アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里   作:Thousand.Rex

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Dark Raven

追いかけっこが始まって数十分

 

「はあ、はあ、はあ、はあ…………」

 

「ふむ、ワイルドキャットは良い仕事をしてくれる」

 

二人は集団から抜け出すことに成功していた

 

「はあ、よし、あいつらはこっちを見失った、今の内に遠くに――」

 

そう言ってセラフィムが更に距離を離そうと動き

 

「駄目だ、ここから歩き」

 

「はっ!? なんでよ!?」

 

ストレイドに拒否される

 

「なんでって、ゲームだからだよ」

 

「説明になってない!」

 

セラフィムとしてはさっさと逃げたい、これが本心だ

元々荒事には馴れていない、あんな大勢に追いかけられるなど初めての事なのだ

ここでのんびりしている暇はない、優位に立てるように動かねば捕まってしまう

 

「説明、いるか?」

 

「ええ、お願い、じゃないと殴る」

 

「血気盛んだねえ、殴り合いにした方が楽しかったかもしれん」

 

だがこの男は悠長に構えているつもりらしい

意味がわからない、自分が死ぬかもしれないというのに何故そんな余裕でいられるのか

 

「さっき言ったろ、これはゲームだ」

 

「……闇のゲームか何か?」

 

「いや、そこまでのものじゃない」

 

「命賭けてるのに?」

 

セラフィムもゲームのルールは理解している

とても常識から離れたルール、非情で無情、そんなもの

彼がそんな形式にした理由が彼女にはわからない

 

「なんで殺す選択肢になるのよ?」

 

「なんでって、丁度いいからだよ」

 

「何が」

 

「邪魔者の排除に」

 

「……何? 私にやらせようってわけ?」

 

「そうだな、そういうことだ」

 

その言葉を額面通りに受け取るなら、代わりに始末させようという事

 

「………………!」

 

彼女の心に苛立ちが募る、これは求めていた展開ではない

彼女はただ大切な人の生死を知りたかっただけ、それだけの話だった

それが何故こんな事になっているのか

 

「まあ怒るなよ、必ずしも殺せって訳じゃないんだから」

 

「……それが不正解なら、負けなんでしょ」

 

「ああ、さっきの話はお流れだ」

 

自分の為に人を殺せ

 

ストレイドの提示したルールはそういう事

知りたい情報の為、故も知らぬ人を殺せという事

 

そんなもの、受け入れられるほど彼女の心は壊れていない

 

「狂ってる、あなたは」

 

「狂ってる、俺はな」

 

世界で起こる紛争に現れ、終結に導く組織

無駄死にを出さぬ為、自ら火中に飛び込む火消しの風

それが、レイヴンズネスト、彼女はそう聞いていた

被害が増えぬよう最善と最適を組み合わせた策で襲い掛かる正義の味方

救われるべき誰かを想う、そんな集団だと

 

「よくも付いていけるわね、あの人達」

 

「そうだな、勝手に付いてくる、暇な奴らだ」

 

まるで義賊のような、夢物語がそのまま出てきたような組織

 

「…………クソ」

 

「こら、下品な事を言うな」

 

だから来たのだ、素性のわからぬ組織でも信念があるのだと

 

なら、きっと人の願いに応えてくれると

 

「……クソッ!」

 

「ご立腹だな、勝手に希望でも抱いてたのか」

 

この男の言う通り、勝手な希望

なんの根拠もない独りよがりなもの、ここで彼を責める資格はない

だが彼女は人、何の歪みもなく、淀みのない普通の人

ここで納得できるほど出来てはいない

 

「……あなた達に頼ったのは間違いだったわ」

 

「ああ、お前の中でそうなら、間違いだ」

 

怒りが滲み出る、飲み込んでいられるほど小さい怒りでは無いのだ

彼女は確かに夢を見た、そうするだけの道を歩んできた

その道程を、微かな希望を否定された

そんな何とも言えない感情が彼女を包んでいく

 

「…………この勝負、私は降りる」

 

「ほう、そうか」

 

勝負の辞退、彼女はそれを選んだ

ここで人殺しに加担するようなら引いた方がいい

それは彼女の善性の現れだろう、自身の勝手な事情で人を殺すなど出来ないと

 

「私は狂人じゃない、あなた達ネストのような、殺人鬼とは違う」

 

「そうか」

 

ストレイドから離れ、この場から消えようとする

 

正しい決断だ、本来ならここで引くことは許される

 

「……何よ」

 

「いやなに、大事な事を忘れてるようなんでな」

 

