アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里   作:Thousand.Rex

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迷子が迷子

龍門市街商店街

 

メランサは悩んでいた

 

彼女は行動予備隊A4の隊長である

内向的な性格のため、自分が隊長を務められるのか常日頃から悩み続けている

そしてその悩みは今も、現在進行形で彼女を困らせている、というのも

 

「あまーい!! すっごくおいしーよコレ!!」

 

「ほんわり甘く、口の中でゆっくりと溶けていく感触、幸せです…………」

 

「あっ、おいしー! 先輩コレおいしーですね!」

 

「えと、その、あの…………」

 

同じ部隊であるカーディをはじめ、頼りになると踏んでいたBSWの二人が屋台の菓子に篭絡されていた

 

「えーと………あのー…………」

 

こういう時、何といえばいいのだろうか

叱るべきか、一緒に食べるべきか、はたまた別の方法か

ドーベルマン教官がいれば溜息をつきながら額に手をあて、メランサに手本を見せてくれるだろう

だが彼女はいない、自分がしっかりしなければ、しかしどうやって?

カーディは彼女の頼りになる親友だ、隊長面してきつく言いたくはない、何より友人のしょんぼりした顔など見たくはない

ジェシカとバニラは普段は真面目なのだが今回に限って何故かゆるい

なぜだろう、思い当たる節としてはドクターが許可を出したことだろうか、なら自分も食べていいのでは?

いやだめだ、それでは隊員に示しがつかない、ならどうすれば?

甘いお菓子に口元をにやけさせる三人を見ながらうんうん頭を悩ませていると

 

「ジ~…………」

 

「…………?」

 

すぐ隣に少女がいることに気が付いた

 

「えっと」

 

「ジ~」

 

猫の耳にしっぽ、自分と同じフェリーンだろうか?

 

「ジ~」

 

「えーと、あーと…………」

 

真っ白な髪が印象的な女の子、背丈は低い、ジェシカと同じくらいだろうか、いやもう少し低い

白いワンピースを着た、どこか儚げな子

 

「ジ~」

 

「えーと、どう、したの?」

 

少女はただひたすらに菓子を頬張る三人を見ている、いや、三人が口に入れているものを凝視している

 

「あのー…………」

 

「おなかすいた」

 

「えっ」

 

どう声をかけたものか思案していると少女がいきなりそう呟いた

 

「えと、おなか、へってるの?」

 

「おなかすいた」

 

腹を減らしているらしい、ふと屋台の菓子が目に入る

 

「…………お菓子、食べる?」

 

「くう」

 

メランサの提案に少女は首を縦に振る

とりあえずすべきことはできたと、ほっと安堵する

 

「あれ? メランサちゃん、その子どうしたの?」

 

トリップ状態から戻ってきたカーディがおそらくメランサの分であろう菓子を両手に持ってやってきた

 

「あのね、いつの間にか隣にいたんだけど、その」

 

「おなかすいた」

 

「って」

 

メランサの言葉に合わせて少女が言う

 

「そーなんだ! あっ、これ食べる?」

 

「くう」

 

「はいどーぞっ!」

 

「ありがと」

 

カーディが片方の菓子を少女に渡すと、彼女は礼を言いながら受け取り

 

「はむ」

 

「わお」

 

少女の拳ほどの大きさの菓子を一口で飲み込んだ

 

「もむもむ」

 

「お~! 大胆に行くねー!!」

 

「もむもむ」

 

「…………大丈夫? のどに詰まったりしない?」

 

「もむもむ」

 

「大丈夫大丈夫! これぐらいの子なら平気だよ!」

 

「もむもむ」

 

「大丈夫? お水飲む?」

 

「もむもむ」ブンブン

 

咀嚼しながら首を横に振り平気と意思表示する少女

 

「でしょ? あっ、そうそう! 君一人でどうしたの? 迷子?」

 

「むもむも」ブンブン

 

カーディの質問にたいして否定の意を示す

 

「なら、このあたりに家があって外に遊びに出たとか?」

 

「むみむみ」ブンブン

 

あれ?と首をかしげるカーディ、ならばなぜここにいるのかと考え始める

 

「その…………」

 

「もむ?」

 

少女がメランサに顔を向ける

 

「名前は…………」

 

「そうだ!! お名前は? なんていうの?」

 

「もみゅもみゅ」

 

こころなしか咀嚼音が早くなった気がする

 

「急がなくても大丈夫だよ」

 

