アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里   作:Thousand.Rex

57 / 81
12/16 修正


責務

 

「ふらんか、おちついた?」

 

「……ええ、ごめんさい、取り乱してしまって」

 

「だいじょうぶ、ありがとう、ふらんか」

 

お礼なんて言わないでほしい、また泣いてしまう

 

「先輩、大丈夫ですかね」

 

「大丈夫だよ、フランカ先輩なら」

 

何か聞こえる、バニラとジェシカの声だ

近くにいたのだ、先ほどの痴態は見ているだろう

どうやって口止めするかは後で考えよう、いまはリンクスと話さなければ

 

「ねえ、リンクス」

 

「なあに?」

 

声をかける、彼女はいつもと変わらない

 

「あなたはどうして戦い始めたの?」

 

「えっとね、てつだいたかったの」

 

「ストレイドを?」

 

「うん、あのひとを」

 

いつもと変わらぬ笑みを見せてくれる

子供らしい、無邪気な笑み

 

「どうして? あの人は傭兵よ、手伝うなんて危険だわ」

 

「そうだね、いったときはおこられた」

 

「怒られたって、彼に?」

 

「うん、あたまをおもいっきりなぐられた」

 

「……まあ、そうなるわよね」

 

何故か想像できる、そういえば面倒見のいい人ではあった

わからないのは許可した理由だ

 

「それで、殴られた以外に何か言われた?」

 

「ううん、そのあとはかんがえてた」

 

「考えてた、てことはそれなりに悩んだのね」

 

「うん、まるいちにち、ずっとなやんでた」

 

彼としても反対だったのか

こんな小さい子に銃を持たせるのは気が引けたらしい

それでも許可した、なぜか

 

「彼が折れた理由は? 何かしたの?」

 

「なにもしてないよ、ただ……」

 

「ただ?」

 

「おれにはひていがゆるされないって、そういってた」

 

「否定?」

 

「あとは、そう、こうもいってた」

 

「なに?」

 

「えっとね、せいどうをいけ、けしてぶれるなって」

 

「正道? どういうことよ」

 

「ただしいみちだって、ひとしての、あやまりのないみち」

 

「……一番外れてる奴がよく言うわね」

 

あれで人のことをよく見てる、たぶん、善悪の区別がついているとかそういうことか

ただ気になるのは、それが彼にとってどういう意味を持つのか

 

「……本人に聞けばわかるかしら」

 

「そうだね、そういえばふたりともどうしたの?」

 

リンクスが無線機をつつきながら不思議そうな顔をしてる

二人とは、リスカムとストレイドのことか

そういえば声がしない、あの状況から察するに戦闘中か

 

「リスカム、ストレイド、状況は?」

 

「……へんじ、ないね」

 

「リスカム? ストレイド?」

 

呼びかける、だが返事がない

もしやなにかあったのか、不穏な考えが頭をよぎった瞬間

 

『フランカ、応答を』

 

「ドクター?」

 

ドクターが返事をした

 

なにやら慌ててる気がする

 

「どうしたの? なにかあった?」

 

『まあ、あったといえばあったが、とりあえず付近にストレイドはいないか?』

 

「いえ、いないけど」

 

『そうか……ならいい、すまないな、取り込み中に』

 

「……まって、それはどういうこと?」

 

ストレイドを捜しているのも気になるがもっと気になることがある

 

「取り込み中って、聞いてたの?」

 

『いや、聞いてはいない、直接は』

 

「……直接、ていう事は」

 

視線を二人に向ける、バニラとジェシカに

向いた瞬間、バニラがそっぽを向いた、ジェシカはバツが悪そうな顔をしてる

 

「……あの二人」

 

『まあそう怒らないでやってくれ、タイミングが悪かったんだ、タイミングが』

 

おそらくはドクターが撤退したこちらの状況を聞くために連絡したのだろう

それがちょうど、あの時だった

聞いたのがドクターだけなのがまだ救いか

 

「……それで、どうしてストレイドを?」

 

頭を切り替える、いまはストレイドの事に集中しよう

 

『ああその、つい先ほどまで戦闘していたんだ、二人が』

 

「ええ、何か色々言ってたけど」

 

『それでだな、戦闘が終了した』

 

「……早くない?」

 

『ああ、早い、十分経ってない』

 

「まさか、やったの? 彼」

 

『やったよ、盛大に』

 

「……なんてこと」

 

嫌な予感はしてた、彼が二丁目を抜いた時点で

もとより手加減してる姿に違和感を持っていたぐらいだ

これが本来のあるべき結果だったのだろう

 

「……やってしまったものは仕方ないわ、それで、どうしたの?」

 

『……まあ、なんだ、アクシデントが起きていてね』

 

「というと?」

 

『その、二人がね、いなくなってしまって』

 

「……つまり?」

 

『音信不通だ、おそらくは彼がリスカムごとどこかに撤退した』

 

「え、まって、どういう状況だったの?」

 

『話すと長い、詳しくは終わった後に』

 

「……そう、で、私に連絡した理由は?」

 

