エイセツジム、リベンジマッチ当日。サトシはある決意をして、散々腕組みして悩んだ後にあるモンスターボールをセレナに託す。
「セレナ、悪いんだけど一時的にオンバーン預かっててくんない?」
「いいけど……」
「サンキュ。じゃ、俺ちょっとジョーイさんの所に行ってくるから」
そう言ってポケモンセンターのカウンターに向かい、何事かをジョーイさんと話し始めたサトシ。少し離れた所から、シトロンたちがその背中を見つめる。
「どうしてサトシ、オンバーンをセレナに預けたんだろう?」
「……もしかすると、サトシはポケモンを転送してもらうのかもしれません」
「「え!?」」
シトロンは手を顎に当てながら、セレナとユリーカに己の推測を説明する。
「サトシの手持ちは今五体。オンバーンをセレナに預けたということは、二体転送してもらうために枠を一つ空けたかったのでしょう。そして多分……その二体をサトシはジム戦に投入するつもりです」
「じゃあ、ルチャブルとファイアローは?」
セレナの質問に、シトロンはいつもの優しい表情ではなく、ジムリーダーとして真剣モードで答える。
「……見学、でしょうね。今日のサトシは、いつも以上に真剣で、ピリピリしてます。……カロスリーグに向けて、本気モードになっているのでしょう」
三人の視線の先では、シトロンの予想通りジョーイさんと話し終えたサトシがピカチュウが向かったのは……ポケモンの転送システムだった。
サトシが通信を入れてしばらくすると……モニターの電源が点いて何処かに繋がる。サトシの目の前に映ったのはちょこんと座る背中に蕾を背負った、緑色の斑点模様のある可愛らしいポケモンだった。
「ふ、フシギダネ?」
「ピカピカ?」
『ダネ!?ダネダネダ―!?』
フシギダネは、己の大切な主人とその相棒の姿を認めると、嬉しそうにはしゃぎ出した。サトシとピカチュウにも、自然と笑顔が浮かぶ。
「元気してたか?」
「ピーカ?」
『ダネフッシ!』
フシギダネは、当たり前だと言わんばかりに大きく頷く。
「そっかそっか。オーキド博士とケンジ、呼んでくれるか?」
『ダネ!』
フシギダネは、心得たとばかりにぴょんとつるのむちを使って机から飛び降り、モニター前から姿が消える。サトシはそれを確認すると一息吐き、ピカチュウはどうかしたの、と首を傾げる。
「ピカピ?」
「なんでもないよ。……ピカチュウ、今回のカロスリーグはシンオウリーグ並みに激しい戦いになる。皆の力を借りなきゃ、勝てないと思う。頼むぜ相棒!」
「ピカッチュウ!」
ピカチュウは小さな手で握りこぶしを作り、むん、と決意を示す。頼もしい相棒の姿に、サトシは不敵な笑みを浮かべた。と、そこでモニター画面に二人の人影が映る。
『サトシ、ピカチュウも久しぶり!』
「ケンジ!元気にしてたか?」
「ピーカピカピカ!」
『元気そうじゃの、二人共。して、用件は何じゃ?』
「オーキド博士!……急で悪いんだけどさ、―――――と―――――を送ってほしい」
『うむ、よいが……カロスリーグはまだなんじゃろ?』
「ああ。けど、カロスリーグ前に感覚取り戻しておかないと、流石に今回は厳しそうだから……」
『わかった。ちょっと待っておれ』
そして、転送してもらった二体のポケモンのモンスターボールをホルスターに付けると、代わりにルチャブルとファイアローのボールを外して彼らを呼び出す。
「悪い、ルチャブル、ファイアロー。……二人は見学だ」
「チャブ!?」
「アァ!?」
当然リベンジマッチに出れるものと思っていたルチャブルとファイアローはサトシに怒って詰め寄る。しゃがみこんでピカチュウと共に彼らをなだめたサトシは、真剣な表情で二人に語り掛けた。
「ごめんな、出してやりたいのは山々なんだけど……カロスリーグがもう迫っている以上、早めに昔の感覚を取り戻さなきゃいけないんだ。そのために、昔の仲間を呼んできた。こいつらのバトルを見て、糧にしてほしいんだ。きっと、いいバトルを見せてやれると思うから。頼む!」
サトシは両手を上に挙げて手を合わせ、頭を下げる。ルチャブルとファイアローは主人の心を汲み取り、顔を見合わせると一声上げて頷いた。
「チャブル!」
「アァーッ!」
「……サンキュー、二人共」
サトシはモンスターボールに二匹を戻し、セレナたちに駆け寄る。
「お待たせ。こいつらとピカチュウを頼む」
セレナにモンスターボール二個を託し、ピカチュウもシトロンに預けるサトシ。
「いいんですか?」
「ああ。こいつらでリベンジすることにした」
サトシはポンポンと腰のホルスターに着けたモンスターボールを叩いた。
「……見せてやるよ、カントーフロンティアブレーン『フィールド・ルーラー』のバトルを」
サトシはその場の誰にも聞こえない声量で、ぼそっと呟く。彼の表情は、セレナたちが見たことないほど真剣であった。
そして、再びエイセツジムを訪れたサトシ。上の観客席でセレナたちと、既にボールから出ているサトシのカロスの手持ちたちがサトシのバトルを応援し、サトシとウルップはバトルフィールドで静かに闘志を見せて向き合う。
「そんじゃ、始めようか!出番だ、カチコール!」
「カッチカッチカー!」
フィールドに出てきたのは、惨敗した前回とは違い、クレベースの進化前のカチコールだ。
「カチコールか……」
「前回と違うわね……!」
「カチコールで何を仕掛けてくるのか……」
サトシは不敵に笑うと、ホルスターから一つのボールを取り出し、勢いよく投げる。
「……じゃ、行きます!―バクフーン、君に決めたッ!」
サトシの一体目は―バクフーンだ。マグマラシからさらに大型化し、炎の量も激増した熱き火ネズミがその背中から灼熱の炎を噴出させる。
「バクゥーーーーッ!」
「なんと……!」
「バクフーン!?」
「サトシ、あんなの持ってたの!?カッコいい!」
「バクフーンか……!」
セレナがカロス図鑑を取り出してバクフーンにかざした。
『バクフーン。かざんポケモン。マグマラシの進化系。怒りが最高潮の時、触ったもの全てを燃え上がらせるほどに熱い』
「ジョウトの初心者用ポケモン、ヒノアラシの最終進化系ですよ!サトシが送ってもらったうちの一匹が、バクフーンとは……」
「サトシ、ジョウトにも行ってたんだ!」
「あれが、サトシの昔の仲間……」
「ほっほう……随分と熱いのを連れてきたな!」
「それでは、試合開始ッ!」
オドオドした感じの審判が腕を下ろし、ジム戦が遂に始まった……!
つづく
サトシはポケモンを入れ替え、バクフーン、ゲッコウガ、○○○○○の三体でウルップに再戦を挑みます。最後の一体のヒントは、バクフーンと同じくほのおタイプ。そして、ゲッコウガと同じく特殊な力に振り回され、最終的に絆の力で克服したポケモンです。
では、また次回で。
バクフーン
サトシがジョウトでゲットしたポケモンの一体。マグマラシがイッシュリーグの真っ最中に進化した姿。
使用する技
ふんか、かえんほうしゃ、かえんぐるま、ニトロチャージ、だいもんじ、あなをほる、つばめがえし