アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
「「うおぉぉぉぉぉぉ!!」」
ストレイドとチェンは走っていた
「「ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
夜の龍門市街を、街並みを
「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
とても普段の二人からは想像できない奇声をあげて
何故そんなことになっているのか、彼らの後方から迫りくるモノが雄弁に物語っている
『キチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチ』
そこには何とも言えないフォルムの虫のようなナニカが大量に迫っていた
橙と青の二色の虫、片方は羽根をはやして空を飛び、もう片方はピョンピョン跳ねながら猛追してくる、虫嫌いの人が見たら卒倒間違いなしである
「ええい! これだからあの阿保は好きじゃないんだ!」
必死に逃げ惑いながらストレイドがこの場にいない誰かの悪態をつく
「傭兵! どうにかしろ! アレは貴様関連の生き物だろう!」
その隣では全身真緑のままのチェンがいる
二人共どうして逃げているのか
そこにはこんな理由がある
まずチェンの場合、先ほど肉団子に埋もれた際の記憶が原因だ
密閉された空間で、なのに怪しく光る数多の眼、そこかしこから聞こえてくる虫特有の間接音
そして何よりの問題は、彼女についている液体
これは一種のフェロモンであり、同族を引き寄せる効果がある、だがその効果は引き寄せるだけで終わりではない
そもそもフェロモンとは特有の行動を促す物、食欲然り睡眠欲しかり、中には攻撃態勢を取らせる為の物もある
この液体もその例に漏れずある行動を誘発させる、ではそれは何か
ここで最初に彼女に引っ付いて炸裂したナニカについて解説する
彼らはAMIDAと呼ばれるキサラギちゃんがその類稀なる天才的な頭脳によって爆誕させた愛玩昆虫である、なんでもオリジムシと爆弾蜘蛛のDNAを掛け合わせてプロトタイプを作成し、長い長い年月と愛情を注いで生み出したとのこと
そこには確かに情熱が存在している、科学者としては理想的な姿勢なのだ
だが生まれたモノは酷く臆病な、防衛行動で何故か死を選ぶ生き物だった、どうしてこうなった
そして当然のごとくこれらには雌雄が存在する
つまり、繁殖するのだ、ちなみに橙が雄、青が雌
彼らは子孫を残し繁栄する、生き物である以上それは当然の事
なのに自爆などと言う謎の防衛行動を編み出した、何故か
そう、自爆は防衛行動なのだ
防衛行動とは、生存本能の表れでもある
そしてこの時に飛散する液体こそ、この自爆の真髄である
この液体は周囲の同族をかき集め、発情させるという特徴がある
発情させるのである
つまり、何が言いたいかと言うと
「クソ……とんでもない光景を見せられた……」
彼女は肉団子の中で生命の神秘を見せつけられたという事
しかも彼らは行為の後、雌は雄を捕食する
そこにあったのはAMIDAという生き物の一生である
一から十まで脳裏に焼き付いていることだろう
なおストレイドが逃げている理由は単純に見た目と生態が理解できないから
不可解な事象を嫌う彼らしくはある、まあ性能実験とかこつけて協力させられて同じ目にあっているのだが
辟易としながら出来る限りの速力で走る二人、その真後ろには肉壁が迫ってきている
足を少しでも止めれば先ほどの悪夢が繰り返されるだろう、二人の足は止まらない
だがいつまでも逃げている訳にもいかないのだ、現時点で二人にこの集団を振り切る術がない
「おいチェン! さっきの光波で消し飛ばせないのか!」
つい先ほどのこの状況に比べて平和だった鬼ごっこを思い出したのか、ストレイドはチェンが見せたアーツに頼る、が
