多勢に無勢をして、状況は均衡状態にあった。
機先を制していたこと、また、カウンターを盾に戦えるという位置取りが、
現時点でストライフの圧倒的不利に歯止めをかけていた。
ストライフは銃撃戦を繰り広げながら、状況を分析する。
まず、第一に賊はどうやらただの銀行強盗ではないらしいということ。
単に賊の銀行への乱入を見逃していたのではなく、そもそも、
銀行の奥から、賊は出てきている。
加えて、人質は解放され、それでも賊は逃げる様子も見せず、
現状でこの場に留まる意思があるらしいときては、ほぼ確定だろう。
第二に、疑問点、なぜ、マリア――このアーコロジーを管理する人工知能――、はこの賊を鎮圧しないのか。
本来、この手の”おいた”は即座に治安維持用のレーザーで無力化され、
後は警察なりなんなりに捕縛されてお仕舞いのはずだ。
集団での実銃保持、およびその利用を、マリアが承認している?
だとしても、俺はどうだ?
俺自身はマリアから、所持の許可は得ているが、
フロントガラスの破砕を初めとして、明らかに許容外の実銃使用をしている。
にもかかわらず、現状でおとがめなし。
先ほど銃撃戦の片手間に手近な端末で確認した限りでは、この件を除いて、マリアは平常運転だった。
つまり、この状況は全てが黙認されているらしい。
最後、賊の正体。
先ほど、銃弾をお見舞いしてやった、入り口付近の数人が起き上がる様子がない。
ヘルメットまで被っている以上、ヴァンピーアなら昏倒はしても、そろそろ起き上がってもいいはず。
まさか――。
そこまで、考えて、敵を確認すると、賊の1人が先ほどまで人質がいた方向に銃を構えている。
ハッとして、そちらを確認すると、少女が1人こちらを見て突っ立っているではないか。
「くそったれ!」
そのまま、銃弾をばらまいて威嚇すると、少女の方へ飛びつく。
先ほどまで少女がいた場所に銃弾が飛ぶが、間一髪、少女を抱き締め、
2人して転がるように、近くに倒れていたデスクの陰に隠れた。
「馬鹿かお前は、逃げろ、って言ったろうが」
「わかってるわよ、馬鹿!!
ああもう、ばかばっか。
あたしが一番の大馬鹿よ、わかってる、文句あんの!?」
呆けた顔から、目に光が差したかと思えば、逆ギレかましてくる少女に唖然として言葉も出ない。
とにかく、この状況を何とかしなくてはならない。
言い負かされたと思われるのは癪なので、舌打ちだけ返して、銃撃戦へと意識を戻した。
端的に言って、完全に劣勢。
先ほどまでは横に広いカウンターを盾に、意地の悪いモグラ叩き、もちろんストライフは叩かれる側、
その要領で、叩く側を混乱させていたが、今隠れているデスクでは、逃げ場はなく完全に袋の鼠だ。
震える少女を抱えながらどうしたものかと、思案していると、
「撃ち方止め!!」
言葉とともに、一斉に射撃が止まる。
「隊長、いったい何事かな?」
「拠点制圧後、銃を持った男がそこのフロントガラスから乱入、
人質は解放され、現在、そこに鼠が2匹立てこもっております」
「なるほど……、おいそこの2人、よかったな、命拾いしたぞ、見逃してやる」
「しかしっ!」
「隊長、気持ちはわかるよ、10名程か犠牲が出たな。
加えて、鼠相手でも全力を出す姿勢は俺としては、悪くない、と思うがな。
鼠にかまけて、鬼に横腹抉られるのはつまらんだろう」
そう区切ると、こちらに向けて続けてきた。
「まあ、そういうことだ。個人的には礼を言っておこう。
良い前哨戦になった。
部下達も舐めてかかると痛い目を見ると身に染みただろう
あと、見逃すが、何もしなければ、だ。弁えろよ」
そう言うと、こちらから離れていく足音が聞こえる。
一難は去ったものの、男の達の気が変わっては勝ちの目はない。
ストライフは少女の手を引き、その場からこそこそと離れると、
広場の様子を確認できる場所に隠れた。