少女の頭を撫でながら、カーディは優しくそう語りかける

カーディは姉妹がたくさんいたからか、子供の扱いに慣れている

本人も子供が好きだと言っていたのでメランサはここはカーディに任せることにした

 

「ごくん」

 

「おいしかった?」

 

「うん」

 

「よかった」

 

優しい声でそういう彼女の顔を見て、本当に子どもが好きなのだと感心する

 

「もっと」

 

そういい、カーディの手に残った菓子を見つめ始める少女

 

「えっと、これは…………」

 

それはメランサの分と思って買っておいたものだ

ちらりと、カーディがメランサを見る

 

「いいよ、メイリィ」

 

メランサは心優しい少女だ、その優しさゆえにA4の隊長を務めることができていると気づくのはずっと先のことである

 

「…………ありがと、ごめんね、メランサちゃん」

 

「大丈夫」

 

はいどーぞ、と菓子を少女に渡す

少女はそれを受け取り先ほどのように頬張り始める

 

「どこの子だろ…………」

 

「近くに家がないんだったら、別の地区かな?」

 

少女が飲み込むまでの間、少女のことについて相談する二人、その近くではいまだ甘味に夢中の二人がいる

頭を悩ませていると

 

「んく、…………リンクス」

 

と食べ終わった少女が名前とおぼしき単語を口に出す

 

「リンクス、それがあなたの名前?」

 

カーディが確認のために聞き返す

 

「うん、リンクス」

 

リンクス、それが少女の名前らしい

ようやく事態が好転する兆しが見えた

 

「そう、リンクスちゃんは、今日は一人?」

 

「ううん」

 

「じゃあ、誰かと一緒?」

 

「うん」

 

どうやら彼女と一緒にいた誰かがいるらしい

 

「お父さんと来たの?」

 

「ううん」

 

「じゃあ、お母さん?」

 

「ううん」

 

おや?、とまたもや首をかしげ始める二人

両親ではないとすると誰だろうか、そこで不穏な言葉が頭によぎる

 

「もしかして、誘拐…………!」

 

「なんだって! それは許しておけないねー!!」

 

「?」

 

もしもの可能性を考えてしまい、慌ててしまうメランサ、それとは逆に正義感に燃えるカーディ、すると

 

「ちがう」

 

「あっ、そうなの? なーんだ」

 

「よかった…………」

 

リンクスがそれを否定する

 

「はぐれた」

 

「一緒にいた人と?」

 

「ううん」

 

「えっ、違うの?」

 

「はぐれた」

 

「…………誰と?」

 

「ちがう」

 

「「???????」」

 

はぐれてしまった、という割にはすぐに否定する

どういうことかと悩ませていると

 

「どうしたんですか、二人とも? あれ、その子は…………」

 

「ごめんなさい、つい夢中になってしまって…………て、どうしたんですか、その子」

 

ようやく向こう側から戻ってきたらしい二人がリンクスに気づく

 

「なんか、一緒にいた人とはぐれちゃったらしいんだけど」

 

「はい」

 

「…………誰とって聞くと」

 

「ちがう」

 

「って」

 

先ほどのやり取りを再現して見せる、するとバニラが

 

「ははーん、わかりました! 私にお任せください!」

 

と名乗り出た

メランサとカーディは下がり、代わりにバニラが少女の前にしゃがみ込む

 

「お名前は?」

 

「リンクス」

 

「リンクスちゃん、今日は誰と一緒に来たの?」

 

「すとれいど」

 

「ストレイドさんと、一緒に来たの?」

 

「うん」

 

「で、ストレイドさんが、はぐれちゃったの?」

 

「うん」

 

少女の不可思議な言動の謎がようやく解けた、バニラの後ろから、お~、と小さい歓声があがる

誰と、ではなく、誰が、自分がはぐれたことに気づかずに親がはぐれたと思い込む、小さな子なら一度はする経験である

 

「じゃあ、一緒に探そうか」

 

「うん」

 

バニラがリンクスの手を繋ぐ、ようやく事態が好転した

 

「ストレイドさんは、どういう人?」

 

バニラが保護者と思われる人を探すためリンクスに相手の外見を訪ねる

 

「………………」

 

リンクスが少し考え込む、質問の仕方が悪かったのかと思い、バニラがもう一度聞き返す

 

「どんな見た目かな?」

 

「へんなかお」

 

「へっ?」

 

「へんなかお」

 

暗転してしまった

 




龍門の全体像が知りたい
メランサを喋らせるのが地味に難しいんですよね

食っているものはご想像にお任せします
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