アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
教え
『とまあ、こんな感じだ。リンクス、覚えたな?』
『うん、おぼえた』
『よろしい、じゃ、言いつけは守るように』
『わかった』
『さて、それじゃ今日はこれで終いだ。実戦はその内に手伝わせてやる』
『……ねえ、すとれいど』
『なんだ?』
『さいごのって、どういういみ?』
『ああ、あれか」
『あの、いざってときにしかねらっちゃだめってとこ』
『そうだな、そのままの意味だ』
『でも、よくわからない』
『別に、わからなくていいことだ』
『だけど、わたしにそんなひと、すとれいどしかいない』
『そのうち出来るさ、安心しろ』
『ねえ、すとれいど』
『おう、どうした?』
『たいせつなひとって、どんなひと?』
『そりゃお前、お友達とか、恩師とか、恋人とか、家族とか、色々さ』
『……やっぱりいない』
『大丈夫だ、いつかきっと、出会いはある、大切な繋がりが出来るさ』
『ほんと?』
『ああ、なら俺の後を歩いて来い、出会わせてやる』
『ほんと? すとれいどとあるけば、あえるの?』
『ああ、会える、何より、そうしなきゃお前にその名を付けた意味がないからな』
『なまえ? リンクス?』
『ああ』
『ねこじゃなかったっけ?』
『そうだな、山猫だ。ま、お前は気にするな』
『わかった』
『よし、ならそろそろ寝るぞ、夜中にバンバンやってたら近所迷惑だ』
『ここ、まわりにひといない』
『ま、こんな荒れ果てたとこ、誰も住まんか』
『……ねえ、すとれいど』
『なんだ?』
『さいごのあれ、どういうこと?』
『……どれのことだ?』
『あの、たいせつなひとがあぶないときに、まもりたいとおもったとき、そのときだけねらえっていったとこ』
『……………………』
『あれは、どういういみ?』
『……そうだな、俺の口からは、言えない』
『そうなの?』
『そうだ、だがこれだけは覚えておけ』
『……うん』
『それを決めるのはお前自身だ、その時引き金を引くかどうかはお前の意思で決めろ、いいな?』
『わかった』
『ならいい』
『ねえ、すとれいど』
『なんだよ、どうした?』
『それで、うったとき』
『……………………』
『うたれたひとは、どうなるの?』
『それは、その時に知るべきことだ』
翌日
「あの、もうちょっと安全運転できないんですか?」
「してるだろ、これで結構慎重だ」
「いやでも、さっきからガタガタいってるんですが」
「そりゃお前、後ろを見ろ、後ろを」
「……………………」
「何よ、私達が重いっていうの?」
「そうだよ」
リスカム達は、ラッドローチ四世に乗ってレユニオンの拠点に向かっていた
その後ろにはロドスの輸送車両が付いて来ている
事の顛末は、ストレイドが拠点の位置を詳しく知っているため先導してもらおう、ということになったから
後続の車両には他の部隊が乗っている
「なんだってこれに六人も乗せようとしたんだ? あの鉄仮面」
「スペック上は問題ないんでしょう? クロージャさんが言ってましたよ」
「それでもだな、もともと荷物が載ってるんだ、その分も加味してくれ」
今、この車には六人乗っている
座席にリスカムとストレイド
後ろの荷台に、フランカ、バニラ、ジェシカ、そしてリンクス
かなりの大所帯だ、軍用車といえ手狭なとこに六人はきつい
「いいじゃない、あなた達は快適でしょ? 二人席なんだし」
何故こんなにぎゅうぎゅうなのか、理由は
『君たち、仲が良いな、丁度いい、君の車に乗せてもらっていいか?』
というドクターの言葉によりこうなった
存外、適当なのかもしれない
「いや、積載量過多って言葉があってだな」
「レディを重いって言うなんてデリカシーがないと思わない?」
「む、一理ある」
「せまーい」
「あの、なんか色々、見えちゃいけないものが見えてるんですけど」
バニラが何やら怯えている
