アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
「『『『えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』』』」
カウントダウン終了と同時に轟音が鳴り響いた
それは、爆発
ビルの下層部を中心に発破されている
「えっ、あの、ストレイドさん?」
『何かな? クランタのお嬢さん』
だがそれは、罠、などと言えるものなのか
「うえ~、耳がキーンとする……」
「お~、やることが派手だね~」
ビーグルとクルースが隣で感想をいっている
「……マジか」
「うわーっ! すごいですねっ!」
ラヴァとハイビスも驚愕している
「すごーい、目覚ましにはいいかもね~」
「おいおい、随分大層な仕掛けだな」
「なんと、ここまでとはのう……」
「……これは、ただの爆破解体では?」
ドゥリン、ノイルホーン、レンジャー、ヤトウが口々に言う
「これ、凄いことになってるんですけど……」
『ああ、そうなるようにしたからな、中々圧巻だろ?』
「ええ、まあ、そうですけど……」
爆発の衝撃で次々とビルが倒壊している
先ほどから崩壊の音が鳴りやまない
『……ストレイド、これはやりすぎでは』
ドクターが言う、その疑念は最もだ
『そうでもないさ、まあ中にいる奴はペチャンコだろうが』
『殺しは無しだと言ったんだがね』
『悪いが、こいつはロドスに接触する前に仕掛けたもんだ、後から変更はさすがに出来ん』
『だがな……』
『それに、これは奴らの爆弾に誘爆させたのもある、自業自得だ』
『……やってしまったものは仕方ない、これ以降は留意してくれ』
『わかってるわかってる』
悪びれた風もなく言う
誰の目から見てもやりすぎだ
生きている人がいるのか心配になってくる
「……おい、傭兵」
チェンが無線越しにストレイドに話しかける
『何だ? 龍のお嬢ちゃん』
「これで瓦礫の壁を作ってこちらに誘い込む、という算段か?」
『ああ、いきなりの襲撃、次があるかもわからない中、わざわざ瓦礫の山を登って逃げようなんて奴はいない』
「通りやすい道路方面に出てくると」
『そうだ、道路の方は塞がれないようにしてある、ほれ出てきたぞ、有象無象が』
「……なるほど、それなりに頭の回る男らしい」
『そうだろう、もっと褒めるがいい』
「調子に乗るな」
爆破された建物を見る、ビルの残骸が降ってくる中、外に脱出してきているレユニオンが見える
「各員、武器を構えろ、戦闘開始だ」
「「「了解」」」
「……えー、皆さん、とりあえず戦闘準備を」
「あ、はい、了解です……」
アーミヤはビルの倒壊を眺めながらそうメランサ達に指示をする
「うわー……すごいなーあの人」
カーディが一人ぼやく
「カーディ、その人はどんな人なんだい?」
「私達はまだ話した事がないんですけど……」
スチュワードとアンセルは姿を見たことがあるだけで話してはいない
二人にとっては未知の人物だ、何をしでかすかわからないとしか聞かされていない
そこに、こんなものを見せられたのだ、信用していいのかわからないのだろう
「んー、そうだね……」
聞かれたカーディも彼のことは詳しく知らない
「あまり話してないから知らないけど」
だが確かなことは一つ
「とんでもなくスケベな人って事だけは確かだね」
「「……………………」」
「……メイリィ、失礼だよ」
「でも、ホントの事だよ? アンセル君も気を付けてね」
「いや、私は男ですよ?」
「そうですね、アンセルさんは可愛いですから、気を付けて……」
「だから、私は」
「そうだね、アンセルは可愛いからね、気を付けて」
「……私は、男です……」
否定の声がどんどん小さくなってくアンセルを尻目にアーミヤが喋りだす
「ストレイドさんの予想が当たっていればレユニオンがでてくるはずです。皆さん、手筈通りにお願いします」
ここまで派手な爆発なら嫌でも敵襲だと気づく
動かないわけがない
「しかし、効率的ですがやりすぎですね……」
「ええ、そういう人、との事です」
近くでスコープを覗いているアドナキエルの言葉にそう返す
正直、アーミヤとしてもこのやり方は反対だ
だが賽は投げられた、このままやるしかない
「ねえ、これって結構減ってない?」
「何がだ?」
カタパルトの疑問にスポットが聞き返す
「いや、敵の数」
「まあ、減るだろうな、こんなの」
