アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里   作:Thousand.Rex

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信念と理想と

「もっとこう、まともに話はできないんですか?」

 

「俺がやると思うか?」

 

執務室から出た後、二人は甲板にやってきた

日は暮れてきている、この時間はいつもここに来ている気がする

 

「まったく、変わりませんね、あなたは」

 

「変えれるわけがないだろ、これが俺なんだ」

 

「はいはい」

 

昨日と同じようにレールに体を預ける

ちょうど夕焼けが見える、少し眩しい

隣を見ると同じようにレイヴンが眺めている

 

「……そんなに好きなんですか?」

 

「んー? 景色の事か?」

 

「はい、昔も眺めてましたから」

 

初めて会ったころからしょっちゅう空を眺めていた

綺麗なのはわかるがそんなに見つめて楽しいのか

 

「楽しいですか?」

 

聞いてみる

 

「ああ、移り変わるさまが大変いい」

 

「そうですか」

 

もう一つ、聞いてみる

 

「なにが一番好きですか?」

 

「空か?」

 

「ええ、お気に入りの景色とかあるんですか?」

 

「もちろん」

 

そういって、上を指さす

 

「これだ、今の状態」

 

「……夕日ですか?」

 

今は夕焼け時、空は綺麗にオレンジ色に染まっていっている

 

「違う、よく見ておけ」

 

「? 何をです」

 

「空だよ、これはただの夕焼けじゃない」

 

言われて、見上げてみる

確かに少し違う、オレンジ色が少しづつ明度をあげているような、そんな気がする

空には赤と青が同時に移されている、昼と夜の境界なのだろうか

 

「これはなんです?」

 

これ、というにはこの現象がなんなのか、知っているのだろう

 

「マジックアワーって代物だ。ほんの一瞬の間、空が金色になって、昼夜の境界がなくなる」

 

「そうですか」

 

オレンジ、というには輝いている、金色と言われても遜色はない

 

「どうして、これなんです?」

 

聞いてみる

 

「どうしてだと思う?」

 

聞き返される

 

「……変わっていくから、ですか?」

 

「正解だ」

 

赤の割合が減って、だんだんと暗くなっていく

本当にすぐ終わってしまった

 

「綺麗だったろ?」

 

「ええ、あなたが隣に居なければもっと楽しめました」

 

「そうか、なら今度フランカ達と一緒に見るといい」

 

「そうします」

 

そういって、会話が終わってしまう

話すことがないわけじゃない

話す気が起きない、最近はずっと忙しかった、主にこの男のせいだが

そのままなんとなく暗くなっていく空を見上げる

 

「……どうだ、答えは出たか?」

 

「……昨日の件ですか?」

 

「ああ、進捗はどうかなって」

 

すると向こうから聞いてきた、もしかしたら意外と楽しみにしてるのかもしれない

 

「別に、考え中です」

 

「そうか、なら結構」

 

見上げながら、そう言う

 

「……レイヴン、聞いてもいいですか?」

 

「何をだ?」

 

「どうして、何も言わずに消えたんです?」

 

「なんだ、答えが知りたいのか?」

 

「違います。いなくなったことではなく、何も言わなかった理由を聞きたいんです」

 

別にカマをかけようとしている訳ではない

単純な疑問だ、それぐらいは許されるだろう

 

「…………………………」

 

黙って煙草を取り出し、火を点けすい始める

 

「……そんな考えるような事なんですか?」

 

「まあな、話すのは構わんが、あまり気持ちのいい話じゃない」

 

「よくない話なんて、すでに沢山してるでしょうに」

 

「そうだな、なら大したことじゃないか」

 

話してくれるらしい、煙草を離し、喋り始める

 

「単純な話だ、例えば部屋の隣人がいたとする」

 

「ええ」

 

「挨拶するぐらいの関係だ、親しいわけじゃない」

 

「そうですね、礼儀程度の問題です」

 

「ある日、いきなりいなくなった、何も言わずに、そうなった時、おまえはどう思う?」

 

「……そうですね、その程度の関係だった、そう思いますが」

 

「それが、答えだ」

 

「……………………」

 