「ふざけるな! 誰があんなモノを斬るか!」
一蹴される、そもそも赤霄事態が世に数本しかない貴重な剣だ、汚物に塗れさせるようなことはしたくないのだろう
続けてチェンが代替案を言うようにストレイドに聞く
「そうだ! 貴様早撃ちが得意だろう! 全て撃て!」
しかし
「今日は一挺しか持ってないんだよ! たかが十五発のマガジンで捌けると思うな!」
「三十あっても足りないだろ!」
残念ながら今日の彼はオフである、奇襲されたのは彼の側だという事を忘れてはいけない
そもそもいかに人知を超えた早撃ちとてリロードは必要なのだ、後ろから来ている数百の塊には拳銃では太刀打ちできない
結局打開案は浮かばぬまま逃げ続ける、だがこのままでは消耗するだけ、いつかは追いつかれるだろう
「チッ……仕方ないな」
ストレイドは一度チェンを見る
「なんだ! いい案でも浮かんだのか」
「ああ、とてもいい案がある」
「よし聞かせろ! 事態は一刻を争う!」
案とやらに一瞬目を輝かせたチェン、だがそれはすぐに曇ることになる
「おい、傭兵……どうした?」
何も言わず、ただ申し訳なさそうな顔をしているストレイドに違和感を感じたのか、チェンが不安交じりに問いかける
しかしてその返答は
「すまん!!」
「なっ……!? 貴様ぁ!!」
騙して悪いがだった
突如として彼の体から黒い火の粉が燃え上がる、この光は一体何か、彼女は良く知っている
少しづつ、だが確かに彼が加速していく、火の粉の量が増すにつれ距離が離されて行く
「さらばだー!!」
そして彼がひと際強く地を蹴り駆けだそうとした時
「逃がすかぁ!!」
「おぶぅぅ!?」
チェンが勢いよくタックルをかます
それはストレイドの腰付近に命中し、そのまま彼に抱き着き拘束する
「やめろ馬鹿っ! 今は争ってる状況じゃねえだろ!」
「黙れ! この場から一人だけ逃げようとした奴が何を言う!」
彼はそのまま前のめりに倒れて転倒する、チェンは手を解かずに捉え続ける
「離せ! あんな虫共に二度も包まれてたまるか!」
「フハハハ! もう逃げられんな……! 貴様だけでも道連れにしてやる!」
「じ、冗談じゃ!?」
ただの足の引っ張り合いである
そして今、二人の足は止まっている
「あ、おい! 早く離せ! 来てる来てる! めっちゃ来てる!」
「ならさっさと立て! そのまま私も連れて行け!」
「じゃあ離せ! 立てねえんだよ!」
そんな二人に迫りくるのは、無数の羽音と
「「やばいやばいやばいやばい!!」」
幾つもの飛び跳ねる音
「「イヤァァァァァァァァ!!」」
チェンにしては珍しい女の子のような悲鳴と、ちょっと裏返ったストレイドの悲鳴が辺りに響く
哀れ、そのまま二人共肉に呑まれていくだろう
その時、奇跡が起きた
「「……へ?」」
群れが二人に接触する前に爆散する
一匹ずつ、だが連鎖的に、それでも無作為に
「なんだ、何が起きて……」
倒れ込んだまま次々に爆発していくナニカを眺めるチェン
そして爆発と同時に別の音が鳴っていることに気づく
まるで空気が抜けているような、パスパスとした音
小刻みに、高速で鳴り続けている
「……お、おぉ、助かった……」
ストレイドが安堵の息を吐く、ナニカの群れはどんどん勢力を失くしていく
そして、一匹残らず駆逐される
「……これは、銃撃か?」
周囲に散らばる肉片に紛れて落ちている欠片に視線を落とす
ひしゃげてはいるが、それは確かに銃弾だった
「団長ー! ご無事ですか!」
続けて誰かの声が聞こえてくる、位置的には群れの反対、進行方向からだ
声の主へと目を向ける、そこには
「……誰だ」
三人の人影があった、ペッローの少年と
「すまない、遅くなった」
リーベリの男と
「……まったく、彼女もよくこんな生き物を作ったものだ」
ウルサスの男
各々は手に長銃を持っている、その先端には小さな筒が付いている
その穴からは硝煙が、群れを駆逐したのはこの三人だろう
「…………」
