アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里   作:Thousand.Rex

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厭わぬもの

『アーミヤ、聞いての通りだ』

 

「了解です、こちらでも探してみます」

 

こちらはアーミヤ陣営

ちょうどストレイドからリーダーの特徴を聞いていた頃

こちらは少々、変わった戦線維持をしていた

オペレーター各自に自由にやらせる、そして必要があれば指示をする

別に指揮を放棄している訳ではない、ある意味オペレーターの特性を生かしたものではある

ただ、その光景は

 

「喧嘩はっ!! 駄目ぇぇぇっ!!」

 

「「「わあぁぁぁぁっ!?」」」

 

とても生死をかける戦場とは思えないものだった

 

「そうら、俺の剣捌きに見惚れなっ!」

 

「吹っ飛べえぇぇっ!」

 

「……もうやだ」

 

「落ち着けオーキッド、自棄になるな」

 

行動予備隊A6、そこは変わり者が多いことで有名な部隊だった

元ホストで火種にこそならないが周囲に混沌をまき散らすミッドナイト

どこか自由本坊な面が目立つカタパルト

精神的に幼く良くも悪くも直情的なポプカル

他に比べて癖はないが少し卑屈なスポット

そして彼らを率いる唯一の常識人であるオーキッド

 

「助けてくれえぇぇっ!!」

 

「チェーンソーを構えた血まみれの子供が追ってくるっ!」

 

「暴力はっ! だぁぁめぇぇっ!」

 

「……あの子、自分がどんな姿してるかわかってるのかしら」

 

「大丈夫だ、あれはあいつなりの思いやりなんだろう」

 

先ほどからポプカルが暴れている

チェーンソーを持ち、敵兵を追い回している、血まみれで

 

「たりゃあぁぁっ!!」

 

「ぐわあぁぁぁ!!」

 

「ああ、また被害者が増えた、回収してくる」

 

「……ええ、お願い」

 

なぜ血に汚れているのか

答えは一つ、敵の返り血だ

元々猟奇的な戦法に頭からつま先まで真っ赤に濡れている

血まみれでチェーンソーを構えて襲い掛かってくる幼女

ホラー映画の殺人鬼と言われても遜色はない

その証拠に敵がポプカルを相手取らずに逃げ回っている

逃げ回る敵の背中にポプカルが容赦なく斬りつけている

幸いなのは、相手が逃げ腰のせいで傷が深くはない事か

新たな犠牲者を担いで前線とは逆、後方に連れていく

 

「アンセル、頼めるか?」

 

「わかりましたスポットさん、こちらに置いておいてあげてください」

 

「悪いな」

 

「任せてください、しかしまあ……」

 

医療オペレーターのアンセルが医療器具を用意して待機していた

そこには、同じような被害者が並べられている

 

「まさか相手の方の治療をすることになるとは思いませんでした」

 

「そうだな、いつも以上におかしな展開だ」

 

先ほどから被害者が出るたびこうして後ろに控えているアンセルのもとに連れてきている

というのも、ドクターから死者は極力出さないように言われたからだ

別に普段からそう言われているがここまで徹底しているのに訳がある

曰く

 

『今回の相手は限りなく一般人に近い、戦いに出るものではない

そんな彼らを犠牲にするのは心苦しい、死人は基本出さないように留意してくれ』

 

とのこと

戦いである以上、犠牲が出るのは仕方のない話だ

それでも、彼にとっては許せないことなのだろう

救える命は救う、なんとしても

それが彼の信念なのかもしれない

 

「俺も手伝えればいいんだが、素人が下手に手を出すわけにはいかない」

 

「こうして運んで頂けているだけで助かっています」

 

「ありがとう、そう言ってもらえると助かる」

 

結果、こうして実現させようと努力をしている

悪い事ではない、少なくとも、ロドスの人々は彼のそういう所に惹かれている者もいる

そして、この戦線を指揮するアーミヤは、彼の一番の理解者だろう

それはこうして確かな形として表されている

 

「ところでスポットさん」

 

「なんだ」

 

アンセルが包帯を巻きながら聞く

並べられた者たちは血塗れの女の子が殺しに来る、とか、チェーンソーの駆動音がぁ、とか

そんなことを呻いている、よほどトラウマになっているらしい

 

「部隊の方々は放っておいていいんですか?」

 

「大丈夫だ」

 

いいながらミッドナイト達が戦っている方を見る

彼らはここの最前線にいる、一番前で戦っているのだ

 

