アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
龍門市街、とある裏路地
人気のない、どこか不気味な通り
その一角にひっそりと構える小さなバー
一人の女性が足を踏み入れていた
背には羽、頭上に光輪、
紅い髪 紅い目 髪は後ろにまとめて流されている
黒い上着を羽織った、高校生程だろうか、それより少し小さい身長の女性
その腰には銃身の長いリボルバー
腰の後ろには図体の大きい、ぎりぎり片手で持てそうな三連装の銃
どこか緊張した様子のまま、物騒な獲物を構えたまま店内に足を踏み入れる
内装はそこそこ広い、席こそ足りないが詰めてしまえば百は入る
空席は、一部を除いて存在しない、どこもかしこも男たちと空の瓶で埋められている
ピアノの置かれる演奏席も、酔っ払いに浸食されている
ピアニストは苦笑しながらリクエストに答え、少ないウェイターたちがせわしく動く
その中をかいくぐり、何故か誰もいないカウンター席に向かう
「……お?」
「なんだあ? ガキンチョじゃねえか」
ガラの悪そうな男たちに目を向けられる
品定めするように、顔から足の先までじろじろ見られる
「……ガキ……」
彼らの発言が気に障ったのか、女性は少し睨み付けそのまま奥のカウンター席に足を運ぶ
「いらっしゃいませ、ご注文ハ?」
「……ウォッカ」
「承りました、お客様」
店のマスターだろう、壮年の男が注文を聞いてくる
それに答え、席に腰かける、すると
「ようよう姉ちゃん、ここは子供のくるとこじゃないぜ」
「……………………」
先ほど、こちらを舐めまわすように見てきた男たちの一人がやってくる
「……………………」
「ここには怖ーいお兄さんばかりいるからな、危ない目に合わないうちに帰った方がいいぜ」
「そう」
「なんなら、俺が送ってやろう」
「いい、間に合ってる」
「そんなツレナイ事いうなよ、子供はさっさとおうちに――――」
「……っ!!」
直後、鈍い音がする
男の顔面に拳が入った
「ぐぼぁっ!!」
「おいおい、派手にやられたぞあいつ」
「ざまあねえな」
誰が殴ったか、その当人はいま肩を震わせ血の付いた拳を握っている
「このガキッ! なにしやガバアッ!!」
また殴る、容赦のない拳が男を襲う、女性の顔は怒りに震えている
男の胸倉を掴み引き寄せて射殺さんとばかりに睨み付ける
その形相は幼いが般若を思わせる、女性が静かに口を開く
「……三度も言った」
「アァ? なんだよ?」
「ガキって、三度も言った……」
「あ? ガキだろおまべぇ!!」
「うるさい!」
今度は蹴る、勢い余って男が近くの席に飛んでいく
女性は声を大きくして叫ぶ
「私はとっくに成人してるわよ!! 背が小さいからってガキガキ言うな!!」
蹴り飛ばされた男はそのまま潰れる、仲間と思しきものが介抱に回る
それを確認し女性は改めて席に着く
「すまないネ、普段はこうじゃないんだが」
「構わないわ、ええ、構わない」
「ふむ、わかり易いって言われないかい?」
「言われない」
マスターの声に適当に返す、その口調は若干苛立っているように聞こえる
どうやら身長が小さいことを気にしてるらしい
「まあまあ、これはお詫びだヨ」
「……枝豆?」
「お酒のつまみにどうかナ?」
「いや、ウォッカなんだけど?」
枝豆の乗った皿を差し出される、頼んだ酒には合わない代物
突き返すのが当然だがそのまま受け取る、一応、謝罪の意を込めたものだと判断したからだろう
「マスター、あまりセンスがないわね」
「笑いのかい? それとも食かい?」
「両方、勉強した方がいいんじゃない?」
「ふむ、これでも笑ってくれる人はいるんだけどネ」
「そ、まあ私は笑わないけど」
「残念」
そういいながら液体の入ったグラスを差し出す
女性はそれを受け取り、一口飲んでから周囲を見回す
「……ねえ、いつもこんな感じなの?」
「いや、いつもはもっと寂しいネ」
寂しい、とは店内の状況だろう
いま、この店の席は満席になっている、テーブル席にはむさい男どもが飲み合いをし
演奏席にはあれを弾け、これを弾けと喚きたてる酔っ払いたち
繁盛している、そういえば聞こえはいいがマナーが悪い
「寂しい、ねぇ……」
「こんなに人はいないネ、こんな夜更けにこんな数、普通は集まらない」
「ふーん」
この喧噪、女性にとっては都合がいいもの
それはなぜか、彼女がここに来た理由が関係している
「ねえ、マスター」
「何かナ」
「今日、何かあるの」
「ここでかい?」
「そう、例えば、イベントとか」
「と、いうと?」
「そうね、ある組織の集会、とか」
「ふむ……そうだね」
女性の質問に顎に手をやり考え込むマスター
酒を飲みながら待つ女性、すると
「隣、失礼するよ」
「ん?ああ、どうぞ」
一人、男がやってくる
