Kenshi ~その世界で生き抜くため~   作:心愛さん

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第21話 強くなるために

「ふっ、我ながら会心の出来栄えだぜ」

 

 ついに完成した狐太刀と大鎌。そのランクは両方ともカタンNo.1等級だ。

 実は今使っている鍛冶場では本来、修理品等級までの武器しか作れない。

 だが、まれになんかこう、鉄の温度とか純度とかそういうのがビシッ! とハマって本来よりも性能のいい物が仕上がることがある。

 それがこのカタンNo.1等級。

 だいたい10本作って1本くらい、こういった大成功がある。

 この等級を2種類も完成させるのは、なかなか骨が折れたぜ。

 

「こっちも出来たわよ、みこと! じゃーん! 『放浪者のジャケット』の高品質等級!」

 

 俺がこの2振りの武器を完成させる間に、すみれは革防具の製造を頑張っていた。

 と言うのも、完成した修理品等級の武器を売れば結構な高値で売れてしまうのだ。

 なので資金繰りに出かける必要もなくなり、本格的に手持ち無沙汰になったすみれが暇つぶしに防具製造を始めたわけだが‥‥‥これがなかなか上達が早く、既に俺たち4人の装備は高品質等級の装備で揃えられていた。

 これ、店で買おうと思ったらかなりの金額が必要になる奴だぞ‥‥‥。

 ちなみに放浪者のジャケットは別名きりたんジャケットなどとも呼ばれていて、とある有名なKenshiが愛用した装備なのだとか。

 なおレッドは防具の材料となるなめし革を作ったり、イズミが使うクロスボウの矢を作ったり、料理したりと器用に立ち回っていた。

 うまく気を利かせて、足りない部分を埋めるように動いてくれるのですごく助かっている。

 レッドいわく「一つのことに集中するのはどうにも性分に合わない」とのこと。

 いろいろ動いている方が楽しいんだそうだ。

 そしてイズミについてはもはや言うまでもないだろう。

 あの子はずっと本を読んでいた。

 

「つまりこれで、とりあえず俺たちの武器と防具が揃ったわけだな。それも、そこらの盗賊なんかよりよっぽど上等なものが」

「そうね。なら後は‥‥‥実戦経験あるのみ!!」

 

 シャキーン! と刀を構えて戦意を示すすみれ。

 まあ剣士を目指すすみれとしては当然そうなるだろうが、イズミやレッドはどうなんだろう。

 危険が伴うことだから、あまり無理強いはしたくない。

 

「うん、ボクも賛成だよ。普通のお店で入荷してる本はあらかた研究し尽くしたし、そろそろ古代技術の研究にも着手したいところだったからね。とはいえ無力なまま古代の遺跡に踏み込むほど、ボクは愚かじゃない」

 

 イズミは乗り気のようだった。

 そうか、古代遺跡の探索か。

 遺跡を探索できるようになれば、もっと性能の研ぎ澄まされた武器を作ることもできるんだっけ。

 うん、俄然やる気が湧いてきた。

 レッドはどうだろう。

 

「お、オレは‥‥‥正直に言うと、怖えよ。昔雇った傭兵が、血塗れになって死んでいった姿が、今でも目に焼きついてる。戦わずに生きていけるなら、そうしたいってのが本音だ」

「‥‥‥そっか。なら」

「でも!」

 

 なら留守番を、と言おうとした俺の言葉を遮るように、レッドは語気を強めた。

 

「でも、戦わずに生きていけるほど、生優しい世界じゃねーだろ! オレは弱い自分に嫌気がさして、『シェリー』の名を捨てたんだ。けど結局、強くなんてなれなかった。強がることしかできずに、戦いを避けて生きてきた。そんなオレだけど‥‥‥お前らとなら、戦える気がするんだ。すみれや、みこと、イズミと一緒なら。共に戦って、強くなれる気がする。‥‥‥頼む。オレも一緒に戦わせてくれ」

 

 ヒュウ、と口笛を吹いて見せたのはイズミだ。

 かっこいいじゃん。

 

「ええ、もちろん! 一緒に頑張りましょう、大陸最強の剣士を目指して!」

「え、大陸最強? オレ、別にそこまでは目指してなんか」

「いーからいーから! 目標は高い方が面白いって!」

 

 ‥‥‥。

 まあ、そんなわけで。

 俺たち4人の実戦による修行が決定した。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 反乱農民。

 それは重税に苦しむ農民が貴族に対し反旗を翻して組織化した者たち。

 平等な社会だの、富の再分配だのと言った御託を並べてはいるが、その実態はただの野盗だ。

 国が食糧難にある状況を知りながら畑を耕すことすらしない、役に立たない農民。

 口ばかり達者でまともに働くことすら知らない穀潰し。

 彼らにできることなんて善良な旅人に襲いかかって追い剥ぎをすることくらい。

 総じて社会のゴミ。

 