「どうだ、魔王の剣技を見切れないか?」

 

「そらそらっ! ボケっとしてると粉微塵になるよっ!」

 

「うりゃあーっ!」

 

各々独自の戦法で次々と敵を薙ぎ払っている

 

「こらあなた達っ! もう少し周りを見なさい」

 

その少し後ろでオーキッドが色々と危なっかしい三人の援護をしている

彼女は術師だ、傘を杖に見立ててアーツを飛ばしている

ただ少し特殊で、殺傷力が普通のものより低い代わりに相手の運動神経に多少のマヒを与える

足が一瞬遅くなる程度だがそれが良い具合に噛み合っているのだろう

性格も相性もバラバラなのにこうしてチームとして成り立っているのはオーキッドのおかげかもしれない

特段問題が起きることもなく戦線は維持されている

 

「お前の方はどうなんだ?」

 

「というと、メランサさん達ですか?」

 

「ああ、ずっとここで掛かりっきりだろう、平気なのか?」

 

「ええ、大丈夫ですよ」

 

そう聞くと、アドナキエルが近くまでやってきた

 

「アドナキエル、あっちはいいのか」

 

「大丈夫ですよ、スチュワードとカーディがいますし」

 

メランサ達の方を見る、ミッドナイト達の少し離れた所で戦っている

 

「メイリィ、カバーを」

 

「了解!」

 

メランサが敵と切り結んでいる

それを隙とみて他の敵が近づいてる

そこにカーディが間に入り押さえる

 

「そら、足を止めてると良い的だね」

 

「ごはっ!!」

 

そこにスチュワードがアーツで一撃入れる

食らった相手は勢い良く吹っ飛ぶ

続けてもう一撃、メランサの相手に飛ばす

体制を崩したところに一太刀、そのまま倒れる

 

「スチュワードさん、ありがとうございます」

 

「助かったよスチュワード君っ!!」

 

「いや、この程度あたり前さ」

 

「……なんだか羨ましいな」

 

「……心中お察しします」

 

「ははは、オレはそっちも楽しいと思うけどね」

 

A6と違い、真っ当なチームワークというものを体現している

どこで違ってしまったのか

いや、そもそもの前提が違うんだろう

 

「皆さん、戦線をそのまま維持してください。ただし無理はしないように」

 

アーミヤが部隊全員に声をかける

 

『アーミヤ、どうだ、いたか?』

 

ドクターの声が聞こえる

先ほど言っていたリーダーの事だろう

 

「いえ、今のところは見当たりません」

 

『そうか』

 

普通のとデカいのと言っていた、そのような人物は見ていない

普通の方はともかくデカいのは目立つ

出てくればわかるはずだ

すると

 

「あ、アーミヤさん、あれじゃない?」

 

カーディが指をさす、その先には体の大きい大斧持ちが

 

『どんな見た目だ』

 

ストレイドが反応する

アーミヤ達のちょうど反対側で戦っている

遠くて細かくは見えないがこちらに顔を向けているようだ

 

「大斧持ちの兵士です、条件には合いますが」

 

『大斧か、なら多分違うな、こっちも似たような奴がちらほらいるし』

 

「そうですか、わかりました」

 

アーミヤが視線を斧持ちに向ける

 

「スポットさん、アドナキエルさん、メランサさん達と合流して対処をお願いできますか?」

 

「わかった」

 

「了解しました」

 

いわれ、二人でメランサ達のもとに向かう

 

「おりゃああっ!!」

 

「むうっ!」

 

カーディが斧持ちに盾を思いきりぶつけている

 

「はあっ!」

 

その後ろからメランサが斬りかかり、合流したスポットが続けて殴り掛かる

斧持ちの体に傷が付いていく

さらに畳みかける

アドナキエルが膝に一射、それに合わせてスチュワードが一撃放つ

 

「ッ!オォォォッ!!」

 

命中する、だが構わず動き始める

斧持ちが大きく斧を振り回す

横回転、周りを薙ぎ払うように回転する

 

「ちょ、あぶなっ!」

 

「チィ……!」

 

周りに張り付き、行動を制限しようとしていたカーディとスポットが距離を開く

その隙に前進する斧持ち、無理やりにでも通り抜けるつもりだろう

 

「スポット、手伝いはいるか?」

 

「いらん、そっちに集中してくれ」

 

ミッドナイトが聞いてくる、が断る

なんだかんだであっちもきつい筈だ、無闇に人は動かせない

ここは動けるものだけでやるべきだろう、そのままカーディと追いすがる

すると

 

