アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
「クルースっ! 援護をっ!」
「はいは~い」
「おい爺さん、弾幕薄いぜ」
「あまり年寄りを働かせるでないわ」
開戦後、少しあと
チェン率いる合同班は順当に敵を撃破していた
「フェン、ノイルホーン、一度下がれ」
「あいよ」
「了解!」
「ビーグル、ヤトウ、前を」
「わかった」
「わ、わかりましたっ!」
特別戦線を崩されることはなく、安定した戦闘が繰り広げられている
というのも
「ラヴァ、今向かって来ている集団に攻撃を」
「まかせろ」
先ほどからチェンがその場に応じて適切な指示を出している
「あ、チェンさん後ろ――」
「わかってる」
「……はやいなー」
「迷いなく切り捨ておったな、背中に目でも付いておるのか」
しかも自分は誰よりも最前線で戦いながら
「ドゥリン、盾持ちだ、撃て、ビーグル、押さえろ」
「えっ!? は、はいっ!」
「あいさ~」
言われてビーグルが敵兵にぶつかり、ドゥリンが後ろからアーツを放つ
「……なんていうか、クールビューティってあんな感じなのかな」
「まあ、ドーベルマン教官とは違う意味でクールだな」
フェンとノイルホーンがチェンを見ながら言う
開始してからずっとあんな感じで戦い続けている
体力があるのはわかっている
だがいつまでも戦い続けられるとは思えない
心配になって下がらないかと言ったが
『問題ない』
その一言で一蹴されてしまう
心強くはあるが、無理をしてないか不安になってしまう
「さあっ! 怪我人はこちらにっ!」
「あいよ、ハイビス、頼んだぜ」
「いつもありがとう、ハイビス」
「いえいえっ! これぐらいはお安い御用ですっ!」
戦線から少し下がったところにはハイビスカスが待機している
「それじゃ、いきますよーっ!!」
ハイビスの杖から光が放たれる
それは、二人の傷を埋めていく
「……毎度思うが痒いよな、これ」
「ええ、思います」
「痒いのは、しっかり傷が治っている証拠ですっ!!」
ハイビスは医療オペレーター、戦闘力はないがアーツの力で傷を治すことが出来る
彼女なくして戦線は維持できない
それを見越してチェンは彼女を後ろに下げているのだろう
「本当は皆さんと一緒に戦いたいんですがねー」
「なに、ハイビスもしっかりやってくれてるさ」
「でも、皆さんにばかり戦わせてますし、わたしも何かできればな、って」
「大丈夫、私達はあなたがいるから戦えてる、自信をもって」
「フェンちゃん……ありがとうっ!」
実際、彼女の世話になるオペレーターは多い
医療関係はもちろん、隊員や職員の食事を考えてるのも彼女だ
なんでも栄養学に詳しいらしく、その知識は膨大とか
「今度、せめてものお礼に皆さんにクッキーを焼いてきますっ!」
「……気持ちだけもらっとく」
「はは……」
ただ、その料理はいろいろと冒涜的だが
「ノイルホーン、ビーグルと交代だ」
「お、わかった」
チェンに呼ばれノイルホーンが離れていく
先ほどからこんな感じで前衛組は最小限のローテーションが組まれている
ヤトウとフェン、ビーグルとノイルホーンでどちらかが疲弊し次第、切り替えられている
狙撃組と術師組は適時、撃ち込むように命じられている
「ふえ~……」
「ビーグル、大丈夫?」
「うん……」
「さあっ! こちらにっ!」
ノイルホーンと入れ違いにビーグルがやってくる
先ほど、ガタイの大きい敵とぶつかっていた
すぐに後退させられたのもそのせいだろう
チェンの方を見る
彼女は変わらず、休むことなく前線にいる
「……疲れないのかな」
「ホント、そうだよね」
今、チェンたちが戦っているのは道路の真ん中付近
両端はストレイドとアーミヤの部隊がいっている
遠くを見る、瓦礫にまみれてるせいで見ずらいがストレイドとリスカムが戦っている
その少し後ろにフランカ達がいる
前の二人が取りこぼしたのを処理しているらしい
フランカとバニラが前衛を張り
ジェシカとリンクスが援護射撃をしている
「……………………」
「……どうしたの?」
「ああ、別に、大丈夫」
ビーグルに聞かれる、そして同じ方向を見る
「ストレイドさんが気になるの?」
「うん、ちょっと、ね」
先ほどからフェンはBSW組が気になっていた
正確には、ストレイドが
「わたし、あの人嫌い」
「だろうね、あの後酷い顔になってたし」
「聞いちゃいけないこと聞いたのはわかるけど、だからっていきなりあんなもの撃ってくるなんてどうかしてるよ」
「まあまあ、あの人にとっては遊びらしいから」
「それでもさー、あんな辛くて痛いの、女の子に向けるもんじゃないよ」
ビーグルはかなりご立腹だ
彼にとってのタブーを犯した彼女はペイント弾の餌食になった
報復こそクルースの姦計により果たされたがそれでも怒りはおさまらないらしい
「どうして見てるの?」
「ちょっとね」
「さっきも同じこと言ってたよ?」
フェンが彼を見ている理由、それが気になるらしい
フェンが答える
「無線、聞いてみて」
「無線?」
言われて、無線のスイッチを入れる、すると
『レイヴン、スープレックスを決めないでください』
『ボケっとしてるコイツが悪い』
『だからって戦闘中にそんなことはしないでください』
『いいじゃないか、後ろに流れてる量も少ないんだし』
『戦闘中は遊ぶなと言ったのはあなたでしょうに』
『暇なんだよ、思ったより数が少なくて』
「……………………」
「理由、わかったでしょ?」
「うん……」