突然現れた三人に注意の目を向けるチェン、その傍に三人がやってくる
二人も立ち上がって態勢を整える
「団長、だいじょうぶですか?」
「おぉ、おぉ、よくやった。よくやったぞアップルボーイ!」
「え? うわっ、ちょ、団長、そんな激しく撫でないで……!」
アップルボーイと呼ばれたペッローは何故か感激しているストレイドに無茶苦茶に撫でまわされている、どうやら相当怖かったらしい
「君は変わらないな、そんなにアレが嫌いか」
「ああ、嫌いだよジノーヴィ、あんなモノに愛着がわくのはキサラギとお前ぐらいだ」
「いや、私も好きではないが」
「なんだ、小さい生き物が好きじゃなかったか」
「あれは、管轄外だ」
ジノーヴィと呼ばれたウルサスはストレイドと談笑を始めてしまう
一人事態を把握できないチェンのもとにリーベリがやってくる
「やあ、怪我はないか?」
「……まあ、怪我はない」
「それは良かった、では次はこれを」
そう言って手渡してきたのは
「……ケープ?」
ケープコートだった、ちょうど彼女一人を包めるほどの大きさのコート
「それを羽織ってくれ、簡単な匂い消しがかけられている、これで次波は防げるだろう」
次波と聞いてすぐに羽織る、あの波にまた追われるのは御免被りたい
「……感謝する」
そこまでして彼らが何者か気づく、この男達は恐らく
「問題ない、大体悪いのはあの男だからな」
「そうか、苦労しているようだな」
「ああ、だがそういうものだよ、割り切ってしまった」
例の組織の一員だろう、でなければこうも手際は良くない
「名乗りが遅くなったな、私はフォグシャドウ、ストレイドと同じ雇われだよ」
「そうか、私はチェン、立場に関しては……」
「近衛局、特別督察隊のトップ、だろう?」
「……そうだ、奴から聞いたのか?」
その証拠に話していない事柄を知っている
「ああ、特に君に関してはよく聞いている。見込みがあると」
「……嫌に上から目線だな、奴は私を例の組織に引き入れるつもりなのか?」
「そんなつもりはないさ、ただの奴の君への評価だよ」
特段敵意は見せてこない、それどころか温厚に接してくる
懐柔するつもりではないのだろう、単純に、普通に接してくる
「…………」
「なんだ、どうかしたか?」
「……いや、こうもまともな傭兵など久しぶりに見たと思ってな」
情報が筒抜けになっていたことを除けば随分穏やかに接してくる
何か皮肉を言うでもなく、ちょっかいを出してくることもない
「随分、おとなしいな」
「何の事だ?」
「……あの男なら、既に五回は私を怒らせているぞ」
五回とは、この少しの間の問答でどれだけ彼女の琴線に触れたかどうか、という事
ストレイドなら、まず開幕煽り、次に軟派な事を言い、断れば皮肉で返事が飛んでくる
そこに多少の苛立ちを見せればそこを的確に突いてきて、終いには何かしらの事案を起こして逃げていく、それがチェンとストレイドの日常会話である
「傭兵とは、無礼なのが売りだと思っていた」
「まさか、誰も彼も奴のように皮肉屋ではない。常識人だって存在してるよ」
「……そう、みたいだな」
少なくとも、今目の前にいる傭兵は常識人だ
礼を欠かさぬ、けして人を嘲笑ぬ模範的な好青年だ、こうもまともな人を見たのは久方ぶりだ
「どうだフォグシャドウ、龍門警察に来ないか」
「すまない、私に法の番人は似合わないよ」
あまりの衝撃についスカウトしてしまう、断られたが
「よーしよし、よくやったぞアップルボーイ」
「……えへへへ」
「和んでいる場合か? やるべきことはあるだろうに」
仕方なく勧誘は諦めストレイドの方へと視線を伸ばす
そこにはペッローの少年と戯れる男がいる
「……君たちは、アイツを助けに来たんだな?」
「ああ、といっても元々あの虫の駆除に来た部分が大きいが」
「なんだ、専属の世話係か?」
「いや、ただの連帯責任だ。あんなモノ、人目に晒すわけにはいかないからな」
話せば話すほど常識人である、どこかの一人で逃げようとした男とは違う