「スポットさん、カーディさん、離れてください」

 

アーミヤが一言、そう言うと

 

「ッ! がふっ!!」

 

黒い、異質な何かが飛んでくる

ぞっと背筋が立つ、正体の解らない塊

それが斧持ちにあたる、そしてその場に倒れる、ピクリとも動かなくなる

 

「……あー」

 

「いまのは……」

 

「お二人とも、お怪我は?」

 

アーミヤの声が聞こえてくる

その背中には、先ほどの塊と同一のモノが菱形を模りながら浮いている

 

「大丈夫だ、怪我はない」

 

「良かった、ではそのままカーディさんと一緒に前線を抑えてください」

 

「わかった」

 

「うん、了解だよ」

 

指示を受け、メランサ達の方に二人で戻る

 

「……久しぶりに見た」

 

「そうだな」

 

いま飛んできた黒いものはアーミヤのアーツ

それは、普通のものより威力が高い

破壊力ではなく、単純な殺傷力がある

その黒い物質を撃ち込まれたものは、痛みに呻き声をあげることなく死を迎える

謎の多いアーツの中でもさらに不明瞭なものだ

先ほどの斧持ちも、おそらくは

 

「……あまり、やらせたくはないな」

 

「そうだね、もっと頑張らなきゃ」

 

その力は、彼女が望んだものなのか

それを知っているのは彼女と、その保護者であるケルシーと

記憶を失くす前のドクターだけだろう

わかっているのは、彼女自身もそれをよく思っていないこと

ロドスは人殺しの集団ではない

それ故に、あまり使おうとはしない、ドクターも彼女を戦線に出すのは稀だ

こうして臨時の指揮官として戦場に出すことの方が多い

 

「難しいな、戦場は」

 

「……だね」

 

ロドスの面々はアーミヤの信念を知っている、彼女に力を使わせるつもりはない

もっともっと、強くならねば

 

「悪い、手間取った」

 

「いえ、大丈夫です」

 

メランサの元に戻る、そこには

 

「? アドナキエル、何をしてるんだ?」

 

「ああ、いや、少し気になることがあって」

 

アドナキエルがクロスボウのスコープを覗いていた

別におかしい事ではない

だが、ただ覗いていただけなのだ、撃つこともせずに

 

「何を見てた?」

 

聞いてみる

向いていた方向はBSW陣営の方だ

 

「その、ストレイドさんが」

 

「ストレイドさんがどうかしたの?」

 

「何かあったのか?」

 

「いえ、何故かこっちを見てたんですよ、じっと」

 

「どういうことだ?」

 

「さあ、何か気になることでもあったんですかね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

「レイヴン、何をサボっているんです」

 

戦闘中、レイヴンが急に静かになったかと思ったら瓦礫の上に登って遠くを眺めていた

敵の銃のスコープを外して望遠鏡のように使っている

 

「レイヴン、どうしたんです?」

 

「……………………」

 

聞く、だが返事がない

方向的にはアーミヤ達がいる方だ

 

「レイヴン?」

 

呼びかけても反応がない

そして気づく

その横顔が、見覚えのある顔になっていることに

 

「……どうしたんです、そんな怖い顔して」

 

「別に」

 

目を細め、狙いをつけるように睨み付ける

それは、彼が敵に対して向けるもの

つまり、殺す対象と認識したということ

 

「何を見ていたんです」

 

「リスカム」

 

聞いてみる、答える

 

「あのコータスの女、何者だ」

 

コータス、というとウサギの耳と尾が特徴の種族

この場でそれに該当するのはポプカルとクルース、そしてアーミヤだけ

彼の視線の先はアーミヤの陣営、該当するのは二人

 

「二人いますが……」

 

「術を使う方だ、茶色の奴、鉄仮面の隣によくいる方」

 

「アーミヤさんのことですか?」

 

「ああ、あのキラーラビットだ」

 

どうやらアーミヤを見ていたらしい

何者か問われる

 

「ロドスのリーダーですが……」

 

「つまり、お前たちの雇い主か」

 

「ええ、そうですが」

 

空気が冷たくなっている

彼の傍に居る時に散々味わった、死の気配

 

「……何を考えているんです」

 

「別に、何も」

 

そういって、スコープを投げ捨て降りてくる

 

「さて、結構減ったな」

 

「……はい、特別トラブルも起きていません」

 

「よし、上々だ」

 

