アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
――――――――懐かしい夢を見た
『リスカム君、彼が今日から君の教官だ、よく話を聞くように。レイヴン、くれぐれもふざけたことはしないように』
『はいはい、わかりましたよクソジジイ、さっさと消えろ』
『しっかり務めを果たす様に、失礼する』
『どうも、初めまして、リスカムと申します』
『おう、お前が噂のチビか? ほんとに小さいな』
『……………………』
『俺の名前はレイヴンだ。今日からどういうわけかお前の教官になっちまった』
『……………………』
『ま、運が悪かったと思って、言うことを聞くんだな、ってさっきからどこ見てんだ?』
『あ、いえ、別に、なんでもありません』
『そのわりには、人の顔をじっと見てた気がするが』
『ああ、その、なんだかあなた、―――――――』
「…………はあ」
「どうした? そんな、頭痛が痛い、みたいな顔して」
「……いいえ、別に」
宣戦布告した翌日、リスカムとストレイドは、再びロドスを散策していた
リスカムはどんよりとした顔で、ストレイドは煙草を口でたゆたせながら
「なんだ? 夜更かしでもしたか?」
「そんな感じです」
ストレイドがリスカムのどこか不機嫌そうな顔を見て適当なことを言う
だが実際、リスカムが不機嫌なのは寝不足だからだ
あの後、ストレイドのこれまでの行動をすべて洗っていた
そして気が付いたら、夜が明けていた、ほとんど寝ていない
軽い仮眠はとったが、妙な夢を見てしまった、内容は覚えていないが、そのせいで頭も回らない
寝不足なのを言い当てられたことでさらに機嫌を悪くさせる
「おいおい、俺はまだ何もしてないぞ、角をチカチカさせるな」
「…………既に色々しでかしているでしょうに」
ストレイドが少し怯えた顔で言う、リスカムブローはすでに二回食らっている
その威力が骨身にしみているのだろう
「まったく、ただでさえ仏頂面なのに、さらに不愛想になってるぞ」
「そうね、笑ったら可愛いんだから、そんな顔してちゃ勿体ないわ」
ストレイドとフランカが揃って茶化す
普段リスカムをいじっているのはフランカだけだが今はストレイドもいる
そのまま二人分のイタズラが飛んでくる可能性がある、中々不愉快だ
「で、だ」
「あら、どうしたの?」
ストレイドが一緒にいるフランカに顔を向ける
「どうしてお前がいる?」
「あら、いちゃダメかしら?」
「駄目じゃないが、リンクスはどうした?」
「今日はバニラに預けたわ」
「そうか、ならいいが、それでどうしている?」
ストレイドがフランカが一緒にいる理由を聞く
「昨日、リスカムから宣戦布告の話を聞いたのよ」
「ほう」
「で、応援するって言ったの」
「へえ」
「だからいるの」
「説明になってなくないか?」
「あなたの暴論よりマシよ」
「む、確かに」
「納得するんですか」
昨日、リスカムはストレイドとのやり取りをフランカに説明していた
その時に応援すると言っていた、一緒にストレイドが消えた理由を考えてくれるつもりだろう
なんだかんだで相棒なのだ、困っている相方を放っておくつもりはないらしい
付いて来ているのも、ストレイドにすぐに不明瞭な点を聞けるようにだ
「お前ら、トレーニングとか訓練とかしなくていいのか」
「大丈夫よ、決めてある分は午前のうちに終わらせたし、残りは寝る前にやればいいし」
「私は、監視が現時点の最優先事項なので」
「おう、そこまでして俺といたいか、なんだか気持ち悪いな」
「あなたほどじゃないわ」
「その言葉、そのまま返します」
「やめろ、俺の心はガラスで出来てるんだ、割ろうとするな」
三人で仲良く?歩く
行先はどこか、二人は知らない
ストレイドの気分の赴くままに歩いている
「それであなた」
「ん?」
「本当にリンクスと会わなかったわね」
「ああ、聞いたろ? 会うわけにはいかん」
ストレイドの目的、それはロドスにリンクスを押し付けること
直接引き取ってくれと言えばいいのに言わない理由はリンクスにある
リンクスはストレイドに依存している
「あの子、寂しそうにしてたわよ?」
「そうだな、まあ、それもその内無くなる、時間の問題だ」
「それでも可哀そうよ」
彼女一人置いてくと言えば彼女はそれを拒む、無理やりにでもついて来ようとするだろう
そこでストレイドは彼女をロドスに無理やり引き取らせ
ここの人々に馴れさせてから黙って置いていくと決めた
「やはり、回りくどすぎるやり方です」
