アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
ロドス本艦、射撃訓練室
ストレイドとリンクスがロドスへ滞在するのが正式に決まった翌日
「「………………」」
リスカムは訓練場に来ていた
「「………………」」
無言で弾を撃ち続けている
「「………………」」
それを静観する、ジェシカとアドナキエル
リスカムの両隣で、何もせずにリスカムを見ている
正確には、リスカムが撃っている的を
「えっと」
「これは…………」
その的には普段、フランカの写真が貼ってある
日頃のイタズラへの意趣返しだろう、ただのストレス発散かもしれない
だが今日は違う、そこにはフランカの写真ではなく
別の人物、一昨日ロドスを走り回っていた男の写真が貼ってあった
リスカムは無言で撃ち続けている
「……ええ………………」
「あの、ジェシカさん」
アドナキエルがジェシカに近づいてきた
「これは、何があったんです?」
「いや、その、ちょっと色々ありまして」
「はあ…………」
なぜストレイドの写真が貼ってあるのか、それを聞きたいのだろう
今朝がた、ドクターから各オペレーターに通達があった
少しの間ロドスに客人が滞在すると、ストレイドとリンクスの事だ
簡単に元BSWの人間だ、というような説明こそされているが
リスカムがいきなり的あての対象にしていることに驚いているのだろう
ジェシカは事情を知っているが他の人は知らない
「ここに来た瞬間、迷いのない動きで写真を張り替えましたけど」
「まあ、その、色々です」
「そうですか……」
少し前に訓練場に来たのだが、速攻でフランカの写真をはがし、ストレイドの写真と取り換えた
どうやら積もっているものは相当らしい
「あの人って、この前走り回っていた人ですよね?」
「はい、そうです」
「何かリスカムさんを怒らせるようなことでもしたんですか?」
したというかした後というか、どう説明すればいいのか悩む
「い、色々です……」
こういうほかない、あまり人に聞かせるような話でもない
とりあえず適当にごまかしていると
「あー、健康診断ってのはいやだねえ、肩がこっちまう」
貼り付けられている本人がやってきた
なにやら肩をぐるぐる回している
「あ、ストレイドさん」
「お、ジェシカちゃん、だったか? 朝から頑張るな」
「いえ、まだまだです、先輩方には及びません」
こちらに気づき話しかけてくる
「あなたは……ドクターが話していた人ですか?」
「ん? ああそうだな、ストレイドだ、少しの間だが厄介になる」
「初めまして、アドナキエルです。短い間ですがよろしくお願いします」
「おっと、礼儀正しいじゃないか、なにか仕掛けようと思ったがやめてやろう」
二人が自己紹介を交わす
「お前さんはラテラーノか、相変わらず取れそうな羽と輪っかだな……てあれ?」
「あ、その、光輪はちょっと、訳がありまして」
「……ああ、そういうことか、すまんな、気分を悪くさせちまって」
「いえ、よくあることなので」
アドナキエルはラテラーノ人という光輪と羽が特徴の種族だ
だが彼の光輪は鉱石病の影響で位置がずれている、それを見て察してしまったんだろう
ストレイドが謝罪をする、彼にしては珍しく素直だ
「で、リスカムは何処に……なんだありゃ」
「あ、その、あまり気にしない方が」
リスカムに用があるのだろうか、ストレイドが辺りを見回す
そして見つけてしまう、自分の写真が的に使われていることを
「あいつ、中々悪趣味なことをするな」
「いや、普段はフランカ先輩の写真なんですよ。今日はちょっと違うだけで」
「変わんなくね?」
「……………………」
何も言い返せない、やってることは結局変わらない
ストレイドがリスカムに近づき
「……ふむ」
話しかけようとして、やめる
「どうしたんですか?」
アドナキエルが不思議に思い話しかける
「…………」