だがここで警戒を解くわけにはいかない、例の組織はあくまで注意すべき存在なのだ
「……ふむ」
それに、都合はいいのかもしれない
「フォグシャドウ、聞きたいことがある」
「ん? ああ、私で答えられる範囲なら」
「ありがとう、では教えくれ」
元々ホシグマに託していた任務だったが、彼女が必ず成果を持って帰ってくるとは限らない
聞けるなら聞いておいた方がいいだろう、ずっと彼女の中で渦巻いていた疑問をぶつけてみる
「レイヴンズネストとは、何者だ」
その問いは、例の組織の正体に迫るものだった
「……難しい質問だな」
質問を聞き、一人静かに悩み始めるフォグシャドウ
「ほーらジノーヴィ、ここにチビのコスプレプロマイドがあるぞー」
「何? 見せてくれ」
「駄目だな、見せてほしけりゃちょいと頼みを聞いてくれ」
「……面倒事ではないだろうな」
「残念、面倒事だ」
「……なら、悪いが――――」
「あ、ちなみにメイド服とかお雛様とか、結構色んな服を着てるらしいぞ」
「――いいだろう、今この瞬間は、小さき存在こそがすべてだ!」
その長と考えられる人物はあちらで何か話し込んでいる
視線もこちらには向いていない、気づいてはいないようだ
「レイヴンズネストが世間にどう知れ渡っているかは知っている。まるで義賊のような、戦争を嫌う組織だと」
「そうだな、世間一般ではそのようなものだ」
正直ストレイドに聞いてもいい事柄ではある
ただ、違和感があったのだ
「君達は正義の味方のような認識だ。とても傭兵がするようなことではない」
「その通りだ、傭兵が自分から食い扶持を潰していくなど、馬鹿な行為だよ」
傭兵とは本来戦場があってこそ輝くものだ、なのに戦争を嫌うなど、ましてや止めにかかるなど、おかしな話である
「どうしてそんな行動方針なんだ」
「……さて、どう答えるべきかな」
フォグシャドウは困った様子でチェンを見る、彼は随分真摯な人間だ
恐らく、答えるには難しい問いだったのかもしれない
ならば少し質問の角度を変えよう、そう聞き返そうとした時だった
「フォグシャドウ様、その質問には私が答えます」
一人の女性の声が響いた
「む、いいのか? これはかなり難しい話だぞ?」
「ええ、構いません。それに傭兵が話すよりも私のような身分の者が話せば信憑性も増すでしょう」
路地の木陰から出てきた人影を見る、そこにはフェリーンの少女がいた
「しかしだな、ウォルコット嬢」
「大丈夫です、近衛局だけでどうこうできる話でもありません。事実を知ったとしてもしばらくは動きだせないでしょう」
「……不穏だな、何かマズイ企みでもしているのか」
美人、という単語が似合う少女だろう
精巧な顔立ちに穏やかな声、どこか上品な気質を感じさせる所作
上からローブを羽織って仔細は見えないが、レースがあしらわれた高そうなドレスがちらちらと見えている
正直、龍門のこの裏路地には似合わぬ少女だ
「ええ、していますよ。それが私達がいる意味ですから」
「意味? 何を言っている」
気品ばかりを感じさせる出で立ちのフェリーン、なのに人形じみた感覚がするのは気のせいか
それに、異様なのは見た目だけではない
「そもそも君のような人がなぜここにいる。それに、ウォルコットは確か……」
「はい、ヴィクトリア王国にて貴族として振る舞わせていただいております。ウォルコット子爵の一人娘のウォルコット、と申します」
「……名前は言わないのか」
「はい、この場での私はネストのウォルコットでありますので」
高貴な風を漂わせながらお淑やかに笑う少女、その正体は、ヴィクトリアの貴族
「わからないな、本来貴族の外出には護衛が付くはずだが」
「そうですね、ですが私には不要です。己の身は己で守れます」
スカートを軽くたくし上げ、細身の足を見せてくる、そこには
「……ナイフ、それも暗器の類か」
「はい、銃のようなものは目立ちますので、こうして隠せるものがこれしかないのですよ」