その言葉に、初めて本当に怒りが沸き上がった気がする

 

「……大したことではないと?」

 

「……ああ、そうだ」

 

「あなたにとって、私はその程度だったと」

 

「そうだ」

 

「…………そんな、程度ですか」

 

腹の中で何かが煮えたぎる、今まで何を言われてもここまで正気を失いそうになったことはない

 

「……怒ってるな、随分」

 

「ええ、自分でも不思議です」

 

どこか、また、苦しそうな、悲しそうな顔で言ってくる

そんな顔をされたら、なんて言えばいいのかわからなくなってしまう

 

「……何故です」

 

聞いてみる

 

「……………………」

 

何も言ってくれない

 

「……言いなさい」

 

「……………………」

 

また、何も話してくれない

 

「――――っ!」

 

頭が真っ白になってしまうのがわかる

自分で自分が制御できない

彼の胸倉につかみかかってしまう

 

「答えなさいっ!!」

 

「……………………」

 

怒鳴ってしまう

彼は、何も喋らない

答えては、くれない

 

「……お願いです、答えてください」

 

彼を信頼していた、その気持ちが一方通行だと、思いたくはない

お互いに信頼していたはずなのだ、彼は確かに、自分のことを見てくれていた

 

相棒として

 

「……レイヴン、お願いです」

 

「……………………」

 

「私は、あなたを誤解したくないんです」

 

つい、言ってしまう、言うつもりのなかったことを

 

「……そうか」

 

そう、一言いう

 

「……すまないな、確かに言い方が悪かった、少なくともお前には言うべきだったんだろうな」

 

「……話して、くれるんですか?」

 

「ああ、流石にお前だとしても、女の子にそんな泣きそうな顔されちゃ折れるしかない」

 

「…………あ、えっと」

 

そんな顔をしていたのか、自覚がなかった

 

「とりあえず、手を離しなさい、リスカム君」

 

「……はい、すいません」

 

言われて、手を離す

煙草を捨てる、ゆっくり、話し出す

 

「さっき言ったな、大したことじゃないと」

 

「ええ」

 

「それはな、嘘だ、まあ嘘じゃないが」

 

「……どういうことです?」

 

嘘なのに嘘じゃない、曖昧だ

 

「俺はな、リスカム、そう思わせたかったんだ」

 

「何故です」

 

「簡単だ、そうなれば、俺の事なんかすぐに忘れる、記憶の彼方に追いやられる」

 

「……………………」

 

「そうすれば、その後の環境に馴れようと、前を向ける、そんな薄情な奴、忘れてしまえと」

 

「……あなた、そんな事で忘れてもらえると思ったんですか?」

 

リンクスに対してやるのと理由は変わらない

だが彼にしては随分と甘い、もっと確実な計画を立てるのに

 

「ああ、割と本気でそう考えてた」

 

「……たまに馬鹿なことを言いますね、あなた」

 

「まったくだ、どうしてこんなことしか思いつかないのか」

 

大した事のない相手のことは覚えておかない

人間関係ではよくある話だ、人は薄情だから

だが彼は違う、けしてそんな程度で忘れられるような人ではない

 

「……それで、実際にやってみた感想はどうです?」

 

「ああ、己が愚かだったと思い知らされた。お前もフランカも、よくもまあ覚えてたもんだ」

 

「でしょうね、彼女はあなたに連れ込まれかけた経験もありますし」

 

「あれは惜しかった、もっとガンガン押し込めばイケたかもしれんな」

 

「その話は結構です」

 

「しかもあいつ、一番に俺に気が付いたんだぞ、正直驚いた。あいつがいなきゃあそこでおとなしくロドスに入れてたんだがな」

 

「ああ、検閲門での」

 

そういえばその後、レイヴンがもし現れたら、なんて話をしてた気がする

あれはそういう事だったんだろう

 

「なんで逃げたんです? そこで懐かしいとか、そんな話をすればよかったでしょうに」

 

「いやなに、気恥ずかしかったんだ。いきなり消えた奴がそんな事を言うのはシュールだろ?」

 

「そうでもないと思いますが」

 

「俺にはそうなんだ」

 