ストレイドは何も言わず、上着のポケットを漁っている
何か探しているんだろうか、もう一度話しかける
「あの、一体何を――――」
そういうと、筆を取り出した
リスカムにゆっくり近づいていく
そしてリスカムの後ろにつく
筆をリスカムに近づける、正確にはリスカムのしっぽに
「ほい」
「――――――ッ!?」
しっぽをなぞる、気づいていなかったのだろう
リスカムの体がビクンとはねる
その拍子に弾が外れ、跳弾する
「うおっ! あぶねっ!」
あちこち跳ね返りストレイドの足元に飛んでくる
「――ッ! 誰ですか!」
「はーい、俺です」
「ッ! このっ!」
「おっと」
リスカムが振り返り、そのまま蹴りを放つ、それを軽く避ける
「普通に話しかけられないんですかっ! あなたは!」
「いやなに、集中してたから、つい」
「つい、でイタズラを仕掛けるんじゃありません!」
リスカムが叫びストレイドが茶化す、この二人、ずっとこんな感じだ
「あの、この二人、どういう関係ですか?」
「えーと、先輩と後輩らしいです」
「ああ、なるほど」
なるほどといえる要素があるのか
アドナキエルの中では納得できたらしい
彼はつかみどころのない性格をしている、そこは少しストレイドに似ている
どこかで共感したのだろうか
「それで、診断は終わったんですか?」
「ああ、終わった」
「なら結構」
どうやら健康診断にいっていたらしい
肩を回していたのはそのせいだろう
ドクターから言われて行ってきたのか
「いやはや、あの手の機械にくぐらせられるのは疲れるな」
「その分正確な数値が出ますので我慢してください、それで結果は?」
「一日二日で出るらしい、意外と早いな」
「ここは医療施設ですから」
「そういやそうだった」
二人がそんな会話を交わす、心なしか昨日よりはリスカムの態度が柔らかい気がする
的にしてる間に落ち着いたようだ
「で、まっすぐこっちに来たんでしょうね?」
「安心しろ、寄り道は大してしてない」
「今なんて言いました」
「なにも」
「誤魔化さないでください」
リスカムは彼の監視につくと言っていた
少しの間離れていたのは健康診断に時間がかかるから空いた時間がもったいなかったのだろう
別れる前に寄り道するなとでもいったのか
「ところでお前、いつもあんなことしてるのか?」
「あんなこと?」
「あれあれ」
そういいながら先ほどリスカムが使っていた的を指さす
そこには彼の写真がある、全弾顔にヒットしているため、その部分が変色している
実弾だっだらどうなっているのだろう
「ああ、あれですか、何かおかしなことでも」
「いやおかしいだろ」
「あのほうが集中できるんです、命中率も上がります」
「マジか……」
あのストレイドが困惑している
物珍しい光景を見ていると
「あっ、ホントに居る」
「ドクターの話、本当だったんだ」
「あれが噂の変態か?」
出入り口の方からフェンとビーグル、ラヴァが顔をのぞかせていた
「おや、皆さんどうしたんですか?」
アドナキエルが気づき、声をかける
他の面子も目を向ける
「お、この前のお嬢さん方じゃないか、どうしたんだ?」
「あ、いえ、この前お世話になった方がいると聞いて」
「お礼を言おうと思って」
フェンとビーグルが言う
この前というのは例の捕縛作戦の事だろう
ビーグルが追っていたサヴラと検閲のフェリーンを捕らえたのは実質彼だ
その時の礼を言いに来たようだ
「ラヴァさんはどうしてここに?」
「面白そうな奴がいるって聞いたから、見に来た」
アドナキエルの問いにそう返すラヴァ
クルースから聞かされたのだろう、興味をもって見に来たらしい
「で、お礼代わりにこの前の誘いを受けてくれるつもりになったのかい?」
「えっ! いやっ! 違いますっ!!」
「なんだ、残念」
「? 誘いって?」
「さあ」
「さあ、ってこの前一緒にいたんだろ、知らないのか?」
「いや、変なことを言ってたんだけど、誰も教えてくれなくて」