太ももあたりに付けられたホルスター、そこに差し込まれた数本のナイフ
そしてもう一つ目についたのは、履いている靴
「不格好なブーツを履いているな、背伸びしなくていいのか」
「そんなもの、夜の街に必要でして?」
「……いや、いらないな。その何か飛び出しそうな履物の方が有用だろう」
――着飾っているくせに寄ってきた獲物は全て狩るのか
そんな心の声を押し殺し話を再開させる
「それで、代わりに答えてくれるという話だが」
「ええ、元々近いうちに伝えるつもりでしたので、特にあなたのような人には」
「……どういう事だ」
少女は再びお淑やかに笑う
「では、お教えしましょう。我々ネストの在り方と、存在意義と――」
その目はチェンには向けられていない、代わりに
「――あの方への忠誠と、求めるものを」
一人の鴉を、蕩けるように眺めていた
……………………
場所は変わりまた別の路地、そこでは
「クソッ! なんなんだあの化け物共は!」
ストレイドを襲ったクランタと
「お頭っ! これじゃいつまでたっても逃げきれませんぜ!」
その取り巻きのスーツの男たちと
「待てー! 逃がさないぞー♪」
「あの子供何者だ! というかどうしてこっちに来るんだ!」
「早い! 早いぞ! あんなふざけた動き方なのに!」
クランタ達は今、体力の続く限りの全速力で走っている
誰も彼も大人で背もそこそこある、その分歩幅もあるのだ、そんな連中に
だが実際は彼らが怯えるほどの勢いで追ってきている、大人の速度に子供が追い縋っているのだ
しかしそれだけなら彼らも納得はしただろう、少女とてネストのメンバー、身体能力はあるのだと、だが現実は彼らの常識の上を行ってしまった
なぜなら、彼女は
「ゴーゴーAMIDAちゃーん! エビのから揚げ―!」
『キチキチキチキチキチキチキチ』
「イエーイ!!」
例の悍ましいナニカを利用して飛んできている
少女は両手を広げまるで飛行機のような体制になっている、そしてその小さな体に群がり運んでいるのは例の虫
命令もせず彼女が手を広げた時点で虫たちは行動を開始していた、さもそれが当然であるように
「あいつ、あの虫の女王か何かか!」
「違うよー生みの親だよー」
「もっと性質が悪い!」
「だけどこの子たちの子供を産むのも悪くないねー……。今度の実験でヒトの卵子にDNAを混ぜてみようかな」
小声で言ったそれは、クランタ達をドン引かせるのには十分な発言である
「へ、変態だ! 本物の変態だ!」
「失礼な! キサラギちゃんはAMIDAちゃんを人並み以上に愛しているだけのただのプリティーな女の子だよ!」
「どこがだ! 奇妙な虫を従えて迫ってくる時点で可愛くはない!」
「うわっ! ひっどーい! もうおこったぞー、ゴー! AMIDAちゃんズ!!」
「わあぁぁぁぁぁぁ!?」
着弾、直撃はせずに彼らの近くの壁に激突、そのまま破裂する
「自爆特攻か……愛してるとか言ってる割に使い捨てなんだな!」
「そうだねーそれが本題なんだよー。フェロモンを周囲に散らすのはいいけど手段が良くなくてねー。素体が悪かったなー……」
壁には先ほどまで虫だったモノが飛び散っている、緑の体液に染まった肉が怪しく蠢いている
「……何をどうすればこうなる」
「うーん……まずはオリジムシと爆弾蜘蛛を無理やり交尾させるでしょ?」
「聞きたくない聞きたくない!」
奇妙な虫から逃げ回るクランタ達、その後ろを楽しそうに追う
一件終わりがなさそうな追走劇、だがここで
「君達、やみくもに走り回っているけどちゃんと周りは見えているのかい?」
「何?」
突如としてそんな事を言い出す、それに反応して周りを見渡すクランタ達
周囲は一見どこにでもありそうな、薄暗い裏通り、人気はなく、猫も鼠もいはしない
そんな先ほどと何も変わらない光景にある予感がよぎる
「…………ッ! まさか、誘い出されたか!」
「その通り、これがキサラギちゃんの逃走経路だ!」