少し、恥ずかしそうに言う

なんとも幼稚というか、そんな理由でやったのか

これでは怒る気もうせてしまう

 

「あなたは、自分が周りに与えている影響を自覚するべきです」

 

「そんな見本になる奴じゃないんだがね」

 

「……悪い意味で、ですよ」

 

「だろうな」

 

そう言って、珍しく笑う、何か企んでいるでもなく、純粋に

 

「ちなみに、BSWの方でもあなたを忘れてる人、多分いませんよ」

 

「ほう、俺はそんなにも人気者だったか」

 

「残念、不人気者です」

 

「よろしい、それぐらいが丁度いいだろ」

 

「さらに言うなら、あなたのロッカーも残っています」

 

「片づけないのか?」

 

「何が入っているのか怖くて見れないんですよ皆。中は手付かず、当時着てた上着も残ってますよ」

 

「ほう、あのマジックポッケと化した上着がか」

 

「ええ、あのなんでも入ってたBSWマークの上着です」

 

「誰かにやっていいぞ、役に立つ代物だ」

 

「誰ももらいませんよ、何よりあなたの為の上着だったんですから」

 

「なら捨てちまえ、枠が一つ空くぞ」

 

「誰もしませんよ。皆、あなたがいつか戻ってくるかもしれないって考えてるんですから」

 

「マジかよ、やっぱり人気者なんじゃないか? 俺は」

 

「そんな訳ないでしょう、まったく……」

 

レールの上に腕を組んで頭を突っ伏す

なんだか阿保らしくなってきた、この分だと消えた理由も大したことない気がする

 

「……消えた理由も話してくれたりは?」

 

「しない、そもそもこれはお前が吹っ掛けてきたゲームだ、最後までやりきれ」

 

「ですよね」

 

そう言って、もう一本煙草を吸い始める

 

「……どうしたんです、何か考えるようなことでも言いましたか? 私」

 

「んー、いや、そういうわけじゃないんだが……」

 

煙を吐いて、こちらを見る

 

「なあ、一つ聞いていいか?」

 

「なんです?」

 

「どうして、戻って来いって言わないんだ?」

 

そんなことを言ってくる

 

「……言って、懇願したら、戻ってきてくれるんですか?」

 

逆に聞き返す

 

「まさか、戻るわけないだろ、あんな退屈なところ」

 

「……まあ、そう言うと思いましたよ」

 

「お、残念そうだな」

 

「気のせいです」

 

この答えが返ってくるのは予想出来ていた

それでも、もしかしたらと考えてしまうのは人の性なのだろうか

 

「それで、どうしてそんなことを?」

 

「いやなに、今回の件、突っかかってくる割には何も言わねえなあ、って思って」

 

「……言われたいんですか?」

 

「可愛い子には言われたい」

 

「なるほど、ならフランカあたりにでも頼めばよさそうですね」

 

「む、そいつは困る、そのままお持ち帰りしそうだ」

 

「やめなさい」

 

というか、どこに持ち帰るつもりなのか

 

「で、どうしてわざわざ聞いたんです?」

 

「言ったろ、昔みたいにピーキャー言う割にはそう訪ねないのが不思議だったんだ」

 

「ええ、そうですね」

 

「それがどうにも不気味だった、だから聞いた」

 

「そうですか」

 

レイヴンが煙草を吸い終わるのを待つ

 

「ふんっ!」

 

「投げ捨てるな」

 

また、外に放り投げる

下に人がいたりしないだろうか、まあ確認はしてるだろう

 

「……あの、ゲームの答えなんですが」

 

「お? わかったか?」

 

「いや、確証はないんですが」

 

「言ってみろ」

 

なんとなく、思いついたことを言ってみる

 

「変わらないから、出ていったんですか?」

 

「……ふむ、何がだ?」

 

普通に聞き返される

 

「その、BSWにいても、退屈だから、とか」

 

「ふむ」

 

どこか、神妙な面持ちで考えている

そして

 

「残念、違う」

 

否定される、間違えたらしい

 

「だが、惜しい、中々惜しい」

 

「……何がです?」

 

「目を付けたところは良い、その調子なら、そろそろ答えが出るかもしれんな」

 

