アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里   作:Thousand.Rex

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迷子の迷子

   

   龍門市街の噴水広場

 

「はい……はい……了解しました、こちらの方でも探してみます」

 

一方そのころ行動予備隊A1番隊

隊長であるフェンはメランサから迷子の連絡を受けていた

 

「それで、その人の特徴は…………はい……はい……はい?」

 

メランサからの通信を聞いていたフェンが素っ頓狂な声を上げる

 

「いえ、すいません、少し驚いてしまって、ええ、はは…………ですよね」

 

動揺が相手に通じたらしい、謝りながら通信内容を確認し無線を切る

 

「ふう……」

 

通信を終わらせ一息つく、その手には出店で買ったたい焼きが

 

「なんだって~?」

 

頃合いを図り内容を聞くクルース、片手にはリンゴ飴

 

「迷子って言ってたけど、大丈夫なの?」

 

クルースに続き話しかけてきたのはビーグル、片手に綿あめ、もう片方にはチョコバナナが

ちゃっかりしている三人である

というのも、最初に買ったのはクルースで、彼女にのせられ買ったのはビーグル

フェンは最後まで抵抗していたがクルースの

 

「ばれなきゃだいじょうぶだって~」

 

という言葉と美味しそうな香りにつられ、買ってしまった

 

「ああ、保護者の方の特徴は教えてもらったから大丈夫だと思う。ただ…………」

 

平気という割には釈然としない顔、何かあったのかと二人とも訝しむ

 

「なぁに~? どうかしたの~?」

 

クルースが聞いてくる

 

「いや、ちょっとね、まあ子供の言うことだから気にしなくていいと思うけど……」

 

「何か変なことでもいってたの?」

 

「うん、まあ、そんな感じ」

 

ビーグルの言葉に同意するフェン

 

「で、なんて言ってたの?」

 

「おもしろそうな話みたいだったけど~」

 

二人して話せと催促してくる

 

「えっと、まあ、その保護者の方の特徴なんだけど」

 

二人とも興味津々の様子で聞いている

 

「男の人で」

 

「「うん」」

 

「そこそこ高い身長で」

 

「「うん」」

 

「黒いジャケットを着てて」

 

「「うん」」

 

「黒い髪色で」

 

「「うん」」

 

「赤い目の色で」

 

「「うん」」

 

「変な顔」

 

「「うん?」」

 

二人ともなにを言っているんだ?というような顔をしている、無理もない

個人の特徴で変な顔、などと言われることなどそうそうない

 

「変な顔って、どんな顔?」

 

「さあ」

 

ビーグルの言葉に苦笑いしか返せない

 

「ほかにはぁ~?」

 

「っていうと?」

 

「どこ出身、とか~」

 

「わからないって」

 

この世界には多種多様な種族がいる

フェンのような犬の見た目をもつクランタ

メランサのように猫の耳と尾を持つフェリーン

リスカムのような頭部に一対の角と大きな尾を持つヴイーヴル

他にも様々な種族がいるが、一部を除いてどれも特徴的な見た目をしている

 

「わからないって、どういうこと?」

 

「耳もしっぽも生えてないって」

 

「そうなの? 輪っかも羽も?」

 

「そうみたい」

 

身体的特徴のない人種、いなくはないが、かなり珍しい

 

「なら~かえって~さがしやすいんじゃなぁい~?」

 

クルースの言う通りだ、特徴がないことが特徴なのだ、体に何かしらついているこの世界ではかえって目立つ

 

「そうだね、リスカムさんからはまだ相手に動きがないって話だし、探してみようか」

 

「その人の名前は?」

 

「ストレイドさん、だって」

 

「へぇ~、迷子さんがぁ迷子なの~?」

 

「うんまあ、そうだね」

 

「ふぇ?」

 

クルースの言葉に?を浮かべるビーグル

彼女の言う通り、ストレイドとは迷い子という意味だ

迷子の迷子に迷子と言われる迷子

ゲシュタルト崩壊しそうだ

たい焼きの残りを口に放り込む

 

「とりあえず警備がてら周ってみようか」

 

「そうだね~」

 

「ちょっとまって、まだ食べ終わってないよー」

 

「ビーグル、早く食べて」

 

「はーい」

 

いつの間にか平らげていたクルースと一緒にビーグルを待つことにする

すると

 

「なぁ、そこのクランタのお嬢さん」

 

「あっ、はい、なんでしょうか」

 

誰かが話しかけて来た、声の主に視線を向ける

 

「あっ」

 

呆けた声を出してしまった、まあ仕方ない、話しかけてきた男の姿が似ていたのだ

 

