アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里   作:Thousand.Rex

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予感

   

    龍門市街正門付近

 

 

リスカムとフランカはゲートから少し離れた位置に待機していた

 

「………………」

 

リスカムは何も言わずに周囲を見回す、敵らしき人物は何処にも見当たらない

その横では、フランカも同じように周りを見渡している

 

「来ないわね~」

 

退屈なのだろう、フランカがぼやき始める

 

「作戦中ですよ、私語は慎んでください」

 

リスカムが注意する

 

「でもそれらしいのは見当たらないのよ? このまま何もせずに終わるのはさすがにごめんよ」

 

フランカの言う通り、先ほどから警戒しているが怪しい集団はおろか、挙動不審の人物も現れない

そもそもこの作戦事態、真偽のほども分らない情報をもとに展開されている、何も起きない可能性の方が高いだろう

 

「それにほら!!」

 

フランカがリスカムに周りを見るよう促す

 

「あっちに屋台、こっちにも屋台、おいしそうなものが目の前にあるのに食べられないだなんて酷い話だと思わない?」

 

付近には、たい焼きや綿あめ、様々な食べ物を売りに出している出店が多くたっていた

というのも、今日はどうやら小さなお祭りが開催されているらしい

 

「確かに、興味を惹かれるものが多いですね」

 

本来、龍門は移動都市である、今回のように狙われているかもしれない状況ならばさっさと移動してしまえばいい話である

だが、ここには人が住んでいる、それも何十、何百万人の規模で生活している

龍門単体のリソースではとても賄えない、定期的に外から物資を供給する必要がある

今日は物資搬送のために龍門自体が停舶しているのだ

入ってきた物資の中には軍備品や生活用品、様々なものがある、その中には新鮮な食料も

さらに足が止まっているということは、決まった場所に龍門が存在しているということ

龍門自体、ほかの都市に比べてかなり発展しており観光スポットしても有名だ

グルメスポットから美麗な景色、わざわざ外からやってくるだけの価値はある

商人たちもそれにかこつけて今日のような日に屋台を出すものが多い

人通りもかなり多くなる、多少怪しい人物が侵入してもバレはしない

 

何かを企むにはちょうどいいのかもしれない

 

「ねぇ~リスカム~、少しぐらい買ってもいいでしょう~?」

 

「駄目です」

 

フランカがそんなことを言ってくる、リスカムが即座に却下する

 

「ちょっとだけ、一個だけだから、いいでしょ?」

 

「駄目です」

 

食い下がるフランカ、折れぬリスカム

正直、少しぐらいはいいだろうとはリスカムも考えている

だが今回、まともな武装をしているのはリスカムとフランカだけなのだ

というのも、来るであろう偵察隊に感づかれないためには別動隊は市民に扮す必要がある

警察ならともかく、一般市民は武器を持たない、槍だなんだと持ち歩いていては目立ってしまう

そのため、一部を除き本来の獲物ではなく、携帯でき、周囲の人々の目に入らない収縮する警棒を持ち歩いている者が大半だ

いざ戦闘になったとき、使い慣れた武器を持っている自分たちの存在は自ずと大きくなる

気を抜いている余裕はない

 

「だめ~?」

 

「駄目です」

 

「もう!! これだから優等生ってのは・・・」

 

フランカが文句をたれる、自分だって我慢しているのだ

 

「あんまりお堅いと、男が寄ってこないわよ?」

 

「別に、構いません」

 

まったくもう、とフランカがプンプンしているのを見ながら視線を回す、周囲に変化はない

この調子だと本当に何も起きず終わる気がしてきてしまう、こんなことで一日が過ぎていくのさすがにもったいない

リスカムは小さく溜息をつき、抗議するフランカに話しかける

 

「わかりました、ドクターとアーミヤさんからも許可は出ています。買ってもいいですよ」

 

「やった!!」

 

いうがいなやあたりを付けていたのだろうか、一直線に屋台に向かうフランカ

自分の分も頼んでおけばよかっただろうか、そんなことを考えながら事の発端を思い起こす

 

謎の計画書、いつの間にか倉庫にあったと言っていた、真っ赤なインクに塗れ目立っていたとも

 

赤いインク、独特なにおいがしていたらしい、唐辛子を鼻で食わされているような感覚に陥る類のもの

 

「………………」

 

リスカムには覚えのあるものだった、それも嫌というほどに

一連の出来事について考える、すると

 

『こちらメランサ、お伝えしたいことがあるのですが』

 