「……どのことです?」

 

観点がいいとはどういうことか

 

「なんだ、わからんか?」

 

「ええ、どれのことです」

 

「んー、まあいいか、教えてやる」

 

そう言って、煙草をくわえる、火はつけない

 

「BSWだ」

 

「え、そこですか?」

 

「ああ、関係してるのはBSW、正確には、お前らだ」

 

てっきり、さっきの空と同じ理由かと思っていた

だが違う、しかも自分たち、つまりBSWの面々が関わっているらしい

 

「……なんだかわからなくなってきました」

 

「そうか、ま、頑張れ」

 

それ以上は言わない、態度で示してくる

「もう一つ、いいですか?」

 

「なんだ、もうヒントは無しだぞ」

 

「いえ、違います、さっきの話で聞いたことないなって思ったことがあって」

 

「なんだよ」

 

「あの、あなたはBSWの事、どう思ってるんです?」

 

レイヴンのBSWに対しての心情

そういえば一度も聞いたことがない、聞く理由がなかった

 

「……むう、そうきたか」

 

「話しにくいんですか?」

 

「ああ、すごく恥ずかしい」

 

「……あなたが?」

 

「そう、なんだかラブレターを初めて書いたような気分に陥る」

 

「書いたことなんてないでしょう」

 

「その通り、んなもん書く暇があったら体で示すな」

 

「訴えられても知りませんよ」

 

少し、顔を赤くしてる気がする、暗くてよくわからないが

 

「……そうですか」

 

あのレイヴンが本気で恥ずかしがっている

 

「まあなんだ、話さなくてもいい――――」

 

「ぜひ話していただきましょう」

 

「……マジで?」

 

「マジです、さあ、話しなさい」

 

こんな面白そうな、もとい、大事な話、聞かない理由がない

催促する、なんだか見たことない顔になっている

そんなに言いたくないのか、だが言わせたい

 

「なんなら、フランカを罠にかけるのも手伝います」

 

「お前、そこで相棒を売るのか」

 

「ええ、彼女も男を知れば落ち着くかもしれません」

 

「むう、魅力的な提案だ、どうしたものか」

 

このまま押し込めばいけるだろうか、なんならバニラとジェシカも使ってしまえば

 

「……わかったよ、話す」

 

「む、フランカだけでいいんですか?」

 

そんなことを考えていたら、どうやら決心したらしい

 

「フランカも別にいい、どうせやるなら自分一人の力で捕まえる」

 

「男らしいセリフなのにやろうとしていることは最低なんですが」

 

「お前もお前で最低なこと言ってたぞ」

 

「ええ、自覚してます」

 

まあ本当にやるつもりはなかったが、それで揺れる彼も彼だ

 

「それで、話してくれるんですね?」

 

「ああ、まあ、うん、言いふらすなよ?」

 

「ええ、善処します」

 

「……やっぱやめよかな」

 

「駄目です」

 

「わかったわかった、言うよ、おとなしく」

 

そうして、溜息を吐きながら話し出す

 

「俺にとってBSWの奴らは、嫌いだけど嫌いじゃない奴なんだよ」

 

「……それ、あの人にも言いましたよね」

 

「ああ、クソジジイと同じ理由で嫌いなんだ」

 

「なぜです?」

 

「……どう例えるべきか、わからんな」

 

「珍しいですね、あなたが言葉に詰まるだなんて」

 

「まったくだ、さてどう表現したものか」

 

唸りながら考えている、よほど悩ましいらしい

 

「……そうだな、強いて言うなら、俺には眩しいんだ。お前も、フランカも、金ヴルちゃんも、ジェシカも、ここにはいないあいつらも」

 

「何がですか」

 

「さあな、俺が知りたいぐらいだ」

 

「よくわかっていないんですか?」

 

「いいや、なんとなくわかってる、ただ言葉にするのは難しいし、それを俺の口からいうわけにはいかない」

 

「どういうことです?」

 

「そうだな、聞いてる側からしたら偽善者にしか聞こえないし、人によってはただの狂人だ」

 

「ますますわからなくなってきました」

 

「だろうさ」

 