前の二人は問題ない、問題なのは荷台組だ
荷台にはもともと載せてあった荷物がある、ストレイドの仕事道具だ
ただでさえ面積のないとこに無理やり四人が乗っている
十分な足場がないせいで荷物に足がひっかかる
しかも先ほどから運転が怪しい
それで揺られて荷物の中身が飛び出している
「見間違いじゃなきゃ、爆弾とかも見えるんですけど……」
「問題ない、信管は外してある」
「いやそういうことじゃなくて」
「なんだ、引火するようなものはないだろ」
「いえ、なんだか見たことない銃もあるんですけど、これ全部ストレイドさんのですか?」
「そうだな」
「これ全部使うんですか?」
「いや、状況に応じて必要なのを選ぶだけだが」
「……それでも多いと思うんですけど」
「まあ、ほとんどコレクションだな、自由に見ていいぞ」
「大丈夫よ、もうジェシカは食い付いてるわ」
「おっと、流石だな」
わちゃわちゃ喋っている中で一人だけ一向に声をあげないジェシカ
彼女は今、自分の世界に入っている
「で、今は何を見てるんだ?」
「いやに口径のでかいライフルよ」
「ああ、アンチマテリアルか、変わったもんに目を付けたな」
「ストレイドさんっ!!」
「お、なんだ」
ジェシカが興奮した様子で喋り始める
「撃っていいですかっ!?」
「駄目に決まってんだろ」
ジェシカが手にしているのはアンチマテリアルライフルという代物だ
対装甲車用のライフルで、主にエンジンを撃ちぬくのに使われている
ただ、同じ用途のロケットランチャーのような手軽に扱える代物に対し
使い勝手が悪く、開発当初に比べ装甲車の質も上がり弾が貫通しなくなったためあまり使われない
それでも威力は抜群だ、こんな狭い車内で撃つものではない
「ならこれはっ!?」
「どれだ?」
ストレイドはいま運転中だ、よそ見は出来ない
「あの、銃身が木製の、綺麗な茶色のライフルです」
バニラが代わりに特徴を教えてくれる
「おっと、俺のお気に入りだな。でも駄目だ、そもそも試し射ちしようとするな」
「これってスナイパー?」
「いや、そうだな、どっちかっていうとマークスマンだ」
「マークスマン?」
「ああ、狙い撃つための銃だ」
「それ、スナイパーとは違うの?」
「違うと言えば違う、だが同じと言えば同じだな」
「どう違うのよ」
「役割が違う、スナイパーの役割は偵察兼暗殺だ」
「で、マークスマンは?」
「そっちはただ狙い撃つための物、やろうと思えばできるが、性能的にスナイパーと同じことをやらせるには適してない」
「いやだから、どっちも狙い撃ってるでしょ」
「その狙い撃つの細部が違うんだ。スナイパーは一撃必中、マークスマンは味方の援護、こういえばわかるか?」
「……ああ、なんとなくわかった」
スナイパーの役割は偵察と暗殺、それに対しマークスマンは銃撃戦の際、厄介な位置にいる相手を仕留めるのに使われる
要はチームが動きやすいように相手の射線を威圧するのが目的だ
「なんでこう、銃ってのはややこしい代物が多いのかしら」
「それだけ多様性が必要なんだよ」
「ストレイドさんストレイドさんっ!!」
「おお、今度は何だ」
「これはっ!?」
「金ヴルちゃん、どれだ?」
「バニラです、えっと、なんかこう、独特な形のライフルですね」
「どんな感じの?」
「その、持ち手に変なレバーが付いてます」
「ああそれか、それは――――」
「それ、わたしのー」
「えっ、これ?」
「うん、わたしのじゅう、こっくさん、ていうの」
リンクスがそう言って銃に手を伸ばす
「ちょっと、これかなり旧式じゃない、こんなの使わせてたの?」
「仕方ないだろ、それがいいっていうんだから」
リンクスがこっくさんといったのはレバーアクションライフルと呼ばれるもの
名前通りレバーアクションと呼ばれる仕組みで弾を装填している
かなり古く、他の銃に比べて癖がある
「これ、ちゃんと使えるの?」
「癖は強いがわかっちまえば使いやすい部類に入る、弾込めも楽だ」