その言葉と同時に
瞬間、地面が急に暗くなる
「しまっ!?」
「ふははははははっ! 君たちはキサラギちゃんとの知恵比べに負けたのだ!」
反射的に上を向く、そこには
「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」
例の虫が暴雨のように降り注いできていた
その光景にいち早く正気を取り戻し回避行動に移るクランタ、地面を力の限り蹴り飛ばし虫の降下地点から離れる
だが彼の仲間達は、ついてこれなかった
「げぇ!」
「うわぁ!? なんか吐いてくる!」
一緒んで大量に虫に囲まれたスーツの男達、その体は一分と経たずに緑に塗れていた
その頭部にはあの虫はがっちりくっ付いている
「クソッ……!」
「あーあ、つかまっちゃったね~? お友達はつかまっちゃったね~」
「その気味の悪い笑みをやめろ……!」
子供のような姿なのに、その笑顔は随分と薄気味悪い、そんな
だがこの状況、動くに動けない、仲間は今相手の手中に収まってしまった
置いてはいけない、彼にとっては失ってはいけないものなのだ
「そいつらを離せっ!」
「ヤダー♡」
解放するように言及するが断られる、しかしそれで済ますわけにもいかない
どうにか助けられないか策を講じていると、スーツの男の一人が喋りだす
「お頭っ! 行ってください!」
「……しかし…………!」
「大丈夫です! この虫たちは多少気味が悪いだけで危害は与えてきません! ここは我らを置いて死告鳥を!」
置いていけ、確かにそれも一つの手だろう、だがそれを実行できるのは冷酷な心の持ち主だけ
「……無理だ、置いていけない……!」
そんな精神力、この青年には持ちあわされてはいない
残していく事をためらうクランタ、そこに
「いいね~いいね~、キサラギちゃん好きだよーそういうの」
いつの間にか虫を体から離したキサラギがやってくる
クランタとスーツの男たちの間に入るように
「離してくれ、そいつらは何も悪くない」
「ふむ、悪くない。なるほど、罪はない、と」
「ああ、ネストがどうして動いているのはわかってる、お前達のリーダーを俺達が狙ったからだろう」
「そうだねー、確かにその通りだ。ならこの人達は悪いんじゃない?」
「いいや、悪くない。そもそも奴を狙うと言ったのは――」
「君、だね?」
「……ああ、そうだ」
クランタの弁明を聞いていたキサラギの目が少し鋭くなる
「そうだねー、確かに彼らは君についてきただけなんだろう。唆されたとはいえ君は彼らの為に事を成そうと団長ちゃんに襲い掛かった」
「あ、ああ、そうだ」
「そして彼らは君を心配してついてきた、なるほどなるほど、人情家だ」
「……ああ、誇りに思ってる」
どこか不穏な空気を漂わせながら話し続けるキサラギ
「聞いた通りだ、君達は本当に一般人なんだね」
「……そうだ、武器こそあれど俺達はお前達側の人間じゃない」
「そしてその武器も、唆した男が流したもの、そうだね?」
「そうだ、確かに俺達はそうしてあの男を襲った。だが悪いのは俺だけだ」
「じゃあこう言う訳だね? 許してくれと」
そのキサラギの言葉を聞き、クランタが膝を着く
「そうだ、お前達のリーダーを狙ったことを全て許してくれとは言わない。だがどうか、そいつらだけは離してほしい……!」
そのまま両手を置き、頭を地面にこすりつける
「おや、もう謝るのかい? はやいね~」
「どうか、頼む、もう狙うようなことはしない。俺達は、諦める……」
懇願するように、頭を下げ続ける
もう自分たちはやらないと、愚かなことはしないと
「……ふ~ん」
キサラギは黙って様子を見る、値踏みをするように、じっとりと
やがて、一言
「ダーメ♡」
言い放つ
「……駄目なのか」
「ダメだねー、ダメだよー。まあ許そうかなって思ったけどねー」
「じゃあ…………!」
まだ希望はあると思ったのか、クランタが何か言おうとする
