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ポケットモンスター、縮めてポケモン。ヒトとは違うそれらの不思議な存在が暮らす、これまた不思議な世界。これは、そんな世界で暮らす一人の少年とその仲間たちの物語。
カントー地方、マサラタウン出身の少年、サトシ。彼はシトロン、セレナ、ユリーカという三人の旅仲間と共にカロス地方のポケモンリーグに出場すべく各地のジムリーダーに挑んでいた。その最後のジム、エイセツジムのジムリーダー、ウルップに挑んだサトシは、ショータに敗北したことをきっかけに焦り、スランプ状態に陥っていたため惨敗。カロスでのエースポケモン、ゲッコウガとの関係に亀裂が入りかけてしまうが、サトシを慕うセレナの叱咤激励、そして雪山での遭難でのゲッコウガとの仲直り。帰還したサトシはほぼいつもの状態に戻ったものの、その翌日になってもまだ何処か立ち直れていなかった。その夜、ポケモンセンターのベッドにすぐに寝つけずにいたサトシは、ふと思い立ってジョーイさんに頼み、ある人物にテレビ電話をかけた。数分後、映像が繋がり、一人の少女が現れる。
『……サトシ?』
その少女は慌てて着替えてきたのか服の所々が乱れており、眠い目をこすりながら乱れを直していた。
「……ごめんな、ヒカリ。こんな夜に」
『ううん、だいじょーぶ。何かあったの?』
その少女の名前はヒカリ。かつてシンオウ地方でタケシという元ニビジムのジムリーダー、現ポケモンドクターの研修生と共に旅をしていた、ポッチャマを相棒とするポケモンコーディネーターの少女である。先日ライバルのウララをジョウトのグランドフェスティバルで打ち負かし、見事トップコーディネーターの一員になった―サトシの恋人である。
「えっとな……」
サトシはこれまでにあったことをポツリポツリと話し出した。忍者の里でゲコガシラからゲッコウガに進化した時に初めて発動した、サトシゲッコウガというキズナ現象。徐々に使いこなせるようになるも、ライバルのショータにバッジ数で抜かれたことに端を発した不調。
『サトシ、それは……』
「俺が悪かったんだ。後輩の新人トレーナーに抜かれて、焦りすぎて本来の俺たちのバトルが出来てなかった。……『サトシゲッコウガになれば、勝てる』って馬鹿の一つ覚えで考えてた。俺一人が突っ走りすぎて、ゲッコウガが付いてこれてなかったんだ。……俺たちトレーナーは、ポケモンと歩調を合わせなきゃいけないのに……」
ヒカリはクスリと笑って、落ち込むサトシに優しく語りかけた。
『……ねえ、サトシ。覚えてる?わたしがスランプに陥ってた時のこと』
「あ、ああ……」
『あの時のわたしが正に今のサトシだった。ポケモンのワザを磨くことばっかり考えて、ポッチャマたちのことを考えてなかった。あの時、サトシが背中を押してくれたから、今のわたしがある。―だから、今度はわたしの番。ポケモンと一緒に、楽しんでバトルすればいい。どんな困難でも、ポケモンたちと全力で力を合わせて立ち向かえばいい。……それが、サトシのバトルスタイルなんだから。きっと、今のサトシならダイジョーブ!』
サトシはあっけにとられた後、いつも通りの元気に溢れた笑みを浮かべた。
「……そうだな。そうだったな。サンキュー、ヒカリ。……やっぱ、ヒカリのダイジョーブは元気をもらえるな」
『そ、そう?』
「ああ。……ヒカリ、俺決めた。今回も、全力でバトルする。『本当の本気』でバトルする。必ず、カロスリーグで優勝するよ」
サトシは拳を突き出し、不敵に笑う。……サトシは今、完全復活した。
『うん、わたし、ポッチャマたちと応援してるから!―三連覇目指して、頑張って!』
「……おう!じゃあ、またなヒカリ!」
『うん。おやすみ、サトシ』
そう言ってヒカリは通信を切る。何も映さなくなったモニターに向かって、サトシはポツリと言った。