彼女に意味を教えないのは正解だろう、純真を汚してはいけない
「えっと、ゴホンッ! 前回のお礼を改めてさせていただこうかと思って」
まだ少し顔を赤くしながら仕切りなおすフェン
「別に、構わんさ、うちのチビっ子が捕まってたから手を出しただけだし、そっちの嬢ちゃんの時も偶然居合わせたから手伝っただけだ、礼はいらん」
「いやでも、助けてもらったわけですし」
食い下がるフェン、それに対しストレイドは
「あんまりしつこいと、ベッドに連れ込むぞ?」
「っ! いえ! わかりました! ありがとうございます!」
「…………すごいな、堂々と言うのか」
セクハラで返す、なかなかない返しだ、ラヴァが戦慄している
「いい加減にしなさい」
「いてっ」
リスカムが蹴る
それを見てビーグルが
「あの、お二人は知り合いなんですよね?」
「ええ、一応」
「ああ、一応」
「…………一応?」
微妙な返しに困惑する、二人そろって素直にならない
フェンが話かけてくる
「あの、それで聞きたいことがあるんですけど」
「なんだ」
「この前のあれ、どうやったんですか?」
「あれっていうと、検閲の時の?」
「はい、それです」
「? あれとかそれとかなんだよ、わからないぞ」
ラヴァが?を浮かべる
「例の、フェリーンさんの手を一瞬で撃ちぬいたっていう?」
「そう、それ」
ビーグルの言葉に肯定する
ストレイドが動く
「いいだろう、実演してやろう」
そういい的を撃てる位置につく
「諸君、よく見ておけ、一瞬だぞ?」
「自分で言いますか」
そういい、懐から銃を取り出し、マガジンを変え、もう一度仕舞う
「「「………………じー」」」
フェン、ジェシカ、アドナキエルが食い入るように見つめている
フェン以外の二人は狙撃オペレーターだ、撃ちぬいたと聞いて興味が出たのだろう
穴が開くほど見つめている
「「「………………じー」」」
「……やりづらいな」
「あ、すいません」
「いや、大丈夫だ」
気を取り直し、もう一度的に向かう
両手を下げ、銃は完全に仕舞われたまま
的を見据えたまま、集中する
「――――ッ!」
乾いた音が響く
瞬間、ストレイドの手には銃が握られていた
発砲は、されている、的には三発、弾痕が残されている
「…………え?」
「早い、どころじゃないですね」
ほとんど見えなかったのだろう
フェンとアドナキエルが呆気に取られている
「あのっ、もう一回! もう一回お願いします!」
「すいません、オレからもお願いします」
二人が催促する、が
「残念、一回だけだ」
そういって、切り上げようとすると
「……じー」
熱い視線を感じる、先ほど以上に熱烈なもの
「?」
「…………じー」
だがそれは、ストレイドにではない
その手に持つものにむけられている
「…………じー」
「あー、ジェシカ、どうした?」
視線の主はジェシカだった、ストレイドの銃に熱烈な視線を向けている
「それ、私と同じ型の銃ですか?」
「え? ああ、そうだな、うん」
そういわれ、ジェシカの手元を見る、確かにストレイドの銃に似ている
「……見るか?」
「はいっ!!」
元気いっぱいな返事が返ってきた
「ほら」
「ありがとうございます!!」
ジェシカに手渡す
ほお~、とか、はあ~、とか言い始める
「これ、自分でカスタムしてるんですか?」
「ああ、撃ちやすいようにいじってる」
そういうストレイドの銃はジェシカの銃と比べ細部が異なっている
スライドのところが違ったり、グリップが木製だったり
よく見ると中のバレルも小さな溝が付いてたりする
「撃っていいですか!!」
また元気よく言ってくる、彼女は生粋のガンマニアなのだ
「いいぞ、一発につきワンタッチだ」
「わかりました!!」
「いや、わかるなわかるな」
冗談に即答で返されつっこむストレイド
ジェシカが試射をはじめ、手持無沙汰になる
「あの、結局今のはどういうことなんですか?」