瓦礫はまだ降り積もっている
建物からはぞろぞろとレユニオンが出てきている
「「あっ」」
一人の兵士に目がとまる
彼は足をもつれさせながら走っている、よほど慌てているのだろう
その上から瓦礫が降ってくる
逃げられずに潰される
「……嫌なものみちゃったわ」
「あれは助からないな」
「まったくだ、レディに見せるには少々過激だな」
後ろからミッドナイトが話しかける
「なに? あんたでもそう思うの?」
「ああ、何やらキナ臭い男だと思っていたが……ここまでとは」
「……珍しいな、お前がそんな顔するなんて」
「スポット、俺はそんな薄情な男じゃないぜ?」
「ああ、そうだな、これで日頃の振る舞いがもっと静かならいいんだが」
「残念、俺の使命は世界中の女性に笑顔を届けることだ、おとなしくしてる暇はないな」
「あなた達、喋ってる暇もないわよ」
お喋りしている三人のもとにオーキッドがやってくる
「オーキッドお姉さん、あの中から出てきた人を斬ればいいの?」
ポプカルも一緒にやってくる
「ええ、ついでに黒い格好の男が来たらそいつも刻みなさい」
「え? ミッドナイトお兄さんを?」
「まあまてポプカル、俺とは違う黒い人だ」
「いいわね、こいつもやっていいわよ」
「いいの?」
「駄目だポプカル、冗談を真に受けるな」
ミッドナイトが珍しく怯えている
ポプカルの武器はチェーンソー
彼女の戦うさまは猟奇的だ、本人は自覚はないが
「スポット、黒い人って誰?」
「この爆発を起こした奴だ、今は俺たちの味方だから斬る必要はない」
「わかった、でもなんだか危なそうな人……」
「まあ、これを見せられれば誰でもそう思うさ」
「ほら、行くわよあなた達」
オーキッドが叱責する
「皆さん、相手は混乱状態です、優位はこちらにあります」
アーミヤが号令をかける
「それでは、作戦開始、健闘を祈ります」
「いやはや、いい感じに破滅に満ちてるな」
「……やりすぎです」
『もっとこう、加減できなかったの?』
『うわー……』
『これは……』
『わー、どかどかいってる』
BSW方面でも似たような声が上がっていた
崩壊は少しづつ収まっている
「で、これで先手を打って、数も減らせると」
「ああ、だが予想以上に引っかかってるな、まあ無理ないか」
「どういうことです?」
その言動の意味は何なのか
「離反した集団って言ったろ?」
「ええ、言ってましたね」
「奴ら、碌に戦い方を知らないんだ」
「……どういうことです?」
「簡単だ、奴らは兵士であって兵士じゃない、どちらかというなら殺人鬼に近い状態だ」
「何を言いたいんです?」
「要は、戦い方ではなく、殺し方を教えられた集団だ、意図的に」
「……………………」
「奴らのリーダーは感染者の心理を利用した、感染したという事実だけで虐げられるこの世界への怒りを」
『ちょっと、それってつまり』
「そうだな、一般人とさほど変わらない、戦法なんて何もない、数に物を任せて動いてる」
「あなた、何をしているかわかってるんですか」
「言いたいことはわかる、正当化するつもりもない」
「これでは虐殺と変わりません」
「ああ、だが見ろ」
レイヴンが指をさす、その先には逃げ出してきたレユニオンが
こちらを向くその眼には、言いようのない怨念が込められている
「たとえここまでしていなくても、奴らは真っ当な殺意をもってやってくる」
「……そのようですね」
「奴らにとっては自分たちの怒りこそが正義なんだ、そこに正論を挟む余地はない
妄言に誑かされた時点で奴らは害悪だ、容赦はするな、逆に狩られるぞ」
レイヴンが腰のホルスターに手を伸ばす
「っ!!」
抜ききる前に走り出す
「はぁっ!!」
「がっ!」
最も近くに居たレユニオンを盾で殴り飛ばす
殴られた兵はそのまま倒れ、気絶する
「このアマっ!」
「やりやがったなっ!」
その近くの二人が襲い掛かってくる
片方の攻撃を盾で防ぎ、もう片方は武器を振り切る前に腕を撃ちぬく
「いっ!? …………ぐっ!」
「くそっ!」
撃たれた方は腕を押さえてうずくまる
残った兵に盾を蹴られる、それに合わせて後ろに下がる
「なっ!?」
力の向かう先が狂い、体制を崩す
そこに、発砲する、足に着弾する
「がああっ! 足が!」
「死にたくなければおとなしくしていなさい」
「お見事」
レイヴンがやってくる、二丁目は、抜いていない
「だが、まだぬるい」