『君、彼がどこかに消えた時、どのあたりに居るか心当たりはないか?』

 

「その場にいなかったのにわかるわけないでしょ」

 

『その通りだが、昔の彼を知っているなら何か知ってるかと思って』

 

まあ確かに自分に聞いた方が可能性はある

知人という要素は思いのほか大きいアドバンテージになることがある

 

『それで、何かあては?』

 

「そうね……」

 

だが正直、いつの間にか消えていつの間にか現れていたからわからない

何かあてはないのか、こちらが知りたいぐらいだ、そう考え込んでいると

 

「どくたー、わたし、たぶんわかるよ」

 

『なに?』

 

「え、知ってるの?」

 

「たぶん、だけど」

 

その割には自信ありげだ

彼女は彼と一緒にいた、彼のアーツを知っている

もしかしたら一緒に移動したことがあるのかもしれない

 

『どこにいる?』

 

「えっとね、たかいとこ」

 

「高いとこ?」

 

「うん、とびきりたかいとこ」

 

高い所、というと廃ビルの屋上あたりか

確かに彼の跳躍力ならいける

 

『……高い所、黒い光、跳ぶ…………とぶ……………………』

 

なにやらドクターが考え込み始めた

 

『……いや、まさかな』

 

「何かわかったの?」

 

『特別何も、まあ見つけることは出来るだろう』

 

「あら、強気ね」

 

『そうでもない、それで君たちは平気か?』

 

平気、とはリンクスのことだろう

ドローンで状況は見ていたのだ、何があったのかは知っている

 

『動けるようなら他の部隊の援護に行ってほしいんだが』

 

「……そうね、リンクス、大丈夫?」

 

「うん、わたしはたたかえる、だいじょうぶ」

 

「だそうよ、いけるわ」

 

『……わかった』

 

少し間をおいてから指示が来る

 

『とりあえずは待機でいい、切羽詰まった状況じゃない、相手も降参するものが出てきてる』

 

「そうなの?」

 

『ああ、リーダーが二人とも倒されたんだ、その情報が広まれば士気は下がるさ』

 

「……図らずも彼の思惑通りと」

 

『そうだな、まあ文句は終わったあとでいい、何かあったら連絡する』

 

「わかったわ」

 

ドクターの声がなくなる、他の部隊と連絡を取っているのか

 

「気を遣われちゃったわね」

 

「うん」

 

二人して笑い合う、彼女については今のところ大丈夫そうだ

なら後は戦闘が終わるのを待てばいい、なんだかサボりのような気がするが

 

「……ねえ、リンクス」

 

「なあに、ふらんか」

 

だが好都合だ、時間があるなら確かめておきたいことがある

 

「ストレイドは、何のために、その、あんなことをやらせたの?」

 

少し前も聞いた、理由は聞かされた

ただ、他にも理由がある気がする

話したくないとも言っていた、まだ何か、狙いがある

 

「むー……あんまりきかせたくないな」

 

「怒るかも、っていってたわね」

 

「うん、あのひともやらせたくなかったとおもうから」

 

「それは、まあそうね」

 

理由の一つは記憶を取り戻すためと言っていた

つまりはショック療法だ、やらせたことは酷だが

結果としては狙い通りになったが褒められることではない

 

「聞かせてくれるかしら、彼が何を思ってあんなことをしたのか」

 

「……おこらない?」

 

「大丈夫よ、リンクス」

 

どうせ殴り飛ばすことに変わりはない

 

「……わかった、おしえる」

 

「ありがとう、それでどうして、あんなことを?」

 

「その、ね」

 

 

 

「レイヴン、それは、彼女にはまだ早いです」

 

「そうだな、子供に選ばせるものではないな」

 

「なら、なぜこんなことを課したんです」

 

「リスカム、俺は言ったな、戦い方を教えたと」

 

「ええ、言いました」

 

 

 

「戦い方を教わった、それで、何があるの」

 

「あのひとはこういったの、ちからには、せきにんがうまれるって」

 

「……責任」

 

「うん、えらばなければいけないことだって」

 

 

 

「アイツには、選ばせなければいけない、それが俺の、最後の責務だ」

 

「……それは、酷く重い、彼女のこれからを左右することになります」

 

「そうだ、だからこそアイツの意思で選ばせる」

 

 

 

「……リンクス、彼の言う事がどういうことか、わかっているの?」

 

「わかってる、あのひとはおしえてくれた」

 

「だけど、もし、もしあなたが間違えたら……」

 

「うん、そのときは、あのひとがこたえをくれる」

 

 

 

「レイヴン、彼女が間違えたら、どうするんですか」

 

「決まってる、その為に、俺がいる」

 

 

 

「わたしが、まちがえたなら」

 

 

 

「アイツが、誤ったなら」

 

 

 

 

 

 

 

「あのひとは、わたしをころす」

 

「俺が、アイツを殺す」

 




リンクスが賢者に見えてきた
書いてて思いますが子供の精神力ではありませんね
ですがまあ、アークナイツの覚悟ガンギマリの方々と比べるとまだ弱い気はする
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。