Kenshi ~その世界で生き抜くため~   作:心愛さん

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第25話 勝利の方程式

 シノビシーフギルドで休息を挟んだ後、再び訓練に戻る。

 ちなみにシノビシーフの商人が良さそうな防具の設計図とバックパックを売っていたので買っておいた。

 ショーバタイに戻ったらすみれに新しい防具を作ってもらおう。

 んでもって、次の獲物はスキマーだ。

 

「ひぃっ、やっぱり気持ち悪いっ!!」

 

 レッドが半泣きになりながらブンブンと鎌を振ると、みるみるうちにスキマーの体に傷がついていく。

 そっか、動物はそれほど賢くないから、避けたりガードしたりはしないのか。

 とりあえず武器を振りまわしていれば、攻撃は当たるのだ。

 この特性はうまく使えば戦いが有利になるかもしれない。

 反乱農民が時々連れているボーンドッグにはいつも苦戦させられているが、ひょっとしたら工夫次第で楽に倒せるかも。

 

「みこと、ボーッとしてないでお前も殴れって! 早く早く!」

「ああ、悪い。とうっ!」

 

 レッドに急かされて、スキマーに走り寄って飛び蹴りを浴びせる。

 それはスキマーの顔面にクリーンヒットして、スキマーは動かなくなった。

 それを見たすみれが、不満げにもらす。

 

「ねえ、思うんだけど」

「うん? どうしたすみれ?」

「刀使ってる私より、丸腰のみことの方が強いのって、やっぱり納得いかない!!」

「え」

 

 そうかなあ。そんなことは無いと思うけど。

 確かに開幕の一撃は重たいのが決まることが多いが、初撃の後は囲まれて防戦一方になってることが殆どだ。

 そしてようやく包囲を脱出する頃には、手足に深傷を負っているせいでいくら殴ってもまともなダメージが入らない。

 反乱農民との戦いは、大体いつもそんなパターンになる。

 逆にすみれは、ガードの合間にスキの小さい攻撃をしっかり重ねて、最初から最後まで堅実に戦ってくれることが多い。

 どちらが強いかといえば、多分すみれの方が強いと思う。

 そう伝えてみたのだが。

 

「でも、今みたいに1匹のスキマーを囲んで殴る場合、明らかにみことの攻撃の方が有効打になってるじゃない。私が何回も何回も切りつけても倒れなかったスキマーが、たったの1撃でさ」

「いや、俺が1発殴る間にすみれなら3回は斬りつけてるだろ。ガードにスキも無いし、絶対すみれの方が強いって」

「そうかしら。ねえ、イズミはどう思う?」

 

 離れた場所でボウガンを構えるイズミに話が振られる。

 イズミは戦いの中でも常に冷静に状況を分析している節があり、このチームの軍師的な立場を確立しつつある。

 

「どっちが強いという話じゃなくて、相性というか、得意な状況が異なるだけだと思うけどね。‥‥‥なるほど。今までは単純に突撃を繰り返していたけど、うまく作戦を立てればもしかしたら。よしっ、次の相手はあいつらにしよう」

 

 あいつら、と言ってイズミが指差した先には、反乱農民の一団。

 人数は農民が8人とボーンドッグが2匹。

 8人のうち、そこそこの使い手が1人混じってるな。

 賞金がかけられてる奴だ。

 

「訓練だけど、今回は勝つつもりでやってみよう。ボクの作戦通りに動いてみて」

「お、おお。なんか知らんが、任せた」

 

 ‥‥‥そして。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 ザクッ。

 反乱農民の肩に、クロスボウ『つまようじ』の矢が突き刺さる。

 

「痛っ、なんだクソッ」

「あっちだ! ガキがクロスボウで狙ってやがる!」

 

 農民の1人が叫び、連中の視線がイズミに集中する。

 

「たった1人でオレ達に喧嘩売るとは、いい度胸だな? 後悔させてやるぜ!」

 

 そう言って連中はイズミに向かって走ってくる。

 そう、反乱農民が今言ったようにイズミは1人だった。

 俺とすみれとレッドは、少し離れて砂嵐に紛れて息を潜めていた。

 反乱農民は俺たち3人にはまだ気付いていない。

 イズミは走ってくる反乱農民を矢で迎え撃っていたが、やがて接近を許してしまい大苦無に持ち替え、防御姿勢を取る。

 

(‥‥‥イズミの言った通りだ)

 

 一見するとイズミは囲まれて防戦一方でマズい状況に見える。

 が、よく観察してみると反乱農民の動きが非常に鈍いのが分かった。

 それもそのハズで、農民がクワを振り回そうとすればすぐ隣に仲間の農民がいるのだ。

 そして農民がクロスボウを構えても、イズミの周囲にはやはり仲間の農民がいる。

 結果、同士討ちを恐れて地味な攻撃しかできないでいた。

 周囲の仲間を気にしながら農民が恐る恐る振りかぶったクワ。

 それをイズミは的確にガード。

 そして、そんな反乱農民の背後をつくように俺たちは一気に襲い掛かった。

 まずは俺から!