何を言いたいのか、いまいちわからない

少なくとも、好意的な意味で嫌っているように思える

だが理由が気になる、聞けるだろうか

 

「私はそんな風には捉えません。どうか話してもらっていいですか?」

 

「そうだな、お前にならいいか」

 

存外素直に話してくれる

 

「俺の戦い方を知っているな?」

 

「……ええ、知っていますね」

 

戦場での彼を見たことは何度もある

初めて一緒に戦った時は何も言えなかった

あまりに、無慈悲に過ぎて

 

「それがどう関係してるんです?」

 

「まあご存知の通り、少々過激なやり方だ、仮にも人の命を護る所にいちゃいけない奴だな」

 

「……言いたいことは、わかります」

 

「だけどお前たちは違う、例え敵でも人命を優先してた、本当の意味で護ることを知っていた」

 

「それは……どういうことです?」

 

「なんだ、わからんか?」

 

「いや、何かこう、わかりそうでわからないというか……ピンと来そうで来ないというか」

 

「うむ、まあそれでいい、意識してやることでもない」

 

「はあ……」

 

「納得してないな?」

 

「せめて話が見える様にしてもらえると助かるんですが」

 

「わかった、じゃあこう言おう」

 

そういって、改めて言ってくれる

 

「お前の中で、命とは平等か?」

 

「……というと?」

 

「罪を犯してまわる輩だろうと、何の罪のない人だろうと、銃を向けることになった時、真っ先に殺すという選択をするか?」

 

「……いえ、そんなことはしませんが」

 

「つまり、そういうことだ」

 

「……………………」

 

殺すか殺さないか、それを相手の素性で判別するか

これは、個人の価値観によるものだ

少なくとも、そんな理由で決めたことはない

敵だからといって、選り好んで殺すような事もない

 

「……つまりは、どういうことです?」

 

それでも見えてこない、何が言いたいのか

 

「要はこういうことだ。羨ましかったんだよ、俺は」

 

「何がです?」

 

「お前らが、お前らのそういう所が」

 

「……よくわからないんですが」

 

「わからなくていい、わからない方がいい、そういうことさ」

 

「……むう」

 

理解させるつもりはないらしい

信用されてないわけじゃないと思うが、教えたくないのだろうか

 

「まだ納得してないな?」

 

「どうしろと」

 

「出来ないんじゃあ仕方ない、聞いた分だけで無理やり納得しろ」

 

「まってください、もう少しこう、具体的に話してください」

 

「むう、強情な」

 

「それはこちらのセリフです」

 

もう一度、話しはじめる

 

「つまりだ、お前らは、生かす、ということをよく知っている」

 

その言葉の意味がいまいち理解できない

 

「生かす、とはどういうことです」

 

「そのままさ、命を護る、その行為は護衛対象だけで済む話じゃない。向かってくる相手も殺さない、そうして初めて、護るということに繋がるんだ」

 

「あなただって、殺さない時もあったでしょうに」

 

「そうだな、言われて、殺さなかったんだ」

 

「……どう違うんです」

 

「さあな、わかっているのは俺に出来ないことをお前たちはやり遂げている、それだけの事さ」

 

なんだかこんがらがってきた

 

「これ以上は包みようがないぞ、かなりストレートに言うしかない」

 

「言いたくなさそうですね」

 

「ああ、お前らが知ってはいけないことだ」

 

「それでもいいので、言ってもらっていいですか?」

 

「……後悔するかもしれんぞ?」

 

「構いません、私はさっき言いました」

 

先ほどの言葉をもう一度言う

 

「私はあなたを誤解したくないと」

 

「……わかったよ、まったく、昔から芯が強いな、おまえは」

 

「それはどうも」

 

少し間をおいて、喋りだす

 

「お前たちは命を護ることが出来ている、だが、俺には護れない」

 

「……………………」

 

「出来るのは、殺すことだけだ、善でも悪でも、敵として立ちはだかったものは構わず殺す」

 

「……それは、何故です」

 

「別に、ただの癖だ、そうしなければ生きていけなかったんだ、それで、染みついちまった」

 

「……やめればいいじゃないですか」

 

「駄目だ、それは出来ない」

 

