サトシがまず連絡を入れたのは、オーキド研究所。前回のイッシュ地方では、イッシュリーグのためにオーキド研究所から他の地方の仲間たちを何体かケンジに連れてきてもらっていた。今回は転送設備が既に整っているため、ケンジを呼ばなくてもいいのだが……大事な旅仲間の一人であるケンジを仲間外れにするのは忍びなく、また一度で済むため声を掛けることにしたのだった。
しばらくピカチュウと共にモニター前で待機していると、モニターの画面が点いて数人の人影が映し出された。内二人は居ると思っていたケンジとオーキド博士。それに加えて……懐かしい顔ぶれが。
「タケシにカスミ……それに、ヒロシ!?」
「やあサトシ、久しぶり!」
「ああ、久しぶり!……しっかしタケシとカスミはともかく、まさかヒロシに会えるなんて……」
「あはは、偶然だよ。……それよりも二人が君に大事な話があるみたいだ」
「話?何だよタケシ、カス、ミ……」
サトシの言葉が尻すぼみになった理由は簡単。タケシとカスミが、怒っていたからだった。まさに怒髪冠を衝くといった感じで、サトシは思わずピカチュウと抱き合ってガクブル震えた。
「サトシ、俺たちは今ものすごーく怒っている!」
「なんでだと思う?」
「……ワカリマセン」
「……ピーカ」
カタコトで返したサトシとピカチュウ。次の瞬間、二人の怒号が容赦なく突き刺さった。
「ミアレタワーからピカチュウを助けるために飛び降りるって何!?アンタホントに無茶しすぎよ!」
「バシャーモが助けてくれたからいいものの……テレビで見ていて胆が冷えたぞ!」
「……スミマセン」
「……ピーカピカ」
実はあの後、テレビで報道される自分たちの姿を見た時からこうなる気がしていたのだ。
(見られたら俺、絶対に怒られる)
実際今こうして怒られているサトシであったが、心配する彼らの言い分もごもっともなので甘んじて受けることにした。ピカチュウもあの時自分が落ちてしまったしまったことが原因なので、連帯責任でサトシと一緒に怒られることに決めた。
「……はあ。ま、説教はまた改めてそっちに行ったらするわ。それまで首を洗って待ってなさい!」
「……ハイ」
正座状態でガクブルするサトシとピカチュウ。その落ち込み具合に見かねたタケシが苦笑しながら助け船を出した。
「何はともあれ、カントーからは俺とケンジ、カスミ、ヒロシの四人だ。カロスでまた会おう!」
「分かった!待ってるぜ、皆!」
「ピーカ、ピカチュウ!」
そうして一波乱あったもののカントーへの電話を終えたサトシ。次はジョウト地方だ。モニターの画面が点き、三人の人影が映し出された。
「やっほー、サトシ!ジム戦お疲れ様!」
「ポチャチャー!」
一人は先日電話し、励ましてくれたサトシの最愛の少女ヒカリ。そしてもう二人は……
「随分とご無沙汰だね、サトシ」
「久しぶり!ヒカリから聞いたわよ、エイセツジム突破おめでとう!」
「ノゾミ、アイリス!?あれ、イブキさんの所で修業してたんじゃ……」
一人はヒカリの最大のライバルであり、シンオウのグランドフェスティバルでヒカリを破ってトップコーディネーターになったノゾミ。そしてもう一人は、先日まで一緒にイッシュを旅していた旅仲間であり、ジョウト・フスベジムのイブキの下で修業していると連絡があったアイリスだ。
「へへ、驚いた?実はね、私たちハルカと一緒にホウエンに行ってたんだから!」
「ホ、ホウエン!?なんでアイリスとヒカリがハルカと……」
アイリスの口から、未だ面識がないと思っていたハルカの名前が飛び出してきたことに驚くサトシ。その反応を見たヒカリとアイリスは顔を見合わせてクスリと笑い、ノゾミはやれやれと首を振った。
「まあそれは、そっち行ってからゆっくりね!ジョウトからは私たち三人が行くから、待っててサトシ、ピカチュウ!」
「ポチャポチャ!」
「オーケー、じゃあカロスで!」
「うん、またね!」
「まさか、ノゾミとアイリスが一緒に居るなんてな……ピカチュウ、予想できたか?」
「……ピーカ」
サトシの問いかけにふるふる首を振るピカチュウ。
「だよな。……さて、ホウエン行くか」
ジョウトの次にサトシが電話をかけたのは、ホウエン地方。モニターに映し出されたのは、二名。
