Kenshi ~その世界で生き抜くため~   作:心愛さん

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第41話 初めての拠点

「ねえイズミ、話が違うんだけど」

 

 つるはしを振りながら、イズミに問いかける。

 

「違うって、何が?」

 

 建物か何かの土台を作りながら、しれっと言うイズミ。

 

「採掘作業はサヤに担当してもらうって話よね!? なんで私まで駆り出されてるのよ!」

「そう言うなよ、すみれ。まだ鍛冶の材料どころか、住む家の資材さえ集まってないんだから」

 

 みことに嗜められるけど、やっぱり納得いかない。

 

 ちなみに労働の担当は、サヤがひたすら鉄鉱石を掘り、レッドがそれを鉄板に加工。

 私が石材を掘って、みことが私の掘った石材を建築資材に加工していく、というもの。

 イズミはできた資材を使って建物の建築を行っているものの、やはりというか大きな建物を1人で建てるのは大変そうで、作業は遅々として進まない。

 

「ねえイズミ、ドリルはないの? ほら、ストーンキャンプにあったじゃない。一気に採掘できる大きなドリル。あれ作りましょうよ」

 

 そういうのがあれば私も建築に加勢できるし。

 せめて寝る場所くらいは早く完成させてしまいたい。

 今のままじゃ拠点というより、ただ資材を作るだけの作業場所だ。

 

「うん、ボクもいずれは作りたいと思ってるよ。けど今はまだ無理だ。技術的にも無理だし、そもそも風力発電だと電力にも限界がある。バスト地方は砂漠と違って、いつでも風が吹いてるわけじゃないからね」

「むう‥‥‥」

 

 無いものねだりしても現状は変わらない。

 そう分かっていても、納得いかないものである。

 

「まあいいじゃんか。リバースと違って、無価値な像を建てさせられてるわけじゃない。自分たちの家を作ってるんだからさ」

「みことは、割と平気そうよね。嫌なこととか思い出さないの?」

 

 隣で平気な顔で作業を進めるみことに聞いてみた。

 

「あー、まあ。それほど嫌なこともなかったし‥‥‥まじめに働いてれば褒めてもらえたしな。飯はマズかったけど、まあそれくらいか?」

「‥‥‥ひどい差別だわ」

「‥‥‥俺に言うなよ」

 

 文句を言いつつもつるはしを振っていれば、それなりに資材は溜まってくる。

 リバースでの経験は確実にスキルとして身についていた。

 そこに、イズミがまた話しかけてくる。

 

「ねえすみれ。石掘りと農作業なら、どっちが良い?」

「え? えーっと、その2択なら農作業? でも、やったことないから自信ないわよ?」

「ああ、自信なんて必要ないさ。前にも言ったけど、収穫はそれほど重要じゃない。農業のイロハを身につけるための畑だからね。そろそろ麦畑が収穫できるから、ちょっと一緒にやってみようか」

 

 イズミにそう言われて、ものは試しと挑戦してみる。

 作物を傷つけないように収穫して、収穫が終わればクワで耕し次の種を植える。

 一連の流れの説明を受けてイズミと一緒に収穫するのだけど‥‥‥

 

「‥‥‥イズミ?」

 

 イズミ、意外と不器用だった。

 いや私も人の事なんて言えないんだけど、ド素人の私と同じくらい作物をダメにしまくってる。

 

「し、仕方ないじゃないかっ! 農夫だったのはボクの父であって、ボク自身は知識として知ってるだけなんだからさ。実際に畑を耕すのは初めてさ」

 

 あまりに自信満々に話すものだからてっきり得意なのかと思っていたけど、そうでもないようだ。

 そんな感じで明るいうちに作業を終えて、暗くなってきたらスキマーやボーンドッグ、反乱農民の残党を探して修行をし、ドリンの酒場でベッドを借りて休む。

 ちなみに酒場のベッドは、おばちゃんの好意により無料で使わせてもらえた。

 それを3日くらい繰り返したある日のこと。

 私たちの拠点に、ちょっと変わったお客さんがやってきた。

 

「資材はいらないかいノーハイブ! 建築資材に鉄板、電子部品まで色々取り揃えているよ!」

 

 ハイブ商人による行商だ。

 

「全部買うわっ! ぜひまた来て頂戴!」

 

 建築資材、鉄板、そしてついでに電子部品まで即決で買えるだけ買った。

 やった、これで労働から解放される。

 

「いいともいいとも。他にもどうだい、このランタンとか便利だよ」

「携帯式のランタンね。確かにあれば便利そう。買うわ!」

「よしきた! あとこれはどうだい? 耳かきに砂時計、幸運を呼ぶ壺に黄金の招き猫」

「色々あるのね。よし全部買った!」

 

 ハイブの商人さんが見せてくる珍しい品々にテンションを上げていると。

 

「待てい」

 

 と何故かレッドに襟首を掴まれた。

 そのままズルズルと引っ張られて商人さんから離されてしまう。

 

「え、えー? なんなのよレッド。面白そうな物がたくさんあったわよ?」

「バカかお前は! あっさり乗せられてんじゃねーよ!」

 

 バカとは失礼な。

 そして私が引き離された後で、イズミが壺と招き猫を丁重にキャンセルしていた。

 ‥‥‥うん。冷静に考えてみると、なんであれを買おうと思ったんだろう。

 勢いって怖いね。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

「‥‥‥で、結局耳かきと砂時計は買ったのね」

 

 つい先日完成したばかりの我が家で私がそう聞くと、イズミが頷いて答えた。

 我が家と言ってもショーバタイで暮らしていたロングハウスよりやや狭い、L字型ハウスと呼ばれるタイプの建物だ。

 いずれ鍛冶場や防具の作業台を設置していき、本格的な作業場にする予定なのだとか。

 住居としては作業場とは別にもう1軒建てる予定なのだとイズミは意気込みを語っていた。

 

