Kenshi ~その世界で生き抜くため~   作:心愛さん

76 / 87
第65話 束の間の日常

「いつも有難うノーハイブ! また沢山買っておくれよ!」

 

 笑顔で手を振る行商のハイブの商人さんと別れる。

 笑顔? うん、多分笑顔なんだろう。

 少なくとも機嫌は良さそうだ。

 ハイブ商人の表情って分かりづらいのよね。

 ‥‥‥表情が分かりづらいといえば、2Bもそうか。

 

「ん? なにか?」

 

 視線に気づいて首を傾げる2B。

 

「ねえ。2Bってさ。笑うことってできるの?」

「‥‥‥すまない、質問の意図が分からない」

「いやほら、いつも無表情だし。笑顔になることってあるのかなーって。ほら、笑顔笑顔」

 

 にこーっと笑顔を作ってみせて、2Bもやってみてと催促する。ほら早く早く。

 

「い、いや。確かにできない訳ではないけれど。機能としては備わってはいるけど、特別必要とされる機会もなかったと言うか」

 

 言い訳しながらしばらく躊躇っていた2Bだが、やがて観念したようにため息をついて。

 

「こ、これでいいかな?」

 

 ニコッと、ぎこちなく笑ってみせてくれた。

 ‥‥‥ふむ。

 もうちょっと柔らかさが欲しいところ。

 2Bのほっぺたを摘んでくにくにと揉んでやる。

 素材自体は柔らかいのになあ。

 

「も、もういい? 流石に恥ずかしいのだけど」

「‥‥‥アンドロイドの感性って変わってるわね。パンツ丸出しが平気なのに笑顔が恥ずかしいって」

 

 2Bの履いているスカートを見ながら呟く。

 見ているこっちが恥ずかしいのでスカートを作ってあげたら、気に入ってくれたみたいだ。

 

「私に言わせれば、すみれの感性もたいがい変わっていると思うけど」

 

 そうかな?

 初めて指摘されたし、自分では普通だと思うけど。

 まあいいや。

 それはともかく。

 

「サヤー! ハイブの人が鉄板たくさん売ってくれたから、しばらく鉄は掘らなくていいわよー!」

 

 離れた場所でいつものように鉄を掘っているサヤに、そう声をかける。

 放っておくと何時間でも働き続ける根性だけは大したものだと思う。

 本人は誰にでもできることしかしていないと思っているようだけど、決して誰にでもできることじゃない。

 

「ありがとうございます。それじゃあ他に何か、仕事ありますか?」

「ないわよ。しばらくゆっくり休んだらどう?」

「休む‥‥‥うーん。それはそれでサボってるみたいで落ち着かないといいますか。あっ、そうだ! それじゃちょっと、やってみたかった事があるんです! トレーニングダミーを使った訓練なんですけど」

 

 ダミーで訓練?

 私もシノビ盗賊の施設でちょっと触った事があるけど、あれで訓練したところで実戦で戦えるようになるとは思えないのだけど。

 ダミーで訓練しただけの素人より、傭兵を雇った方がずっと強い。

 訓練してる暇があるなら金策してる方がマシだと思う。

 そう伝えてみると。

 

「あ、いえ。戦いの訓練じゃなくて、不意打ちの訓練なんです。なんでも不意打ち用のトレーニングダミーってのもあるらしくって。こう、相手の背後から首をズシンッ! って」

 

 あー。

 なんか昔みことがやってた気がする。

 結局1人ずつしか相手にできないし、戦う時は複数人でグループを組んでるから途中から全然使わなくなったのよね。

 けど、ちゃんと戦える実力がある上でプラスαとして不意打ちの手段もあるというのは強いかもしれない。

 モールさんだって普通に戦うだけですっごく強いのに、その上で口八丁手八丁、使える手段はなんでも使うって戦い方だし。

 自分の力に慢心しない、って事なのかも。

 

「なるほどね。そのトレーニングダミーを作りたいと」

「はいっ。一緒に作ってみませんか、すみれさん」

「いいわよ。こっちも暇だったし。場所は‥‥‥水耕栽培に使ってる建物の2階が空いてたかしらね」

 

 そうしてサヤと2人で2階まで資材を運んで、トレーニングダミーを組み立てる。

 ついでに隣にシャワースペースも作っておいて。

 

「それじゃ、無理しない程度にがんばって」

「はい。‥‥‥あの、わざわざありがとうございます。シャワースペースまで」

「ん。まあ私が使ってみたかったってのもあるしね。井戸から水を汲まなくても水が流れてくるなんて凄いわね。考えた人、どういう頭してるのかしら」

 

 こういった設備の設計はイズミがしてくれているのだけど、イズミがゼロから考えているわけではないそうだ。

 大昔の人の残した知識を読み解いているだけだと本人は言っていた。

 大昔の人は、一体どれほどの知識と技術を有していたのだろう。

 そんなことがありつつも、割と平和な日常が数日間続いた頃。

 またしてもホーリーネイションの軍勢が攻めてきた。

 懲りない連中だが、今回はいつもと少し様子が違った。

 軍を率いるのはホーリーネイションの大幹部、上級審問官ヴァルテナだ。

 セタを除けば、実質ホーリーネイションのNo.2。

 浮浪忍者の人たちからもすぐに応援に向かうと伝令がきたが、まだ到着していない。

 ‥‥‥厳しい戦いになりそうだった。




 第65話、読んでいただきありがとうございます。シャワーはkoz様のmod、『CMKillingTime』です。わずか数時間の突貫工事で水道が引ける超技術、仕組みは私にも分かりませんが、導入するだけで拠点が賑やかになるお勧めですのmodです。ゲームバランスを変えないところも良いですね。
 次回はヴァルテナさんとの決戦です。どうぞお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。