アークナイツ.Sidestorys 鵬程万里 作:Thousand.Rex
ビーグルは走っていた、サヴラの男を見つけるために
なぜ彼女は走っているか、答えは簡単、サヴラを見失ったのだ
最初はしっかり後をつけていた、サヴラにも気づかれていなかった
だが途中で
「お嬢ちゃん、これ買わないかい?」
「可愛いお嬢ちゃん、これ美味しいよ、買っていきなよ」
「あっ、いや、すいません、今急いでいるので、すいません…………」
というような感じで声をかけられている間に見失ってしまった
もともとビーグルは自分に自信のある人間ではない
普段もフェンやクルースに助けてもらうことの方が多い、ドーベルマン教官にもよく叱られている
一人でこなせることはあまり多くはない
今回も、本来なら全員で囲んで捕まえるという話だった、しかし何事も予定通りにはいかないもの
相手は別れて動き、それに合わせてビーグル達も三手に別れた
少数行動とは聞かされていた、事情が変わるかもとも
だが、一人で動くことになるとは思ってもいなかった、予定と違いすぎる
一応、リスカムがこっちに来てくれているらしいが、まだ合流できていない
だけど、自分もロドスのオペレーターなのだ、かっこ悪いところは見せられない
それにばれたら、また教官に怒られるかもしれない、二人にも迷惑をかけてしまう、それだけは嫌だ
ビーグルは文字通り、目を回しながら群衆の中を走り抜けていた
「も~、どこ行っちゃったの~!!」
そのせいだろう
「きゃいん!!」
「いたっ!!」
焦っていたのもあるだろう
「ごっごめんなさい!! 急いでいたもので…………」
「いや、こちらこそごめん、僕も前を見てなかったんだ」
彼女は目の前に立っている男を確認していなかった
「本当にすいませ…………あっ!!」
「大丈夫、ケガはして――え?」
ぶつかったのが誰なのか、確認する
「あなたはレユニオンの――――」
「なっ!!」
それは必死に探していたサヴラの男だった
「え、あっ、」
自分がつい口にしてしまった単語を思い出す
「君、まさか、龍門の……」
「あ、いや、えっと」
サヴラが聞いてくる、ごまかさなければ、口を開く
そしてとっさに出てきた言葉は
「き、聞かなかったことに、してくれませんか?」
笑顔でいってみる、我ながらもっとましな言い訳はできなかったのか
「………………」
「………………」
サヴラの男の動きが止まる
「………………」
「………………」
ビーグルも動きがない
「………………」
「………………」
まるで、二人だけ時間が止まってしまった様だった
だがそんなわけはなく
「く…………」
サヴラが動く
「くるなぁー!!」
大声をあげ、一目散に逃げだした
「まっ、まってー!!」
急いでサヴラを追いかける
『こちらリスカム、大声が聞こえましたが何があったんですか?』
すぐ近くにまで来ているのか、声が聞こえたらしい、リスカムから通信が入る、
もう隠すことは出来ないだろうと、腹をくくる
「すいません!! ばれちゃいましたー!! ごめんなさーい!!」
謝りながら状況を説明する
『わかりました、ばれたものは仕方ありません。今何をしていますか?』
「追ってます!! 全身全霊で!! 追跡してます!!」
せめて自分のミスした分は取り返さなばと思いサヴラの後を追う、
しかしリスカムは逆に
『いえ、深追いはせずに一度引いてください、相手の顔は割れています。再捜索の目途は立てれるはずです』
「でも!!」
『失敗したことに責任を感じているなら尚のこと指示通りにしてください。むやみに相手を刺激する必要はありません』
「っ!! う~…………!!」
リスカムの言う通りだ、顔がわかっているなら他に動きようはある
だがこのままではあまりにも情けない結果で終わってしまう、周りの足を引っ張っただけだ
「いえ!! 追います!!」
『ビーグルさん!!』
リスカムの静止を振り切りサヴラを追う、逃げているとはいえ相手は目の前にいる
捕まえさえすれば、まだ大丈夫、迷惑は掛からないはず
その一心で走り続ける、だが相手の方が早いのだろう、距離が少しづつ空いていく
もう駄目だ、そう思ったとき、彼は現れた
「ちょっと失礼」
「おぶうぇ!!!」
サヴラの前に見覚えのある男が現れた、少し前にクルースと珍事を起こした男だ
人ごみの中からスッと現れ、男はすれ違いざまにサヴラにラリアットをぶち込んだ
「はいっ、ワンツーワンツー」
「あぶぇ!! ぐえ!! ぐるじい!! ばなじで!!」
「おっ? まだまだ元気じゃないか、ならもっと激しくしてもいいな」
「あばばばばばぶぶぶぶぶ…………」
サヴラは巻き込まれ後ろ倒しになり、そのまま男にヘッドロックをキメられている
「えっ!! いやっ、えぇーっ!!」
突然の事態に驚愕の声をあげてしまう
『なんです? 何があったんですか?』
「よう、お嬢ちゃん」
「あなたさっき、子供を迎えに行くって…………」
「おー、それなんだが」
男の腕の中でサヴラがバタバタもがいている
「あのバカ、やっぱりいなくなっててなー」
動きが少しづつ緩慢になってきた
「もう一度お手伝いをお願いできないかなーって思って来てみたんだが」
もはや動いているのか怪しくなってきた