「出来るでしょう、現にあなたはやりました、検閲の時も、殺さなかったでしょう」

 

「そりゃお前、あいつが最後に錯乱したからだ、なにより誰も殺すつもりはなかったみたいだしな。なら俺の中で殺す必要はなくなる」

 

「それと私達とでどう違うんです」

 

「大いに違うさ、お前たちは殺さないことが大前提なんだ、だが俺は殺すことが当たり前。ここまで言えば流石に理解はできるだろ」

 

彼の中ではボーダーラインが敷いてある、殺害の有無の

それは、常人が持つようなものではない

そして彼にとって、敵とは殺すもの

そういう意味でこちらと違うということだろう

 

「……なら、殺さないようにすればいいじゃないですか、そうして意識できているなら、今からでも、前提を変えれば――」

 

「駄目だ、俺には、とても出来ない」

 

「何故です」

 

「単純な話だ、俺はこれまで幾百、幾千の人を殺めてきた、もしかしたら万単位かもしれん。そんな奴がいきなり不殺を心がけるなんて、業が深くてできやしない」

 

「……それでも」

 

「なにより、それは死んでいった者への冒涜だ、今更やめるわけにはいかない」

 

「…………それは、でも、……」

 

何も、言えなくなってしまった

彼にとってはある種の贖罪なのかもしれない

だからけして、やり方を改めるつもりはない、そういうことだろう

 

「ほれ、どうだ? なかなか非道な話だろ?」

 

「……つまり、あなたにとって私たちは理想像だと?」

 

「ああそうだ、あそこにいる間眩しくて眩しくて仕方なかった。目が潰れちまうかと思ったぜ」

 

「フランカ達には、聞かせられませんね」

 

「まったくだ」

 

「まったくね」

 

「「…………ん?」」

 

何か違和感がする、こう、返事が一つ多かったような、もう一人いるような

 

「……フランカさん、何時からそこに?」

 

レイヴンが振り向いて言っている

その先には、フランカが

全く気付かなかった

 

「そうね、マジックアワーとやらからずっといたわね」

 

「……ということは」

 

「最初から? 聞いてたんですか? 全部」

 

「ええ、聞いてたわよ、私を人身御供にしようとしたことも」

 

「……あの、本気でやるつもりはなかったんです」

 

「なんだと、俺は結構信じてたぞ」

 

「結局断ってるから無効ですよ、ええ、ノーカウントです」

 

「あら、誰かさんみたいに逃げるのね」

 

「……すいませんでした」

 

全て聞かれてたらしい、結構恥ずかしいことも言っていた、それも聞かれたのかもしれない

 

「まあそんなに怒ってないわよ、収穫もあったし、なにより面白いものも見れたし♪」

 

やっぱりみられてる

 

「『私はあなたを誤解したくないんです』……あらあら、とっても素敵な言葉ね、リスカム♪」

 

「ああぁぁぁぁっ!! 忘れてくださいっ! 今すぐっ!」

 

「いや、絶対無理だろ」

 

「ストレイド、あなたもよ?」

 

「え? 俺なんか言ったっけ?」

 

レイヴンは特別何も言ってない気がするが、何かやっただろうか

 

「はいこれ」

 

「……あ」

 

端末を見せられる、そこには一枚の写真が

 

「……リスカム」

 

「……すいません」

 

ちょうど、胸倉を掴みかかった時の写真を、わざと顔だけ写るように撮っている

これだけ見たら男女が顔を寄せ合っているだけだ

 

「これを他の人に見せたら、どう思われるかしらね~」

 

「やめてください、お願いします」

 

「たちが悪いぞこれは」

 

二人して抗議する、が

 

「お黙りなさい」

 

怒られる

 

「先に人を売ろうとしたのは誰?」

 

「……私です」

 

「重要なことを今まで話さなかったのは?」

 

「……俺だな」

 

「そうね、わかっているなら結構」

 

「なら消してください」

 

「駄目よ、消してほしければあなたは答えを見つけなさい」

 

「はい……」

 

「なら俺は関係ないじゃないか」

 

「シャラップ」

 

「ええ……」

 