 狙うはボーンドッグだ!

 

「うおりゃあ!」

 

 渾身の力を込めた飛び回し蹴り。

 ボーンドッグとその周りの数人をまとめて吹っ飛ばす。

 

「なんだクソッ、仲間がいたのか!?」

 

 そんな俺の攻撃後のスキを狙うように、反乱農民が俺を取り囲んでくる。

 普段ならここで防戦一方になるところだが‥‥‥頼んだぜレッド!

 俺は着地と同時に頭を下げ、姿勢を低くする。

 その直後、ブォン、という風切り音と共に頭上を大鎌が切り裂き、俺を囲もうとした反乱農民がまとめてなぎ払われた。

 そのスキをついて俺は後退、包囲から素早く脱出する。

 

「なっ、こいつらタダモンじゃねえぞ! 野郎ども、気合入れろ!!」

 

 笠をかぶった男が叫ぶ。

 只者じゃない、か。

 嬉しいことを言ってくれるじゃないか。

 あの笠の男はそこそこ強そうだ。

 確か賞金首だったはず。

 

「あなたの相手は私よ。その首にかかった賞金、バウンティハンターすみれが頂戴するわ!」

 

 笠の男の正面に躍り出て、真っ直ぐに斬りかかるすみれ。

 もちろん数では反乱農民の方が多いので一騎討ちになることはなく、数人の農民が笠の男を援護するべくすみれに斬りかかるのだが‥‥‥

 

「ふふっ、弱い。ザコじゃ相手にならないわね」

 

 分かりやすい挑発を混ぜながら、笠の男との勝負の片手間にすみれは農民のクワを的確にガードしていく。

 挑発に乗せられた農民がすみれに狙いを定めるが、すみれはそのほとんどの攻撃を弾いていた。

 そう、既に大半の農民が体のどこかに深傷を負っていて、全力で武器をふるえる者は残っていないのだ。

 怪我した腕でどうにか振り回したクワがすみれに届くことはない。

 すみれによって攻撃を弾かれた農民がレッドの大鎌の餌食になる。

 また、足を怪我してヨタヨタと歩く農民はイズミが『つまようじ』で蜂の巣にする。

 イズミに近寄ろうとする奴らは俺が各個撃破して。

 そうして。

 

「この勝負、もらった!!」

 

 すみれの狐太刀がキラリと輝き、笠の男がガクリと膝をついて倒れた。

 俺たちの、勝利だ。

 

「勝った‥‥! 本当に勝てたわ、2倍以上の数の相手に! ボーンドッグだって2匹もいたのに!!」

「ふふ、ボクの計算どうりさ。すみれ、傷をみせて。すぐに治療するからさ」

「うんっ。あ、この賞金首は私が担いでいいかしら? 憲兵に届けなくっちゃ」

「もちろんだとも。みこととレッドはどう? 怪我はしてない?」

 

 イズミがこちらに視線を向けてくるが、全然どうってことない。かすり傷だ。

 農民たちは死なれても後味が悪いので、賞金首もそうでない者も全員治療しておく。

 ボーンドッグはどうしようかな。

 お肉、美味しそうだな‥‥‥スキマーの肉にも飽きてきたし。

 そういえばシノビシーフで防具の設計図買ったんだったな。

 毛皮、防具の素材に使えるよな‥‥‥

 

「‥‥‥いただきます」

 

 解体する前に、一応両手を合わせて拝んでおく。

 この身の糧となるその命に、感謝を。

 その場で焚き火を起こし軽く炙って、勝利の味がするドライミートを食べる。

 いつも食べてるような、転がっているスキマーの死体から剥ぎ取った肉から作ったドライミートよりも、ずっと美味しく感じられた。




第25話、読んで頂きありがとうございます。このゲーム、倒した敵がそのまま残り、消えてしまわないところが個人的にかなり気に入っています。放っておくと当然死んでしまうし、治療したところで大体は奴隷商に連れ去られて奴隷にされます。動物は飢えた放浪者によって解体されます。戦うということが誰かを傷つける行為だとはっきり自覚させられるし、それでも戦わないと自分の身さえ守れない。救いようのないこの世界観が、私にはとても愛おしく思えるのです。
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