「お嬢さん」

 

「あ、はい」

 

そこそこ高い身長、黒いジャケット

 

「大切な話があるんだ」

 

「はい、なんでしょうか」

 

黒い髪に、嫌に印象に残る赤い瞳

そして、しっぽも耳もない、なんの特徴もない男、聞いた話によく似ている

男が何を言い出すのか、フェンがおとなしく待っていると

 

「今夜」

 

「はい」

 

いつの間にか男はフェンの手を取りかしずいている

 

「俺のために」

 

「はい」

 

深刻な話なのだろうか、随分真面目な様子だ

 

「…………」

 

「えっと」

 

少し間がおかれ、フェンが何か言おうとすると

 

「どうか、バースデースーツを着てくれないか?」

 

「…………はい?」

 

素っ頓狂な声を上げる、今日はこれで二度目だ

いきなり話しかけてきたかと思えば意味の解らないことを言われてしまった

 

「えっと、それはどういう――」

 

意味ですか? と聞き返そうとすると

 

ガチャリ

 

「ロリコン」

 

と、声のトーンがいつもより低いクルースが

 

「変態」

 

クロスボウを男に向け

 

「くたばって♪」

 

撃ちだした

 

「うおぉぉぉぉ! あっぶねぇぇぇ!!」

 

矢が男の顔をかすめる

 

「ちょっ! クルース!!」

 

「えぇっ! なになに! どうしたの!?」

 

「ありゃ~はずれちゃったぁ~」

 

そういいつつ次弾を装填する

 

「まってまって! クルースよくわからないけど落ち着いて!!」

 

「そうだ、落ち着け細目のお嬢ちゃん! 冗談だ! 冗談だから!!」

 

フェンがなだめ、男が反省の意を示し、ビーグルはいつの間にか両手の食べ物を落としていたことに気づき

クルースはほどなく落ち着いた

 

 

 

「ちょっとした冗談なんだ、本気で怒らないでくれ。な、この通り!!」

 

男がクルースの方を向いて、両手を合わせ、頭を必死に下げている

クルースはクロスボウを男に向けている

ビーグルはそれを遠巻きに眺めている

 

「つぎはぁ~ないからねぇ~?」

 

そういい、クロスボウを下げる

 

初対面でクルースから死刑宣告を受けるとは珍しい、と思いつつ男に注意を向ける

先ほど聞かされた通りの外見、おそらく彼が少女の保護者だろう

 

「えーと、何か御用でしょうか」

 

仕切りなおそうとするフェン

 

「ああ、悪い悪い。ちょっと聞きたいことがあったんだ」

 

男がフェンの方を向く、男の身長はフェンより高く見上げる形で相手を見る

どこか違和感のある顔、何がおかしいのかはわからない、真っ赤な目が嫌に目立つのが原因だろうか

迷子の少女はこのことを、‘‘変な顔‘‘と言っていたのだろうか

後ろでクルースが獲物を構える音がする

 

「これ以上ふざけたことは言わん、約束する」

 

「ほんと~?」

 

「ほんとほんと」

 

それに気づいた男がクルースに念を押す

一体何を言ったんだろうか、クルースがあそこまで怒るということはただ事ではないのだが

 

「なぁあんたら、自警団か何かじゃないか?」

 

先ほどの男の発言について考えていると、いきなり男に核心を突いた質問をされる

 

「えっ、どうしてそれを?」

 

なぜそうだとわかったか、反射的に聞き返してしまう

 

「ここ」

 

「?」

 

男が自分の首の襟元を指さす

どういう意味か分からずなんとなくフェンも自分の首を触る

 

そうして気づく、彼女の服には首元に無線用のインカムが付いていた

 

「さっき、通信してなかったか?」

 

「ええ、してました、はい」

 

確かに通信するとき、マイクが音を拾えるように顔を首に近づける、注意深く見れば何をしているかは理解できるだろう

だがここは龍門市街、様々な人が行きかう都市だ、もちろん彼女達の周りにもたくさん人がいる

その中で一人の少女の行動に目を向ける、よほど視野が広いか、そもそもそういうことをする人間か

一般人では気づくことはまずないだろう

 

「あってるか?」

 

「はい、正確には自警団ではなく、警備会社のようなところですが…………」

 

とりあえず所属は伏せておく、ロドスは表向きは製薬会社なのだ、独自の兵力を持っていることをペラペラ話すわけにもいかない

 

「ちょっと今人を探していてね。よければ協力してくれないか?」

 

迷子の少女のことだろう、どうやら彼も探しているらしい

 

「ええ、わかりました、探している方の特徴は?」

 