「あなたもあなたよ、今回喧嘩を吹っ掛けたのはリスカムだけど、だからってリンクスと会わないなんてふざけてる、今からでも会ってきなさい」

 

「いやでも、ほら、あいつがどこまで周りに懐いてるかわからんし」

 

「もう十分、馴染んでるわよ、彼女は」

 

「……そうか、ならいい」

 

「ふん」

 

そう言って、そっぽを向く

ご立腹らしい、悪いのはこちらだが弱みを握って強制してるのはあちら

はたしてどちらが悪いのか、いやこちらだろう

 

「わかったよ、少し遊ぶとするか」

 

そう言って、船に入ろうとすると

 

「そうだストレイド」

 

「お? なんだ?」

 

フランカが呼び止める

 

「私、わかっちゃったんだけど」

 

「何を?」

 

「あなたが消えた理由」

 

「ほう? 言ってみろ」

 

フランカに近づき耳を貸す

周りに、こちらに聞こえないように小声で喋る

 

「……どう?」

 

「ふむ……」

 

様子を見る

 

「正解だ」

 

「やったっ!」

 

「なっ!?」

 

こんなに頭を悩ませても出てこない答えを言い当てた

 

「あなた、随分大それたことを考えるのね」

 

「そうでもないさ、てかお前が先に当てるとは思わなかった、どうしてわかったんだ?」

 

「ふっ、女の勘よ」

 

「えっ、その、フランカ、教えてください」

 

「あー、ねえストレイド」

 

「言いたいことはわかる、教えていいのか、だろ?」

 

「そうよ、どう? ルール違反?」

 

「ああ、違反だ、教えちゃ駄目だな」

 

「いやでも、ほら、手伝ってもらってるわけですし」

 

「駄目よ、それに私はもしかしたらで当たったんだから、あなたは正攻法で当てなさい」

 

「そんなぁ……」

 

答えを知っている者がいるのに教えてくれない

なんとも言えない状況だ、どうしてこうなった

 

「でもあなた、随分ベラベラ喋るのね、知らないことばかりだったわ」

 

「なんだ、まるで人が普段から何も言わないような風に言って」

 

「いや、そうでしょ?」

 

「ちゃんと聞かないのが悪い」

 

「聞いてるでしょ、いつも」

 

「なら、聞きたいことをしっかりまとめて言うんだな、じゃなきゃ俺は言わんぞ」

 

「もう、意地悪ね、あなた」

 

「そうでもないさ」

 

「……なんだか疲れました」

 

ただ話していただけなのに、なんだか体が重い

 

「そう、なら休憩室かどこか、座れるところであの子たちも一緒に昔話でもしたらどう?」

 

フランカに提案される、あの子たちとはバニラとジェシカと、リンクスの事だろう

 

「えー、そうやってリンクスの前で計画を暴露させようって腹積もりじゃねえだろうな」

 

「別にそんなつもりはないわ、あなたもOBとしてバニラとジェシカに教えてあげなさい」

 

「んー、でもなあ……」

 

「来ないと、コレ、ばら撒くわよ」

 

「はい喜んで」

 

「……私も被害にあうんですが、それ」

 

「あら、あなた達、相棒でしょ? 一蓮托生が基本じゃない?」

 

「「……………………」」

 

「て、ちょっと、どうしたの?」

 

相棒、この男と、随分久しぶりに言われた

隣を見る、彼も微妙な顔をしている、一体何を考えているのか

 

「……まあいいでしょう。あなたも先輩だと優位を示したいなら色々話してあげたらどうです? あなたの口から」

 

「……ふむ」

 

まだ悩んでいる、だがあと一押しだろう

 

「ほら、一緒にコーヒーでも飲みましょう。昔話に花を咲かせるのもいいんじゃないですか?」

 

なんとなく、そうやって誘ってみる

なんだかんだで物に釣られることが多い、いけるかもしれない

すると

 

「……そうか」

 

何故か、目を丸くしてこちらを見ている

 

「? どうしたんです?」

 

何か変な事でも言っただろうか、ただ誘っただけのはずだが

 

「いや、なんでもない、なんだか楽しそうだと思ってな」

 