「‥‥‥というのがボクから見た反乱農民に対する見解なんだけど、どうかな? 異議のある人はいるかい? 彼らをめった斬りにすることに良心の呵責を覚える人はいるかなー?」

 

 反乱農民についてずいぶんと過激な紹介をしつつ俺たち3人の顔を窺うイズミ。

 

「異議なし! 全面的に同意だ!」

 

 即答でそう返すレッド。

 なにか恨みでもありそうだな。

 

「ふっふっふ。私はバウンティハンターよ? 賞金首の仲間なら、それだけで斬る理由としては十分すぎるわ」

 

 酒泥棒をたった1人捕まえただけのすみれが堂々とバウンティハンターを名乗っている事に違和感を覚えるのは俺だけだろうか。

 ちなみにエリスくんはとっくに釈放されて、ショーバタイで元気に暮らしている。

 女性陣3名の視線は必然的に俺の方に集まって。

 

「あー、えーっと。訓練に付き合ってもらった後は、ちゃんと治療はしてやろうな?」

 

 俺は少し離れたところに見える反乱農民の一団を見つつ、頭をかきながらそう答える。

 彼らが俺たちの訓練相手、その第1号だ。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

「総員、突撃ィー!!」

 

 イズミの号令を合図にして、俺とすみれ、レッドが同時に敵陣に走り込む。

 先手必勝だ。

 いや勝つ必要はないんだけど。

 訓練が目的なので、経験が積めるならそれでいい。

 反乱農民の奴らが「なんだお前らは!」とか叫んでいる。

 それに対して。

 

「なんだかんだと聞かれたら」(すみれ)

「答えてあげるが世の情け」(俺)

「社会の破壊を防ぐため」(すみれ)

「都市の秩序を守るため」(俺)

「愛と真実の悪を貫く」(すみれ)

「ラブリーチャーミーな賞金稼ぎ」(俺)

「すみれ!」

「みこと!‥‥‥ごめん無理だわ恥ずかしいって」

 

 事前に打ち合わせしてあった通りの台本を読み上げていた俺だが、さすがに限界だった。

 

「ええー! 後ちょっとなのにどうしてやめちゃうの! ちゃんと最後までやりましょうよ!」

 

 というか何故すみれはノリノリでこういう事ができるのだろう。

 ちなみにこれは俺とすみれの2人でこっそりと打ち合わせした事で、イズミとレッドには知らせてなかった。

 急に始まった俺たちの小芝居に、2人は腹を抱えて笑っている。

 

「最後までって言われてもなあ。俺たち勢力名とかもないし、未所属じゃ格好もつかないぞ?」

「ああ、それもそうね。それじゃ帰ったら名前を決めましょう! 私たちの勢力名!」

「ええー。いや名前を決める事自体は別にいいんだけどさ。この流れで決めるの? マジで?」

「うん。もちろん大マジよ」

 

 そんな会話をする俺たちに向かって、反乱農民のクワが襲いかかる。

 カキン、とすみれが上手に受け止めてくれた。

 

「チッ、ふざけやがって! ナメてんじゃねーぞ!」

 

 彼は弾かれたクワを振り上げ、二撃目を放とうとしてくるがそうはさせない。

 俺は全身を使った体当たりでそいつを怯ませる。

 

「ごめんごめん。それじゃこっからは真剣にいくよ。うらあっ!」

 

 そうして、乱戦が形成される。

 反乱農民の人数は全部で8人。

 最初はクロスボウで遠くから攻撃を加えていたイズミも、今は乱戦に飲み込まれ、大苦無を取り出して防御に専念している。

 ちなみにこの大苦無はすみれのお下がりだ。

 相手の農民は人数こそ多いものの、装備の質はこちらが上。

 やがて反乱農民が1人倒れ、2人倒れ、そして3人目が倒れた時。

 

「よし撤退! みんな全力で走って!」

 

 イズミの号令。

 冷静に全体を見渡し、撤退の指示を出すのがイズミの役割だった。

 誰か1人でも足を怪我したら即撤退。

 怪我がなくてもイズミの判断で状況が悪いと思ったら撤退すると決めていた。

 俺たちは4人同時に戦闘を放棄し、一気に戦線を離脱する。

 

「よし、このまま近くの町まで走ってベッドで休もう。回復したら同じ要領で、これを夜まで繰り返す」

「うん。結構いい修行になるわね、これ」

 

 戦って、危なくなる前に逃げる。

 戦って、逃げる。

 戦って、逃げる。

 その繰り返しだ。

 一度に多人数を相手にする練習になるので怪我もするが、引き際さえ間違えなければいい訓練になる。




 第21話、読んでいただいてありがとうございます。勝てない相手に挑んで負けて逃げ出し、また懲りずに同じ相手に挑んでまた負ける。筆者はこの修行法を「R団式修行法」と命名しております。続けていればいつか映画でも大活躍できます。‥‥‥今回は悪ノリが過ぎましたね、この辺で失礼します。
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