アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
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コンコン
扉をノックする音が執務室に響く
「入ってくれ」
「失礼します」
中で書類とにらっめっこしている男が音の主に入るように促す
「BSW特別駐在オペレーター、リスカム、フランカ、以下二名、招集に応じ参上しました」
「堅苦しい挨拶ね」
「依頼主に対して礼儀を弁えるのは当然のことです」
「相変わらずお堅い考えだこと」
「何とでも言いなさい」
「二人とも落ち着いてください」
入るなり小さな口論を始める二人、それを諫めようとする小さな影
茶色の長い髪にウサギのような耳、まだ幼い未熟な、背丈に合わないぶかぶかの上着を着る少女
彼女の名前はアーミヤ、リスカムら四人の雇用主であり、このロドスのリーダーである
「朝から呼び出してすまないな」
「いえ、問題ありません」
そう話しかけてきたのは、ドクターと呼ばれている鉄仮面で顔を隠している怪しげな見た目の男
アーミヤが絶対の信頼を寄せ、彼女を影から支えるロドスのもう一人のリーダー
この世界を蝕む鉱石病を巻き起こす天災研究の第一人者と呼ばれるほどの研究者であったが、今は訳あって記憶を失くしているらしい
ロドスにおける作戦行動の指揮を行う人物でもある
「ご用件は何でしょうか」
「いや、大したことではないよ。少し頼み事をしたいだけなんだ」
顔を隠している理由をリスカムは知らない、そうするだけの理由があるのだろうがそれを言及する必要は彼女にはない
少なくとも、信頼に足る人物ではある
「最近、龍門に関することで不可解な情報が入ってね。少し調査をしてほしい」
そういい、ファイルを一冊リスカムに渡す
「龍門のことなら私たちではなくチェンさんたちの方がいいのでは?」
「まあそうなんだが、事情があってね」
ファイルを受け取りながら疑問を口に出す
「とりあえず目を通してくれないか」
言われるままにファイルを開き中の書類に目を走らせる
「? なにこれ、何かの図面みたいだけど」
フランカが横から怪訝な顔で覗き込む
「これは、龍門の見取り図、ですか?」
「ああ、そうだ」
ドクターが頷き、机に手を組みその上に顎を乗せる
「これって……襲撃作戦の計画書ですか!?」
後ろから覗いていたバニラが驚いたように声を上げる
「恐らくはそうだろう、だが少々奇妙な点があってな……」
「確かに、ただの計画書にしてはおかしいですね」
その紙には龍門の大まかな施設の位置、それに対してどう攻め入るか、どこに兵を動かすか、撤退ルートはどこなのか、
計画と呼ぶには十分な情報が載っている
「この文字はドクターが書いたものでは」
「いや違う、最初から書き込まれていたものだ」
「ふむ……」
ただ、普通の計画書と呼ぶにはおかしな点がいくつかあった
「実行前の偵察隊の動き、それに対してどう行動を起こすべきか、もし逃がしてしまった時の対処方法」
「いざ戦闘行動が起こってしまった時、相手を龍門に入れないための行動阻害ルート、ましてや相手側の拠点の位置まで乗せられているんです」
ドクターとアーミヤが次々と疑問点を上げていく
「あの、そもそもなんでこんな物があるんですか?」
ジェシカが質問をする
「クロージャ曰く、先日の搬送された物資に混ざっていたらしい。それも目立つように」
ドクターが答える
「目立つようにというと?」
「ファイルの置いてあった所が真っ赤に塗りたくられていたらしい」
「真っ赤?」
「ああ、血のように真っ赤なインクで」
そこまでしたというにはよほど見つけてほしかったのだろう、とドクターが言いながら軽い溜息を吐く
「掃除が大変そうね」
「他人事のように言いますね」
「ええ、他人事よ」
フランカが茶化すように言い、バニラがそれに返す
「実際、片付けが難航しているらしい」
「そんなに広い範囲に撒いてあったんですか?」
リスカムがそう聞くと
「いや、そこまで広くないんだが、近づけないほど臭いんだ」
「臭い?」
「ああ、それもインク特有のものではなく、また別のタイプの臭さだった。クロージャが珍しく怒っていたよ」
だった、実際に嗅いだんだろうか
「そんなに酷いんですか」