だがそれをキサラギが止める、何も言わず、ただ指を口元に置き、黙るようにと言外に言って
そのまま、一度、指を鳴らす
「キチキチ」
すると、一匹の虫がどこからともなく現れる
「君達、この子たちに危害はない、そう言ったね?」
「ああ、言った、が……」
その虫は誰もいない方向へと歩いていく
「そうだねー、確かに彼女たちは可愛いよー。つぶらに光る六つの目とか、口元で蠢く細い脚とか」
そしてある地点で動きを止める
「だけどね? 間違えてはいけないよ?」
キサラギがもう一度、指を鳴らす
爆発音、突如として周囲を熱が襲う
「なっ……!」
その音は先ほどの虫からだった、けして肉の炸裂でもなく、液体を飛び散らせたわけでもない
純粋な熱量を持つ爆発が、残り火を置いて巻き上がったのだ
「見た目で判断するのは良くないね、間違えちゃダメだよ。彼女たちはね、
その中心点は、大きく抉られている
「……嘘だろ」
その光景が何を意味するのか、クランタが取り巻きへと視線を戻す
そこには同じように恐怖に固まった男達がいた
「さて、キサラギちゃんが言いたいことは、わかってくれたかな?」
「…………」
「オーケー、沈黙は、肯定と同義。じゃあ話を進めよう」
この場で一人だけ意気揚々としている少女、その目は誰よりも冷たく物を映している
「さて、お友達を解放してほしかったら言う通りにしてね」
「……何をすればいい」
「簡単だよ、団長ちゃんのゲームの、解答用紙になればいい」
「…………」
「簡単でしょ? 君は只、自分が殺されるかどうか、楽しみに待ってあげればいい」
先ほどまで薄気味悪いだけだった少女の笑みは、酷く醜悪なものになっている
「だいじょうぶ、運が良ければ生きてるよ。あの……うん、あの天使さんが間違わなければね」
クランタは何も言わず、キサラギを睨み続けている
「おや、怒ってるのかい? おかしいね、さっきまで許してくれって都合のいいことを言っていたのに」
「……そうだな」
「おかしいねおかしいね、君は文句を言える立場じゃないよ?」
キサラギはクランタが激昂していることに気づいているのだろう、わざと近づいていく
「悔しいかい? 手玉に取られたことが」
「……ああ」
「みじめかい? 自身の浅はかさで大事な仲間を人質に取られたのが」
「…………」
「可愛いかい? こんな状況で、自分だけでも助からないかと思ってしまった、君自身が」
「…………ッ!!」
キサラギの言葉に我慢が出来なかったのか、クランタが拳を振り上げる
だが、まるでそれを見越していたかのように
「おっと、そこまでだ」
「がっ!!」
クランタを後ろから誰かが押し倒す
「ぐっ……! 誰だっ!」
「貴様に名乗る道理はない」
「ぐあっ!」
クランタの質問に碌な返答を返さずに拘束するヴァルポの男
押し倒した態勢で腕を締め上げる、痛むのか、苦悶の声をクランタがあげる
「あ、スティンガーちゃん、どうしたのー?」
スティンガーと呼ばれた男は何度かクランタとスーツの男達に視線を往復する
その後、キサラギへと顔を向ける
「何、マグノリアに言われたのだ。どうせ碌な事をしていないから様子を見て来いと」
溜息をつきつつ返す
「えー、キサラギちゃんは団長ちゃんの為に動いてるんだよー? 碌な事だよー、大事だよー」
「どこがだ、まったく……こんな面倒なことに時間を割かせて……」
悪態を吐くヴァルポの男、それを見てニヤニヤ笑うキサラギ
「その割にはちゃーんと言われたことはこなすよねー。面倒は嫌いじゃなかった?」
「ああ、いいか、俺は面倒が嫌いなんだ」
「へー、ふーん、でもこの前、団長ちゃんの誕生日にきっちりお祝いメール送ってなかった?」
「ふん、例え面倒でも、仕事柄付き合いのある者には相応の些事をすべきなのだよ」
「礼儀の問題?」
「そうだ、面倒だがな」
「はい、四面倒、頂きました☆」
「……面倒な奴め」
「五回目―」
「…………」
話せば話すほどボロが出ると思ったのか、ヴァルポがすっと押し黙る