そう言って、笑っている

 

「どうしたのよ、そんな笑いをこらえて」

 

「いや別に、こいつも言うようになったと思ってな」

 

「言うように?」

 

「どういうことです?」

 

「いいだろう、俺のような奴にそう言うとどう解釈されるか、教えてやる」

 

そういって、手招きする

近づいて、耳を貸す

 

「―――――という訳だ」

 

「なっ!?」

 

「? ちょっと、どういう意味よ」

 

その内容は、看過できないものだった

 

「ちょっ! 違いますっ! そういう意味で誘ったんじゃありませんっ!!」

 

「ああわかってるわかってる、だから教えたんだよ」

 

「ぐっ!……」

 

「ねえ、私にも教えてよ」

 

「やめとけやめとけ、まともな理由で言えなくなるぞ?」

 

「尚更気になるんだけど……」

 

「さ、行こうぜ、お茶会もたまにはいいだろ」

 

「あ、ちょっと!」

 

「……この恨み、晴らさずにはおきませんよ」

 

そう言って、三人で船内に入っていく

 

きっと楽しい話にはなるだろう、そう願いながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「入るぞ、ドクター」

 

「ケルシーか、入ってくれ」

 

「これを」

 

「ああ、ありがとう、すまないな、忙しい所に」

 

「別に構わない、私も気になっていたからな」

 

「……やはり、酷いな、これは」

 

「ドクター、医師としての観点から言わせてもらう」

 

「……………………」

 

「彼は、無理やりにでもロドスに縛り付けるべきだ」

 

「……………………」

 

「その方が彼の為になる、わかっているな? ドクター」

 

「ああ、わかっているよ」

 




            一緒にコーヒーでもどうですか?

問題の部分です、どう問題なのかわからない?
ええ、わからないでしょう、ということで解説を始めます
さてまずは何故普段は英文なのに日本文なのか
これは、日本人にはけして通じないものだからです
これと同じ意味を持つ文はこちら

このあと、私と一緒に食事でもいかがですか?

ランチでもいかがですか?仲良く食べましょう

こんなところですね、これも日本文なのには理由があります
これはスラングでありません、ですがスラングです
意味がわからない?ええ、これで理解出来たらあなたは日本人では無いのでしょう
これはある英語圏の地域の風習です、何言ってんだコイツ?的なノリで読んでください
これはその地域でも文面通り一緒に食事をしようという意味です
ですが、もう一つ、隠れた意味を持ちます、それは

君の部屋に連れてってくれるだろ?

と、言う意味です、ここまでくれば大半の人はわかるでしょう
ええ、そうですね、詳しく知りたい方は調べてください、かなり難しいと思いますが
さて、なぜスラングではないのか、次はそちらを
これは、日本人ではあまり親しみのない文化だからです、不倫は文化とか言うつもりはないですよ?
これはその地域ならではのものでして、一夫一妻の日本では馴染のないもの
まああちらも一夫多妻制という訳ではないですが
その手の事に関してオープンな地域なんです、それゆえの弊害なんでしょう
この文、日本人からはタダの食事の誘いです、それ以上のことはありません
ですがあちらにとっては食事の誘いを受ける=ヤってもオーケーということ
困りものです、日本人がおかしいわけでも、あちらがおかしいわけでもないのです
これが異文化交流というものなのかもしれません
要はあちらにとっては気軽な事、ということです
なぜこんな普段より長い解説が来たか、不思議でしょう
理由は一つ、間違えた使い方をしてはいけない、それだけです
正しい意味を知る人にのみ使いましょう、いや正しくはないんですがね

さて、二章はこれで終わりです、次からは第三章
正直不安ですね、戦闘描写が多いです、私にそれが書けるのか
慎重に進めていこうと思います
それでは、どうぞよしなに














ちなみに、某英語圏がどこか、知りたい方もいるでしょう
その人のためにヒントを載せます
その地域はあるゲームで丸々舞台になっている所
では、そのゲームのある登場人物のセリフを載せます、いきますよ?



『寒さで背中がアホんなるわ、誰か鎮痛剤くれへんか?』



別にここ以外でも通じるところは通じます
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