「サトシ、ピカチュウ!久しぶりー!」
「やあサトシ、紹介ありがとう!」
「マサト、デント!よかった、会えたんだな!」
「うん、サトシに教えてもらった通りにトウカジムに行ったらマサトに会えたからね。お互いにサトシの旅仲間だと知った時は驚いたよ」
ホウエンでサトシからの連絡を受けたのは、ホウエン・カントーバトルフロンティアを一緒に旅したハルカの弟マサトと、先日までサトシ・アイリスと一緒にイッシュで旅をしていたデント。デントがホウエンに行っていることを知っているサトシはマサトは一人ではホウエンから出るのを許してもらえないと思い、デントを保護者役にしようと思ったのだ。
「ははは、そりゃ良かった。デント、マサトを頼むな」
「ああ、君の話をたっぷりしておくよ」
「ボクからもね」
「おいおい、勘弁してくれよ……」
サトシは最後に思わぬ一撃をもらって苦笑しながら、ホウエンとの通信を切った。
「さて、後はシンオウだな……」
残すは後シンオウ地方のみだが、サトシは都合上二箇所に連絡しなければならない。まず初めにサトシが連絡したのは、フタバタウンのナナカマド研究所だ。
「やあサトシ、久しぶりだね。相変わらず無茶しているようだけど」
「サットシー!久しぶりかも!」
「シゲル、ハルカ!シンオウで会って以来だな!」
出てきた二人は、どちらもシンオウで別れたきり会えていなかった仲間たち。サトシの最初にして最高のライバル、シゲル。そして、ホウエンを一緒に旅したマサトの姉のトップコーディネーターのハルカ(ヒカリと同時期に開催されたシンオウのグランドフェスティバルでシュウを破った)。どちらも懐かしい人物である。
「転送されてきた君の図鑑のデータを見たが……相変わらず無茶苦茶だな。伝説のオンパレード……まったく、君って奴は」
「私も見させてもらったけど、相変わらずのサトシクオリティーって感じカモ」
はあ、と呆れたように溜息を吐く二人。サトシは口を尖らせながら、話題を強引に逸らした。
「う、うっさいな……。そ、それよりハルカ、どうしてヒカリとアイリスとホウエンに居たんだ?」
それを聞いた二人はモニターの向こう側で顔を見合わせた。
「あーそれね……結構長くなるからそっちで話した方がいいカモ。まだ終わってないんでしょ?」
「まだ終わってないけど……そういうことならハルカたちがこっちに来た時に聞くよ」
「それが懸命だね。僕らからサプライズもあるから期待して待ちたまえサートシ君」
「じゃあ、カロスでね!」
「サプライズ……?」
「ピィカ……?」
シゲルが最後に残した意味深な言葉にピカチュウと共に首を傾げながら最後の電話を掛けるサトシ。繋がった先は、トバリシティのとある育て屋さんだ。
「……来たな。待って「おっそいぞサトシ!罰金だ罰金!」……やかましい」
「ジュン!?」
サトシが予測していたのはシンジ一人だったが、シンジと同じくシンオウで出会ったライバルの一人、ジュンの姿もあった。
「サトシ、俺もお前のライバルだろ!?なんで誘ってくれなかったんだよ!」
「いや、どこに居るか分かんなかったから誘えなかったんだよ……」
「……今日突然押しかけて来てな」
「ま、まあいいや……ジュンもカロスに来るよな?」
「あったりまえだろ!」
「……りょーかい。シンオウからは四人な」
サトシが全ての所に電話をかけ終えた(イッシュ組は大きな大会の真っ最中のため誘うのを断念)時にはもう夕方であり、サトシは大きく伸びをした。付き合ってくれたピカチュウもまた大きく伸びをし、耳をごしごしした。
「つっかれた……」
「ピッカー……」
「15人か……思ってたより来てくれたな……」
サトシはそうして今までの旅に思いを馳せた後、宿泊場所とスタジアムの席の予約を始めるのであった。
こっちではお久しぶりです……(よ、四ヶ月……)。
新年一発目はこちらを更新。しばらくはこれとエヴァと進撃の三作品を中心に更新していきます。
今年もよろしくお願いします。
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改めて、新年のご挨拶です。