とても戦闘中とは思えない会話をしている
余裕綽々、という訳ではないんだろうがなんだか平和そうだ
「あっち、そんなに少ないの?」
「いや、こっちより多い」
「え、嘘、あんなに平和そうな話してるのに?」
「ほら、見てごらん」
いわれて注意深く見る
リスカムが盾で押さえつつ牽制し、ストレイドが銃撃と体術で減らしている
やってることは単純だが、おかしいのは相手取っている量だ
「……ねえ、同時に五、六人は倒してない?」
「うん、さっきからあんな感じ」
先ほどからあちらにはどんどん敵兵が流れている
それを二人でバシバシ倒している
なんだか流れ作業を見ている気分だ
「あの二人、なんだか息が揃ってない?」
「そうだね、なんか元々組んでたって話だけど」
「そうなの?」
「らしいよ、フランカさんから聞いた話じゃ」
「そうなのか」
「「わっ!」」
チェンの声が後ろから聞こえてくる、いつのまにか近づいていたらしい
「ど、どうしたんですか?」
ビーグルが聞く、何か特別怪我をした様子もない
彼女の性格上、後ろに引く理由が見当たらない
「別に、あの二人から一度下がれとしつこく言われたんだ」
そういって、前方の二人に視線を向ける、ヤトウとノイルホーンだ
恐らく、ずっと戦ってるチェンを案じて言ったのだろう
「チェンさんっ! こちらにっ!」
ハイビスが治療の為に呼ぶ、が
「大丈夫だ、怪我はない」
拒否する、遠慮している訳じゃない
単純に攻撃も何も食らっていないのだろう
「それでもこちらにっ!」
ハイビスが食い下がる
「いや、大丈夫だ、大した疲労もない」
もう一度拒否する
「疲れを取るのに役立つかもしれませんっ!」
まだ食い下がる
「君のアーツにそんな力はない、逆に君が休め」
さらに拒否する、が
「ならばこちらから近づきますっ!」
「あ、おい」
ハイビスが超特急でチェンに近づく
「では、失礼しますっ!」
そうして、アーツを発動させる
「……まったく、ロドスのオペレーターはお人好しが多いな」
「ははは、ありがとうございます」
「やれやれだ」
いいながら、少し笑う
もともと彼女は真面目な人だ、何をやるにもその毅然とした態度は崩さない
逆に周りの人はそれが無理をしているように見えて不安になるのだが
ロドスと関わってからは少し丸くなったような気がする、ロドスの雰囲気とドクターのおかげだろうか
「で、先ほどの話だが」
「えっと、ストレイドさんとリスカムさんの?」
「ああ、知っている範囲でいい、聞かせてくれ」
「わかりました、でも詳しいことはそんなに知りませんよ?」
「それでいい」
「じゃあ、失礼して」
フランカから聞かされた話をする
「なんか、リスカムさんの訓練生時代の教官で」
「ああ」
「それで、一緒に戦ってたらしいです、少しの間」
「そうか、少しの間、とは」
「いや、それは、それしか聞かされてないので……」
「……わかった、他には?」
「いや、すいません、それだけです」
「そうか、ありがとう」
「お役に立てなくてすいません……」
「大丈夫だ、私も奴については大して知らない」
「あの、チェンさん」
「なんだ?」
「どうしてストレイドさんの事、聞くんですか?」
「……ふむ」
フェンの質問に、少し考えるそぶりを見せる
「フェン」
「あ、はい」
「君は、リンクス、彼女がどうして彼といるか知っているか?」
「あ、いえ、理由は知りませんけど、拾ったとか言ってました」
「……そうか」
「あの、もしかしてリンクスの方に理由が?」
「いや、リンクスは私が気になっているだけだ」
「……そうですか」
「それとは別に、ドクターから頼まれているんだ」
「へ? ドクターから?」
「あの傭兵の事で、わかったことがあれば報告してくれと」
「何故です?」
「さあな、だがドクターの事だ、なにか考えがあるんだろう」
チェンの視線がストレイドの方に向く
なにやら不思議な技を繰り出している
『レイヴン、なんですその変な突撃』
『うんたらクラッシャーとか言ってた』
『そんなドリルみたいに回転する必要はあるんですか』
『実際にやってみてわかったが、隙だらけだな、二度とやらん』
『ならやらないでください』
「……あいつ、真面目にやっているのか遊んでいるのか、どちらだ」
「さあ……」
謎の多い彼について、知っている人は少ない
BSWのメンバーでもそこまで深いことは知らないらしい
ただ一人、リスカムを除いては
「リスカムさんなら何か知っているのでは?」
提案してみる、が
「駄目だ、話せないと言われた」
「あ、そうですか……」
フェンが聞いた時も同じことを言われた
なんでも、本人に口止めされているらしい
「さて、どうするか……」
なにやら算段を立てている
「何か、協力できますか?」
「あ、わたしも、お手伝いします」
協力を申し出る
「……そうだな、わかった」
意外と素直に受けてくれた
「なら、奴を見れるタイミングがあったら見ててくれ、ここからでいい。それで何かわかったら、随時私に」
「了解です」
「わかりました」
簡単な監視を命じられる
見てるだけでわかることは少ないと思うが少しでも情報が欲しいのだろう
「終わりましたっ! 万全ですっ!」
ハイビスの治療が終わる
「さて、そろそろ頃合いだろう、ヤトウ、ノイルホーン、下がれ。フェン、ビーグル、いくぞ」
「「了解!」」
「いってらっしゃーい」
三人は前線に戻っていく
最近スポットの潜在の証を見たんです
スラング大全でした、皮肉の方のですが
これは、エロスラングをスポットに言わせてもいいということですね?