全地球防衛機構軍は平時も戦時も忙しい 作:レンジャーを愛する兵士
時は遡ってプライマーの襲来より二年前。EDFの装備開発部がま〜た何かやらかしたようです。
「佐藤伍長!これ第2ハンガー!行って!」
「はい!」
パワードスケルトンに身を包んだ軍人が、巨大な荷物を抱えて走り出した。今いる第5ハンガーから移動するとなると、スケルトンの移動速度を考慮しても十分以上はかかるだろう。そんな普段の業務をこなす佐藤伍長の隣を通り過ぎていくのは、暴徒鎮圧用の特殊弾頭を開発している研究員達の筆頭、御剣技術大尉である。彼の向かう先は第2ハンガーから第5ハンガーへ、つまりは佐藤伍長と入れ違いである。
「御剣です。安田中尉はいますか?」
「あっ、大尉!今出ます!」
ドアをノックして部下の名を呼べば、中から一人の好青年が姿を見せた。戦時中でもないのにレンジャー用のアーマーを装着している安田中尉は、御剣の視線がアーマーに向いていると分かって、アーマーに関する説明を行う。
「これ、俺が主導で開発していた最新鋭のボディアーマーです。銃弾だけじゃありません、爆発や、酸にだってある程度耐えられるんですよ!本部が寄越したスペック以上の性能です!」
そう言って安田中尉はアーマーに拳銃を宛てがい、発砲する。銃声にハンガー内の技術者たちが一瞬こちらを向くが、アーマーの耐久性、防護性の高さを大尉に教えているのだと理解して、各々の作業に戻っていく。肝心のアーマーはといえば、弾丸による窪みは多少こそあれど衝撃吸収剤によって本人には全くダメージが伝わっていなかった。「なるほど、これは凄い」と口に出すと、安田中尉もそれに調子を良くして、アーマーを取り外し、御剣に持たせる。非力な彼女にはアーマーは重たいのではないかと思ったが、ボディアーマーは軽量化を図って設計開発されていたようで、良い意味で御剣の予想を裏切った。
「これは本当に凄い......遂に完成したのね」
「はい!全部技術大尉殿の知恵のおかげです。しかし、こんな装備、戦争にでも使うつもりなんですかね?最近は紛争なんかも滅多に起こらないっていうのに」
「まあ、それも本部の考えよ。私達の仕事は考えて、作って、製造方法を確立させる事。そうでなきゃこんな辺鄙な基地に、こんな大部隊を警備に置くなんてありえないでしょう?」
「まぁ、確かにそうですけど」
そう言い合いながら御剣は彼女のデスクに向かい、座る。書類を広げると、その一枚を安田中尉が興味深そうに手に取って目を通した。
「ははぁ、暴徒鎮圧用の特殊弾ですか」
「ゴム弾でも痛みのショックは大きいし、当たり所が悪いと最悪死に直結するから、私が考えているのは銃器で射撃しない弾丸よ」
「撃たない弾ですか」と安田中尉が素っ頓狂な声を上げた。撃たない弾というのは語弊があるが、的を射ている発言でもある。銃器で射撃しないというのは、既存の銃器ではなくそれ専用の火器を開発して運用しようという計画の事なのであった。
「へぇ〜......大尉、これが大尉の言う専用の火器『PA-9』ですか?形状はM16ライフルに似てますね」
「今のレンジャーの基本装備が自動小銃である事を加味した結果よ。形状は似ているけど、機構は全く違うわ。ガスオペレーション式じゃなくて、威力を出しすぎない為にわざわざ『バネ』を伸縮させて弾を飛ばす機構を設計したんだから。計算も完璧だし、後はこれを実行に移すだけよ」
「随分と大掛かりですね」
「当然。なんたって技術班に御剣ありと言われた私よ?」
「そうでした。貴女は
「褒めるな、照れる」
「バカにされてるって自覚あります?」
談笑しながら第5ハンガーを後にする御剣技術大尉と安田中尉。二人の消えたデスクに無造作に置いてある書類を、戻ってきた佐藤伍長が見つけてしまった。
「なんだこれ......『暴徒鎮圧アサルトライフル』に『超軽量ボディアーマー』だって!??!?あの二人組はまたやってんのか...........毎度毎度、あの人らの頭はどうなってんだか」
苦笑いして佐藤伍長は書類を茶封筒に入れた。そのまま送風機の風で飛ばされないように、御剣大尉の私物である可愛らしい色合いのペンケースを重しにして、次の仕事を果たす為に第5ハンガーを去った。
後には鉄を溶接するような音ばかりが響いていた。
PA-9
レンジャー達が全員お世話になったであろう初期アサルトライフルの前身となる突撃銃。プライマー用に開発された兵器ではなく、記述のあったように近年EDFの活動に反対かつ能動的な暴徒に対する特殊アサルトライフル、という経緯で開発されていた。
最新鋭ボディアーマー
全地球防衛機構軍の制式採用アーマーの前身となる装備。防弾、耐爆の効果に加え、耐酸防腐性能を備えた頼れる盾。それぞれの性能を特化させたものが、それぞれソリッドアーマー、耐爆スーツ、リキッドアーマーとなる。
両方とも以降は登場しない。