アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
「リンクスちゃん、今日はどこ行くの?」
「ばにら、きょうはね、あっちいくの」
リスカムが宣戦布告した翌日、バニラとリンクスは引き続きロドスを探索していた
「こっち、まだみてない」
リンクスが元気に走っている
当初は借りてきた猫のようにおとなしかったのが嘘のようだ
ほんの少しの間で随分なじんだ様子だ
「ばにら、はやくはやく」
「はいはい、ちょっと待ってね」
昨日、フランカとリスカムから事情は聞かされた
ストレイドの目的と、リンクスの境遇を
不釣り合いな組み合わせだとは考えていた、訳アリなのかと
だがこんな小さな子供がそんな目にあっていたとは思わなかった
「ねえねえばにら、ここはどんなとこ?」
「ここは住居フロア、ロドスで暮らしてる人の個室があるの」
リンクスが顔をあげて聞いてくる
昨日、彼は彼女と会わなかった、一度も
口には出さなかったが寂しそうにしていた
彼女はストレイドの行動に疑問は持たないのか、そんなことを考えてしまう
ストレイドは親代わりのようなことをしている、
リンクスはそんな彼を信用している、疑念を持つ理由がないのだろうか
「? ばにらたちのいるところはちがうの?」
「あそことは別のとこ、昔からここにいる人たちの階層だね」
正直、ここで彼の企みを話せばストレイドの目論見は崩壊する
リンクスが知りさえすれば、事態は動く
だがフランカに話すなときつく言われてしまった
なんでも
『彼女が彼に依存しているならば、話した時点で精神状況に異常が出る可能性があるわ
くれぐれも、リンクスに喋らないこと、仄めかすのもダメ』
とのこと
信頼している相手に置いていかれるかもしれない
それを知って小さい子供が正常でいられるか、そんな訳がない
発狂するようなことはないだろうがまた別の、一生治らない傷が残るかもしれない
そういうことなんだろう、慎重になるのはわかる
だがドクターや他の人にも話すなと言われてしまった
知っている人が増えれば増えるほど、リンクスの耳に入る可能性が増える
それを防ぐため、知っている者を特定できる状況にしておきたいと
「はあ…………」
「? どうしたの?」
「ああ、うん、大丈夫、なんでもないよ」
ストレイドにそれをやらせないためと言いながら、結局、彼の思惑通りになっている気がする
妨害するなら何が最善か、それがわかっていて何もできない
歯がゆい、何もできないのがこんなにつらいとは思わなかった
というか、フランカとリスカムも何故リンクスを置いていく事を肯定しているのか
あの二人、なんだかんだでストレイドの味方をしている気がする
彼の計画が結果的にリンクスのためになるのかもしれないとはいっても
彼の側につく理由はないはずだ
あれだろうか、昔のよしみというやつか
ストレイドのことをよく知らないバニラにはわからない
「ばにらばにら、なにかんがえてるの?」
「ん? ああ、なんでもないから、大丈夫大丈夫」
顔に出ていたのだろう、リンクスに悩んでいることを見抜かれてしまった
彼女はかなり聡いと聞いた、あまりこの場で考えない方がいいだろう
適当な言い訳をしてリンクスと歩く
ここは住居フロア、だがバニラたちのいるところとは違う階層だ
ここは主に古くからロドスにいる人たちが住んでいる
ドクターやアーミヤ、ケルシーたちもここにいたはず
通路を歩いていくと
「あ、こんにちは皆さん」
「む?」
「おうバニラか、こんにちは、だな」
ノイルホーンとレンジャーが歩いていた
なにやらノイルホーンが誰かを背負っている
「? だーれ?」
「ん? こいつか?」
リンクスがノイルホーンに聞く
「ドゥリン、てやつだ、見ての通り寝てる」
「すぴ~……」
そういわれて健やかな寝息が聞こえてくることに気づく
ドゥリンと呼ばれた少女はかなりマイペースな性格をしている
特別怠惰なわけではないのだが、どこであろうといつの間にか寝ていることが多い
聞いた話では、一日の大半を寝て過ごしているとか
「どうしておんぶしてるの?」
何故背負っているのか、リンクスが聞く
「別に、食堂で飯食ってたらいつの間にか寝てたんだ、ま、いつもの事さ」
「そうなの?」
「そうなの」
ノイルホーンが答える
彼は少々、見た目が怖い
背が高く、少し荒い言葉遣い、そして何より特徴的な鉄仮面
ドクター張りに怪しい見た目をしてる、ロドスの制服を着てる分、あちらよりはマシだが