「ああ、そうだな、だが確実だ」
「……そうでもないと思うけど、言えばいいじゃない」
フランカが言いたいことは事情を話せばいいのに、ということだろう
本来ならロドスは感染者のための組織だ
そこに感染してない少女を引き取ってくれと言うのは少し無理がある
しかし、ここのリーダーは優しい、そんなことは関係なく引き取ってくれるとは思う
「彼女に話して、ついでにあなたもこのままロドスに居つけばいいじゃない。そうすればリンクスもダダこねないわよ?」
「悪いが、嫌だ」
「どうして?」
「どうしても嫌だから」
フランカが食い下がる、ストレイドがそれを断り続ける
確かに彼女の言う通り、ストレイドも一緒に居ついてしまえばいい
だが彼には、それを嫌がる理由がある、リスカムはそれを知っている
「フランカ、あまりしつこく言っては迷惑です、それぐらいにしてください」
「いや、どうしてそこであなたが彼を擁護するのよ、丸め込んじゃえばいいじゃない」
「それをできない理由があるんです、理解しろとは言いません。ですが事情があると、それだけは知ってください」
リスカムがストレイドを庇う
昨日リンクスの処遇で口喧嘩をしたわりには変なところで協力している
不可解だ、フランカが質問する
「その理由って何?」
「何かです」
「同じような答え方をするのね」
「……こう言うしかないんです」
「そう、わかったわ、ここまでにしておく」
引き下がる、そこまでして言いたくないことなのだろう
ストレイドに話しかける
「で、どこ行くの?」
「面白そうなところ」
「……また何か、厄介事を起こすつもりですか?」
リスカムが怪訝な顔をしている
昨日、メランサにセクハラをしようとし、その前は騒々しい鬼ごっこをしていた
まだこれ以上、何かするつもりなのか
「昨日、例のお遊びの最中に、気になる言葉があった」
「変態紳士ですか?」
「違う」
少し食い気味に否定される、気にしているのだろうか
「スポットが言ってたろ?」
「何をです?」
「ミッドナイトより強烈って」
「……………………」
ミッドナイト、その名前は知っている
ロドスに所属するオペレーターの名だ
あったことはある、一緒に戦ったこともある
悪い人ではない、癖がひどいが
「……会いに行くつもりですか?」
「もちろん、所属してる部隊も、どこに普段いるかも、リサーチ済みだ」
「抜かりはない、と、そう言いたいのね」
「ああ、その通りだ」
「……その時に性格とか、評判は聞かなかったんですか?」
その時に聞いておけば、わざわざ行く気は起きないと思うが
「それは、会うまでのお楽しみだからな」
そう言って、彼のいるであろう部屋にたどり着いてしまっていた
「……気づくべきでしたね、ここに来ていることに」
「ホントに会うの?」
「ああ、もちろん」
そういって、部屋のドアを意気揚々と開ける
「邪魔するぜ、予備行動隊A6の部屋はここだ――」
そして、何故か閉めてしまった
「どうしたの? 入らないの?」
「会うなら早く会ったらどうです?」
二人が不審に思い話しかける
ストレイドが振り向き、動き出す
「二人とも、別のとこに行こうか」
「「は?」」
そういって、二人を強引に部屋から遠ざけようとする
「どうやら俺たちはお邪魔虫らしい、さっさと退散しよう」
「いや、ちょっと」
「なんです、急に」
二人を連れてその場から離れようとする、すると
『この色ボケ魔王っ!!』
何やら鈍い音が響いた
先ほどの部屋から一人の女性が顔を出す
「待ったっ!誤解しないでっ!」
「あら、オーキッドさん」
「どうしたんですか? そんなに慌てて」
予備行動隊A6の隊長、オーキッドだった
改めて部屋に訪れる、そこには
「ああ、なるほど」
「……これは、そういうことですか」
ミッドナイトがいい感じに吹っ飛んでいた
「またいつもみたいに口説かれてたのかしら?」
フランカがオーキッドに聞く
「違うわ、いつものくだらないうたい文句よ」
ミッドナイトは元ホストだ
夜の街で女性のために、甘い言葉を囁き、ただ女性を楽しめるために、道化を演じる
言い方は悪いがそれがホストの仕事だ
彼はそんな仕事を昔していた、くだらない事とは言わない
誰かのために、誰かの望む誰かを演じる、十分立派なことだ
彼自身、ホストの仕事に誇りを持っていたというが、詳しい話は省く
「そうなのか? ただの文句の割には、ロマンス成分が多かった気がするが」
ストレイドが椅子や机を巻き込んで吹っ飛んでいるミッドナイトを見ながら言う