フェンが聞いてくる、先ほどの射撃の事だろう
「別に、ただの早撃ちさ」
「早撃ち? 今のが?」
「ただの早撃ちでこんなになるものなんですか?」
フェンとアドナキエルが言ってくる
「ああ、早撃ちだ、さっきの間に三発撃っただけ、それ以外のことはない」
「いやでも、ほとんど見えませんでした」
「あの一瞬で、三発、一体どうやって」
「ちなみに、マガジン分全部、さっきぐらいの間に撃ち切れるぞ?」
「「えっ」」
ストレイド曰く、ただの早撃ち
その言葉が信じられないらしい
「ホントだぞ? 他にタネも仕掛け、はあるな」
「仕掛け、ですか?」
「銃の方だ、単純に弾の装填を早くしてるだけだが、説明してもわからんだろ」
「ああ、はい、銃は詳しくないので…………」
「オレも、許可がでたらいじくってみたいですね」
銃の話はわかるものにしかわからない
ビーグルとラヴァはおいてかれている、フェンもいまいちわかっていないが
「あの、それともう一つ」
「なんだ、まだ何か聞きたいのか?」
フェンがまた質問をしてくる
「あの時に、体の動きが鈍くなったんです、あれは何を、アーツか何か使ったんですか?」
リンクス救出の際、周囲の人物の動きを止めた、そのことを聞いているんだろう
「いや、何も」
「えっ? でも確かにあの時、何かされたような……」
アーツでないなら何なのか
あの悪寒の正体を知りたいのだろう、フェンが詰め寄る
「あれは何か特別なことをしたわけじゃない、少なくとも俺にとっては日常的なことだ」
「日常?」
「ああ、あれ然り、早撃ち然り、いつの間にか身についたもの。お嬢さんたちには関係ないことさ」
ストレイドにとって、必要だから身に着けたもの
人殺しが生業のものにしか手に入れられないものだ
ロドスの面々にそれは、必要ない
「…………そうですか」
フェンが引き下がる、これ以上は無駄だと悟ったのだろう
「ありがとうございました!!」
満足したらしい、ジェシカが銃を返しに来る
「おお、どうだった」
「はい! 今まで感じたことのない感触でした! どんなカスタマイズなのか今度詳しく教えてください!」
「ああ、機会があったらな」
ジェシカから銃を受け取り、元のマガジンに戻す
すると
「あの、わたしからもいいですか?」
ビーグルが手を上げる
「なんだ、お嬢ちゃん」
「ストレイドさんって、人種は何なんですか?」
そんなことを聞いてきた
全員の視線が集中する
ストレイドには、これといった特徴がない、他の者も気になっていたのだろう
銃を仕舞う
「ふむ、嬢ちゃん、知りたいか?」
「はい、知りたいです」
「そんなに、気になるか?」
「はい、気になります」
ちらりと、ストレイドがリスカムを見る
その顔は、どこか複雑そうだ
「そうか、いいだろう、教えてやる」
「ホントですか!」
「ただし――――」
「ただし?」
パァンッ!
発砲音、再びストレイドの手に銃が握られている
「これを避けれるようになったらだ」
銃口の先、ビーグルの顔が真っ赤になっていた
「……………………」
何も喋らない
「……えっと」
「大丈夫か?」
フェンとラヴァが心配そうに見ている
「…………び」
「「び?」」
「びゃああぁぁぁぁぁからいいいぃぃぃ!!」
全力疾走でどこかに行ってしまった
「「「「……………………」」」」
その場にいるもの全員が呆気にとられる
「可哀想なことをしますね」
リスカム以外
「なに、人のトップシークレットに首突っ込むんだ、それ相応の覚悟をしてもらう」
「はいはい」
そういい、ストレイドはどこかに行こうとする
「待ちなさい、どこに行こうとしてるんです」
「散歩」
「勝手に動かないでください」
二人はそのまま訓練場を出ていった
銃の話は銃好きにしかわかりません
ストレイドの銃はジェシカのものと同じです
名前は書いておりませんがわかる人にはわかるでしょう
うんたらハザードのほにゃららエッジの元ですね