『ビーグルさん、どうしたんですか』
「あ~、いや~、その~、」
「なんか追っかけてたからついでに捕まえてみた」
ビクン!! と大きく痙攣する
「他の二人はいないのか?」
「あっ、はい、今、別行動をしてて」
とうとう動かなくなった、死んでいないだろうかと不安になる
「そうか、ならいい、自分で探す」
サヴラが落ちたのを確認し、男はさっさとどこかへ消えてしまった
「あっ!! ちょっとまって!!」
「ビーグルさん、状況を」
「…………えーと」
リスカムの声が後ろから聞こえてくる、男と入れ違いに追いついたらしい
「……本当に何があったんです?」
怪訝な顔で聞きながら、視線を下に落としている
リスカムの視線の先
「えっとですね、その~ですね」
そこに残されたのは、気絶したサヴラと、
「え~~~~?」
いまいち状況が把握できていないビーグルだけだった
一方フランカは
「こちらには気づいてないようね」
「そ~みたい~」
クルースと合流し、二人でレブロバを追っていた
相手のレブロバはかなりの大男だ、もめ事になれば一筋縄ではいかないかもしれない
慎重にあとを追う、市街で争うのは出来るだけ避けたい
レブロバはこちらには気づかず歩いている、どこに行くつもりなのだろうか
「偵察にしては妙な動きね」
「そ~だね~」
本来、偵察をするなら戦う相手の戦力を把握するため、軍事施設などに向かうはず
だがレブロバはそちらに行くそぶりは見せない、人気のない方に向かっている
「誰かと落ち合うとか、そんな感じかしらね」
フランカが考えを口に出す、すると
「ん~、違うと思うな~」
クルースが言う
「どうしてそう思うの?」
「だって~、ほら~」
レブロバを指さす、正確にはレブロバが行こうとしているところ、曲がり角だ
「このさきってたしか~、行き止まりじゃなかった~?」
「…………よく覚えてるわね」
えへへ~、とクルースが笑う、確かにレブロバは行き止まりに向かっている
角を曲がる、それを追って二人も曲がる、そこには
「よう、あんたらかい?俺を追ってたのは」
レブロバがこちらを向いて待ち構えていた
「……あら、随分強気ね、私たちを下して逃げるつもりなのかしら?」
相手はこちらに気づいていた、そのうえで逃げずにいる
何か考えがあるのか、警戒し、フランカが武器を構える、だがレブロバは武器も何も取り出さない
それどころか
「まさか、俺はやりあうつもりはねえよ」
そういい、両手を前に出してきた
「なんのつもり?」
「降参するの~?」
「ああ、そうさ」
「あらそう、ならお言葉に甘えて」
フランカが警戒したまま男に近づく、男は抵抗も何もしない
「本当に自首するつもりなのね」
「ど~して~?」
レブロバに手錠がかけられる、最後までなにもしようとしなかった
「さあな、俺にもわからん」
「わからないって、自分の事でしょう、何を言っているの」
フランカの質問にレブロバがゆっくり話し始める
「さっきな、白いお嬢ちゃんにいきなりこう言われたんだ」
白い少女、無線で言っていた子だろうか
レブロバは続ける
「『おじさん、くるしそうなかおしてる』って」
だいじょうぶ?ってな、乾いた笑みを浮かべて言う
「たったそれだけ、言われただけなんだ。なのになぜかやる気をなくしちまった」
一言二言、言われただけ、それだけで士気を下げてしまった、少女の言葉が男の琴線に触れたのだろうか
男の答えにフランカが返す
「そう、ならその子に感謝するのね、抵抗していたら容赦はしなかったわ」
「だろうな」
男が続ける
「それに、もともとこの計画には乗り気じゃなかった。自爆特攻なんて、馬鹿げてる」
レブロバの言葉に驚く、先ほどドクターから聞いた話は本当らしい
「あんな男のいうこと、どうして聞いちまったんだか」
「あんなおとこ~?」
レブロバの言葉に反応する
「ああ、この計画の首謀者だ、いつの間にか俺たちの集団に混ざってた。爆弾を持ち
込んだのもあいつだ」
どうやら立案者がいるらしい、
「それはあのニット帽の男?」
「いや、違う」
フランカの質問に男が返し、続けていってきた
「なあ、頼みがある」
「なに? 今になって解放してほしいの?」
「違う、あいつを止めてほしい。ニット帽のフェリーンだ、あいつはダチなんだ、犯
罪の片棒を担がせるわけにはいかねえ」
レブロバが頼み込んでくる
「どうか頼むよ、ほんとは優しいやつなんだ、こんなことやらせちゃいけない」
続けて言う
「あの男の話を聞くまでは、こんなことをしようとする奴じゃなかった。だがまだ間に合うかもしれねぇ」
必死に頭を下げる、彼にとってよほど大事な友人なのだろう
「頼む…………」
「…………わかった」
フランカが了承する、もともと止めるつもりだったのだ、やることは変わらない
「クルース」
「は~い」
「この人を任せていい?」
「は~い」
「ありがとう、頼んだわね」
「いってらっしゃ~い」
クルースに男を預ける
フランカはフェンのもとに向かい走り出した
基本的に戦闘シーンがないのは書きにくいのもありますが場面に出しにくいんです
ここでレブロバと一戦やってもよかったような気がしますが
そうするとオリキャラが目立ってくれません、なかなか難しいですね