「さてさて、それじゃスティンガーちゃん、このクランタ君を団長ちゃんのもとに連れてってあげてねー」
「……面倒な、自分でやればいいだろう」
「ろっか~い」
「…………」
「ぐぅ……!!」
半ば八つ当たり気味に腕を締め上げられながら立たされるクランタ
そのまま連行されていく
「っ! くそっ! 離せ!」
「黙れ、抵抗するだけ無駄だ。面倒を増やすな」
もがきはすれど拘束は解けない、乱暴に運ばれて行く
「このっ! お前達は一体何なんだ!」
突然の豹変ぶりと、まるで普段の噂からは想像の出来ない醜悪さ
そして、この群れを率いる男への疑問、様々な要因があったのだろう
出鼻をくじかれ、意味の解らないゲームに参加させられ、終いには仲間も人質に取られてしまった
そんな何とも言えない心情と、せめてもの抵抗にそんな事を言う
「……何者、ねぇ」
その言葉に、少女が酷くおどろおどろしい笑みをこぼす
「そうだね、教えてあげるよ。君は随分踏み込んだからね、冥土の土産に聞くのも悪くないだろう」
周り全てに振りまくような、邪悪な笑み
「いいよ、いいね、教えてあげる」
ヴァルポは一人嘆息する、これは面倒なことになった、と
「そうして知っておくといいね、君達がどれだけ幸運だったか」
その少女の笑顔にクランタの顔が強張る
「私達は、最初から君たちを殺すつもりだったよ。あの店に、ああして入ってきた時点で」
少女は一人、物語り続ける
「団長ちゃんが殺すなって言わなければ殺していたよ。よかったね、殺そうとした人に君達は助けられたわけだ」
まるで悪魔を思わせる、異様な笑み
「だけどね、よくないよ。君達の行為は私の機嫌をすこぶる悪くしたんだから」
なのに、目だけは嫌に恍惚としている
「ほうら、聞いていきなよ。知りたいんだろう? なら聞かせてあげよう、知識とは、正しく共有するものだからね」
酷く楽しそうに、無邪気に笑う
「鴉の話を、愚かな夢を、聞いていきなよ」
悍ましい空気だけが漂い始めた
最近他の人の小説読んでて気づいたんですけど、コラボしてる人っているんですね
お互いがお互いのキャラをどう活かすか、自分のキャラやストーリーにどう関連付けていくのか、読んでて楽しかったです
まあ私はしませんが、というか向かない(オリキャラの設定的に)
前回は無かった! AC用語解説ー!
ジノーヴィ
ACNXに登場、登場機体はデュアルフェイス、裏のパッケージ機体
よくピンチベックと間違われる、なおNXのランカー一位、そして強化人間
だが機体性能はもれなく悪い、火力はあれど旋回がない、AIも悪い
後ロリコンではございません、こうなったのもあのMADが悪い
『だがこの瞬間は、力こそがすべてだ!』
『小さき存在だな……私も……君も……』
これをどうしたらああなるのか、それがわからない
フォグシャドウ
ACSLにご登場、皆大好き霧影先生、機体名はシルエット、エンブレムがどっかの白いのと同じホルスの目だけど関連性はございません
真人間なのにアリーナのトップスリーに入るヤバイ人、戦うとわかるその強さ
彼と同じ動きが出来れば今日からあなたもドミナント!
『すまない、遅くなった』
礼儀もしっかりしてる超良い人、でもミッションの時のロジックが残念
ウォルコット
AC4 ACfAに出てくる名門貴族、この家からは優秀なリンクスが少なくとも三人でている
だけどあんたら、血統は4の時点で滅びてなかった? とかいうのは無しです、隠し子かもしれない
スティンガー
ACPP ACNXに登場、機体名はヴィクセン、機体だけならACAAにもでてる
面倒が嫌いな人、作中で何度も言う、終いにはメールでも言う
どっかのラビット○ウスで聞いたことある声してる
『いいか、俺は面倒が嫌いなんだ!』
そんな奴はヴァルポにしてやる
この小説に出てくるウォルコットさんは三人の内の誰でもございません、あしからず
ホシノ、でないの…………