こんにちは。
サヤです。
今、私はホーリーネイションの首都のすぐ近くに来ています。
「ほ、ほんとにきちゃいましたね‥‥‥大丈夫でしょうか」
私と一緒に同行するのは、リドリィさんと2Bさん。
『どうせやるんだったら、打てる手はすべて打とう。確実に勝ちに行くよ』
3日前、イズミさんはそう言ってメンバーを3つのチームに分けた。
これは最近気づいた事なのだけど、イズミさんは『絶対に』とか『確実に』という単語を使って話すことはまずない。
そんなイズミさんが、確実に勝ちに行くと言い切った。
その時、首都襲撃作戦は1週間後と言っていた。
つまり、作戦実行まで今日から数えて残り4日だ。
チーム分けは次の通り。
まず、みことさんとすみれさんで1チーム。
この2人には武器と防具を作ってもらう。
ダメ元で構わないので作戦ギリギリまで、今より良い装備を目指して作り続けてもらう。
次にレッドさんとイズミさんで1チーム。
この2人で都市連合各地の都市やウェイステーションを回って傭兵を可能な限り集めてくる。
予算は決めず、地図に載ってる全ての都市で雇える傭兵を全て雇う計画だ。
最後に私とリドリィさんと2Bさんで1チーム。
私たちの役割は、作戦前に首都の近くまで行き、砦を建てること。
‥‥‥責任重大すぎやしませんかね?
「というか砦って、何を作ったらいいんでしょう?」
私の問いに、リドリィさんが答えてくれる。
「監視塔ってのがいいんじゃない? ほら、シノビシーフが好んで使ってるタワー型の建物。そんで中にベッドを沢山詰め込んだら、一応砦の機能は果たすんじゃないかな」
「ああ、なるほど。傭兵さんが何人雇えるか分かりませんが、ベッドは沢山あった方がいいですよね。‥‥‥あれ、でもそれって砦というより野戦病棟では‥‥‥?」
そりゃもちろん病室も大事だし作るけれど、砦っていう言葉のイメージとは遠いような。
でも他に何が必要かって聞かれると思いつかない。
戦った経験が無さすぎて必要なものが想像できない。
私たちのチームで1番戦い慣れしてるのは2Bさんだけど、と2Bさんの顔を伺う。
ちらり。
「む? 私は修理ベッドさえあればいつまででも戦い続けられるぞ。他のものは必要ない」
ダメだ、2Bさんの戦い方は強引すぎて参考にならない。
「そ、それじゃあとにかくベッド作ろう、ベッド! 足りないものがあったらレッドやイズミが来てから一緒に作ったらいいし!」
「そ、そうですね! 野戦病棟も大事ですもんね! ベッド大事です!」
そして、持ってきた建築資材を使って3人で監視塔を建てる。
砦、あるいは野戦病棟。
それは戦争のための準備。
‥‥‥4日後、この場所は戦場になる。
「首都って、街なんですねえ」
すごく当たり前の感想が、思わず口からこぼれた。
「あん? どういうこと?」
怪訝そうに聞き返してくるリドリィさん。
「あ、いえ。あの街には戦いに関係ない人も大勢暮らしてて。雑貨屋さんがあって、パン屋さんがあって、バーがあって。殆どの人が私たちとは何の関わりもない中で平和に暮らしてて。‥‥‥そんな平和な暮らしを、終わらせようとしてるんですよね。私たちって」
あの国の兵士に殺されそうになったせいで、どこかホーリーネイションという国に対して、恐ろしい人たちの集団のようなイメージがあった。
けれど、別に国民の全員が兵士なんてことは当然なくて。
普通にお店で働いて、お店で買い物して、たまにバーで酔っ払ってる‥‥‥そんな普通の人たちの街なんだ。
ここから首都を眺めていると、そんな街の様子が伝わってくる。
「‥‥‥そりゃ、そうだけどね。先に手を出してきたのは向こうじゃないか。あたしも2Bもサヤも、とっくにホーリーネイションから目をつけられてる。あの国がある限り、あたしたちは平和に暮らすことなんてできないんだよ?」
リドリィさんの言うことも分かる。
実際、殺されかけてるし、私。
‥‥‥平和って難しいなあ。
そんな会話をしながら、やがて空が暗くなってきた頃合いで監視塔が出来上がった。
縦長の大きな建物なので、首都からもこの塔がよく見えるはずだ。
けれど、すぐに街から兵士が飛び出して襲ってくるようなことはなかった。
まずは様子見ということだろうか。
「‥‥‥あの街の人たちは、突然首都の目の前に造られた塔を見て、何を感じるのでしょうね。どのような思いで、今日の夜を過ごすのでしょうか」
私は戦いが嫌いだ。
私が弱いからじゃない。
弱い者が理不尽に虐げられるから、嫌いだ。
これはきっと、すみれさんには理解できない感覚なのだろう。
その後、塔の中にベッドを作り続けていると、2日後にレッドさんとイズミさんが合流。
2人はちょっとドン引きするほどの人数の傭兵を引き連れていた。
ざっと50人くらい?
イズミさん曰く、『ホーリーネイションの最大の武器はその豊富な人員。ならばまずはそのアドバンテージを奪ってやろう』とのこと。
さらに翌日にはみことさんとすみれさんも合流し、戦いの準備が完了する。
みことさん達の表情をみると、納得できる仕上がりの武器が完成したようだ。
「ついに、始まるんですね。戦いが」
私の呟きに、すみれさんが応えた。
「なーにバカな事言ってるのよ、サヤ。終わらせるのよ、戦いを」
塔の最上階から、イズミさんが号令をかける。
その手にはイーグルクロスの傑作等級。
復讐に使われることはなかった、大陸最強のクロスボウ。
威力はもちろんのこと、その射程距離も大陸最強の名に恥じない。
「それじゃ、作戦開始だ。みんな、構えて」
ヒュンッ‥‥‥!!
晴れ渡った空のもと。
開戦の
第71話、読んでいただきありがとうございます。いよいよ物語も大詰め、最後までお付き合いいただけると幸いです。