「かちゃかちゃするのがかっこいい」
「……かっこいいで選んだの?」
「うん」
思ったより単純な理由で選んでいる
子供らしいと言えばらしい
「こらこら、呆れるのは良いがしっかり使いこなしてるぞ?そいつは」
「あらそうなの、それで、どういう銃なの?」
「というと」
「さっきのスナイパー、とか、マークスマン、とか」
「そうだな、マークスマンだ」
「じゃあ、彼女はジェシカと同じようにやらせるの?」
「ああ、味方の援護兼、相手の足を止めさせろ、わかったな? リンクス」
「はーい」
「じゃあ後方ですか?」
「そうだ、フランカ、金ヴルちゃん、お前たちが前を張れ、それがそいつの安全に繋がるぞ?」
「バニラです」
「あら、リスカムは?」
「こいつは俺と一緒だ。お前らより少し前で暴れてる、流れた奴を仕留めろ」
「そう、わかった」
「なんだ、何も言わないのか?」
「何を?」
「お前とリスカム、パートナーだろ?」
「ええ、そうね、でも目を離したすきに何をやるかわからないじゃない、あなた」
「なるほど、監視役か」
そういって、ストレイドは隣を見る、リスカムの方だ
「そういえば、さっきから静かね、どうしたの?」
フランカが聞く、先ほどから何も喋らない
「ああ、こいつか? こいつなら……」
ストレイドが片手をリスカムの方に伸ばす
指でほっぺをつつく
「はっ! なんですっ!敵襲ですかっ!」
「違う」
「……何? 寝てたの?」
「いや、寝ぼけてる」
「変わらないじゃない」
「いえ、寝てません」
そういうリスカムの声は、なんだか力がない
「どうしたの、寝不足?」
「いいえ、違います」
「目にクマがある、寝不足だな」
「違います」
「さっきから声がいつもより小さいです、寝不足ですね」
「……違います」
「ストレイドさんにつつかれたのに何も言いません、寝不足でしょうか」
「……いいえ」
「なんだかねむそう」
「……………………」
全員に言い当てられる
実際、リスカムは先ほどから睡魔と戦っている
碌に眠れていないのだ、なぜか
「まったく、私情に流されるなんてよくないぞ?」
「何? あなた昨日から延々と悩んでるの?」
「……別に、違います」
ストレイドが消えた理由、フランカがわかったにもかかわらずリスカムはわからないでいる
それが悔しくて朝になるまで考え込んでいたのだ
「だらしがねえな、任務の前はしっかり休めって言っただろ」
「そうね、そんな状態じゃまともに動けないわよ?」
「……………………」
二人の言う通りだ、これでは足手まといになるかもしれない
「なにをなやんでるの?」
「大人の話だよ、リンクスちゃんは考えなくて大丈夫」
「おとな? どんなこと?」
「え? あーそのー、お、男と女の話とか……」
「そうなの? あかちゃんのはなし?」
「……バニラ?」
「いえ、違いますっ! いやとっさに出てきた言い訳もそうですけどこの返答は違いますっ!」
「なら、ストレイドかしら?」
「こらこら、それはそいつの自前だ」
「……うそでしょ?」
「ほんと、まあコウノトリ程度の話だろうよ」
そんな話をするなか、リスカムはまた眠気に襲われる
「本気で眠そうだな」
「……大丈夫です」
「大丈夫、じゃないだろ? ほら、目的地に着いたら起こしてやるから寝とけ。その状態で隣に居られても邪魔だ」
言われてしまった
確かにこのままでは役に立たないかもしれない
「大丈夫だ、ローチの足でもすぐには着かん、後ろの速度も考えなきゃならんからな」
「えっ、ローチ?」
「車の名前だ。ラッドローチ四世、いい名前だろ」
「素晴らしい名前ね、品性が問われるわ」
「何を言う、奴らのようにしぶとく走ってくれると願ってだな」
「ねえ、前は二世じゃなかった?」
「ああ、二世は散った、文字通りに」
「……どういうことよ?」
緊張感のかけらもない会話が聞こえてくる
本当に、これから戦いに行くとは思えない
少し安心してしまう