「いやはや、どこもかしこも酒呑みばかりだ、繁盛してるなマスター」
「そうだネ、たまにはこういう日もいい」
「そうかい」
「……あなた、変わってるわね」
「そう言うお前も、ここにはそぐわんな、どうしたんだお嬢さん? こんなところで」
「……お嬢さん」
黒髪、赤目、黒いジャケット
「気を付けなヨ、さっき一人派手に飛んだからね」
「知ってるさ、いい薬だろうよ、酔っ払いには」
身体的特徴のない、変わった男
「だがいい拳だった、喧嘩慣れしてるなお嬢さん」
「……誘ってるのかしら」
「いいや、褒めてるだけさ」
「コラコラ、あまり煽るものじゃないヨ」
「煽ってねえよ、名前を知らないんじゃこう呼ぶしかない」
飄々とした態度でまるで面識があるようにマスターと話す
「……友人なの?」
「ん? そういうわけじゃない、知り合いさ、ただのな」
それを聞いたマスターが溜息を吐く、思う所があるのだろうか
「で、お嬢さんはどうしてここに?」
「聞いて答えると?」
「なんだ、人には言えんか」
「違うわ、人をガキっていう人に答えたくないだけよ」
「名前を知らない、ならこれしかない」
「それなら聞けばいいじゃない」
「聞く理由がない、この先繋がりがあるわけじゃないんだ、なら余計な情報だ、聞く意義もない」
「……見た目だけじゃなくって中身も変わってるわ、あなた」
「そうか」
必要がないから聞かない、価値観としては変わってる
情の薄い人、女性にはそう見えるだろう
「寂しそうね、あなたの周りは」
「好きで温める理由もない、一人がいいのさ、ああ、都合がいい」
「……そう」
しばらく男を眺め、一口、二口、グラスを傾ける
なにか、男の素性を図るように視線を送る
そして一言、女性が喋る
「セラフィム」
「ん?」
「セラフィムよ、あなたの名前は?」
「……驚いた、作法の割に礼儀がなってるぞ、ちゃんと自分から名乗りやがった」
「ああ、これは驚いた、もっと野蛮な子かと……」
「殴るわよ?」
セラフィム、それが彼女の名前
紅い髪のサンクタ、少し幼い顔立ちの流れ者、それが彼女だ
「で、自己紹介してもらっていいかしら」
「まあいいか、礼儀には礼儀を返さないとな、俺の名前はストレイド、ただの流れ者だ」
「種族は?」
「秘密」
「あっそ、ならいいわ」
またグラスを傾ける、その様子をストレイドが眺める
「で、ここにいる理由は?」
「また聞くの?そんなに気になる?」
「気になる、何か目的がありそうなんでな」
「……まあ、あるけど」
「聞いていいかな? お嬢さん」
「セラフィムよ、やっぱり煽ってるでしょ」
「悪い悪い、それでセラフィム、なんでいる」
セラフィムがじっとストレイドを見つめる
目的を話すべきか、迷っているのだろう
だが彼女の目的を果たすには誰かに聞く必要がある、とあることを
「少し前、ある人に聞いたのよ」
「何を」
「今日、ここである集会が開かれると」
「ほう、誰から聞いた」
「名前は知らない、ラテラーノの人だと思うけど、変わった人だった、ずっと笑顔で、そこにいるのにいないような人」
「……へぇ」
ストレイドがまるで心当たりがあるように不敵に笑う
「ある組織が、ここに来るって、なんでもトップの人がやってくるって」
「トップ、ねぇ…………セラフィム、ここにはなんで来た」
「いや、今言ったでしょ」
「違う、言い方を変えよう、その組織に何の用だ」
「……それは、その、うん」
口ごもり、所在なさげにグラスを揺らす
そうして上着のポケットからあるものを取り出す
「これ」
「……写真、ぼろいな、誰だこれ」
「それはいいでしょ、この子を見て」
「ちっこいな、何歳だ」
「この時は一歳にもなってない」
「隣は?」
「それはいいの、で、この子……いや、この人を探してるの」
「人?」
「そう、人、この時からかなり経ってる、大きくなってるはずなの」
「へえ、随分、難しいことをしてるな」
「そうね、でも必要なのよ」
取り出したものを仕舞う
彼女の目的は人探しだ
「なんで探してるんだ、知り合いなのか」
「そう、そうね、きっと、あなたみたいな人にはわからないわ」
「そうか、ならいいいさ」
「そうね、それで今日、ここに来る組織に用があるの」
「なんで」
「決まってる、聞きに来たの」
そしてここにいる理由は、ある組織と接触するため
「この人を知ってるか、尋ねに来た」
「それ、探偵とか、そういう奴らには聞かなかったのか」
「聞いた、駄目だった」
「そうか」
「いろんなところに聞いた、それで、あの女の人に教えてもらったの」
「何を?」
「この世界に散らばる傭兵団がいると」
「ふむ」
「彼らが今日、一つ所に集まると」
世界に散らばっているならそれだけ多くの情報がある
なら、知っているかもしれない、それが彼女の企みだ
「なるほど、手段に行き詰った訳か」