「何を――」

 

この男の前でなければ

 

「――――っ!」

 

ストレイドが前に立つ、彼女が逃げれぬよう、前に

 

「俺は言ったぞ、受けるなら、開示する」

 

その手には銃が握られていた

 

「……口封じかしら」

 

「いや、ルール違反は許さない性質なんだ」

 

照準はセラフィムに向いている

 

「セラフィム、お前は理解していたな、逃げ場はないと」

 

「傲慢ね、自分の為なら何をしても許すタイプかしら」

 

「ああ、そんな感じだ」

 

逃げ出すことは許さない、これが彼の意思だ

 

「そうまでして殺しがしたいなら自分でやったらどう?」

 

「お前が受けなきゃ、自分で殺ってた」

 

「なら――」

 

「だがお前は受けた」

 

「……………………」

 

「お前の意思で、乗ることを決めた」

 

「……何が言いたいの」

 

セラフィムの反応に、銃を下す

 

「何、責任を取れ、それだけだ」

 

「なんのよ」

 

「この騒動の」

 

「あなたが始めたことでしょ」

 

「そうだな、だが俺はちゃんと拒否権は用意しておいたぞ」

 

「……………………」

 

「受けるかどうか、確認はした。なんなら念も押した」

 

「……なんの」

 

「危険性の」

 

「いつ」

 

「秘密と言ったろ」

 

「それのどこが念よ、忠告にもならない」

 

「なるさ」

 

銃を仕舞う、まっすぐにセラフィムを見据える

 

「セラフィム、秘密とはいつも危険を纏うものだ」

 

「……危険?」

 

「そう、隠さなくてはいけない真実、人目に見せていけない悪心」

 

「……何? あなたの価値観じゃないの、そんなものを聞かされる訳?」

 

「まさか、俺は客観的な意見を述べているだけ」

 

「どこがよ、全ての秘密が危ういものな訳がないわ」

 

「ほう、例えば」

 

「……そうね、財宝のような、甘い物」

 

「他は」

 

「…………誰かの夢になってくれる、優しい物」

 

「ふむ、随分人らしい、まともな意見だ」

 

「笑うの? 下らないと否定する?」

 

「いや、笑わない」

 

「……なら、その憎たらしい笑みを消して」

 

怒りに震えるセラフィム、その視線の先ではストレイドが笑っている

どこか不敵な、何を考えているのかわからぬ笑み

邪悪に塗れた黒い男、唆すように、言葉を続ける

 

「セラフィム、お前は噂で来た、そう言ったな」

 

「ええ、不思議な組織がいる、そう聞いて」

 

「なら、それが間違いだ」

 

「……でしょうね」

 

彼女がネストを頼ったのは噂で聞いたから

世界に散らばる渡り鳥、目的のわからぬ傭兵団

わかっているのは、戦争を終わらせようとする、変わった思考

その頂点には、死を告げる鳥がいるという

 

そもそも存在の仕方からおかしいのだ

戦争を否定する割には導くのが殺しの権化、彼らが争いを止めるならその長に目が向けられる

真っ先に淘汰されるべきはこの男、その筈なのだ

 

「不明瞭な部分が多いと、思わなかったか」

 

「ええ、随分秘密が多い、そう思ってはいた」

 

なのに、彼に刃は向けられない、代変わりしたという話すら出てこない

いつの間にか囁かれるようになった時から、何も変わらない

 

「それが、その秘密の存在自体が、忠告なんだよ」

 

「関われば、只では済まない、そういう類の秘密だった訳?」

 

「そ、忠告などとうにしている、この世界全てに向けている」

 

存在だけしか認知されていない不明瞭な組織、それがレイヴンズネスト

 

その真意は、闇より暗いベールに包まれている

 

「……私は、随分愚かな真似をしたようね」

 

「ああ、随分デカい賭けに出た、大したもんだ」

 

彼を睨み付ける、ストレイドは、動じない

 

「さて、否定されてばかりじゃやる気も失せるだろう、細かなルール説明をしてやる」

 

「……いまさらしても遅いわ」

 

「まあまあ、聞けよ、損はしない」

 

ストレイドが指をさす、セラフィムの遥か後ろ

そこにはスーツの男達が近づいて来ている

 

「まず一つ、奴らの勝利条件は俺とお前のどちらかが捕まるか」

 

「捕まったら、あなたが殺される」

 

「ああ、お前が死ぬかは奴らの機嫌次第だ。殺されることはまずないだろう」

 

