Kenshi ~その世界で生き抜くため~   作:心愛さん

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第13話 都市連合への道

「はい、4000cat。それじゃ2日間の護衛、よろしくお願いしますね」

「おうっ、バッチリ守ってやっから安心しな!」

 

 俺とすみれは、まずワールドエンドで傭兵を雇った。

 顔に深い傷のある、いかにも傭兵っぽいお兄さんだ。

 そのお兄さんをはじめとして、合計4人が護衛になってくれた。

 これで最低限の備えはできたかな。

 

「それじゃ、余ったお金で交易用のサケを買い込んでくるわね」

「ああ、頼む。さて都市連合へ向かうルートだけど‥‥‥傭兵さんから見て、オススメのルートってある?」

 

 旅慣れてそうな傭兵さんにそう尋ねてみる。

 

「そうだなあ。ルートは2つある。一つはバスト地方を通ってドリンって町を中継地点にして、そのまま東に抜ける南ルート。んでもう1つはシンクン地方からバスティオン砦を中継していく北ルートだ。おすすめは南だな」

 

 傭兵さんが地図を指でなぞりながらそう教えてくれる。

 

「北だと、何か問題が?」

「ああ。北はカニバルっていう人食いどもが彷徨いてるのさ。こいつらはとにかく数が多くてな。群れで獲物を襲ってくる。それに対するこっちはたったの4人だ。どう頑張ったって、依頼人であるあんたらにも矛先が向かっちまう。俺たちが助けに向かうまで持ち堪えてくれりゃそれでいいんだが、万一持ち堪えられなきゃ、その時はカニバルの腹の中さ。リスクが高すぎる」

 

 なるほど。

 北側から海を眺めてピクニック、とはいかないわけだ。

 ちょっと残念。

 

「まあ南は南で、紛争地帯を抜けることになるからな。安全とも言い切れないが、俺たちがいればどうにかなるさ」

「そりゃ頼もしいな。頼りにしてるよ、傭兵さん」

 

 そこにバックパックに大量のサケを詰め込んだすみれも戻ってきた。

 

「ただいま。話はまとまった?」

「ああ、南側から行こうって話に‥‥‥って、これまたずいぶん買い込んだな。2人で半分ずつ持っても結構な重さなんじゃないか?」

 

 ワールドエンドには酒場が4軒ある。

 どうやらその全てを回ってサケを買い込んできたようだ。

 これを抱えて走るのは、結構しんどいかもしれない。

 

「まあ護衛も雇ってるわけだし、大丈夫でしょ。ちゃんと町に着いたら、傭兵さんにも1本あげるわね。チップ代わりに」

「はは。気持ちは嬉しいが遠慮しとくよ。護衛の報酬は、ギルドによってきっちり管理されてるのさ。1日2000cat、これ以上でも以下でもダメ。ギルド内で仕事の奪い合いを起こさないための配慮ってやつだな」

「あら。つまんないわね」

 

 ちょっとイジけたような顔をしてみせるすみれ。

 傭兵っていえばルールに縛られない荒くれ者ってイメージが強かったんだが、案外そうでもないようだ。

 むしろ律儀とも言える。

 やはり信用が大事な商売だと、ルールを尊重しないとやっていけないのかもしれない。

 

「んじゃ、準備も整ったし、出発するか」

 

 ワールドエンドを出て、東へ。

 途中で雑談なども交えながら、のんびり進む。

 俺たちがリバースの脱走劇を語って聞かせれば、傭兵たちは過去の武勇伝を語ってくれた。

 

「この顔のキズはな、昔スキムサンドで暴れた時のもんさ。まだ傭兵として駆け出しだった俺達は護衛依頼の途中、スキマーの大群に襲われたのさ。そこに反乱農民の奴らも乱入してきて三つ巴の大乱闘ってわけよ。仲間が次々と倒れる中で、どうにか依頼人だけは無傷でそこから逃すことができた。あれはアツかったなー」

 

 しみじみと語る傭兵さん。

 そんな彼に、別の傭兵からツッコミが入る。

 

「なーにが『あれはアツかった』だ。お前は一番最初に気絶してただろうが、アレックス。反乱農民と戦ったのも依頼人を逃したのも隊長だろうが」

「わー、何バラしてるんですか先輩! いいじゃないですか、ちょっとくらい見栄はったって」

「良いわけないだろ。隊長の手柄をまるで自分のことのように話すその態度が気にくわん。俺はあの時手足をやられて動けなかったが、意識だけはあったんだ。隊長は最期までかっこいい、男の中の男だったぜ‥‥‥」

 

 ん。

 その口ぶりだと、その時活躍した隊長って。

 でも聞いていいのかな。

 表情だけで尋ねてみる。

 

「ああ、その戦いで最後まで立ってたのは隊長だった。その後隊長はボロボロの体を引きずりながら、俺たち4人の怪我の治療をしていったのさ。自分の方がボロボロのくせに、自分の治療は後回しにしてな。そして4人目の治療を終えた後、まるで力つきたように倒れ込んだんだ。『我が生涯に一片の悔い無し!』って言わんばかりの、壮絶な最期だったぜ。お前らにも見せてやりたかったなあ」

「‥‥‥いや、見たくねーよ、そんな壮絶な死に様」

 

 そんな会話をしながら歩いて、バスト地方に入る。

 だんだんと植物の数が減ってきて、痩せた木々がまばらに生えているだけの景色に変わっていた。

 瓦礫の山‥‥‥昔はそれなりの村だった面影を残すその残骸の側を通り過ぎる。

 それを見てすみれが言った。

 

「なんだか、寂しい場所ね。ここ」

 