予想はついているが確認のために聞いておく

 

「白い髪のフェリーン、女の子だ、背は君らよりも少し小さいな」

 

「その方のお名前は?」

 

「リンクス」

 

「はい、白い髪、フェリーン、女の子、名前はリンクス、間違いないですね?」

 

「ああ、間違いない」

 

連絡するので少し待ってください、とフェンは男に言い少し離れる

すると入れ違いにクルースが前に出る

 

「なんだいお嬢ちゃん?」

 

「おにぃ~さんは~ロリコンさんなの~?」

 

「いんや、違うな」

 

先ほどのことをまだ根に持っているのか、クルースがそんなことを男に言い出す

 

「でも~さっき~フェンちゃんにあんなこといったし~、ちいさい女の子もつれてるみたいだし~変態さんなのかな~って~」

 

クルースが男に質問を投げかける

 

「おいおいお嬢ちゃん、俺はそんな不健全なことはしないぜ?」

 

「でも~さっき~すごく不健全なこと言ったし~」

 

どうやらかなりアウトなことを言われていたらしい

気になってしまいフェンは聞き耳を立てる

 

「すご~く、危ない人なんじゃないかな~って」

 

「安心してくれお嬢ちゃん」

 

きりっとした顔で男がクルースに語りかける

 

「俺は!! 綺麗なお姉さんのケツしか追わないと決めている!!」

 

大声で、そう宣言する

 

「わぁ~おばかさんだぁ~」

 

彼は、ひどく残念な人なのかもしれない

そんなことを考えていると無線から声が聞こえてくる

 

『はい、こちらメランサ、どうかされましたか?』

 

「こちらフェン、先ほどの保護者の方、見つかりました」

 

『ホントですか? …………良かった』

 

無線越しにメランサが安堵の息を吐くのがわかる

 

「二人を会わせたいんですがどこで落ち合いましょうか」

 

『はい、こちらの方が人数が多いですし、誰かに彼女を送ってもらって――』

 

メランサとこの後のことを話していると

 

『こちらリスカム、目標と思われる集団を視認。私たちを見てあからさまに向きを変えました』

 

本来の計画が始まった

 

「はい、目標はどっちに行きましたか?」

 

意識を作戦に向ける

 

『出口には向かわず迂回してどこかに向かうようです。位置的には……フェンさん達のいる方向ですね』

 

「わかりました、すぐに動きます、っと迷子の保護者の方はどうしましょうか?」

 

もともと敵の偵察隊を捕まえるのが目的だった、作戦行動が最優先だ、だからと言って二人を放っておくわけにもいかない

すると

 

「トラブルかい?」

 

「えっ、あっ、はい、ちょっとアクシデントが起きまして、でもリンクスさんは保護しているらしいです」

 

男に話しかけられ、とりあえず少女を保護していることを伝える

 

「どこにいる? 場所を教えてくれれば迎えに行く」

 

男がそう提案してきた、彼らが自分で合流するならその方がおそらく早い

 

「……はい、わかりました。少し待ってください」

 

メランサから位置を聞き男に教える

 

「助かる。あとあいつに絶対動くなって言っといてくれ」

 

男が少女に念を押しておくように頼んでくる

 

「わかりました、伝えておきますね」

 

フェンの言葉を聞き、男は教えられた位置に向かう

フェンたちは男が少女がいるであろう方向に向かうのを確認し走り出す

 

「変な人だったね」

 

ビーグルがのんきなことを言う

 

「ただのろくでなしだよ~」

 

クルースが返し

 

「二人とも、今は作戦に集中して!!」

 

フェンが二人を叱責する

これが行動予備隊A1の、幼馴染三人組の日常である

 

 

 

「ねぇ、クルース…………」

 

「なぁにぃ~?」

 

「あれ、どういう意味なの?」

 

「さっきの~?」

 

「そう」

 

「ん~とね~、そうだね~、フェンちゃんは優しいからね~、次同じこと言われたら、うん、って言っちゃいそうだからね~、いいよ~」

 

「? なにを言いたいの」

 

「耳貸して~」

 

「はい」

 

「ん~とね~、ごにょごにょごにょ…………」

 

「………………ふぇぇ!?」

 

素っ頓狂な声、これで三度目である




           Can you wear a birthday suit for me

この一文のためにR18にしようか考えた話です 意味を知りたい人はググって、どうぞ

ちなみに、これと前の話、実は一章のサイドストーリー枠だったんですが本編にぶち込んだ方が話の展開がしやすかったので無理やりぶち込みました

も一つ余談に、最初のヒロインはフェンでした、その名残として他の人が気づかない要素に気づいています
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