「まあ高い物でもなかったし、あれば何かの役に立つこともあるだろうしね」

 

 最初に買うと言ったのは私なのだけど、どう使えばいいのやら。

 他の3人は特に悩んでる様子はないので、使い方が分からないのは私だけのようだ。

 あ、いや。

 私だけじゃないな。

 興味深そうに商品を覗き込む様子を見る限りではサヤも知らなそうだ。

 ちょっと親近感を感じた。

 

「ねえみこと。これ、どうすればいいの?」

 

 取り敢えず商人から買った商品の片方、耳かきを持ってみことに尋ねてみる。

 

「ん、ああそうか。ずっと奴隷だったから知らないのか。‥‥‥よし、俺がやってやろうか。こっちに来て、頭乗せて」

「こ、こう?」

 

 みことに言われるまま、座るみことの膝の上に頭を乗せる。

 いわゆる膝枕の体勢。

 

「実は俺も人にするのは初めてなんだけど。痛かったらすぐ言って」

 

 え、痛い可能性があるの?

 急にちょっと緊張してきた。

 そんな私の思いを知ってか知らずか、私の耳たぶを押さえ、その穴の中を覗き込むみこと。

 ‥‥‥へ、ヘンな形してたりしないよね?

 なにせ自分では見たことがないのだ。

 実はとんでもない事になっている可能性も否定できない。

 

「‥‥‥‥」

 

 自分では見たことのない穴の奥を、男性であるみことに覗き込まれている。

 そう考えると、急に羞恥心が湧いてきた。緊張と羞恥心に耐えきれず、自然と口が言葉を紡ぐ。

 

「は、早く、してよ」

「ああ、うん。それじゃ、いくよ」

 

 するするっと、竹製の耳かきが差し込まれる異物感。

 まだ耳の内壁に触れたわけでもないのに、それがはっきりと感じられる。

 ゾクゾクッと震えるほどの緊張が全身を巡る。

 

「い、痛くしないでね?」

 

 思わずそう呟く私を安心させるように、みことは頷いて答える。

 

「ああ、任せておけ」

 

 ‥‥‥そして、ついに。

 コスッ。

 耳かきのさじの先端が、内壁に触れた。

 

「ひゃううっ!?」

 

 その予想外の刺激に、思わず全身が仰け反りそうになる。

 

「すみれ、動くと危ないよ。力を抜いて」

 

 動くと危ない、そんな事は分かっている。

 けどなんだろう、このじっとしていられない衝動は。

 決して痛いわけではない。

 むしろ、くすぐったさにも似た快感に襲われる。

 その刺激が予想と違いすぎて、どうしていいか分からなくなる。

 コスッ、コスッ、コスッ。

 2度、3度と繰り返すうち、最初の驚きと戸惑いは徐々に薄れ、そして心地よさだけが残る。

 すーっと耳かきが抜き取られ、しばしの空白。

 恐らく、さじについた汚れを拭き取っているのだろう。

 そしてまた、穴の奥に差し込まれる、それ。

 やや慣れてきたとはいえ、差し込まれるその瞬間はやはり緊張する。

 そしてまた、コスッ、コスッ、コスッと内壁を擦り上げるさじの感触。

 お互いに慣れてきたためか、さっきよりもリズムが早い。

 それがまた良かった。

 一定のリズムではなく変化をつけることで、次々と新しい快感に翻弄される。

 その快感に慣れてきたところで、またすーっと耳かきが抜き取られた。

 しばしの空白。

 早く。

 早く入れて欲しい。

 思わず口にしそうになる言葉を、何度飲み込んだことか。

 ようやくさじを拭き終えたみことが、私の穴の奥を覗き込んで。

 

「それじゃ、次は奥の方するよ。大丈夫だと思うけど、痛かったらすぐに言って」

「え? 奥って‥‥‥わ、ひゃわわっ‥‥‥ふ、深いっ‥‥‥!」

「うん、大丈夫。奥の方に大きいのが見えて‥‥‥よし、後ちょっと」

 みことはみことで集中しているのか、真剣に穴の奥を覗き込んでいて、呼吸が荒くなる私の様子には気付かない。それは正直助かった。もし顔を見られたら、きっとすごい顔になっていることだろう。

 ‥‥‥あ。

 

「‥‥‥」

 

 サヤが見ていた。

 やや顔を赤らめながら、興味津々と言った様子でこちらの様子を伺っている。

 

「〜〜〜〜!!」

 

 思わず全身から火が出そうな羞恥心が襲ってきた。

 いや見られて恥ずかしいことなんてこれっぽっちもないはずなんだけど、なんだろうこの感覚。

 なんなんだろうこの感覚!!

 

「よしっ、取れたっ」

 

 コスッ。

 奥の奥。

 穴の最奥を刺激するその感触に全身が震える。

 どうにか声を抑えたことを褒めて欲しいくらいだ。

 

「よし、綺麗になったよ」

 

 ぐったりと脱力する私の耳を、揉むようにマッサージしながらそう告げるみこと。

 ああ、やっと終わっー

 

「それじゃ、次は反対側しようか」

 

 終わってなかった。

 

「‥‥‥うん」

 

 私は抑えきれない期待と共に、体勢を変えて反対側の耳を彼に晒すのだった。




 第41話、読んでいただきありがとうございます。ゲームではただ資材を貯めるだけの単純作業も楽しいものですよね。貯まっていく資材を眺めながらアレを作ろう、コレも作ろうと思いを馳せる。このゲームで1番好きな瞬間かもしれません。次回はサヤ視点でお送りする予定です。お楽しみに。
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