口調が普段通りに戻る

空気も嘘のように思えるほど、元通りになっている

 

「……………………」

 

「リーダーが出るころには頭数はかなり減ってるかもな」

 

何を考えているのか、何を見たのか

問い詰めるべきだろうか

 

『じぇしか、ばにら、みてみて』

 

『え、なにそれ、片手でくるくる回してるけど……』

 

『スピンコックッ!?』

 

『ジェシカ先輩、それって何です?』

 

後ろでは平和な会話が繰り広げられている

順調に進んでいる証拠だ

緊張感がないのは困るが問題が起きていないなら何か言う必要もないだろう

 

『ねえ、これもうリーダー逃げたんじゃない?』

 

フランカが聞いてくる

一向に出てくる気配がないから不審に思っているのか

 

「いや、逃げてない、逃走経路はここ以外ない、大方瓦礫の山をどかしてるんだろ」

 

『なに? 埋めたの?』

 

「外に出るための道を足止め程度に崩壊させた、死んではいないはずだ」

 

『計算間違えて潰れてたりしない?』

 

「しない」

 

そう言って、指をさす、その方向には

 

「ほら、答え合わせだ」

 

刀身が反り上がった剣をもつ剣士が一人

 

『……ちょっと、あれって』

 

「ええ、ドクター、連絡が」

 

『どうした?』

 

その兵士はロドスではこう呼称されている

 

「アヴェンジャーです、リーダーの片割れと思われます」

 

アヴェンジャー、独特な剣技を持つ兵士

いつかの大規模作戦でドクターの頭を悩ませた兵種だ

 

『了解した、応援を向かわせる』

 

こちらの人数だけでは対処が難しいと判断したのか

ドクターが戦力を動かそうとする

 

「いいや鉄仮面、増援はいらん」

 

レイヴンが拒否する

 

『何か考えでも?』

 

「ああ、リスカム」

 

「なんです」

 

「周り、頼んだ」

 

「あ、ちょっと」

 

そういって、一人前に出る

 

「……………………」

 

「よう」

 

「……貴公、見た事があるな」

 

「ああ、俺もあんたを見た事がある」

 

「いつの間にかいなくなったのには気づいていたが、そういう事か」

 

「そうだ、不甲斐ない神様とやらの代わりに叶えてやったぞ、感謝しろ」

 

「なるほど、あの爆発は貴公か」

 

「お気には召したかな?」

 

「ああ、おかげさまでこちらは大混乱だ」

 

「よろしい、で、どうする?」

 

「……どうするとは?」

 

「戦うか、お縄につくか、俺としては降参するのがオススメだが」

 

「馬鹿を言え、するわけがない」

 

「そうか、それもいいだろう」

 

「ああ、たとえ止めるために騙したとはいえ、仲間を見捨てるつもりはない、抗うぞ、我々は」

 

「そうかい、なら痛い目をみてもらう」

 

「それは貴公だ」

 

「まさか」

 

アヴェンジャーが刀を構える

レイヴンが銃のマガジンを入れ替える

 

「……参るっ!」

 

アヴェンジャーが距離を詰める

横に薙ぐ、レイヴンが後ろに避ける

そこからさらに踏み込みもう一刀あびせる

鋭い一突き、心臓に向けて飛んでいく

それを

 

「ッ!?」

 

平手で弾き、剣の軌道を横へと逸らす

そのまま横に回り込み蹴りをいれる

アヴェンジャーが身をそらして避ける、そのまま後ずさる

 

「……出来るらしいな」

 

「そうでもないさ」

 

アヴェンジャーに銃口を向ける

三度、銃声が響く

ペイント弾ではなく、実弾

金属音が響く、弾は、当たっていない

 

「弾いたか、いい反応だ」

 

「この程度、造作もない」

 

二人が睨み合う

 

「手強いな、これは」

 

アヴェンジャーが構えなおす

 

「中々楽しめそうじゃないか」

 

レイヴンが不敵に笑う

 

「いくぞ、ガンマン」

 

「残念、ガンスリンガーだ」

 

決闘が始まる

 




ポプカルが少々アクティブすぎる気がします
でもキレてる時ってこんな感じだと思うんですよ
そして相変わらずいるのに出番が少ないアーミヤ
なんででしょうね












アドナキエルってクロスボウじゃないですか
あれ、スコープついてるんですよ
スナイパークロスなんです









スナイパーワロスって単語が出てくるのは私がおかしいんですかね
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