そんな見た目だがかなり面倒見がいい性格をしてる
ドゥリンを背負っているのが何よりの証拠だろう
なんとなく行先を聞いてみる
「どこに行こうとしてたんですか?」
「訓練場じゃな、教官殿に呼ばれておるんじゃ」
レンジャーが答えてくれる
「ついでにドクターにも呼ばれたんだ、何か話があるらしい」
「ドクターにですか?」
ノイルホーンも答えてくれる
このタイミングで呼ばれるということは、レユニオンの部隊の事だろうか
作戦に誰を参加させるか、色々試行錯誤しているのかもしれない
ついていこうか、そう考えていると
「ところでお嬢ちゃん、お主は例のお客人かな?」
「おきゃくじん? おきゃくさんってこと?」
「ああ、そうじゃな」
「そうだよ、すとれいどときたの」
レンジャーがそんなことを聞く
「ストレイド、てのはこの前一緒に走り回ってた黒い奴か?」
「ああはい、その人ですね」
この前ロドスを駆け回っていた時にいろんな所を通った
その時この辺りも通った気がする、それで彼を見たのだろう
まあチェンとストレイドがわーきゃー叫んでたのが印象的だったのもあるだろうが
「あいつ、すばしっこかったな、あの隊長相手に啖呵も切ってた、何者なんだ?」
「その、傭兵って言ってました」
ストレイドの素性を聞いてくる
ノイルホーンとレンジャーはかなり長いこと戦っている、歴戦の兵士だ
そんな彼らから見てもストレイドの身体能力は高く見えたのだろう
「へえ、傭兵か、ウチに雇われてくれないかね」
そんなことを言う
「なんでです?」
「そうなりゃ楽になりそうだ、あんだけ動けるんだったら戦闘力も中々高いだろ」
「ああ、強いらしいですよ、はい」
「ほう、見てみたいもんだ」
ノイルホーンの言葉に少し気分が落ち込む
この前のことを思い出してしまった
何もできずに、ただ撃たれてしまった
よほど反射神経が良くなければあれは避けれない
相手にはしたくない、今は味方だが敵に回ったときのことは考えたくない
「……………………」
「ん? どうした爺さん、考え事か?」
「むう、別に大したことじゃないんじゃが……」
なにやらレンジャーが考え込んでいる
「どうしたんですか?」
聞いてみる
「いや、あの男、どこかで見た気がするんじゃが、どこだったかと思って」
「あの男って、ストレイドさんの事ですか?」
「ああ、昔どこかで見た顔じゃ、だがそれが思い出せん」
「なんだ、ついにボケたか?」
「そんな訳がなかろう、儂はまだ現役じゃ、ちと年はくっているがな」
どうやら昔見たことがあるらしい
レンジャーはロドスに来る前は流れ歩いていたと聞いたことがある
その時に会ったのか
「ストレイドさんと会ったことがあるんですか?」
もしかしたらリスカムに有益な情報を渡せるかもしれない
レンジャーに話を聞いてみる
「似たような見た目の男に会った記憶があるだけじゃ、そもそも名前が違った気がする」
「名前、ですか」
「ああ、たしか鳥の名前だった気がするんじゃが……まあ、おそらくは他人の空似じゃろう」
鳥の名前、彼は昔レイヴンと名乗っていたはず
ストレイドかもしれないということは伏せて聞いてみる
「あの、その人ってどんな人でしたか?」
「む? なんじゃ、何か気になることでも?」
「え、あ、はい、ちょっと気になって」
「ふむ、まあいいじゃろう、詳しい話は大して知らんがな」
そういって、話してくれる
「傭兵の間では有名な男だったんじゃ、なにか、物騒なあだ名がついていての」
「物騒? どんな名前だよ」
「確か、死告鳥、とか言ってた気がするのう」
「死告鳥? なんだそりゃ」
「その名の通りじゃ。死を告げる鳥、奴の通った後には死体しか残らなかったとか」
「随分と恐ろしい話だな、死神か何かか?」
「まあ似たようなものじゃ」
「でもそれって、他の人がやったとかそういう話は出なかったんですか?」
「ああ、そう言う者もおったな。だが奴がやったとういう確たる証拠があったんじゃ」
「確証ねえ、どういうもんだったんだ?」
「なんでも、奴に殺された者は、眉間に一発、それだけで仕留められていたとか」
死告鳥、眉間に一発、彼の特徴に該当する
レンジャーの言う人物はストレイドの事だろう
「なんだ、気味が悪いな、手当たり次第に殺しまわってたクチか?」
ノイルホーンが言う、今の話だけではそんなイメージしかつかない
レンジャーが続けて言う
「ただ、妙なことをする男でな」
「妙な事?なんだよ」
「なんでも、火消しのような事をしていたとか」
「……火消し、ですか?」
