
窓の外で景色が流れていく
「レイヴン」
リスカムが話しかける
「なんだ」
「リンクスは、戦争孤児ですね?」
「そうだ」
リスカムがリンクスは何者かを言い当てる
変なところで勘がいい
「どうして拾ったんですか?」
「別に、通り道にいたから拾ったんだ」
「わかりました、言い方を変えます」
そういい、もう一度聞いてくる
「どうして、リンクスのいるところにいたんですか?」
「別に、近くによる用事があったからだ」
「そうですか、わかりました」
リスカムが口を閉じる
相変わらず、変なところばかり勘がいい
二人そろって無言になる
車は順当に走り続ける
「……………………」
「……………………?」
ふと、ストレイドが視線に気づく、隣に目をやると、リスカムが見ている
「どうした、何か顔についてるか?」
「…………いえ、別に」
変な奴だな、そう言いながら走らせる
「……………………」
「……………………」
また無言になる
「……なあ」
「……なんです」
ストレイドが静寂を破る
「金ヴルちゃんとフェリーンのお嬢ちゃんは中々いい子だな」
「なんです急に、また何かよからぬことでも考えているんですか?」
「いや、お前にも後輩ができたんだなって思ってな」
「……何を言いたいんです?」
「お前達の近況でも聞こうかなと」
「今更先輩面でもしようというんですか」
「そうだ、悪いか?」
「…………ええ、悪いですね」
そういい、窓に顔を向けてしまう
外は荒れ果ててしまっている、見てて楽しいものでもないだろう
「…………」
「……いいですよ、聞かせてあげます、少しだけですが」
「そうか、それでもいいさ」
「………………では、ロドスとBSWが結んだ契約の話から」
「ああ」
荒野の中、そんな話をしながら帰途につく
「ところでレイヴン」
「なんだ?」
「ラッドローチって名前、よしません?」
「なんでだ、いい名前じゃないか」
「どこがです、ヤバいゴキブリって意味ですよ?」
「奴ら並みにしぶとくあってほしいという願いを込めてだな」
「爆散させた本人がいいますか」
他愛のない話が続く
ラッドローチ、わかる人はわかります
前にも言いましたがストレイドの車は軍用ジープをイメージしてください
シリアスっぽいのが続いていますがもうちょい続きます