 同感だった。

 この地方に入ってから俺たちが目にしたのは、痩せた木と瓦礫くらいだ。

 傭兵さんがその瓦礫について語ってくれた。

 

「この地域は、昔は広大な穀物地帯だったんだ。都市連合で暮らす人々の食べる食糧を、この地で作っていた。そこをホーリーネイションの奴らが襲撃して、この辺り一帯の村々を焼き払ってこのザマさ。おかげで都市連合の人々は満足に食糧を手に入れることができなくなった。奴隷でも使わない限りはな」

 

 そうして夕方まで歩き続けて、唐突に傭兵さんが言った。

 

「ほら、到着だ。ここがドリンの町だ」

「へ?」

 

 思わず間の抜けた声を出す俺。

 ここ、と言われても、眼前に広がるのはボロボロになった城壁の残骸。

 かつては城壁に守られた立派な都市だったのかもしれないが、今は廃墟じゃないか?

 そう言って傭兵さんを振り返ると。

 

「廃墟なもんか。今だってちゃんと門番の侍が守ってる、立派な町さ」

 

 ほら、と示された方角を見ると、確かに侍が門だった物の残骸を守ってた。

 ‥‥‥壊れた壁の隙間からいくらでも出入りできるんだけど、あの人たちは何を守っているのだろう。

 見ているとなんだかやるせない気持ちになってくるので、俺たちは何となくその門だったはずの場所から町に入る。

 町の中の建物はほとんど壊されていたけれど、無事な建物も3軒だけあった。

 侍の兵舎が2つと、酒場が1つだ。

 兵舎に用はないので、当然酒場に向かう。

 せっかくだしワールドエンドで仕入れたサケを売り捌いておこう。

 

「こんなボロボロの町でも、酒場はあるのね。というか、酒場くらいしかないけど。こんにちはー、お酒買ってくださいなー」

 

 すみれがさりげなく町をディスりながら酒場の門をくぐる。

 俺と傭兵たちもそれに続いた。

 

「あいよ、どうもね‥‥‥って、すごい量のサケだねこれは。いくらなんでも、これ全部は買い取れないよ。店の金庫の金が空になっちまう。まあ夜になったら侍さんが酒盛り始めてくれるから、明日の昼ごろにまた買い取らせてもらえるかい?」

 

 恰幅の良いおばちゃんの店員がそういうのでとりあえず買い取ってもらえる分だけ売った。

 1本で960catである。仕入れ値のほぼ2倍だ。

 噂に聞いた通り、こっちではサケはかなり高額で取引されているようだ。

 売り切れなかった残りはどうしようかな。

 傭兵さんの雇用期限の問題もあるし、できれば朝には出発したいのだけど。

 おばちゃんにそう伝えると。

 

「おや、それなら仕方ないねえ。じゃあ残りは、この先の大きな街で売るといいよ。そんで嬢ちゃん、今日は酒を売りに来ただけかい? なんか食べていきなよ」

 

 そんなわけで傭兵さん達と一緒に食事。

 せっかく稼げたのだから贅沢に‥‥‥とも思ったのだけど、店の在庫はパンとドライミートしか売ってなかった。

 あ、いやもう1つあった。

 噛み棒というよく分からないが、サボテンから作ったとされる食料も並んでいる。

 一見しただけでは食料と分からなかったが、どうやらこれも食べられるようだ。

 

「パンとドライミートと噛み棒。どれもあまりパッとしないというか‥‥‥」

「私はドライミートね! やっぱりお肉よ。それほどお腹は膨れないけど、やっぱりお肉は満足感があるもの」

 

 すみれはそう言ってドライミートを購入していた。

 傭兵たちもそれぞれパンやドライミートを購入していて、噛み棒は誰も注文しなかった。

 ‥‥‥こうなってくると逆に気になってくるな、噛み棒。

 

「あー、じゃあ俺はこの噛み棒ってやつ、頂戴」

 

 店員のおばちゃんが、「え、ホントにこれでいいのかい?」みたいな顔で見てきたのがすごく気になる。

 そんなにヒドい味なのだろうか。

 いや大丈夫だ、こっちは長年の召使い生活で、不味い飯に対する耐性は他の人よりあるんだ。

 都市連合の金持ちからしたらヒドい味なのかもしれないが、俺なら大抵の物は食べれる自信がある。

 パクッとそれに齧り付いた。

 

「ど、どう? みこと、美味しい?」

 

 味が気になるのか、すみれが身を乗り出して聞いてくる。

 

「美味しくはない、かな。硬いサボテンを水でふやかせる事で、無理やりどうにか食えるようにしたって感じだ。ああでも、『干し魚の尻尾』よりは美味しいかも」

「ああ、なんだ。それだったら全然食べれるわね。心配して損しちゃった」

「だな。ドライミートに飽きたらこれもアリだと思うぜ」

 

 そんな会話をしながら食事を楽しむ俺たちを、傭兵さんたちが遠くからなんとも言えない表情で見守るのだった。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 食事を終えて、そのまま酒場の2Fで朝まで休むことに。

 集落でもそうだったが、酒場の2Fが宿屋を兼ねているのがわりと一般的なスタイルのようだ。

 初めての長旅で疲れが溜まっていたらしく、ベッドで横になるとすぐに睡魔が襲ってきた。

 

「おやすみなさい、みこと」

「ああ、おやすみ」

 

 だが、その眠りはすぐに破られることになる。

 予期せぬ襲撃者によって。




13話まで読んでいただいた方、ありがとうございます。次回はようやくにして本格的な戦闘回となります。実は戦闘描写って慣れてなくて苦手なんですが、精一杯がんばって書かせてもらいますのでどうか温かい目で見守ってやってください。
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