「当たり前でしょう。大切な仲間なんだから」
大太刀を構え、ホーリーネイションの兵士と向かい合う。
「
驚いた表情で兵士が言う。
何を驚いているのか知らないけれど、勝手に殺さないでほしい。
「サヤ、傷を塞いだらとにかく逃げなさい。後は私が‥‥‥サヤ?」
返事がない。
コツンと軽く足で蹴ってみるも、反応がない。
チラリと振り返って確認してみると、ちょっと尋常ではない量の血が地面に広がっていた。
全部がサヤの血ではなく、さっき撒かれた油も混ざっているだろうけれど‥‥‥それを差し引いても、明らかに致命傷だった。
‥‥‥急いでこの兵士どもを片付ければ、助けられるだろうか?
間に合うかどうか、際どいところだ。
「まさか生きていたとはな、
ー斬った。
一気に駆け寄り、そのまま前列の兵士の横を駆け抜けざまに一閃。
腕で剣を振るのではなく、自身を剣の一部とするイメージで駆け抜ける。
最後列の油断した兵士が驚きの表情を顔に浮かべる頃には、私はそいつの胴を両断しつつ、剣の勢いを活かして反転、再び兵士たちと対峙していた。
無茶な突撃をかましたせいで私もいくらか斬られたが、お腹は無事だ。
こっちも、ちゃんと守らないとね。
「こいつ! まさか仲間を見捨てるつもりか!? やはり魔女か!」
「うるさいわね。戦場で何かを語りたいなら、刀で語りなさい」
生死をかけて刀を合わせれば、言葉なんてなくても大体わかるものだ。
例えば目の前のコイツらが、サヤを見逃す気なんてないって事とか。
コイツらから私に向けられる感情は、憎悪や恐怖。
まるで怪物でも見るかのようなその目には覚えがある。
リバースの囚人が歩哨を見る時の目にも似ているし、サヤが時々私に向けてきた視線にも似ている。
「行くわよ」
「くっ!」
再び敵に向けて駆け出すと、最前列の兵士がそれに対して防御姿勢をとる。
腰を落として、右手に持つ剣の腹に左手を添える、鍔迫り合いを挑む構えだ。
そしてさらに何人かの兵士が大きく迂回して私の背後を狙いにきてる。
鍔迫り合いにノッてきたところを背後から斬りつけるつもりだろう。
だったらこっちは!
「はっ!」
真上から真下への全力の切り下ろしでそいつの剣を叩き、その誘いにノッてやる‥‥‥と見せかけて、その叩きつけた反動を使って体を浮かせ、ドロップキックでそいつの顔面を蹴り飛ばす!
そのまま上空に飛び上がって下を確認すれば、迂回していた兵士と目が合う。
そいつは私に向けて剣を突き上げてくるのだが、構わず大太刀で迎え打つ。
ドオオォンッ!
と地響きを鳴らせながら着地。
大太刀の重量と私の体重、それを合わせて空中から落下と共に叩き込めば、いくら鍛えられた兵士だって受け止めることなんてできはしない。
レッドが手合わせで教えてくれた技だ。
着地の衝撃と共に舞い上がった砂煙に身を隠し、気配を頼りに斬る。
どうせこの辺りは自分以外は全員敵なのだ。
砂煙が姿を隠してくれている間がチャンスとみて、手当たり次第に斬りまくった。
「ぐああっ」「くそっ、どこから‥‥‥」「おいよせ、俺は味方だ!」「いたぞこっちだ、魔女がこっちにいたぞ!」
そんな兵士の声から、相手の混乱具合が伝わってくる。
あれでも最後のやつの声、何だかみことの声に似てたような?