「……おやすみ、ヒカリ」
サトシは踵を返し、自分の部屋に戻る。そんな彼の後ろ姿を、影からそっと見つめる人影があった。―セレナである。
「……やっぱり仲がいいなあ、サトシとヒカリさん……」
ハア、とため息を吐くセレナ。セレナは今となっては大分前となってしまった、衝撃の出来事を思い返す。
あれは、偶然出会ったミルフィと道を歩いていた時の話。
『ねえ、サトシ。サトシには”イイ人”いないの?』
『イイ人?』
小首を傾げるサトシ。超鈍感でないとはいえ、まだまだ鈍感な部分もあるためすぐには分からない。そんな彼とは逆にサトシに並々ならぬ愛情を抱いているセレナは、サトシの反応にびくびくしている。
『好きな人ってことよ。いるの?』
サトシが次に返した言葉に、その場の全員が仰天することになる。
『……ああ、居るぜ』
『『『えええええええええ!?』』』
『あら』
慌ててサトシに詰め寄るカロス組。サトシはそんな彼らにタジタジになり、ミルフィはその様子を見て面白がる。
『サ、サトシ、こ、恋人が居たんですか!?』
『うっそー!?誰誰?』
『ど、どんな人なの!?』
『お、落ち着けよ、シトロン、ユリーカ、セレナ。……この子だよ』
サトシが懐から取り出したのは、ジュニアカップの時にヒカリとデートした時にデントに撮ってもらった写真だ。腕を組み、幸せそうに笑う二人。セレナたちはその写真を覗き込む。セレナは内心、かなりショックを受けていた。
(う、嘘……サトシに、恋人が居たなんて……)
『名前はヒカリ。シンオウ地方のフタバタウン出身の、ポケモンコーディネーターだ。俺の……ベストパートナーだよ』
写真を見て、懐かしそうに笑うサトシ。サトシの口から飛び出た言葉が分からないユリーカは、小首を傾げる。
『ポケモンコーディネーター?』
『聞いたことがあります、確かカントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ地方で盛んなトライポカロンのようなものだと』
ミアレジムのジムリーダーでもあるシトロンはその存在を知っていたらしく、たどたどしく補足した。
『半分正解、かな。コンテストにはアピールのみの一次審査と、コンテストバトルの二次審査がある。コンテストバトルは、ジム戦やポケモンリーグ並みに激しくアピールしながらバトルをするんだ。トップコーディネーターを決めるグランドフェスティバルなんか、マジでリーグ本戦並みに熱かったよ』
『へえー、ユリーカ、見てみたい!』
『多分どっかに映像上がってるはずだから、後で見てみようぜ!』
『うん!』
『あの、サトシ。そのヒカリさんって、どんな人なの?』
己の想い人を射止めた人物についてもっと知りたいと、脱線していた話を元に戻すようにセレナがサトシに質問する。
『あ、ごめんごめん。……俺が出会ったときは、セレナと同じでまだ旅立ったばかりの新人トレーナーだったよ。最初からトップコーディネーターになりたいって夢を持ってて、途中で二連続で惨敗しちゃってスランプになったこともあったけど、立ち直って前向きに進んでいった。喧嘩することも多かったけど、一番俺が一緒に居て楽しい、って思えたのがヒカリだったんだ。……気が付けば、無意識のうちに好きになってた。あいつの明るさと優しさに、ホント助けられたよ。……ヒカリが居なければ、今の俺はなかったと思う』
その晩、野宿をするサトシ達。セレナは昼間に聞いたサトシの話から受けた衝撃が抜けず、眠れずに一人体育座りをして空を見上げていた。
(サトシに恋人が居たなんて……)
あれから歩きながらサトシとヒカリの思い出話を聞いたが、その話をしているサトシは本当に楽しそうで、嬉しそうだった。
(あれは、勝てないなあ……。!ダメダメ、弱気になっちゃ!まだチャンスは沢山あるんだから!)