通信が入ってくる、

 

「こちらリスカム、何か問題でも」

 

『こちらフェン、どうかしましたか?』

 

リスカムと同時に、フェンが即座に反応する、何かあったのだろうか

メランサが話し出す

 

『いえ、その、迷子の連絡といいますか、何と言いますか…………』

 

「迷子、ですか」

 

『はい、保護者とはぐれてしまったらしくて』

 

こんな日だ、迷子の一人や二人、出てしまうだろう

 

『保護者の特徴は何ですか?』

 

フェンが手早く話を続ける

 

『えと、それなんですが」

 

『はい』

 

メランサがゆっくり話し始める

 

『男の人で』

 

「『はい』」

 

『背がそこそこ高く』

 

「『はい』」

 

『黒いジャケットを着ていて』

 

「『はい』」

 

『黒髪で』

 

「『はい』」

 

『赤い瞳で』

 

「『はい』」

 

『変な顔って』

 

『はい?』

 

フェンが素っ頓狂な声をあげた、まあ無理もない

 

「………………」

 

だが、リスカムは何も言わない

 

『えっと、変な顔っていうのは、迷子の子が言っていることで……』

 

『あっ、はいそうですか、そうですよね、ははは…………』

 

「………………」

 

変な顔、なぜだかいやに引っかかる

 

『あの、リスカムさん?』

 

返事をしないリスカムを不思議に思いメランサが声をかける

 

『その、ふざけているわけではなくて』

 

メランサが事情を説明しようとする

 

『子供の言うことなので、本気にはしなくていいと――』

 

「種族は」

 

『へ?』

 

「種族は、何です」

 

リスカムが言い、確認しているのかメランサの無線から小さく話し声が聞こえてくる

 

『えっとその、わからない、と』

 

『わからない? どういうことです?』

 

『えと、ちょっと待ってください』

 

もう一度話し声が聞こえてくる

 

『その、何もついてないと、』

 

『耳もしっぽも、ですか?』

 

『はい』

 

「…………そうですか」

 

特徴のない姿、黒髪に赤目、変な顔

リスカムには心当たりがある

 

『わかりました。あと迷子の子の特徴も教えてくれませんか?』

 

『あ、はい、わかりました』

 

だがここにいるとは思えない、いや、あり得るかもしれない

リスカムは一人、もしもの可能性を考える

無線からは、迷子の話が流れている

それを聞き流しながら、ある男の顔を思い出す

 

常日頃から消えることのなかった、苦しそうな表情

自分には、どうすることもできなかった

 

作戦のことも忘れ、考え込んでしまう、すると突然

 

「リスカム!!」

 

「っ!!」

 

自分の名を呼ぶ声で我に返る、目の前には不安そうな顔をするフランカが

 

「大丈夫? なんだか上の空みたいだったけど…………」

 

「ああ、いえ、大丈夫、問題ありません」

 

フランカをみる、手には何も持っていない

 

「…………何か買いに行ったのでは?」

 

「そうなんだけど、通信中にあなたがいきなり黙りこくったから、なにかあったのかと思って」

 

どうやら心配させてしまったらしい

 

「すいません、少し考え事をしていたんですが、その、熱中してしまって」

 

「へぇ、珍しいわね。あなたが仕事中にそんなことするなんて」

 

そうだ、自分らしくない、今は作戦中なのだ

思考を元に戻す、やるべきことをやらなければ

 

『こちらフェン、先ほどの保護者の方、見つかりました』

 

無線からそんな声が聞こえる

それが誰か気になったが、自分の役割を忘れてはいけない

そんなことを考えながら周囲を見渡す

 

「……む」

 

「あら」

 

すると視線がある一団で止まる、フランカも見つけたらしい

三人組の男たち、先頭を歩く者はニット帽をかぶっている

そのグループは観光客というには、嫌に静かだ

リスカム達は正門近くで待機している、つまり彼らは龍門に入ってきたばかりということだ

その割には集団内で会話をしているように見えない、この人だかりに対する感想の一つや二つ、話していてもおかしくないはず

ニット帽がこちらを見ると、足を止める

 

「リスカム」

 

「ええ」

 

ニット帽が後ろの二人に何か言っている、そして、

BSWの制服をきた二人を避ける様に、あからさまに動きを変える

 

「ビンゴです」

 

標的がきた、リスカムは無線に手を伸ばす




今回は前二話と同時進行の話になります、
前述したとおり無理やりなところがありますがご了承ください

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