「ああ、それで仕事がなくなるって雇われ共が騒いでおったの」
火消し、要は騒ぎが起きる前にその元凶たる火種を消すこと
「戦争がなければ傭兵は大した仕事はない、輸送団の護衛とか賞金首とか、そんなことしか出来ない地域もあったのう」
「そりゃつまり、そいつが戦争を止めてたって事か?」
「うむ、戦争が起きる前に火種を潰していたらしい、といっても大きい国同士のものはさすがに無理そうじゃったが」
「変わったことをする奴だな。なんだってそんなことをしてたんだ?」
「さあ、だから噂になったんじゃ、同時に嫌われてもおった」
「なぜです?」
「なに、簡単な話じゃ、人を殺しているくせに正義の味方を気取るつもりかと」
「なるほどな、そういう奴も出てくるか」
おそらく、人殺しのくせして善人のふりをするのか、そう見えていたんだろう
フランカから彼は容赦がないと聞いた、戦場で生きてきた者の癖なのか、それとも殺すのを楽しんでいるのか
「……むー、おはなしながい」
「ああ、すまんのう、お嬢ちゃんには退屈な話だったか」
リンクスがレンジャーに抗議している、
リンクスを拾ったのは彼の意思だと聞いた
そして彼女が彼に見せた表情は、悪人に向けられるものではない
なにか、彼の中で理由があるのだろう
「あの、それで、レンジャーさんはどう思ってるんです?」
「? 何をじゃ?」
「その人について、さっきの話の内容とか……」
なんとなく、聞いてみる
「まあ、変わっているとは思ったが、奴の行動で救われた命もある。一概に悪人と決めつけるつもりはない、なにより直接話した事がない。評判だけで決めるべきではなかろうて」
「あ? 会った、て言ってなかったか?」
「ああ、会いはした、だが一瞬言葉を交わしただけじゃ」
「何を話したんだ?」
「いやなに、一言、『あんたは良いやつだな』と、一方的に言われただけじゃな」
「…………どういう状況だったんだ?」
ノイルホーンがその時のことを聞く
「ある輸送団の護衛をしてたんじゃ、確か医療物資とかの輸送だったか、その時に奴がいた」
「それがどうして、さっきの話につながるんだ」
「まあ待て、その時に敵襲があったんじゃ、といっても特別戦うことはなく終わったんじゃが」
「何があったんだ?」
「なに、現れた奴らは仲間が怪我をしているから薬を分けてほしいと、そう言った」
「それで?」
「だが輸送団も金のために運んでいる、ただでは渡せない、それ相応の額を払えと言った」
「まあ、仕事だしな、仕方ない」
「だが相手は払えない、後で必ず払うから今はタダでくれと、そう言った」
「よほど急いでいたんでしょうか」
「輸送団もそんな口約束で渡すわけにもいかない、口論になってピリピリしてきたんじゃ」
「で、どうなったんだ?」
「なに、見るに見かねてそいつらが欲しがってた分の額を儂が払うといった、無駄な争いは避けたいからのう」
「ほう、優しいじゃないか爺さん」
「なに、大したことじゃないわい、その時に、奴も半分払ってくれたんじゃよ」
「奴って、その死告鳥とかいうのがか?」
「ああ、それでその時、さっきのセリフを言われたんじゃ」
「なるほど、納得だ」
「……そうですか」
今の話を聞く限り、とても悪人とは思えない
彼がBSWを抜けた理由に繋がるかもしれない
リスカムに聞かせるべきか、そうなると合流した方がいいだろう
「まあこういう話じゃ、たいして面白い話でもないわい」
「いえ、参考になりました、ありがとうございます」
「なに、得るものがあったならそれでいい」
「それでは、わたしたちはこれで失礼します、お話しありがとうございました」
「? ばにら、どこいくの?」
礼を言いその場を去る、なにか助けになるかもしれない
「参考ね、なんのことだか」
「………………」
「なんだよ爺さん、まだ何かあんのか?」
「……さっきの話、ロドスに来る前の事なんじゃが」
「ああ、そうなのか」
「ロドスに来た後も、どこかで、身近なとこで見た気がするんじゃが、どこだったかと」
「なんだ、やっぱりボケてるんじゃないか?」
「まさか、まあその内思い出すじゃろうて」
「そうかい、なら早く行こうぜ、ヤトウに怒られちまう」
「すや~…………すぴ~…………」
レンジャーを出して気がついたことがあります
彼のセリフ、文面だけ見るとのじゃロリです
きっと私の頭が狂っているんですね、脳に瞳が生えているのでしょう
上位者をぶちのめして落ち着きました、ゴース戦は楽しいですね
何を言ってるかわからない?
理解しない方がいいでしょう