サトシとヒカリの固い絆を前にあきらめかけるも、まだ『恋人』止まりなためまだチャンスがあると首を振り、己を叱咤するセレナ。そんな彼女の隣に、誰かが座る。
『どうしたんだ、セレナ?なんか起きたら居なかったから、探しに来たんだ』
『サトシ……』
セレナの隣に座ったのは、今日セレナたちに大きな衝撃をもたらしたサトシだった。
『うん……ちょっとね』
『……そっか』
既にサトシは察しているのか、深くは聞かずに黙る。二人はしばらく、夜空に輝く星々を無言で眺め続けた。……そしてある時、セレナはポツリと言葉を漏らす。
『……もし私がヒカリさんより先に出会ってたら、どうなってたのかなあ……』
『……え?セレナ、それは……』
セレナはサトシの方に体を向ける、と、堰を切るように立て続けにサトシに言葉をぶつける。……その瞳から、次々と涙を流しながら。
『私、サトシの恋人になりたかった。……ちっちゃい頃サマーキャンプでサトシに助けられた時から、ずっとずっと好きだった!どうして!?どうして、私じゃないの!?どうして、私じゃダメなの!?』
迸るセレナの激情。サトシは衝撃を受け……気まずそうに顔を逸らす。
『……ごめん、セレナ。俺、無神経で……。でも、本当にごめん。俺は、ヒカリを裏切れない。裏切る、訳にはいかないんだ。俺にとって、ヒカリは太陽なんだ。その太陽を……消す訳にはいかない』
『私、わたしはぁ……』
両手を柔らかい地面について、泣き崩れるセレナ。次々涙が地面に零れ落ちる中、サトシは後ろからセレナをそっと抱きしめる。
『あ……』
『ごめん、セレナ。君の気持ちは、すごく嬉しい。けど……君の気持ちは受け取れない。俺にとってセレナは……大事な幼馴染で、大切な仲間の一人だ。それは……ヒカリが居ようと変わらない。それだけは、覚えていて欲しい』
セレナはその言葉を最後により一層激しく泣き出し、気が付くと自分の寝袋で朝を迎えていた。どうやら、サトシが自分の寝床に運んでくれていたらしい。起き上がると、シトロンとユリーカ、それにミルフィが既に朝食の準備を始め、サトシはピカチュウを起こしてゲコガシラたちをモンスターボールから出しておはようと声をかけている。セレナはサトシの隣に立ち、こっそり囁いた。
『……ありがとう、サトシ。でも……私はあきらめない。絶対に、あきらめないから』
サトシは思わず体を硬直させ、少し冷や汗を流す。セレナは囁いた後サトシの前に立ち、両手を後ろにやって笑顔を浮かべた。
(うん。あの時、決めたんだ。今はヒカリさんがサトシの一番だとしても、絶対にあきらめない。必ず、サトシを奪ってみせる。そう、決めたんだから)
あの後もセレナはあきらめることなくサトシに猛アタックを続け、苦手だったバトルも教わるようになった。セレナは、ヒカリと同じようにたくましく成長を遂げたのである。
さて、今回はエイセツジム戦前のサトシとヒカリの触れ合いと、それをこっそり見ていたセレナの回想の二本立て。こんな感じで、過去のお話は誰かの回想という形でどんどん出していきます。サトシとヒカリが付き合うことになった経緯や、シンオウリーグやイッシュ・カロスの道中の大事な所をダイジェストで振り返っていく予定です。全部やってるときりがないので、そこはご了承ください。
この小説で何故ヒカリとサトシをくっつけたのかというと、私が好きなカップリングがサトヒカだったからです。XYシリーズももちろん好きで否定するつもりはまったくありませんが、セレナをハルカやヒカリと比べると、どうしても恋愛に偏りすぎて、ハルカやヒカリのように必死で夢に向かって努力を続け、ライバルたちと勝ったり負けたりの熱いバトルをする描写があまり見られなかった印象です。もちろんセレナなりに努力はしていました。それは、もちろん知っています。ですが……どこか完璧すぎるというか、あっさりしすぎるというか。尺の問題もあるとは思いますが、もう少し壁にぶち当たってもよかった気がします。ヒカリはハルカと同様、いやそれ以上に壁にぶつかり、サトシたちの励ましもあって無事乗り越え、ノゾミと決勝で激闘を繰り広げました。私個人としては、ヒカリとハルカのあの熱い感じが好きでした。
これは、もちろんあくまで自分なりの解釈です。反発される方もいると思います。
その場合は、遠慮なくブラウザバックして下さい。
ですが……過剰な暴言は控えて下さい。そこはご了承いただきますよう、よろしくお願いいたします。
さて、長くなりましたがこれからよろしくお願いします。