そういって、懐から銃を引き抜き、うずくまっていたはずの兵にむけて撃つ
「ぶっ!」
立ち上がって向かってきていたらしい
その顔に弾が着弾する
「……レイヴン、これは?」
「見ての通りだ」
が、死んではいない、ただその顔は真っ赤に染まっている
「……………………」
撃たれた男は固まっている、そして
「きゅー……」
そのまま力なく倒れる
「……それで戦うんですか?」
「非殺傷だ、これなら間違えて頭に撃っても問題ない」
ペイント弾だ、確かにあれは殺人的なくせして殺傷力はない
「それ、メットをつけてる人はどうするんです?」
そういって、こちらに向かってくる兵に目を向ける
ちょうど防弾メットをつけている、あれでは顔に当てられない
「そうだな、こうする」
レイヴンが動く、一足で滑るように肉薄する
「ふっ!」
「ごふっ!」
接近、そこから勢いに乗せたまま空いてる手で鳩尾に掌底をいれる
反応できずにもろに食らったメット付きはそのまま地に落ちる
「銃、いらないのでは」
「いるさ、こっちが俺のメインウエポンだぞ?」
「素手でどうにかできません?」
『あの、凄い速度で滑ってましたけど』
『そういう技なのよ、あれ』
『……かっこいいです』
『すとれいど、がんばれー』
フランカ達から感想が聞こえてくる、まだあちらは接敵していない
「で、それでいくんですか?」
「ああ、クライアントの意向にはある程度従わんとな」
「……まあ、いいです」
素手で戦う、たしか彼が相手を試したり遊んだりするときの戦い方だ
それなら、手加減できる、ドクターの意思には従うつもりらしい
ただ気になることが一つ
「昔よりキレが鋭くなってませんか?」
あんな速度では動かなかった、彼自身が弾丸にでもなったかのような動きだった
「なに、お前も知ってるあれを、軽く組み合わせてるのさ」
「……あれですか」
「ああ、あれだ」
「制御できないとか言ってませんでした?」
「練習できない環境だったんだ、人目に付けるものじゃない」
「なるほど」
要は周りに人がいたせいで使う練習ができなかった、ということだろう
確かに好き好んで見せるものではない
BSWを辞めてから彼なりに特訓したのだろう
「おかげで多少の速度なら目立たずに出せるようになった、あんまり力むとチラチラ出るがな」
「何がです?」
「残光、みたいなの」
そういって、彼の周りに黒い火の粉のようなものが出る、確かにチラチラしてる
「これである程度なら人前で使えるな、体術にも乗せられるし」
「……随分応用が利くようになりましたね」
「ああ、これがクソジジイのせいだと思うと嫌になるが」
「そこは素直に感謝しなさい」
「誰がするか」
『ストレイド、それ何よ、そのチカチカしてるの』
「お、聞きたいか」
フランカが聞いてくる
『確かに、気になるな、その光』
ドクターの声も聞こえる、同時にプロペラの音も聞こえる
偵察ドローンだ、合図と同時に出すと言っていた
『それは、君のアーツか?』
「ああ、ちょっとばかし加速紛いのことが出来る程度だ」
『紛い?』
「そうだ、ま、気にするな」
『いや、気になるんだが』
彼の一番の謎はその神出鬼没の機動力
恐らくはドクターも気になっているんだろう
「ほら鉄仮面、こっちを気にかけてないであっちを見ろ、ぞろぞろ出てきてるぞ?」
光を消しながら顎で方向を示す、瓦礫はもう振っていない
無数のレユニオンがこちらにむけて進軍している
「さて、リスカム」
「なんです」
「俺が二丁目を抜くかどうかはお前にかかってる」
「……………………」
「さっきぐらいの勢いでいけ、じゃないと死体の山が出来上がるぞ」
「なるほど、わかりました」
二人で並んで立つ
「その挑戦、受けましょう」
「抜いたら、なんかお願いでも聞いてもらうかね」
「……やっぱりやめていいですか?」
「駄目だ」
数は減ったがそれでも相手の方が多い
「さあ、楽しいパーティの始まりだ」
「楽しいのはあなただけです」
油断はできない、厳しい戦いが始まる
一つ、気になったことがあります
ポプカル、スペクター、ブレイズ
この三人、チェーンソーを使ってます、一人丸鋸ですが
ここで、私に疑問が生まれました
チェーンソーは武器ではありません
にもかかわらず武器として扱うあたり、ロドスはどこかおかしいのでは
まあ使われてても違和感がなくなるぐらいには当たり前の話になってる気がしますが
何が原因なんでしょう、死霊のはらわたですかね