それが彼女の敗北条件、勝負に降りるといった以上ここで投降しすればストレイドだけが犠牲になる

ある意味では合理的、このある種の裏切りに対する報復にもなる

ただ、それが意味することは、結局変わらない

殺す者が違うだけ、殺し方が違うだけ

結局選ぶのは、彼女なのだ

 

「……意地悪ね、あなた」

 

「よく言われる、さて次はお前の勝利条件だ」

 

セラフィムに指をさす

 

「お前の勝利条件は奴らのリーダーに向けて引き金を引く、解答権は一度だけ」

 

「殺すかどうか、それで決めろと」

 

「そうだ、決定権は、お前にある」

 

「正しい回答はあなたの胸の内、ハードにも程がある」

 

「そうでもない」

 

手を下す、説明は終了したようだ

 

「……どっちに転んでも最悪よ」

 

「ああ、回答次第じゃそうなる」

 

この勝負、どのみち救われない、どう選んでも碌なことにならない

負ければ言わずもがな、彼は死に、彼女の捜し人は非現実的なことになる

勝てば、撃てば、人が死ぬ、撃たなくても、その後の展開では撃ちあいが始まるかもしれない

そうなれば負けるよりも人が死ぬ

これは重い選択だ、常人が選べるものではない

 

彼女には、荷が重い

 

それを察したのか、ストレイドが話し出す

 

「萎えてるな」

 

「……萎えもするわ」

 

「なら、ちょっとだけやる気にさせてやろう」

 

「…………何を」

 

顎で後ろの集団を指し示す

 

「奴らが俺を殺しに来たのは、大金の為」

 

「……………………」

 

「金の為に、殺そうとしてる。そこにはどんな理念があるだろうな」

 

「……あなたのような、碌でもないものよ」

 

「そうだな、だがお前はどうだ」

 

「…………私?」

 

「ああ、お前は何の為に来た、何を成しに来た」

 

彼女がここに来た理由、それは

 

「想い人を捜しに来た、違うか」

 

大切な人を、捜しに来た

 

「……恋人ではないわ」

 

「そうか、でも、想ってるんだろう?」

 

「ええ、それだけ、大事な繋がりなの」

 

「それを、そんな奴らに踏みにじられたいか」

 

「……………………」

 

「金の亡者に、断たれたいか」

 

「……まさか」

 

セラフィムが一度後ろを振り向く、そこには追手がいる

 

「どうする、まだ走るか」

 

「……そうするしか、今は出来ないわ」

 

前に向き直る、正面を見据える

 

「なら、行こうじゃないか」

 

「そうね、まずは考える時間を作りたい」

 

折れる気はない、降りる気はない

 

彼女は、戦うつもりらしい

 

「いいだろう、楽しくなってきた」

 

「あなただけよ」

 

そうして動き出そうとして

 

「ああ、セラフィム、一つだけ訂正だ」

 

「何をよ」

 

ストレイドが少し、強い口調で言う

 

「確かに俺は殺人鬼だ」

 

「……そう」

 

「だが、奴らは違う」

 

「奴ら?」

 

「ああ、渡り鳥、そう呼ばれる奴らはけして無情な人殺しじゃない」

 

「……………………」

 

「ネストに罪人は、一人だけだ」

 

「それは、誰」

 

「決まってる、渡り鳥の群れを先導する者」

 

「……レイヴン」

 

「そうだ、渡り鳥の導き手が必ずしも、渡り鳥とは限らない」

 

「なら、なんだって言うの」

 

「ただの鳥だよ、死を告げる、凶兆」

 

「……………………」

 

「何もかもを殺し尽す、死の代弁者」

 

 

 

 

「黒い鳥、渡り鳥の、紛い物だ」

 




ちなみにRaven'Nest自体は短いです(予定)
ただこれが終わるとあっちのギャグ時空がレパートリーが増えます
選択肢が増えます、私が楽になる


アークナイツとACのクロスオーバー、増えませんかね……

艦COREみたいな感じで、ACナイツとか

…………無理か


前回の! ACじゃない用語解説ー!

 ムーンライター

噛み砕いて言うとフリーター
正確には二重就業者、本業の後深夜から早朝までの間に副業をこなす人
わかり易い例を挙げると、深夜バイトする学生


 三連装の銃

筆者の趣味、残念ながらACの代物ではない
ほにゃららハザードに出てくる三連射ショットガン、フラグ弾が撃てるかは不明
別に筆者がバイオ好きという訳ではない、銃のデザインがドストライクだっただけ
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