「……わかりました、お言葉に甘えます」
「おう、ゆっくり寝てろ」
そういって、瞼を閉じる
「ストレイドさんっ! このリボルバー! 撃ってもいいですかっ!?」
「駄目だ、サイトを除くだけで我慢しろ」
「くるくるまわるー」
「あの、四世の前って何だったんです?」
「お、気になるか」
「そうね、三世と一世は私も知らないわ」
「いいぜ、教えてやる、四世はコレ」
「車ですね」
「三世は、ボート」
「ボート? どうして?」
「海賊になりたかった、これでいいか?」
「……まあいいわ、で二世はバイク」
「一世は、なんなんです?」
「ふむ、ではお教えしよう、一世は――」
「「一世は?」」
「――――チャリだ」
「「は?」」
そんな会話が聞こえる中、ゆっくりとリスカムの意識は沈んでいった
『よう、気分はどうだ?』
『……いいと思いますか?』
『さあな、わからないからこうして聞いてる』
『……………………』
『その分だと、平気そうだな』
『……どこがです?』
『なに、自分がやったことを自覚してる、なら平気だ』
『平気な訳が、ないでしょう……』
『慰めが必要か?』
『……いりません』
『ならよし、さて一つ、お前にアドバイスをしてやろう』
『なんです、急に』
『まあ聞け、お前は今日、初めて人を殺した』
『……………………』
『不可抗力だったんだろう、それでも仕方ないですませない』
『……ええ、そうですね、私は誰かと違って人殺しではありません』
『怒るな怒るな、茶化しに来たわけじゃない』
『なら、なんで来たんです?』
『別に、なんとなくだ』
『……………………』
『話の続きだ、お前は、後悔しているな?』
『……はい』
『あの時、別の方法があったんじゃないか、考えられずにいられない』
『……………………』
『それは、正しい価値観だ、おかしい事じゃない』
『……………………』
『殺しに慣れろ、なんてふざけたことは言わん』
『……………………』
『だから、リスカム、その気持ちを忘れるな』
『……どういうことです?』
『そのままさ、その後悔も、贖罪の念も、けして忘れるな』
『……………………』
『そのうえで、戦い続けろ、お前の信じる理念の為に』
『……結局、何を言いたいんです?』
『別に、わからなくていいさ、だがわかってほしいのは』
『……………………』
『それは、お前を正しい道に進ませてくれる、それだけだ』
『……わかりません』
『なら、そのうち理解しろ』
『……レイヴン』
『なんだ?』
『先程は、助けていただいてありがとうございます』
『お? 礼を言うのは初めてじゃないか?』
『……あなたがいなければ死んでましたから』
『なに、教え子の危機に颯爽と現れるのは教官として当たり前だ』
『……………………』
『いやしかし、あれは驚いた、いきなり地面に穴があくんだもんな』
『……………………』
『結構派手にドンパチしてたとはいえ、そこまでになるとは――』
『レイヴン』
『……なんだ?』
『あれは何なのか、聞かせてもらっていいですか』
『……ああ、話してやる』
スナイパーとマークスマン、どう違うのか、FPSをやったことがある人なら気になったことはあると思います、役割はしっかり分かれてますが正直似たり寄ったりな代物だと私は思います、この話の説明は大雑把に書いたものなのでよく知りたい人は調べてください
ちなみに、話の中に出てきた銃は細部の説明はないですが私の好きな銃です
アークナイツの世界の銃ってそんなにあるの?と思う方がいると思いますが
エクシアの銃があるなら大抵の代物はあるはずです、おそらく
あと前回、誤字がありました、同じミスをするとはだらしがないですね
直した後に感想を見たら指摘されておりました、本来ならあちらに書くべきでしょうが
この場でお礼を言わせていただきます、ありがとうございます
それでは今度こそ同じミスをしないよう気を付けたいと思います
では失礼