「俺のことはどうなってもいい! 頼む、あいつらを助けに行かせてくれ!!」
カニバルが立ち去った後。シミオンがそんな事をいう。
「せっかく捕らえた賞金首を手放すわけないでしょう? そもそも貴方1人じゃどうにもならないわ。諦めなさいな」
「あ、諦めきれるかよ! あいつらは、まだ生きてるんだぞ!!」
声を震わせながら懇願するシミオンだが、すみれはそれを冷たい瞳であしらっていた。
「な、なんでだよ‥‥‥お前ら、あれだろう? 最近噂になってる、4人組のバウンティハンターだろう? 命までは奪わないのが、お前らの流儀じゃなかったのか‥‥‥? 賞金が欲しいならくれてやるよ。あいつらを助けた後でなら、俺を憲兵に突き出して構わない! だから‥‥‥!!」
「ストーンキャンプを襲ったのは、シミオン。貴方なの?」
シミオンの言葉を遮るように、すみれが質問する。
「し、知らねえ。本当だ! 本当に俺たちじゃないんだ! 信じてくれ! そうだ。あんたら賞金稼ぎなんだろう? カニバルの中にも確か賞金のかかった奴がいたはずだ! 1万catの高額賞金首が、複数だ! 大して強くもないぞ、怪我を治したあんたらなら余裕で倒せるはずだ!」
叫ぶシミオン。
嘘を言っているようには見えなかった。
「‥‥‥はあ。ハズレか」
がっかりしたように肩を落とすすみれ。
それを見てシミオンが尋ねる。
「なあ、ストーンキャンプになんでそんな拘るんだよ? 奴隷商なんてみんなクズばっかりじゃねーか」
「反乱農民ほどじゃねーよ」
つい口が滑った。
シミオンが睨むようにこちらを見てきたが、言い合いをする気もないのですっと視線を逸らしておく。
「とりあえずシミオン。貴方は牢屋で大人しくしてなさいな。カニバルと戦うにしたって、その怪我じゃ足手まといだわ」
「! も、もしかして、助けに行ってくれるのか? あ、ありがとう! 本当にありがとう!」
「勘違いしないで。私は賞金首を捕らえに行くだけよ。貴方の仲間なんて知らないわ。‥‥‥ただまあ、さっきここを襲ったカニバルの後をつければ、ここから一番近いカニバルの拠点まで案内させられるかしらね」
外に出てカニバルの去った方角を眺める。
だいぶ遠くまで離れてしまっているが、まだ見える範囲だ。
これだけ距離があれば、見つかる心配もない。
「ボクが追いかけるよ。3人は街までシミオンを届けて、ベッドで休んできて。見失わないように、ボクが見張っておくからさ」
「頼んだイズミ。近寄りすぎるんじゃないぞ」
頷いて走り出すイズミを見送り、俺たちも街へ。
ここから近い街といえば、ショーバタイだろうか。
ドリンだと警察署がないからシミオンを突き出せないし。
‥‥‥結構歩くなあ。
気心の知れた4人ならそう気にならない距離だが、シミオンを担いだままだと妙に長く感じる。
すみれも同じなのか、ちらちらとシミオンの様子を気にして。
ふとすみれは、シミオンの懐から汚れた人形を抜き取った。
「ねえシミオン。いい歳したおっさんがお人形遊びは、ちょっとどうかと思うわ。こういうの好きなの?」
「なっ! か、返せ!!」
担がれたままのシミオンが、慌てて器用に人形を奪い返す。
ええ、そんなに好きなのか、その人形。
「ええ‥‥‥いや人の趣味に口出しするべきじゃないとは思うんだけど‥‥‥」
すみれと一緒にドン引きしていると、シミオンが慌てて言い訳をする。
「あ、違うぞ! これはその、思い出の品というか、そういうアレでだな!」
「はいはい。思い出のつまった大切なお人形さんなのねー。わかったわかった」
「いや分かってねえだろお前ら! 絶対分かってねえだろ!!」
大声で叫ぶシミオン。
正直分かりたくない。
おっさんがお人形大好きとか、ちょっとキツい。
そしてレッドはシミオンの持っていた手記にざっと目を通してから、その手記をシミオンに返して、ポンポンと慰めるようにその肩を叩いていた。
「あ、お前は字が読めるんだな! なあ、お前からもなんとか言ってやってくれよ! 誤解があるんだって!」
「なあレッド。何が書いてあったんだ?」
「んー。別に。あのお人形さんに対する愛の言葉がびっしり書かれてただけだよ」
「「うわあ‥‥‥」」
再びドン引きする俺とすみれ。
「ち、違うっての! なんでそういう事言うんだよ!」
その後もシミオンはなんか色々言い訳を繰り返していたが、聞きたくなかったのでさっさと憲兵に引き渡した。
そしてベッドで傷を治して、イズミと合流する。
捕らえられた反乱農民は、まだ生きていた。
カニバルの中には賞金首が2匹。合計2万catか。
「遅いよ3人とも。まあ間に合ったから良かったけど」
イズミが言う。
「結構多いわね。何匹いるの?」
「3人が来る前に数えておいたよ。26匹。1人で7匹ずづ倒せば勝てる計算だね」
7匹か。それなら勝てそうだ。
海岸ではもっと多くのカニバルを相手にしたんだから。
「ただ、囲まれないようにだけ気をつけて。それじゃ、行くよ!」
大きく散開して、囲まれないようにしながらカニバルに襲いかかる。
「あ、あんたら! まさか助けに来てくれたのか!」
捕われていた反乱農民が俺たちの姿を見て叫ぶ。
「そんなハズないじゃない。私はただ‥‥‥賞金首を狩りにきただけよ!」
すみれが叫び、白刃が舞い、夜空に血風が混ざる。
もし負けたら、今度は自分たちが喰われる番だ。
もちろん負けるつもりはない。
今更この程度の相手に、遅れを取るわけないじゃないか。
憲兵に突き出された俺は、一睡もする事なく夜を明かした。
あの4人組は、俺の部下を助けてくれるだろうか。
逃げ出したりしないだろうか。
いや、あるいは返り討ちにあって喰われてやいないだろうか。
あいつらの実力は十分に分かっているつもりだが、何が起こるか分からないのがこの世界だ。
新手のカニバルが援軍に現れたりすることだってある。
数の差で押し切られれば、たった4人ではいずれ限界は来る。
夜が明け、日が登って。
そろそろ正午くらいだろうか。
あいつらはまだ来ない。
‥‥‥まあ、そうか。
そもそもあいつらの立場からすれば、助ける必要もないのだ。
危なくなれば逃げればいい。
あいつらの逃げ足についての噂は俺もよく聞く。やはり、逃‥‥‥
「ハロー! 暗い顔してどうしちゃったの?」
「な‥‥‥」
目の前に、剣士の女が立っていた。
俺を倒した女だ。
そして隣の檻に放り込まれるカニバルの酋長。
と、いうことは。
「や、やった、のか?」
俺の問いに、剣士の女はVサインで応える。
「ふふん。余裕だったわ。シミオンの方がよっぽど強かったくらいよ」
誇らしげに胸を張って、剣士の女はそういった。
そしてその隣に立つ、武術家の男。
「で、すみれ。気は済んだのか?」
「‥‥うん!」
晴れやかな顔で笑う剣士。
なんだよ、そんな風に笑えるんじゃないか。
最初に斬りかかってきた時は、鬼みてーな顔してたくせによ。
第39話、読んでいただきありがとうございます。次回は幕間の物語です。某有名modからあのキャラが参戦です。どうぞお楽しみに。