「とにかく臭いが辛い、唐辛子の味がそのまま鼻に来るような代物だ」
どうやら被害にあったらしい、思い出してしまったのか、アーミヤも苦い顔をしている
「うえぇ……嗅ぎたくないなー」
話を聞いていたバニラが呻く、想像してしまったのだろう
「話を戻しましょう。で、私たちは何をすればいいのかしら?」
脱線しかけた話をフランカが戻す
「図面の通り、行動を起こす」
どうやら書いてある計画を実行するつもりらしい
「なぜです? 我々がやる理由はないと思いますが」
「まあ、その通りだ」
疑問を口に出す、ドクターが説明を始める
「だが考えてみてくれ、これはロドスの施設内に何故かあったものなんだ。わざわ
ざ、目立つように」
倉庫にいつの間にか置いてあったと言っていたのを思い出す
「中身は襲撃計画書、それを阻止するための作戦。もし事前に知ることができれば、私も同じような方法を考えるだろう」
大したものだ、ドクターが書き込んだ人物を賛辞する
「だがここまでプランを立てているなら、送り主が動けばいい」
「ええ、その通りね」
フランカが同意し、リスカムが言葉を連ねる
「できない理由があると?」
「恐らくそうだろう」
リスカムの答えにドクターが肯定する
「差出人は何かの拍子に計画を知ってしまった、しかし自分では止めれない。代わりにやってくれる誰かが必要だった」
その誰かに選ばれたのが、ロドスなのだろう、だがまだ疑問点は尽きない
「情報を渡すなら、なぜ直接来なかったんでしょうか。それになぜ、ロドスに渡したのです?」
「さあ、それは本人にしかわからない」
姿を晒せない理由があるか、敵の誰かが裏切ったのか、ドクターがいくつかの可能性を上げていく
「だが、私たちに渡した、ということは、私たちに、ロドスに動いてほしいんだろう」
「だからやると」
「そうだ」
そういい説明を終える
納得は出来た、だがまだまだ疑念は消えない、もしこれがただのたちの悪いイタズラならばそれでいいのだが
実は嘘の情報で、ロドスを罠にはめる代物だとすれば、いや、もっと別の目的があるのかもしれない
もしもの事を嫌でも考えてしまう、それを察したのだろう、ドクターが口を開く
「出所のわからない代物で動くのが不安なのはわかる」
「なら……」
「だが本当に恐ろしいのは、これが偽物ではなく、何もしなかったことで罪のない人々が傷つくことだ」
言われて考える、敵が来ることを知っていながら何もせずにいる、そうして誰かが犠牲になる
戦うことも、守ることもしようとしなかった、自分のせいで
そんなことになれば、一生後悔することになるかもしれない
「そうね、確かにそれは、いただけないわ」
「はい!! 私もやるべきだと思います!!」
「これは私たちがすべきこと……そうだと、私も思います」
他の三人が同意する、もちろん、リスカムも同じ気持ちだ
「ええ、そうですね」
なにより、彼女は守るべき人々を守るため、銃を握っている、ここで動かない道理はない
「ドクター、作戦指揮をお願いします」
「君たちには偵察隊のルートに見えるように待機していてほしい」
「待機、ですか?」
「ああ、必要があれば反撃なり追跡なりしてもらうが、この偵察隊は捕まえておきたい」
「なら、そのまま私たちで捕まえちゃえばいいと思うけれど」
「必要のない戦いは出来るだけ避けたい、偵察ルートを囲むように別の部隊を配置する。囲まれているとわかれば無駄な抵抗はしないだろう」
「あら、優しいのね」
「少し回りくどいがその方が確実だろう」
「龍門の守備隊は動けないんですか?」
「こんな真偽の解らないものでは動けない、とのことだ」
「そうですか」
「それに、龍門の中を守る近衛兵が動くよりも別の勢力がいたほうが目立つし、何より相手も警戒するだろう。君達に気づいた偵察チームが道を変えたところに別部隊で包囲して確保する」
「わかったわ」
「君たち以外に作戦に参加する部隊のリストだ。」
「……合計九人ですか、多すぎず少なすぎずといったところですかね」
「別れて動いてもらうから実質的には少数行動と変わらない。現場判断は君に任せる」
「了解しました」
「ところで、相手は誰なの?」
「ああ、敵勢力の名は」
「レユニオン・ムーブメントだ」
後半、アーミヤがいないものとなっていることに気が付いた私がいる
ドクターって人種なんなんですかね?