そもそも私がいる場所と全然違う場所から「こっちにいたぞ!」って聞こえたし。
「‥‥‥」
砂煙に隠れて、みことの姿は見えない。
けれど、姿は見えなくても存在はしっかり感じられた。
いいフォローするじゃない、みことのやつ。
思わずクスッと笑みが溢れる。
気づけば周囲から兵士の姿は消え、私とサヤだけが残されていた。
サヤに駆け寄って呼吸を確認してみる。
良かった、まだちゃんと生きてる。
私は包帯を取り出し、サヤの傷を治療していった。
「そろそろ降参したらどうだ、ヴァルテナさんよ! さっきから防戦一方じゃねーか!」
「やなこった。可愛い部下が命張って戦ってんだ、俺が折れる訳にはいかねーだろ」
オレと2Bの2人を相手にしながらも、ヴァルテナは奮戦していた。
だが。
「その大事な部下だが、あっちで侍相手に喧嘩してるみたいだぜ?」
「なっ!?」
オレが指を指してやると、そこでは都市連合の侍部隊とみことが協力してホーリーネイションの兵士と戦っていた。
「なんで侍が‥‥‥お前達、まさか都市連合とも繋がっていたのか!?」
「いやいや、まさかそんな。けど、ここはバストだぜ? いつだって都市連合の侍が巡回しているさ」
「バッ、バカな!? そんなに都合良く侍が巡回しているものかっ! そもそも侍の巡回ルートは事前に調べてある、この場所を巡回するのは数日も先のはず‥‥‥!」
信じられないものを見るような目で叫ぶヴァルテナ。
やはり事前の下調べも入念にされていたか。
さすがはヴァルテナ、強敵だ。
個人の戦闘能力だけでなく、部隊の動かし方から作戦の立て方、事前の下調べまで隙がない。
間違いなく強敵だったよ、お前は。
だけど。
「だけどね」
そんなヴァルテナに歩み寄る、小柄な人影。
イズミだ。
「だけど侍だって、時には予定とは異なるルートを巡回する事もある。そう、例えば‥‥‥どっかの新興勢力が、税金を払い忘れた時とかね」
「!!」
ニヤリ、と意地悪く笑ってみせるイズミに、侍たちが歩み寄ってくる。
「お疲れ様、侍さん。そっちは終わった?」
「何がお疲れ様だ、このガキ!! こっちは税金の取り立てに来ただけだってのに、余計な仕事押し付けやがって! で、今回こそはちゃんと払ってもらえるんだろうな?」
「うん。前回のと合わせて6000cat、これでいいかな?」
「次からは遅れるんじゃねーぞ、もうこんなトラブルは御免だからな」
そう言うと侍たちは、文句を言いながらも帰っていった。
「いい作戦だったと思うよ、ヴァルテナ。キミは間違いなく強いし賢い。けど、残念。頭脳戦ではボクの方が上だったみたいだね」
「‥‥‥そうか、お前が。まさか組織の頭脳が、こんな子供だったとはな‥‥‥誤算だったぜ」
ガクリと膝をつき、武器を捨てるヴァルテナ。
「降参だ。だが、どこからだ? どこからお前達の作戦だった? こっちの作戦はどこまで読まれていた?」
不思議そうに尋ねてくるヴァルテナ。
そんな彼に、イズミは冷めた目で答える。
「別に作戦なんて大層なものじゃないさ。あらゆるパターンを想定して、その全てに対応できるように準備しただけさ。あの時の二の舞だけはゴメンだったからね」
「‥‥‥あの時?」
「キミは覚えてないだろうけどね、ボクがキミと会うのはこれで2回目なんだよ。あの時キミは、ボクから家族も友人も故郷も、全てを奪っていった。ちょうどこの場所でね」
イズミの言葉に、ヴァルテナは目を見開く。
「まさか、お前は‥‥‥!」
「バストの生き残りさ」
言いながらイズミは、クロスボウを構える。
イーグルクロス、傑作等級。
リドリィと2Bがデッドランドまで行って買ってきてくれた、大陸最強のクロスボウだ。
そいつをヴァルテナの眉間に合わせて構えるとイズミは‥‥‥躊躇なく、その引き金を引いた。
第67話、読んでいただきありがとうございます。大人数の戦闘シーンって難しいですね、やたら執筆に時間かかりました。お待たせして申し訳ない、そして、ありがとうございます。