「そうよ、これで駄目ならもう……」
「会えないと」
「……いえ、多分、死んでる」
「うん? なんかあったのか」
「いいえ、気にしないで」
誤魔化すようにグラスを一気に傾ける
「酔うなよ、話に来たんなら」
「酔わない、酔えないわよ、この程度じゃ」
「ザルか、いいな、奴らに混ざってきたらどうだ」
「そんな暇はない、ねえあなた、聞いていいかしら」
空になったグラスを置き、ストレイドに視線を送る
「いいぜ、言ってみろ」
「聞いた話じゃ、組織のリーダーはこんな格好らしいのよ」
「どんな?」
「……黒髪、赤目」
扉が開く音がする
「黒いジャケットに、特徴のない姿」
数人の男たちがぞろぞろ入ってくる
「いつも不敵に笑う、素性のわからぬ男」
「名前は?」
「名前は――――」
「ストレイド」
男の声がする
「お? なんだ、知らん顔だな」
「別に、知ってほしいとは思っていない」
その声はストレイドの声ではなく、先ほど入ってきた連中の一人
「安いスーツだ、何者だ?」
「知らなくていいといった」
スーツに身を包んだ複数の男たち、その先頭
どこかくたびれた印象を受ける、細身の男
「ふむ、俺が誰か、知ってるみたいだな」
「ああ、だから来た」
その手には拳銃が握られている、照準は、ストレイドに向けられている
「何用だ」
「見てわかるだろう、お前を殺しに来たんだ、傭兵」
「ふん、勇ましいな」
「傭兵、ストレイド」
「死告鳥、レイヴン」
「……いいな、良い目だ、少年」
「……随分余裕だな」
「へ? いや、ちょっと」
スーツの男たちが次々銃を抜いていく、それらは全てストレイドに向けられる
「目的は何かな」
「言った、お前の首だと」
「なるほど、懸賞金か」
「まって、まって、一回まって」
幾つもの銃口がストレイドを狙う
そんな状況で一人、慌てることなく彼は男たちを見据える
「ああ、あんたの首は億を超える、人一人殺して手に入るんだ、狙わない手はない」
「相手が何者か、理解してか」
「……ああ、理解してだ、流石にあんたも、この状況で動けないだろう」
「お願い、一回まって、聞いてほしい」
多勢に無勢、その言葉が見事に当てはまる、そんな状況
「わからんぞ、気がついたら天に昇ってるのはお前かもしれん」
「まさか、あんたの荒唐無稽な伝説を信じろと?」
「伝説だからな、信じられないのは無理もない、だがうたわれるだけの事情がある、そこまで回らんか」
「回るさ、だからこうして囲んでる」
「及第点、もう少しひねるべきだな」
「戯言を……」
絶体絶命、常人では怯えるはずのこの状況、殺意を持つ同士の凶悪な睨み合い
「……どういう状況よ、これ?」
「見ての通り、俺は狙われてるな、困った困った」
「ならもう少し困ってくれ、そう飄々とされると調子が狂う」
言いながらも手元は狂わない、その目はまっすぐストレイドを見る
「……慌てないんだな」
「慌てるような若輩じゃない、いまさらひよるような年じゃない」
ストレイドが体の向きを変える、カウンターに背をもたれ、足を組む
「いやいやいやいや、何を落ちついてるのよ、抵抗は? 傭兵なんでしょ?」
「なんだ、天下の死告鳥も諦めたのか」
「何、そういうわけじゃない」
不敵に笑う、そうしてふんぞり返る
「少年、いいことを教えてやろう」
「なんだ」
「殺すなら、声をかける前に撃て、存在を認知される前に殺せ」
「……何を言いたい」
「別に、教訓だよ、見習いへの」
「……そうか」
「お頭、周りを」
取り巻きの男がそう告げる
「もう、揃ってたのか」
「ああ、俺が最後だったんだ、集会のメンバーの」
「なんだ? こいつら」
「お、お頭! こいつら、銃を!」
ついぞ先ほどまで騒いでいた男たちが、いつのまにか静かになっていた
「……もう、なんなのよ」
彼らは皆、立ち上がっている
その手にはグラスも酒瓶も、握られてはいない
「これが、噂の傭兵団か」
「そうだ、まあ好きで率いてるわけじゃないがな、困った話だ」
代わりに武器が握られている、人を殺す、獲物が握られている
スーツの男たちを囲むように、切っ先を、銃口を向けている
何十人だろう、いや、何百かもしれない、この店の傭兵すべてがスーツの男たちに敵対している
「……渡り鳥、これほどまでの規模だったとは」
「これ、全部、そうなのね」
「ああ、人はこいつらを、
ある傭兵を筆頭に動く、謎の多い傭兵団
あらゆる戦場に現れ終局に導く、鴉の集団
「ようこそ、ネストへ」
死告鳥に続く、彼の私兵
「諸君、派手にいこう」
The Encounter
意味はなんでしょう、エロい意味ではないです、残念ながら
状況説明が少ない
これが、ボキャブラリーというものですか、国語をやり直すべきでしょうね
え?オリキャラ増えた?武装したまま街歩いてることになってる?
大丈夫、ラテラーノ人だからで片付く、きっと