「ええ、なんでも私の笑顔が見たいとかいいながら、人の顔に手を伸ばした、それだけよ」
「……引こうとした理由はそれですか」
彼が女性に話しかける際、大仰なしぐさをする時がある
先ほども、そのようなことをしていたんだろう
そこに、ちょうど悪いタイミングでストレイドが入ろうとしたのだろう
それで、勘違いして引こうとした
「勘違いしないでね、この男とはなんでもないわ」
オーキッドが彼とはなんでもない、その旨を伝える、たいして
「そうか、悪い、そのままオフィスラヴにでも発展するのかと」
「……なんだか嫌な予感がしてきたわ」
そう返す
ストレイドの言葉にオーキッドが顔を引きつらせている
常人は口に出さないセリフが聞こえたのが原因だろう
正直、ミッドナイトと近い位置にはいる、ミッドナイトの方が百倍は誠実だが
二人をかけ合わせたら酷いことになる気がする
「それで、ミッドナイトはこの通りね、どうしましょうか」
ここにはミッドナイトに会いに来た
だが、目的の人物が倒れている以上、来た意味もない、引き上げようか
そう考えていると
「おっと、あんたか? ドクターの言ってたお客人っていうのは」
いつの間にかミッドナイトが復活していた
何事もなかったようにぴんぴんしている
特別驚くこともなくストレイドが反応する
「ああ、ストレイドだ、よろしく頼む」
「よろしく、君とは仲良くなれそうだ」
「俺もだ」
固い握手を交わしている
初手から意気投合しようとしている、止めた方がいいかもしれない
「目的は果たしたでしょう、もう行きますよ」
引き上げようとする、が
「何を言う、こんな面白そうな奴、もっと話さないと勿体ないだろ」
どうやらやる気満々らしい
無理矢理止めるべきだろうか、嫌な予感がして来た
「ところでミッドナイト、この素敵なお姉さんを口説こうとして失敗したらしいな」
「ああ、オーキッドさんか、この人いつも仏頂面なんだ、笑顔でいた方が断然いいのに」
二人が動き出してしまう
「いいだろう、どうすれば女性を笑顔にできるか、手本を見せてやる」
「へえ、お手並み拝見と行こうか」
ストレイドがオーキッドの前に出る
「……何よ」
身構える、言いようのない不安に駆られているのだろう
「さてお姉さん、もしあなたさえよければ、この後」
一拍おいて、話し出す
「俺のためのバースデースーツを着てくれないか?」
「…………はっ?」
オーキッドが唖然としている、おそらく意味を知っているのだろう
とても初対面の人にむける言葉ではない
「あれおかしいな、普通なら『喜んで!』って返ってくるんだが」
自分が言っていることを理解していないのか
ミッドナイトが前に出る
「おっとストレイド、そんな直接的な誘い方じゃダメだな、もっと上品に行かなきゃ」
「なるほど、勉強させてもらおう」
選手交代、今度はミッドナイトが前に出る
「さて、オーキッドさん、俺はあなたを失望させないよ?」
そういって、一拍おく
「なんたって、君は俺のお姫様だからね、甘い一夜を過ごそうじゃないか」
「……………………」
オーキッドがプルプルしている
喜びではない、あれは呆れと怒りだ
突けば破裂してしまいそうなほど負の感情が膨れ上がっているように見える
「おや、お気に召さなかったようだ、もう少し柔らかくなってくれればいいのに」
「こらこら、柔らかくなるのを待つんじゃない、柔らかくするのさ、俺たちの言葉で」
今度は二人並んで立つ
「「さあ、あなたを連れ去りに来たよ、お姫様」」
「だあぁぁぁぁぁぁっ!! なんなのよあんたらあぁぁぁぁ!!」
「……なにこれ」
「やはり、来るべきではありませんでしたね」
「ねえスポット、オーキッドが誰かと喧嘩してる」
「いいんだ、ポプカル、あれに関しては何も気にしなくていい」
この後二人は丁寧に処理された
私にとってバースデースーツはジャブです、ストレートではありません
ホントは別の出そうかなと思いましたがあまりしつこいのもあれなのでこれに落ち着きました
ミッドナイトは某真銀斬に立場を食われやすいので出番がありませんが結構いい性格してますよ、まあ人によってはフロストリーフでいいんじゃねって方もいるでしょうが
ホストの人ってよくもまああんな言葉がべらべら出るもんですね
頭の回転が速いのかそれともそういう風に教えられるのか、私にはわかりません
言い方が冷たく見えますがホストが嫌いってわけじゃないですよ?
ちなみに前話で一部セリフを直さずに投稿してしまったことにしばらくしてから気づきました、あんなミスは二度とないようにしたいです